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2005年第4回定例会 文書質問趣意書
かち佳代子(大田区選出)
一、障害者自立支援法への対応について
10月に成立した障害者自立支援法は、これまで応益負担だった障害者福祉サービスの利用者負担を応能負担の原則にかえ、利用者に定率の1割負担をおしつけるもので、これまでの障害者福祉の根本をこわすものです。
そもそも障害者が利用する福祉サービスは、生きていくうえで不可欠なものであり、社会参加や自立という障害者が人間らしく暮らしていくうえで、なくてはならないものです。それが定率負担となれば、障害者の生活とサービス利用そのものが困難に追い込まれ、障害が重い人ほど負担が重くなるという、福祉の理念に逆行する事態になります。
それだけに、来年4月からの定率負担の導入を前に、障害者と家族から「サービスが利用できなくなる」「人間らしい生活が奪われる」「障害者の生存権を奪うもの」など、怒りと不安の声があがっています。また、各種施策や施設運営をめぐっても、自立支援法のもとで運営の継続が可能なのか、これまでのサービス水準が維持できるのか、都独自の施策や加算が継続されるのかなどの不安も、関係者のあいだに高まっています。
東京都ではこれまで、障害者団体をはじめとした都民の長年にわたる運動によって、ホームヘルプサービスなどの自己負担の軽減や、精神障害者の通院医療費については、低所得者には自己負担分を支援し無料とするなど、国の障害者施策の不十分さを補う独自のとりくみが行われてきました。
Q1 いま、自立支援法による定率負担の導入という重大な事態のもとで、都が住民の福祉の増進をはかるという自治体本来の役割を発揮し、障害者と家族の新たな負担増を軽減し、サービス利用の低下をまねかないことや、これまでの施設運営や施策の水準がが維持・拡充されるよう、全力をつくす必要があると考えますが、都としての基本姿勢を伺います。
1、ホームヘルプサービス負担について
障害者が地域のなかで自立した生活をつづけていくうえでホームヘルプサービスは欠かせない役割をもっており、1万1千人の障害者が利用しています。都は、3年前の支援費制度の導入にあたって、新たな利用者負担がうまれないよう、独自の負担区分を設定し、利用者の94%が無料でホームヘルプサービスを継続できるように努力してきました。
しかし自立支援法では、低所得者への上限額の設定はあるものの、生活保護世帯をのぞけば無料は廃止され、1万人近い利用者に新たな自己負担がうまれます。
ホームヘルプサービスは、障害者の日常生活を支える基礎的なサービスであり、継続できなければ、たちどころに人間らしい生活をつづけることは困難となります。それだけに、負担の軽減は切実に求められています。
Q2 これまでどおり、ホームヘルプサービスが新たな負担なしに利用できるよう、都として独自の負担軽減措置をとる必要があると考えますが、答弁を求めます。
2、精神障害者の通院医療費負担について
精神障害者の通院医療費も、自立支援法によって5%負担から10%負担にかわります。都は5%負担についても、住民税非課税者にたいしては無料にしてきました。一定の低所得者の限度額の設定や、社会福祉法人減免があっても、多くの通院者に新たな自己負担が生じます。精神障害者の多くは定期的な通院と投薬が不可欠です。新たな負担によって通院が継続されなくなれば症状の悪化、ひいては入院という、逆行する事態をひきおこします。
Q3 精神障害者の通院医療費は、これまでどおり、少なくとも住民税非課税者にたいしては無料となるよう都としての負担軽減策をとるべきです。
Q4 通院医療費無料化の対象を、現在の「非課税者」から「非課税世帯」とすることが検討されていますが、その結果、負担増となる対象者は何人ですか。また、どれぐらいの負担増となるのか、明らかにしていただきたい。
Q5 都はこれまで、20歳以上の障害者にたいしては、障害者本人の所得に着目し、負担額を設定してきました。これは障害者の自立と人権を尊重した判断によるものです。世帯ではなく、本人所得でみるべきです。お答えください。
3、補装具への新たな負担について
これまでは車いすや義足・義手などの補装具は、多くの障害者が自己負担なしで利用することができました。しかし、自立支援法によって補装具も応益負担の原則によって、来年10月からは原則1割負担が求められます。
しかし、身体障害者にとって、補装具は生きていくうえで欠かせないものであり、一人ひとりの利用者の身体にあわせて作成しなければならず、高額とならざるをえません。とりわけ電動車いすの場合、重い負担になります。しかも、車いすや義足・義手などの補装具は、身体の成長や変化に応じてつくり直さなければならず、そのたびごとに1割負担となれば、負担ができず、適切な補装具が使えなくなる事態もおきかねません。
Q6 これまでどおり、多くの障害者が補装具を自己負担なしで利用できるよう、国に働きかけるとともに、都として独自の軽減措置を検討すべきです。
4、都独自施策の継続
都は、施設運営にあたって人的配置を独自に加算し利用者サービスの向上をはかるためのサービス推進費や、都独自の短期入所事業や重度脳性麻痺者介護事業をはじめ、国の不十分さを補うための施策をすすめてきました。それだけに、自立支援法の成立後も、都の独自施策が継続されるのかどうかに、関係者から不安の声が寄せられています。
Q7、自立支援法のもとでも、これまでの福祉水準が確保、継続されるよう努力することが求められています。法施行後も、都独自の施策や加算は継続されるべきです。
Q8、民間社会福祉施設にたいするサービス推進費についても継続されるべきと考えますが、答弁を求めます。
5、各種施設運営の継続
自立支援法のもとでも、これまでの各種の障害者施設やサービスの提供が継続できるのかどうか、関係者から不安の声が寄せられています。また、小規模作業所など法対象外の施設運営が安心して継続できることも強く要望されています。
とりわけ東京の小規模作業所は、法内の通所授産施設整備の遅れを背景に、当事者の努力で設置がすすめられ、法内施設を含めた通所施設全体の約7割を占めるにいたっています。しかも、仕事確保の困難さをはじめ、きびしい条件のもとで、さまざまな努力をおこない運営が継続されています。それだけに、自立支援法のもとでも、都としての支援の継続、また法内施設移行への支援も重要となっています。
Q9、自立支援法に適応した施設への移行に5年の経過期間が設定されていますが、これまでの各種施設の運営継続が困難にならないよう、都としての支援が求められていますが、見解を伺います。
Q10、小規模作業所が事業を継続するとともに、法内施設へ移行できるよう必要な支援策をとるべきです。お答えください。
6、施設整備の促進
都がすすめてきた「障害者地域生活支援3カ年プラン」にもとづく施設整備は、今年度で終了となります。しかし、グループホームや入所更生施設など、目標を達成できなかった分野もあり、全体として、要望にこたえる水準ではありません。
9月にまとめられた障害者施策推進協議会の「中間まとめ」では、グループホームなどのいっそうの整備促進、精神障害者の地域での受け皿の整備など、身体、知的、精神の3障害を一体とした整備の必要性を強調しています。
Q11 障害者施策推進協議会の「中間まとめ」をうけとめ、身体、知的、精神障害者施設整備の新たな年次計画をつくり、整備促進をはかるべきです。答弁を求めます。
7、区分判定とケアマネージメントについて
自立支援法によって、新たに障害程度区分の認定と支給決定、さらに相談支援事業者による計画の作成と利用のあっせん調整、契約の援助が行われることになります。
Q12 認定にあたっては、障害の状態が適切に反映されるよう、行政がその責任をはたすとともに、審査会に当事者の参加が保障するなどの努力が求められていると考えますが、いかがですか。
Q13 障害種別など個別の状況に対応したケアマネージメントがおこなわれるよう、研修や養成をすすめることを提案するものですが、見解を伺います。
回答
回答1
障害者自立支援法は、平成15年度から導入された支援費制度の「自己決定と自己選択」及び「利用者本位」の理念を継承しつつ、障害福祉サービスの一元化、施設・事業体系の再編、利用者負担の見直し、地域生活支援事業の創設など新たな障害保健福祉体系を構築し、障害者の地域における自立した生活を支援する体制をより強固なものとすることを目指しています。
法の理念は、これまで都が進めてきた利用者本位の新しい福祉を目指す福祉改革の考え方や取組と合致します。
都としては、利用者が安心して新たな制度を利用できるよう、平成18年4月の法施行に向けて、区市町村と一体となって移行準備を進めています。
回答2
障害者自立支援法では、負担の公平化と制度の安定的運営を図る観点から、1割の定率負担を原則としています。
その上で、月額負担上限額の設定や、社会福祉法人が行うサービス提供についての減免措置の実施など、低所得者に対する配慮がなされています。
これに加え、都としては、ホームヘルプサービスが障害者の自立生活を支える最も基幹的なサービスであることから、平成17年第四回定例会における議論などを踏まえた上で、社会福祉法人が行う負担減免制度の独自拡大措置を平成18年度東京都予算(原案)に盛り込んでいます。
回答3
障害者自立支援法において精神障害者に対する通院医療費公費負担は、自立支援医療として位置付けられ、必要な医療を確保しつつ、制度運営の安定性を図るため、1割の定率負担を原則としています。
その上で、月額負担上限額の設定など、低所得者等に対する配慮がなされています。
これに加え、都としては、自立支援医療が精神障害者の地域での安定した生活に果たす役割の重要性を考慮し、平成17年第四回定例会における議論などを踏まえた上で、住民税非課税世帯に対する独自の負担軽減策を平成18年度東京都予算(原案)に盛り込んでいます。
回答4
精神障害者に対する都独自の医療費助成対象者を区市町村民税の非課税者から非課税世帯とした場合の影響人数や影響額については、現時点で、世帯単位の医療保険の加入状況や所得状況等を把握していないため、算定は困難です。
回答5
障害者自立支援法の自立支援医療は、各種医療保険制度による保険給付と、公費により医療費の9割を負担するものです。
医療保険制度は、世帯を単位として制度が構築されており、これを基礎としている自立支援医療も世帯単位で制度構築されることは、合理性があると考えています。
また、都が独自に行う予定の負担軽減策についても、国の制度を前提として実施することから、世帯を単位とすることは妥当であると考えています。
回答6
障害者自立支援法では、負担の公平化と制度の安定的運営を図る観点から、1割の定率負担を原則としています。
その上で、補装具についても、低所得者に配慮した月額負担上限額を設定することとしているため、都として、独自の軽減措置を行うことは考えていません。
回答7
障害者自立支援法の目指す理念は、これまで都が進めてきた利用者本位の新しい福祉を目指す福祉改革の考え方や取組と合致するものです。
このため、都はこれまでも様々な機会を通じて、同法に基づく新たな制度が、真に障害者の自立を支援するものとなるよう、国に対して提案してきました。
平成17年第四回定例会における議論なども踏まえた上で、今度とも制度実施に向けた国の動向を見極めながら、対応を検討していきます。
回答8
民間社会福祉施設に対するサービス推進費については、平成16年度から、これまでの画一的な仕組みを改め、サービス向上に向けた努力が真に報われる制度に再構築しました。今後、障害者自立支援法に基づく制度の実施に向けた国の動向を見極めながら、適切に対処していきます。
回答9
障害者自立支援法では、現行の障害種別ごとの体系を、障害者の状態やニーズに応じた適切な支援が効率的に行われるよう、新たな事業体系に再編することとしています。
今後、国から示される運営基準等を踏まえ、地域のニーズに応じて、各種施設が新体系へ円滑に移行するよう、都としても適切に対処していきます。
回答10
都は、多くの障害者が利用する法定外の小規模作業所等を訓練等給付や地域生活支援事業など、新サービス体系に可能な限り移行させ、法内施設として位置付けるとともに、必要な財源支援を行うべきであると国に対して提案しています。
都としても、良質なサービスを提供する小規模作業所が法内施設へスムーズに移行することは重要と考え、平成17年第四回定例会における議論なども踏まえた上で、法内施設へ移行するための支援策を平成18年度東京都予算(原案)に盛り込んでいます。
回答11
東京都障害者施策推進協議会の中間のまとめでは、精神障害者の福祉サービスも含め、区市町村が主体的に取り組むサービス基盤の計画的整備を積極的に支援していくことが必要とされています。
都としては、同提言も踏まえた上で、既に平成17年12月に策定した「重要施策及び平成18年度重点事業」において、「障害者の地域生活を支える基盤づくり」を盛り込んでいます。
回答12
障害程度区分の認定調査は、区市町村職員が行うほか、区市町村は中立かつ公正な立場で調査を行える指定相談支援事業者等に委託することができるとされています。
また、区市町村審査会委員の任命について、国は、「障害保健福祉の学識経験を有する者であって、中立かつ公正な立場で審査が行えるものであれば、障害者の実情に通じた者や障害者を委員に加えることが望ましい」との見解を示しています。
都は、制度の適正な運用が行われるよう、区市町村に対して助言等を行っていきます。
回答13
障害者自立支援法においては、様々な種類のサービスが適切に組み合わされ、計画的に利用されるための仕組みとして障害者ケアマネジメントが制度化されました。
都は、こうした障害者ケアマネジメントの普及とケアマネジメント従事者の人材養成のため、これまでも障害者ケアマネジメント従事者研修を実施してきており、今後ともその充実を図っていきます。
以 上