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2005年第3回定例会文書質問趣意書
たぞえ民夫(世田谷区選出)
小児救急医療の拡充について
小児医療は人手もかかり、薬も他科にくらべ大人の数分の1しか使わない、それにくらべて労力の割に診療報酬が低いために、各病院は不採算に追い込まれています。休日夜間救急を実施している病院に、多くの患者が集中し、医師にも重い負担となっています。昨年から始まった研修医制度の影響により、小児科医が大学病院に呼び戻されるという問題も生まれています。このため全国的に、小児病棟の縮小・閉鎖や、小児科医の不足が大きな問題になっています。
乳幼児は、深夜に突発的に発病することが多く、急変しやすいため、いつでも対応し検査も入院もできる小児救急医療機関が、身近な地域にあることは欠かせません。言葉をしゃべれない乳幼児の症状を把握できる小児科医が24時間365日受け入れてくれる体制の整備が、つよく求められています。
しかし、厚生労働省のまとめによれば、全国404の小児救急医療圏のうち、04年度までに体制が整ったのは221医療圏だけであり、深刻な実態におかれています。
東京の現状も深刻です。東京では、小児科のある病院は1990年327病院にたいし、2001年には236病院と、3割近くも減少する事態となっており、小児医療・小児救急の危機打開にむけたとりくみの抜本的強化が急務となっています。
Q1 都は、24時間365日の小児救急の入院に対応できる体制をもつ病院に委託費を出す小児休日・全夜間診療事業をおこなっていますが、参加している病院は、60か所の目標にたいし、今年8月現在で47か所にとどまっています。いつまでに60施設の目標を達成するのですか。
小児休日・全夜間診療事業の都の委託費は、小児科医1名の人件費と空きベッド確保の支援だけであり、金額が実態に見合っていないことにたいし、民間病院からも批判の声があがっています。
Q2 60か所の整備目標を早期に達成するためにも、患者数の実態に見合った加算をおこなうなど、委託費の増額、制度の改善・拡充をおこなう必要があると考えますが、見解を伺います。
Q3 また、60施設という目標は、人口20万人あたり1施設という見当になります。地域のバランスに配慮し、できるだけ身近な地域に整備することも重要だと考えますが、答弁を求めます。
東京都は、地域にかけがえのない役割をはたしてきた都立母子保健院を02年12月に廃止し、その結果、世田谷区内でただひとつ夜間救急を担当している国立成育医療センターには、毎夜100人あまりもの子どもの救急患者が殺到しています。このため、4200円の特定療養費を徴収することで、救急患者の抑制をはかるという事態になっています。
世田谷区が「子ども初期救急診療所」を設置しましたが、22時30分までのかぎられた時間で、軽症対応のみであり、子どもの全夜間救急体制の拡充は切実な要求です。
世田谷区では、マンション建設などの影響で子どもの人口は増え続け、14歳以下の人口は約8万5000人にものぼっています。
東京消防庁によると、区内から救急搬送される子どもの数は年々増加し、昨年1年間だけで、0歳から2歳まで1269人、3歳から5歳まで662人、6歳から14歳まで1041人、あわせて2972人となっています。主な原因は急病、負傷、交通事故となっています。ところが、世田谷区内で小児科を設置している病院は、この10年間に、12病院から9病院に、診療所も257か所から220か所に減少しています。
Q4 小児休日・全夜間診療事業を実施している医療機関は、世田谷区、目黒区、渋谷区の区西南部医療圏でみても、128万人の人口にたいし、わずか4か所にすぎません。なかでも世田谷区は、人口80万人で、しかも子どもの人口が増えているにもかかわらず、国立成育医療センターの1か所だけです。立地的にも同センターは区の西南端にあり、世田谷区の中央部と東部は、小児休日・全夜間救急事業の広大な空白地域となっています。このような現状を、どう認識しているのですか。
Q5 世田谷区内に、小児休日・全夜間診療事業を実施する医療機関を増やすことを求めるものです。見解を伺います。
先進的な小児救急医療にとりくんでいる北九州市八幡病院副院長の市川光太郎医師は、「小児は容態が急変しやすく症状を自分で言えないから、経験豊富な小児科医が診なければ重症患者を見逃してしまう」(「週刊東洋経済」05年9月17日号)と述べています。
Q6 都が実施している小児初期救急運営費補助事業は軽症対応、小児休日・全夜間診療事業は、入院が必要な2次救急対応とされていますが、中野総合病院等で、同じ病院施設でこの2つを一体的に運営することにより、成果をあげています。このやり方を、いっそうひろげていくことは重要だと思いますが、答弁を求めます。
Q7 地域の実態にあわせた工夫をおこなうことも必要です。小児初期救急診療事業と、隣接している病院における休日・全夜間診療事業が連携することにより、軽症から検査、入院対応まで一体に、24時間365日対応できるようにすることも有効なやり方ではないかと思いますが、所見を伺います。
都立梅ヶ丘病院は、全国でただひとつの小児精神病院として、幼児期から青年期まで幅広い年齢層の子どもが通院や入院での治療を受けています。開院50年の歴史の中で、自然とふれあう豊かな医療環境が整っているだけでなく、医療・福祉・教育の3本の基盤が、梅ヶ丘病院は長年の努力で整い、築き上げられています。
7500坪の敷地の中に、二階建ての病棟(264床)が点在し、空間も確保され、患者にとって自分自身が回復して元気になろうとする気持ちを育ててきました。精神障害がある子どもと家族にとって、かけがえのないオアシスのような存在となっています。10年前に入院し、現在も通院治療をうけている患者は、「入院中も町の中を歩くことができ、家族にとって病院は心の居場所です」と語っています。
心の治療は、人の温かさ、結びつきが何よりも大切で、病院とまわりの地域環境が回復の手助けをしています。まさに、地域とのきずなは精神回復の特効薬です。この病院を存続させることは、都民のくらしに大きく寄与することは明らかです。
梅ヶ丘病院の周辺は、隣接して区の「子ども初期救急診療所」が設置されているだけでなく、総合福祉センターなどの福祉ゾーンとなっています。都民の切実な願いをうけて、当面2010年まで存続が決まっているもとで、梅ヶ丘病院の施設と看護体制を活用して、小児科を併設すれば、子育て世代にスムーズな診療体制を提供できるにちがいありません。
Q8 都立梅ヶ丘病院に小児科を設置し、隣接している区の「子ども初期救急診療所」と一体に、休日・全夜間の小児救急医療を実施することを提案するものです。都がやる気になれば直ちにできることです。見解を求めます。
小児初期救急運営費補助事業は、06年度までに都内全域で実施することが目標とされており、世田谷区では、梅ヶ丘病院に隣接している「子ども初期救急診療所」が同事業の補助をうけています。しかし、面積が広く、人口も多い世田谷区に1か所では、とうてい足りません。
Q9 現在の1自治体1か所という枠を緩和し、区内で2か所目、3か所目についても補助がうけられるようにしていただきたい。答弁を求めます。
Q10 小児科医の不足は深刻な問題となっています。都内の大学医学部、医療機関など関係者による小児科医の育成・確保対策の検討会を都として立ち上げ、緊急対策と中長期的対策を早急に確立する必要があると思いますが、答弁を求めます。
Q11 都立病院、公社病院における小児科の臨床研修医の受け入れ促進と、研修後の都内での定着支援、開業医の小児医療研修および離職女性小児科医の再就職支援(小児科ドクター・バンク)事業の拡充、さらに小児科医を希望する学生にたいする小児科医育成奨学金の創設などの具体策に、ただちにとりくんでいただきたい。見解を伺います。
最後に、梅ヶ丘病院、および八王子、清瀬小児病院の存続をつよく求めて、質問を終わります。
以 上