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本会議 討論 二〇〇五年十月六日

植木 こうじ(中野区選出)

大増税、社会保障制度改悪、原油高騰などから都民の暮らしを守る手だてを
石原知事は「国連憲章」を否定し、国連を侮辱する発言を撤回し、猛省を

 日本共産党を代表して第一六四号議案「東京都組織条例の一部を改正する条例」ほか十六議案に反対する立場から討論を行います。
 第一六四号議案は、あらたに「青少年・治安対策本部」を設置し、これまで、生活文化局が健全育成の立場からとりくんできた青少年行政を、権力的な取り締まりを基本とする治安対策と一体化するというものです。そもそも、東京都の青少年行政は、青少年のもつ自己決定能力をふまえ、その健全な育成を育むことを目的に、長年にわたるとりくみで築きあげられてきたものであり、権力的な対策とは一線を画したものとして、法曹界からも評価されてきたものです。今回の組織改正によって、青少年行政が、警察庁から派遣された職員が責任者をつとめる組織にゆだねられ、もっぱら治安対策の角度から遂行されることになりかねず、青少年の健全育成に障害すらもたらしかねないもので、認められません。
 今定例会は、国の大増税、社会保障制度の改悪、原油高騰など、都民のくらしと営業が一段ときびしさを増しているなかで開かれ、都政が、都民のくらしを守るためにあらゆる手だてをつくすかどうかが、きびしく問われました。ところが石原知事は所信表明で、都民がおかれている現実や苦しみについて、一言もふれなかったばかりか、都民にいっそうの痛みを強いる小泉内閣の庶民大増税を容認し、都民のくらしを守る姿勢を示そうとしませんでした。
 介護の負担軽減では、介護保険法の改悪にともない、十月一日から居住費、食費が全額自己負担になる問題について、知事はこれを評価し、福祉保健局は都民の影響調査を行なうことさえ拒みました。厚生労働大臣でさえ「早急に実態調査を行なう」と表明しているのです。自治体としての魂をなくしてしまったのか、と言わねばなりません。すでに、「居住費、食費代あわせて九万円以上の負担になる」「どうやって払えというのか」などの不安や怒りが、利用者や家族にひろがっています。支払いが年金額をこえる高齢者が確実にでてきます。影響調査を行ない、都として早急に対策をとることを訴えるものです。
 今定例会には、都立日比谷図書館やユースホステルの廃止、産業技術研究所の独立法人化など、都民のための都立施設の廃止や民営化が提案、報告されましたが、石原知事のもとで廃止された都立施設はすでに百か所を超えており、都民サービスの後退があらゆる分野におよんでいることを見過ごすことはできません。さらに、今定例会には、都立児童養護施設伊豆長岡学園を民間移譲し、公募にかける方針が報告されました。この施設でくらしている児童の多くは、親から虐待を受けるなど心に深い傷を持ち、大人との信頼関係を取りもどすことが何よりも大事な子どもたちです。中学、高校生という多感な年代の子も少なくありません。
 また、十八歳で施設を巣立った卒園生は、つらいこと、うれしいことがあるたびに、親代わりの職員と話をしたくて施設に戻ってきます。施設が民間移譲されることになれば、その子どもたちにとって親代わりの職員が、そっくり入れ替わることになり、多くの卒園生の帰る場所もなくなってしまうのです。
 経済効率優先で、東京都は手を引いて民間に任せたいということを、子どもたちにどう説明するのですか。もう決まったことだとごり押しするようなことをしたら、大人への信頼はくずされ、またしても癒しがたい心の傷をうけるのではないでしょうか。
 あらためて、子どもたちの立場に立って再検討し、その意見を十分に尊重することを、つよく求めておきます。
 三十人学級について、わが党が区市町村の意向を尊重するよう求めたの対して、都教委は「国の動向を注視」することを表明しましたが、その後、国の協力者会議が最終報告をとりまとめ、そのなかで区市町村の判断で少人数学級にふみだす方向が打ちだされました。あらためて、都がこの方向をふまえて、都民要望に応えるようつよく要望しておくものです。
 財政運営について言えば、都は「都財政が直面する課題」を作成し、財政がひきつづききびしいことをあげるとともに、来年度が「第二次財政再建推進プラン」の最終年度であるとして、都民施策の「聖域なし」の見直しをあらためて求めています。しかし、都財政はその根幹をなす都税収入が「プラン」と比べて一兆四千億円も増収となっており、大型開発にかたよった税金の使い方をかえれば、切実な都民要望に応えることは十分可能であることを申し述べておくものです。
 知事は今定例会で突然、オリンピック招致を表明しましたが、知事が「オリンピック開催を起爆剤として日本をおおう閉塞感を打破する」「大規模な再開発になる」と述べ、さらには、知事が「総代」をつとめる明治神宮の外苑再開発に言及していることで明らかなように、その狙いは、大規模な都市開発にあることは誰の目にも明らかです。
 そもそも、オリンピックは、五輪憲章にあるとおり、あらゆる差別を排除し、スポーツを通じて平和でよりよい世界をつくることをめざすことを眼目にしております。オリンピックの開催は環境に配慮した、簡素で心の通うものにするとともに、なによりも都民の合意が大前提でなければならないこと、間違ってもオリンピックを大規模開発の手段としてはならないことをあらためて指摘しておくものです。
 わが党が、侵略戦争と植民地支配の正当化や靖国参拝をやめることを求めたの対して、知事は、「国連憲章なんていうものをまともに信じているばかはいませんよ」、「国連の無能ぶり」などと、国連憲章を否定し、国連を侮辱する発言をくり返しました。
 そもそも国連は、第二次世界大戦の痛切な反省にたって設立され、「国際紛争を平和的手段によって解決」することなどをその目的にかかげ、現実に大きな役割を果たしているのです。石原知事の発言は、国連憲章に明記された戦後国際秩序の原点を否定するものであり、そのうえ議場において「ばか」という発言をおこなったことは、都議会の品位をおとしめるものであり、容認できません。
 わが党は、知事の発言の撤回と猛省を求める決議案を、昨日の議会運営委員会理事会に提案しましたが、自民、民主、公明の反対で本会議への上程に至らなかったことは、まことに遺憾です。
 今年九月、国連総会で世界の国連首脳会議が開催され、国連憲章への「厳格な敬意」をもとめた「成果文書」が全体一致で採択されています。知事の言動は、世界の流れ、世界の常識からかけ離れたものであり、首都東京の代表として許されるものではありません。
 あらためて発言を撤回し、二度とこのようなことを繰り返さないよう猛省を求めるものです。
 最後に、議会改革をめぐる「協議の場」について申し上げます。
 昨日の議運理事会で自民、民主、公明は「協議の場」を設置することを理由に、政調費の領収書添付の条例改正に反対の意向を表明しました。しかし、記者会見で自民党から「四年間の任期中に結論を出すように努力する」と発言があったように、「協議」を理由に、議会改革を先送りすることがあってはなりません。わが党は、「協議」は、特定の会派による非公式なものでなく、都議会としての公式の議会改革検討機関をたちあげ、早期に都民が要望する議会改革を実現させるよう強く呼びかけるものです。
 以上で討論を終わります。