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本会議 代表質問 二〇〇五年九月二七日 

吉田 信夫(杉並区選出)

都政が都民のくらしをまもるために、あらゆる手だてをつくすことこそ、地方自治体としての最大の責務
オリンピック憲章の眼目より、招致をテコにした大型開発強行があってはならない

都民生活の困難が深刻化・・・庶民大増税反対、都民のくらしをまもるために、あらゆる手だてを

 日本共産党都議団を代表して質問します。
 いま、国民、都民のくらしと営業はかつてない深刻な危機に直面しています。リストラ応援政治のもとで、完全失業者は、全国的に三百万人に達しているばかりか、働いている人のなかでも、正規社員が三百万人も減り、パートなど非正規雇用が労働者の三分の一近くを占めています。このため、この四年間だけでも、家計の所得は一世帯あたり四十万円も減っているのです。
 一家の大黒柱が職を失い、妻のパートがふえ、子どもが進学を断念する、こういう事態がひろがっています。青年の二人に一人がフリーターなど不安定雇用であり、月収十万円前後という貧困層が若い人のなかに増えています。中小企業も四年間で六万六千件が倒産に追い込まれ、年間四千人もの経営者が自殺するという状況です。
 とりわけ東京では、完全失業者は三十四万人に達し、この間一万件を超える小売店が閉店に追い込まれるなど事態は深刻です。これに加え、お年寄りとサラリーマンの医療費が値上げされ、年金や介護の負担が増えるなど、社会保障の切りさげが追い打ちをかけています。高齢者は介護サービスや必要な医療費を断念しても、なお追いつかないというギリギリの事態に直面しています。
 くわえて、重大なことは、小泉政権がすすめようとしている庶民大増税です。総選挙が終わるやいなや、谷垣財務大臣は記者会見で、政府税調でも示された扶養控除や定率減税の廃止、消費税率引き上げを検討することを表明しました。このような増税が実施されれば、四人家族年収五百万円の家庭で、所得税で四十二万円、消費税で十三万円、年間合計五十五万円、国民全体で二十四兆円という、空前の大増税となるのです。さらに、原油価格の高騰などの逆風が吹いています。この事態を放置すれば、家計も経済も破壊されることはさけられません。
 ところが、石原知事は、所信表明で、都民がおかれている現実や苦しみについて、一言もふれようとしませんでした。
 知事、都民生活の困難が深刻化している事態をどのように認識しているのでしょうか。くらしを破壊する庶民大増税に反対するとともに、都政が都民のくらしをまもるために、あらゆる手だてをつくすことこそ、地方自治体としての最大の責務と考えますが、見解を伺います。

介護保険の改悪・・・再検討を国に申し入れ、影響を調査し対策を

 都民のくらしを守るうえで重要な問題について、以下、具体的に提案します。
 まず、介護保険法改悪への対応です。とりわけ、十月一日から特別養護老人ホームなど施設利用者の居住費と食費が保険からはずされ、全額自己負担になるという深刻な負担増にどう対応するかは、さしせまった緊急課題です。
 年金月額六万七千円の高齢者は相部屋の場合でも、一割の利用料と居住費、食費で五万五千円の負担となります。このほか、医療費や介護保険料、国民健康保険料なども必要で、生活費にもこと欠くことになります。個室の場合、九万円前後の負担となり年金額を大幅にこえてしまいます。
 いま、施設の現場では、不安と驚き、混乱と怒りがうずまき、すでに、年金の少ない人は、個室から相部屋に移らざるをえない、施設の利用をあきらめるなどの事態が生まれはじめています。
  国は、施設と在宅の格差是正のための改革だと言いますが、在宅サービスに欠かせないショートステイの滞在費と食費、デイサービスや通所リハビリの食費も全額自己負担となり、利用日数を減らす、昼食を断わり、弁当やおにぎり持参にするなどが危惧されています。
 しかも、六月末に介護保険法改定が国会で可決され、まともな周知期間もなく十月からこれほどの大幅負担増を強行しようという、ひどいやり方です。
 介護療養型施設に入所している方から、「今までの月七万三千円が、居住費、食費などで、来月から六万円負担が増えるといわれ、腰をぬかすほど驚いた。特養ホームの入所待ちで十年、すでに蓄えも底をついた。どうにも払えない」という涙の訴えもよせられています。
 知事は、今回の居住費、食費負担導入による深刻な影響をどう認識しているのですか。十月一日実施を再検討するよう国に申し入れるべきです。
 都として居住費、食費負担が利用者にもたらす影響を調査し、施設の利用をあきらめるとか、サービスの利用を減らす、などの事態を生まないよう対策をとる必要があると思います。お答え下さい。
 すでに千代田区、荒川区、港区は、デイサービスの食費負担を軽減する独自助成を表明しています。いまこそ自治体ががんばる時です。
 また都立ナーシングホームについては、利用者の負担増やサービス低下をまねかないようにすることは当然です。所見を伺います。
 都が国制度を拡充して実施している利用者負担軽減措置の役割は、ますます大事になっています。利用者負担を半額にする現行水準を堅持するとともに、所得と預貯金の制限を大幅に緩和すること、居住費とデイサービスや通所リハビリもふくめ食費にも対応できるようにすること、老人保健施設や療養型施設も対象に加えること、などの拡充が必要です。お答え下さい。
 わが党都議団は、都内の特別養護老人ホームの影響アンケートをおこない、四十八の施設から回答がありました。その結果、国が、居住費、食費負担の導入を口実に、施設への介護報酬を大幅に削ったため、現在の試算で一施設当たり平均年額千四百万円もの減収となります。経営破たんする施設も出てくる、サービスの低下がさけられない、という切実な訴えがよせられています。新たに食費を徴収するのに食事の質が維持できない、という声も共通しています。
 都内の特別養護老人ホーム待機者は、四万五千人におよぶことが明らかになっていますが、このままでは、施設を増やす意欲も資金もなくなるという点でも放置できない問題です。
 特別養護老人ホームの現場は、かつての都加算補助が廃止されたうえ、手厚い介護や医療的ケアが必要な、介護度の重い利用者が増え、多くの施設が今でもぎりぎりの運営という現状です。ユニットケアなど個別ケアを充実するには国基準の職員配置では不十分で、ほとんどの施設が自前の負担で介護職員や看護師を増配置する努力をしています。介護報酬の削減どころか、支援の強化こそ求められているのです。
 新しい事態に対応して、都独自に実施している特別養護老人ホーム経営支援の運営費補助を大幅に増額し、今回の介護報酬削減による減収を補てんすることで、利用者負担を抑え、食事などのサービス低下をまねかないようにする必要があります。
 さらに、手厚い個別ケアのための介護職員や、医療的ケアのための看護師の増配置、利用者の重度化に応じた加算などの拡充をおこなうことを提案するものですが、お答え下さい。

子ども医療費助成の小中学生まで拡充、所得制限撤廃、児童手当の拡充を

 少子化の克服にむけ、子育て世帯への経済的支援の強化は急務です。
 石原知事は、昨年の第四回定例会でわが党の代表質問にたいし、フランスでは、かなり思い切った金銭的なインセンティブを子どもを生んだ家庭に与えている。これは非常にサジェスティブだと思うので、自分自身も赴いてそういう調査をしたい、との重要な答弁を行いました。
 その後、九か月がすぎましたが、知事として少子化克服にむけた経済的支援の拡充強化にどう取り組むのか、お答え下さい。
 とりわけ小中学生の医療費無料化は、切実な要求です。二十三区では港区、台東区が入院、通院とも中学卒業まで拡充したのをはじめ十区が、小学生、中学生までの拡充にふみだし、住民と医療機関から歓迎されています。
 第二回定例会でわが党の代表質問に、福祉保健局長は「要望があることは十分承知している」と答弁されました。子どもの医療費助成を小中学生まで拡充することを、あらためて提案するものですが、都民要望をどう受け止め、対応するのか見解を伺います。
 また所得制限について、二十三区はすべて撤廃しており、新たに拡充された小中学生についても所得制限なしです。これにたいし多摩地域で撤廃したのは三市町にとどまっています。都は負担の公平のため所得制限が必要だと言いますが、撤廃した自治体は、これによって毎年受給資格が変わることなく安定的に医療が受けられるため、むしろ公平性が担保されるようになったとのべています。都民も、区長会、市長会も、所得制限撤廃を切実に要求しています。この願いにこたえていただきたい。お答え下さい。
 児童手当の拡充も重要です。現在の小学校三年生まで、五千円、第三子以降一万円という国制度では不十分です。都は九八年度予算で、当時三歳未満が対象だった国制度を都独自に拡充し、第三子以降について七歳未満まで月一万円の支給にふみきり、国制度の充実を先導した実績があります。中学生や高校生の教育費をはじめとした子育て費用の負担は、深刻な問題です。
 児童手当を十八歳まで拡充すること、また、支給額を増やすことに、都として踏み出す必要があると考えますが、所見を伺います。  

都は、原油高騰の深刻な影響から都民のくらしと営業を守る先頭に

 原油価格の高騰が、都民生活と中小業者の経営に深刻な影響をもたらしています。
 今回の原油高騰は、発展途上国を中心とした急激な需要の増大、さらには、産油国側の供給調整を背景に、アメリカのイラク侵攻やアメリカ南部のハリケーンによる石油施設の破壊などが影響しているものです。そのうえ、見過ごすことのできないことが、世界的な投機筋による原油買い占め、価格つり上げ、石油元売り会社の利益優先の姿勢です。
 こうしたもとで、数年前までは、一リッター九十円台であったガソリンが地域によっては百四十円の大台に乗ったのをはじめ、軽油、重油、灯油などは三割から四割も価格が上昇しているのです。生活必需品や毎日の食材もじわじわと値上がりしています。
 私もまちを歩いていると、石油製品をつかう中小業者の方から「もう限界」とか「生活を切りつめてやりくりしている」などの声が寄せられ、事態の深刻さにあらためて気づかされます。
 日本共産党都議団として、中小企業の聞き取り調査をおこないました。
 杉並区などのクリーニング店からは、ボイラーの灯油はもちろん、洗濯につかう溶剤やハンガー、ポリエチレンの袋なども値上がりしており、「売り上げが落ちているのにダブルパンチだ」などという、悲鳴の声が寄せられました。大田区の運送会社の方は、「トラックを四十五台使っているが、燃料費だけで百五十万円も負担がふえる。運賃に転嫁できないので、泣くしかない。何とかしてほしい」と訴えられました。
 燃料に重油を使っている公衆浴場も深刻です。板橋区のある銭湯では、「燃料費が七十七万円もふえたが、公定料金なので値上げもできず、このままでは営業をやめるしかない」といわれています。
 知事に伺いますが、東京都が原油高騰の深刻な影響から都民のくらしと営業を守る先頭に立つことが必要だと考えますが、見解を伺います。
 価格を引き下げさせるためには、原油価格をつり上げ、莫大な利益を上げている異常な投機を規制することが、必要です。
 また、当初見込みの二倍近い利益を上げ、「一人勝ち」といわれている石油元売り各社に対して、利益を消費者に還元し、価格を引き下げるようつよくはたらきかけることを求めるものですが、それぞれ知事の答弁を求めます。
 都は、かつて七〇年代のオイルショックの時に「物価・生活物資対策本部」を設置し、緊急生活防衛条例を制定するなど、便乗値上げの監視、物かくしなどから消費者をまもる先頭に立ちました。
 原油価格高騰の影響は、冬場を迎えるこれから本格化すると言われています。都として、「原油高騰対策本部」を設置し、便乗値上げの監視や価格安定対策などに全力をつくすことが必要です。見解を伺います。
 低所得者や高齢世帯など社会的弱者のための灯油や生活物資の低価格での提供や、価格転嫁ができない公衆浴場への支援などが求められています。
 中小企業に対しても、緊急に、超低利の「原油高騰対策融資」をつくるべきであります。また、産業労働局が開設した「相談窓口」だけで終わることなく、大企業による価格転嫁や便乗値上げなど中小企業いじめを監視し、ただちに解決にあたれる体制をつくることが必要です。
 さらに、資源の枯渇が言われている石油にいつまでも頼るのではなく、石油燃料に変わる植物性廃油の燃料化技術の開発など、脱石油のとりくみを推進することも重要であると考えますが、それぞれ答弁を求めます。

三十人学級・・区市町村の判断で踏み出すことを希望した場合に尊重を

 次は三十人学級の問題です。
 少人数学級は今や四十五道府県に実施が広がり、世論に押されて中山文部科学大臣も国会でその必要性を認め、中央教育審議会の論議でも具体化の方向が提起されました。これを受けて文部科学省の「教職員配置等のあり方に関する調査研究協力者会議」で検討されてきました。
 八月末の中間報告では、財源を理由に学級定数改善が見送られましたが、全国の自治体が少人数学級に踏み出している実態を踏まえて、学校現場の判断で「四十人を下回る学級編成が自由に選択できる制度」の方向がうちだされました。
 とりわけ小学校低学年については生活環境や学習環境の著しい変化で学級崩壊に近い状態になる「いわゆる『小一プロブレム』などの課題に焦点を絞った対応が必要である」として「小学校低学年では学級とは別に学習集団を作るよりも」「生活集団と学習集団を一体として少人数化を図ることが効果的と考えられる」と、少人数学級こそが必要であることを明確に指摘しているのです。
 都は小学校低学年における少人数学級の効果についてどのように認識しているのですか。
 小学校における校内暴力の発生が過去最悪になっていることからも、どの子にも目がゆきとどく三〇人学級の必要性がいっそうつよまっています。今こそ、小学校低学年の少人数学級実施に踏み出すべきだと考えますが、お答えください。
 周知のように多摩の市長会からは少人数学級の都独自の実施を求める要望が提出され、さらにいくつかの区や市では自分たちの判断で学級定数を改善し、加配教員の配置を工夫することで少人数学級をスタートさせたいとの意向も表明されています。これに対し都教委は学級編制権を盾に、加配定数も含めて少人数学級への活用を認めないという、かたくなな態度をとりつづけてきました。
 都教委は、中間報告で打ちだされた方向をふまえ、区や市町村がそれぞれの判断で加配教員なども活用して少人数学級に踏み出すことを希望した場合、これを尊重するよう求めるものですが、答弁を願います。
 私がとりあげたこれらの都民のくらしと福祉をまもる課題は、どれも、東京都の財政力をもってすれば解決可能なものです。

投資の水準を、都民のくらしを守る施策の充実と両立する適正な規模に切りかえることが必要

 東京都の予算は、財政がきびしいと言いながらも、一般会計で約六兆円、特別会計や公営企業会計をあわせた全会計では十二兆五千億円という規模で、インドなどの国家予算の規模に匹敵するものです。このお金を、切実な都民要望の実現にふりむけることが、求められているのです。
 しかし、石原都政がこの六年間にすすめてきた道は、小泉政権の「痛み」の押しつけから都民生活を守るどころか、いっしょになって福祉をけずり、中小企業対策を後退させてきたのです。
 知事は、その理由として、ことさら「財政が厳しい」ことをあげ、二次にわたる「財政政権推進プラン」を都民に押しつけることで、六年間の累計で都民施策を中心に一兆円を超える切りすてをすすめたのです。切りすての中心は、老人医療費助成や老人福祉手当など経済給付的事業を中心とした高齢者福祉や障害者対策、保育の予算であり、都立学校統廃合や都立図書館など教育予算の削減、制度融資の原資の削減や試験研究機関の廃止、都営住宅の新規建設ゼロ、多摩地域の都道の整備や中小河川、公園整備予算の連続的削減であります。
 都民施策にあてる財源が本当に無かったのでしょうか。とんでもありません。この六年間の税金の動きを調べてみますと、全体として税収が大幅に伸びていて、一九九九年度の当初予算との比較では累計で六二四八億円、二次の「財政再建推進プラン」と比較すると同じく一兆六一八〇億円も増収となっているのです。
 一方、この六年間、首都高速道路への投資は千四百三十五億円、圏央道をはじめとする国の直轄事業負担金に三千百三十三億円をはじめ、幹線道路、都市再開発、臨海副都心開発などにつぎこまれた予算は、一般会計だけで、毎年一兆円規模、六年間で六兆四千億円にものぼっているのです。都市基盤の整備自体は必要ですが、あまりにも過大な投資と言わざるを得ません。そのため、都の借金=都債の残高は六兆八五〇〇億円と過去最高水準となり、借金返しのための公債費は毎年五〇〇〇億円規模で、都財政と都民施策を圧迫する最大の要因となっているのです。
 さらに重大なことは、石原知事が、今後も、羽田国際空港化にともなう拡張工事に一〇〇〇億円、首都高速中央環状品川線に一二五〇億円など、本来、都が負担する必要のない支出を増大させようとしていることです。最近、国と都が計画段階に移行すると表明した外郭環状道路も、国が直接施工することになれば、五〇〇〇億円近い都負担が発生するといわれています。全国を結ぶ自動車道をつなぐ環状道路が必要だとしても、圏央道、外環、首都高中央環状線の三本もの自動車道路が必要なのか、という都民の声がひろがり、東京公害裁判の判決でも疑問が呈されています。
 知事、投資の水準を、都民のくらしを守る施策の充実と両立する適正な規模に切りかえることが必要です。そのために、都の責任をこえた国直轄事業負担金や首都高速道路の建設費負担、臨海副都心開発や臨海関連三セクへの支援など不要不急の投資に大胆にメスを入れること、また、橋梁談合で明らかにされた不正談合による価格つり上げを是正する総合防止策が必要なのではありませんか。見解を伺います。
 それをせず、「国際的な都市間競争に勝ちぬく」というかけ声のもとに、大型開発に偏った財政出動をつづけるならば、さらなる都民施策の切りすてと、とりかえしのつかない財政破たんに直面することは明らかです。

オリンピック憲章の眼目より、招致をテコにした大型開発強行があってはならない

 知事は所信表明で、とうとつにオリンピック招致を表明しました。
 そもそも、オリンピックは五輪憲章に謳われているように、あらゆる差別を排除し、スポーツを通じた平和でよりよい世界をつくることに、その眼目があります。しかし、石原知事の所信表明には、この立場からの発言は見られず、もっぱら「日本の存在をアピールする絶好の機会」とか、「オリンピック開催を起爆剤として日本を覆う閉塞感を打破する」ことが強調されています。定例記者会見では、自らが「総代」をつとめる明治神宮外苑の再開発について言及するとともに、「東京五輪で使った施設はみんな古い。すべての施設がリニューアルされることになる」とのべるなど、大型のハコ物や、交通インフラ整備の加速に言及したのです。
 明治神宮外苑について言えば、二〇〇三年に財団法人の日本地域開発センターが、再開発のための調査を実施、昨年五月には、電通が再開発プランをたて、大手ゼネコンを訪問すなど、オリンピック招致を前提として計画がねられてきたことが報道されています。  もし、オリンピック招致をもっぱら開発中心に考えるとするならば、ただでさえ巨額となる財政負担をことさら増大させるばかりか、環境との調和、「持続可能な開発」をもとめた五輪憲章から見ても問題となることは明らかです。
 実際に、大阪オリンピック招致の場合、招致のための事前の経費だけで百十億円を超え、メインスタジアムや会場の整備、阪神高速道路などの交通インフラの整備など、きびしい財政を考慮した範囲の計画でも七千億円が投入されることにたいする府民の批判がひろがったのです。私は、オリンピックは、環境に配慮した、簡素で心の通うものとするとともに、都民の合意が大前提となるものであって、いやしくも、オリンピック招致をテコに、都民の間で賛否が問われている大型開発などを強行するようなことはあってはならないことを指摘しておくものです。

侵略戦争と植民地支配の正当化や、靖国参拝をやめよ

 最後に、石原知事の靖国参拝問題です。
 靖国神社は、その刊行物『遊就館図録』などでも明らかなように、二千万人以上のアジアの人々と、三百十万人以上の日本国民の命をうばった過去の侵略戦争を、こともあろうに「自存自衛」のための戦争、「アジア解放」の「正しい戦争だった」と正当化し、「太平洋戦争は米国の陰謀によるものだ」としています。しかも、戦争犯罪人として断罪されたA級戦犯を、「ぬれぎぬを着せられ」た人とよび、神としてまつるばかりか、間違った戦争観を国民にひろげることを自らの使命とし、そのための宣伝センターとなっています。
 だからこそ、新聞各紙が相次いで、首相の参拝中止を求める社説を掲載し、アジア各国で批判がうずまいたのです。さらに、アメリカの新聞ニューヨーク・タイムズは特集記事で、「靖国の歴史観は、ほとんどのアジア人、米国人にとって受け入れることはできない」と書くなど、欧米でも靖国神社の歴史観、戦争観への痛烈な批判がひろがっています。
 戦後六十周年をむかえた世界は、ドイツ、イタリアがヨーロッパで、日本がアジアで起こした戦争について、いかなる大義もない侵略戦争だったという共通の認識に立っています。過去の戦争への反省は、日本国憲法とともに、国連憲章にも明記された戦後の国際秩序の原点です。
 ところが石原知事は、この原点を否定し、日本の起こした戦争が間違っていたとは言えないとか、日本がやった植民地主義はまだ人道的で人間的だったとか、日本は武力で韓国併合をしたのではないなどと、靖国神社と同じ侵略戦争正当化の発言を公然とおこない、靖国参拝をくりかえしてきました。今年八月一日には、「みんなで靖国神社に参拝する国民の会」が産経新聞などに掲載した全面広告に、現職の政治家としてただひとり発起人として名をつらね、靖国神社を賛美し、「小泉首相には、毅然として参拝していただきたい」とのメッセージを発信しています。この全面広告にたいし、韓国の百人をこえる国会議員が市民団体とともに、抗議声明を発表したのは当然のことです。
 知事、侵略戦争と植民地支配の正当化や、靖国参拝をやめるよう、あらためてきびしく求めるものです。知事の答弁を求め、再質問を留保して質問を終わります。

【再質問】
 知事は、都民の暮らしの痛みや苦しみについて全く理解できないのでしょうか。都民の間に入れば、この事実は明白です。しかも、OECDがことし二月発表した資料でも、日本の貧困率は十年前に比べて二倍、二十七カ国中、何と五位に上がっているという、こういう事実があるんです。この都民の置かれている実態に目を向けようとしない、手を差し伸べようとしないならば、それは自治体としてのまさに魂を失うものだ、そういわざるを得ません。
 介護保険の問題でいえば、我が党の申し入れに対して、厚生労働大臣でさえ、実態調査は直ちにやらせていただく、こういうふうに答えているんです。何らかの対応が必要だと思わないんですか、改めてお答えください。
 靖国神社の問題は、まさに侵略戦争を全面的に正当化する歴史観を振りまく、そのことが問われており、だからこそ批判が強まっているんです。知事は、日本が行った日中戦争、太平洋戦争を、二度と繰り返してはならない侵略戦争であったという、国連憲章にも明記をされた戦後国際政治の原点を認めるのか認めないのか、お答えをお願いいたします。

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【答弁部分】

〇知事(石原慎太郎君)
 吉田信夫議員の代表質問にお答えいたします。
 しかしまあ、よくもまあいつも同じ貧しい発想で、同じ泣き声で、同じレトリックで、国民も聞き飽きたと思うし、それはこの間の選挙で証明されたんじゃないでしょうかね。
 まず、都民の暮らしを守る自治体の責務についてでありますが、それはもう当たり前のことでありましてね。そのために、都は議会と、共産党を除く議会と協力して、今まで福祉の改革、教育改革、治安の回復、大気汚染の改善をやってまいりました。都民は、都と議会のそうした努力を十分理解して支持してくださっていると思います。これからも、共産党だけは反対するだろう種々の改革を断行してまいります。
 次いで、介護保険制度の見直しについてでありますが、今回の法改正は、今後の高齢化のさらなる進展を見据え、介護保険制度を将来にわたり健全かつ安定的なものとしていくために見直しを行ったものでありまして、居住費負担などの導入についても、在宅サービスとの負担の公平や年金給付との調整の観点から必要な見直しだと思います。保険料の上昇を抑制するためにも、早期に実施することが必要であります。
 なお、利用者の自己負担額については、低所得者への配慮がなされておりますし、再検討の必要はなく、国に申し入れる考えはございません。
 次いで、少子化対策でありますが、先ほども申し上げたとおり、少子化は、先進国において長期的に見ると例外なく進行しております。しかし、その背景は、いろいろその国の成り立ちや社会経済システム、国民性などにより違いますが、いずれにしろ、子育て支援に係る経済的な支援については、税制のあり方も含めて社会保障制度全体を視野に入れ、国民的コンセンサスを得て行うべきものであると思います。
 基本的には国で対応すべき課題であります。諸外国の制度を単純に横引きできるものではございませんが、中にはなかなかサジェスティブがございますので、別に共産党にいわれなくても、日程の都合がついたら、私自身が視察に参ります。
 それから、原油価格上昇の影響についてでありますが、原油やガソリンなどの価格は、現在も確かに上昇傾向にございます。しかし、東京都区部の消費者物価指数は、依然として低い水準にあります。
 ガソリンに関して申しますと、少なくとも東京は世界に例のない鉄道網の発達した首都でありまして、余りガソリンの値段がかかるなら、業者はまた別でありますけれども、マイカーは自粛して、せいぜいしかし都民の税金でつくりました地下鉄を含めて、世界に例のないこの鉄道網というものを都民に利用していただきたいと思います。
 しかし、昭和四十年代に起きましたオイルショックのころの狂乱物価と同様の状況になることは、私は想定しておりません。原油を取り巻く国際情勢や、市場価格の動向を見きわめていく必要があると思います。
 次いで、投資の水準についてでありますけれども、都が進める財政再建は、都民施策を切り捨てるものでは決してございません。時代の変化に合わせた、新しい都民ニーズにこたえていくための複合性を伴った積極的な取り組みであります。
 厳しい財政状況にあっても、福祉施策や中小企業対策、安全対策など喫緊の課題に対しては、重点的に財源を配分しております。こうした施策と同様、これまで進めてきた都市基盤整備は、国際競争力を高め、活力を維持する上で不可欠な取り組みであると思います。
 現在の投資水準は適正な規模であると考えておりまして、将来を見据えた都市基盤整備に引き続き積極的に取り組んでまいります。
 次いで、談合防止策でありますけれども、前に申しましたが、談合は、公正な競争に反するものでありまして、決して許されるべきものではありません。
 都は、これまでも一般競争入札の実施範囲の拡大や、電子入札の実施などの方策を講じるとともに、談合した企業に対しては指名停止措置を行い、厳正に対処しております。
 また、談合による損害については、当然ながらその回復を図る必要があります。都では、談合が明らかになった場合には、賠償金の支払いを義務づけております。
 今後とも、発注者として談合の防止に積極的に取り組んでまいります。
 次いで、靖国参拝の問題でありますけれども、人間も、政党も、あるいは国もそれぞれの価値観を持っているものでありまして、私は、あなたが指摘したように、靖国の歴史観というものは、あなたが解釈されているものと全く違うと思います。ゆえに私は、例えば日清、日露の戦争にしても、我々の先輩、ごく近いご先祖が、この日本を植民地にしないために戦った、とうとい犠牲を払った戦争でありまして、それも含めて、あの太平洋戦争にしても、それに対する評価というものは国によって違います。
 韓国や、あるいは中国は、それを現政権の政権維持のために、うまくプロパガンダで使っているでしょうけれども、しかし、同じ現代におけるマレーシアのマハティールさん、親友ですけれども、あるいは私がじかに会いましたエジプトの最初の大統領のナセルにしろ、インドネシアのスカルノにしろ、あの太平洋戦争というものの存在というものは、結局私たちの崛起を促して、我々はいわば第三次大戦といえる独立戦争を戦って勝ったんだと。日本の存在を、そういう意味で、陰影あるかもしれないが、大きな大きな影響を私たちへ与えてくれたという評価をしております。
 ゆえにもまた、私は一人の日本人として、私たちの先祖の築いたこの近い過去に、批判もありますけれども、同時に誇りを持って、あなたは何といおうと靖国に毎年参拝いたします。あなたは行きたくなければ、行かなきゃよろしい。

〇教育長(中村正彦君)
 三十人学級についてお答え申し上げます。
 まず、小学校低学年におきます少人数学級の効果についてでありますけれども、本年八月、文部科学省が公表しました教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議の中間報告で、小学校低学年における基本的な生活習慣や学習態度の育成には、集団の少人数化を図ることが効果的であるとの考え方が示されたことは承知しております。
 しかしながら、児童生徒に望ましい人間関係、あるいは豊かな社会性を培うためには、学級集団として一定の規模が必要であります。お話しの小学校低学年、特に入門期におきます基本的な生活習慣や学習態度を育成するために、東京都では一定の学級規模を維持しつつ、例えば専科教諭あるいは養護教諭が担当を補佐したり、合同授業を実施したりすることなどによりまして、成果を上げてまいりました。
 このことから、いわゆる小一プロブレムなどの課題を解決するためには、教員同士が協働し、かつ組織的に取り組むことが非常に重要であると考えております。
 次に、小学校低学年の少人数学級実施についてでございますが、ただいま申し上げましたとおり、都教育委員会としましては、小学校低学年、特に入門期におきますさまざまな課題について、まず教員同士が協働し、組織的に取り組むことが何よりも重要であると考えております。
 次に、区市町村の判断によります加配教員を活用する少人数学級についてでありますが、限られた教員定数の活用につきましては、教育効果という観点から、都教育委員会が主体的に判断すべきものと考えております。
 少人数教育につきましては、学級には一定規模が必要である一方、基礎学力の向上に配慮しまして、きめ細かな指導を行っていくためには、少人数指導の充実に努める必要があるというふうに考えております。
 なお、文部科学省は、先ほどの調査研究協力者会議におきまして、その中間報告を受けまして、学級編制に関する都道府県及び区市町村の権限について今後検討するということでございますが、その具体的な内容は、現在のところ全く明らかではありません。
 都教育委員会としましては、今後も国の動向を注視してまいります。

〇福祉保健局長(平井健一君)
 介護保険など八点のご質問にお答えいたします。
 まず、居住費、食費の見直しの影響についてでございますが、今回の見直しによる利用者負担額は、国の実施した介護事業経営概況調査及び家計調査の結果に基づく平均的な費用の額により算定されております。
 また、今回の制度改正に当たりましては、低所得者の負担が過重とならないよう、所得に応じた負担限度額の設定に加え、社会福祉法人による利用者負担軽減制度などにより、低所得者へのきめ細かい配慮がなされております。
 これらのことから、都として独自に調査や新たな対策を実施する考えはございません。
 次に、都立ナーシングホームにおける利用者負担についてでございますが、改正介護保険法に基づき、都立ナーシングホームにおいても利用者負担の見直しを実施するものであり、必要かつ適切なものと考えております。
 また、このことによりサービスが低下するようなことはございません。
 次に、都の利用者負担軽減制度についてでございますが、本制度は、国制度である社会福祉法人等による利用者負担軽減の仕組みをもとに、対象サービスと事業主体を都独自に拡大し、より公平で利用しやすいものとして実施しているものでございます。
 今回の軽減割合の引き下げ、対象者の収入、資産要件の緩和及び食費への対象経費の拡大につきましては、国制度に準拠して実施するものでございます。
 なお、対象サービスにつきましては、従来より在宅重視の観点から、訪問看護や通所リハビリテーションなど五種類の在宅サービスを都独自に拡大し実施しているものでございまして、特別養護老人ホーム以外の施設サービスへの拡大は考えておりません。
 次に、特別養護老人ホーム経営支援事業についてでございますが、本事業は、民間の特別養護老人ホームが介護保険制度に円滑に移行するために、制度発足を機に経過的な支援策として実施してきたものでございます。今回の居住費、食費の見直しに伴う介護報酬の改定及び利用者負担額の設定は、国が実施した調査に基づくものでございまして、適正な水準と考えております。
 したがって、今回の見直しに伴って本事業による補助を増額する必要はないと考えております。
 次に、個別ケアなどの加算についてでございますが、介護報酬における特別養護老人ホームの加算には、これまでも機能訓練指導体制加算などがあり、これらに加え、今回の居住費、食費の見直しにあわせて栄養マネジメント加算などが新設されるものでございます。このように、専門職等を配置した場合であっても、介護報酬において適切な加算措置が講じられていることから、都として独自に加算等の支援を行う考えはございません。
 次に、乳幼児医療費助成の拡充についてでございますが、現在、都議会での議論を初め、さまざまなご意見、ご要望があることは十分承知しておりますが、対象年齢を義務教育就学前までとする現行の制度は適切なものと考えており、対象年齢を小中学生まで拡大することは考えておりません。
 次に、乳幼児医療費助成制度の所得制限についてでございますが、本制度は子育てを支援する福祉施策の一環として、区市町村に対し都が補助を行っているものでございます。所得制限の基準は、国における児童手当に準拠しており、一定の所得制限を設けることは必要と考えております。
 最後に、児童手当の拡充についてでございますが、児童手当は、児童を養育する家庭の生活安定や児童の健全育成を目的とした国の制度であり、本来、こうした経済的給付は、国が社会保障全般の制度設計の中で対応すべきものと考えております。
 少子社会への対応策につきましては、現在さまざまな議論が行われており、広く社会的なコンセンサスを得ることが重要でございます。
 ご提案の児童手当の対象年齢の拡大については、先ほど自由民主党の野村幹事長にもご答弁申し上げたとおり、さまざまな議論や国の動向を見定めながら、引き続き研究してまいります。

〇生活文化局長(山内隆夫君)
 原油価格の上昇についての三つの質問にお答えいたします。
 まず、原油に対する投機の規制や石油元売に対する利益還元についてでございますが、原油についての異常な投機や石油元売会社の各社のひとり勝ちといった状況が事実かどうか、都としては把握できません。もしそのような事実があれば、国として対応すべきものと考えております。
 次に、原油価格上昇に伴う対策についてでございますが、原油やガソリンなどの価格については、現在、上昇傾向にあるものの、総務省発表の東京都区部の消費者物価指数によると、本年八月の総合指数は対前年同月と比べて〇・六%の下落と、依然として低い水準にございます。
 今後とも、原油価格の上昇による都民の消費生活への影響について注視してまいります。
 終わりに、社会的弱者や公衆浴場に対する支援についてでございますが、今後とも、原油価格や消費者物価指数の動向を注視、把握するなど、対応してまいります。

〇産業労働局長(成田浩君)
 原油価格高騰に伴う中小企業への対応についてでございますが、都では、本年七月に実施した原材料価格高騰の影響に関する調査や東京都中小企業振興公社の巡回相談を通じて、中小企業への影響について把握してきております。こうした調査等を踏まえまして、今月二十二日には、都及び中小企業振興公社に特別相談窓口を設置し、経営環境や資金繰りなどが悪化している中小企業に対する相談体制を強化してきたところであります。
 また、資金需要が高まる年末に向け、金融支援の具体的方策を検討していくこととしております。

〇環境局長(大橋久夫君)
 エネルギー対策についてでございます。石油などの化石燃料の大量消費は、大気中の二酸化炭素を増加させ、地球温暖化を促進する要因にもなります。都民が安心して住み続けることができる都市とするためには、東京を化石燃料の依存が少ない社会に変えていくことが必要であります。
 このため、省エネルギー対策の推進に加え、引き続き、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を、国や民間事業者などと連携して進めてまいります。

【再質問への答弁】
〇知事(石原慎太郎君)

 それは、どんな成熟した社会でも、そこに住んでいる市民、都民、国民の痛みも苦しみもあるでしょう。しかし、やっぱりそういうものをサマライズして、何に優先順位を置いて措置するかが行政の肝要だと思います。そういうふうに私は都民の痛み、苦しみというものを理解するがゆえに、大気汚染の改善を議会と一緒にやってきましたし、中小企業の対策もしてきまして、福祉の改革もしてまいりました。
 それから、国連憲章の精神、何ですか、あなた、そんなもの。それは金科玉条なんですか。国連というのはそんなに大したものなんですか。神様みたいな存在ですか。冗談じゃないよ、あなた。共産党ってどんな価値があるかも知らないけど、今ごろ国連憲章なんていうものをまともに信じているばかはいませんよ、本当にそれは。
〔発言する者あり〕

以上