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本会議 討論 二〇〇五年一二月一五日

河野ゆりえ(日本共産党・江戸川区選出)

学校経営支援センターは、行政による教育への不当な支配を禁じた教育基本法第十条の精神に反する

指定管理者制度は、都民サービスの後退・負担増大、民間企業の収益事業が優先されるものには反対

 私は、日本共産党を代表して、第百九十七号議案「東京都学校経営支援センター設置条例」ほか、四十四議案に反対する立場から討論をおこないます。
 第百九十七号議案は、都立学校にたいする支援と称して、都内六か所の支援センター、および支所を設置するというものですが、質疑を通じて、学校経営支援は名ばかりで、石原都政が教育に干渉することを合理化するものであることが明らかになりました。また、学校支援センターは、戦前の管理・統制教育が軍国主義と戦争に加担した痛苦の反省から、行政による教育への不当な支配を禁じた、教育基本法第十条の精神をふみにじるものであり、反対するものです。
 学校支援センターの狙いと目的が、学校現場への乱暴な介入であることは、都教委が、七生養護学校において、教員と保護者が力をあわせておこなっていた、心とからだの授業、性教育に対して不適切だというレッテルをはり、教材の廃棄、授業の点検、教員の処分などをおこなったことを支援だと言っていること、さらにこの問題が学校経営支援センター構想の動機になったことを認めていること、くわえて、本定例会で教育長が、卒業式、入学式における日の丸・君が代「適正実施」をさらに徹底することが学校経営支援センターの役割であると答弁したことでも明らかです。
 実際に、学校経営支援センターは、教員系と行政系の職員数人でチームをつくり、卒業式、入学式の君が代斉唱で、どの先生が立ったか、立たないか、きめ細かく点検するほか、毎月、担当地域のすべての学校を訪問して、人材情報を収集するとしています。指導主事でもない人が、授業に立ち会うことができ、授業の中身にまで口を出せます。この人たちが、人事考課や人事異動の権限までにぎるというのですから驚きです。
都教委がおこなうべきは、教育条件の整備であり、教職員、保護者、生徒、地域が力をわせてよりよい学校づくりをすすめることであることを、指摘しておきます。
 今議会で教育長は、卒業式等の日の丸・君が代適正実施にあたり、学級の生徒の多くが起立しない事態が起きたばあいは、生徒を適正に指導する旨の通達をだすとの答弁をおこないました。担任教師は、これまでの厳重注意にとどまらず、懲戒処分の対象となります。これは憲法が禁止している生徒の内心の自由をふみにじるものであり、絶対にゆるされません。

 都立施設の指定管理者を選定する議案は、「官から民へ」の規制緩和の具体化として提案されているものであり、わが党は一つ一つの議案について、公の施設としての役割と責任がはたせるのか、どうかを検討し、都民へのサービス後退や都民負担の増大を招くもの、民間の企業の収益事業が優先されているものなどについて、反対するものです。
 民間のフィットネスクラブが参入することとなった東京都体育館の水泳教室の場合、あらたに月額固定料金制度が導入されることで、これまで一万円で十回の講習が受けられていたものが、三倍の三万三千四百円も払わなければ利用できなくなります。
 また、有明テニスの森では、オープンカフェを設置することが提案されており、企業収益のために公園の緑が犠牲になりかねません。また、コスト削減が最優先されることで、賃金が半分にされるケースやサービスに影響するコストの縮減なども提案されています。
 わが党は、試験研究機関や不採算部門などの施設については、直営を基本とすべきであり、指定管理者制度を適用する場合でも、公共的性格をもった団体を優先すること、まちがっても市場原理が優先されたり、儲け本位の企業などにゆだねることなどがあってはならないと考えるものです。
 また、都が審議の前提となる事業計画書などの重要資料の委員会への提出をおこなわず、簡単な説明資料での形式的な審議で済ませようとしたことは重大です。わが党は独自に資料提出をつよく求め、事業計画書を提出させましたが、各局がそれに応じたのは審議の前日でした。これは議会審議を軽視するものであり、このようなことは許されないことを指摘しておくものです。

 耐震設計偽装問題は、財界がもとめる「官から民へ」の規制緩和の流れのなかで発生したものであり、建築確認事務を民間企業に開放する法改正を強行した国とこれに賛成した自民党、公明党、民主党の責任は重大です。同時に、国に責任を押しつけるだけで、被害者救済に消極的な姿勢をとりつづけている石原知事も都民の批判はまぬがれません。
 わが党は、建築確認は公を基本とすること、被害者救済については国と都が積極的役割を果たすとともに、ヒューザーなど偽装にかかわった企業の責任及び金融機関や不動産、建築業界の協力と負担も含めて手だてをつくすことをつよく求めておくものです。

 今定例会でわが党は、生活保護世帯や就学援助が必要な小中学生、低賃金の若年層などが増え、貯蓄のない世帯が二十四%に及ぶなど貧困と格差が広がっている厳しい社会実態を示し、都民のくらしを最優先する自治体本来の責務を果たすことを求めました。これに対し、石原知事は都民のくらしと痛みに目を向けようとしない、冷淡な姿勢に終始しました。

 また、石原都政が財政が厳しいと言いながら、実は、六年間の都税収入が、財政再建推進プランの見込みより二兆円も増収となっていることが、わが党の指摘で明らかになりました。にもかかわらず、この間に福祉費の割合は八・四%から七・九%に後退させられています。これは、首都圏の各県と比べてもあまりに異常な都政運営であり、あらためて福祉とくらしを優先する自治体本来の財政運営にたち戻ることを求めておくものです。
 今定例会では、第二次財政再建推進プランにもとづく認可保育園や学童クラブへの都加算補助の廃止が打ち出されました。これに対して、三多摩地区保育連合会をはじめとする保育四団体が今月五日に、連名で東京都市長会宛に「現行どおりの補助金として維持していただけるよう東京都に要望して下さい」との要望書を提出しています。
 知事がこの当事者の声を重く受け止め、子育て支援と保育を充実するうえで欠かせない都加算補助を堅持することを求めておくものです。

 都民福祉をおおきく後退させる一方で、首都高速道路や羽田空港国際化などそれぞれ一千億円規模の財政投入に加え、オリンピック招致をテコにあらたな大規模開発などをすすめようとしていることも重大です。都市のあり方については、国が人口減少社会を迎え成熟社会にふさわしく、「新規投資から既存ストック活用に重点をシフトする」としていることに注目することが必要です。東京都も二〇五〇年には人口が二割減少する見込みであり、都市のあり方を人口減少時代にふさわしいものに見直すこと、「都市再生」に惜しみなく予算をつぎ込む都政のあり方は見直すことが求めれていることを指摘しておくものです。
 都は来年度予算の編成作業をすすめていますが、そのなかで財政再建推進プランの最終年度に当たるとして聖域なしの施策の見直しを求めています。しかし、都税収入は来年度も増収が見込まれており、都民要望に応える財源は十分にあります。石原知事が、あらたな「行革指針」にもとづく、都民施策のきりすてを行なうのではなく、自治体本来の立場に立ち戻り、浪費的投資を抑えるとともに都税増収分を都民のくらしや福祉、教育や医療に重点的に配分する立場で予算編成をおこなうことをつよく求め、討論を終わります。

以上