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2005年第4回定例会 文書質問趣意書
古館和憲(板橋区選出)
一、都立豊島病院と老人医療センターをそれぞれ都立直営で存続を
都と板橋区との間で三年にわたって、都立豊島病院を「板橋区に移管する」協議がなされてきました。結果は、都側との間での協議が整わず決裂してしまいましたが、その最大の要因は、都立豊島病院の移管にともなって、板橋区として負担可能な額が3億円。それに対して、都は約13億9000万円の負担を求めるとともに、建設費の残り3百億円の償還費についても区に負担を求めてきたことにありました。
どのようにして「都民から信頼される医療機関」として、豊島病院を移管するかなどの問題で、協議が整わなかったのではなく、都が「採算性」を優先させてきた結果だということができます。
しかも、板橋区と区議会は、これに先立って、都老人医療センターと都立豊島病院の統合民営化については、2001年(平成13年)11月、都に対して「@板橋区、板橋区議会、区民、医療関係者と事前に十分協議してほしい。Aこれまでの医療レベルを低下させないこと。B地域医療連携を後退させないこと」とする要望書を提出し、さらに、03年6月には「都立老人医療センターの存続」を、そして板橋区議会も「老人医療センターの存続」を都議会議長に要請するなど、都が打ち出した「統合民営化」に対して、率直にその根本的な見直しを求める意見表明をしていました。
先に紹介した、板橋区長と板橋区議会が都知事に要望した事項――すなわち、「板橋区、板橋区議会、区民、医療関係者と(事前に)十分協議すること。これまでの医療レベルを低下させないこと。地域医療連携を後退させないこと」、――これが都民、とりわけ板橋区民の総体の声です。
Q1、これらの要望は、これからいよいよ重要な課題として、その誠実な対応が求められていると考えるが、どうか。
豊島病院の区移管について、板橋区が「区民に役に立つ医療機関にするにはどうしたらいいか」という立場で真剣に考え、検討してきたことを、ある幹部職員が語ってくれました。この方は、区への移管問題の過程で「区内医療関係者、医師会、豊島病院などと太いパイプができた」こと。そして、今後に生きることとして、「昨年10月1日から2次医療圏の地域リハビリテーション支援センター」として豊島病院が指定されたことをあげ、豊島病院がさらに区民や地域から信頼されていく病院になるためには、「医療と福祉が連携できる」システムを構築すること。また、退院した後の「在宅との連携」ができる医療機関にしようーーなどとの構想ももっていたとの話でした。こうした点では、区医師会も強い関心を示していたことが、私どもと板橋区医師会役員との先日の懇談のなかでも明らかになりました。
Q2、地域リハビリテーション支援センターに指定された豊島病院が『福祉と医療の連携』を推進していくためにも、板橋区や医師会などとも相談して、より実効性あるものに充実していただきたいがどうか。
Q3、また新型インフルエンザの大流行がいわれているなかで、豊島病院が感染症指定医療機関としての位置づけを継続することを求めますがどうか。
豊島病院の今後を考えたとき、豊島病院が建て替えられたときから、6階のフロアーが未利用になっていることは、問題だと指摘しつづけてきました。はじめからハンディをつけられてのスタートは、都立としての医療の果たす役割を十全に活用しないなど論外です。
こうしたなかでの「統合民営化」などは、行政としての無責任さを示すものとして許せません。即刻改善すべきです。
Q4、この6階フロアーを開所すべきと考えますが見解をお聞かせください。
わが党は、本定例会で、深刻な看護師不足の打開を提案しましたが、豊島病院での看護師不足も例外ではありません。豊島病院の看護師の定数は299人ですが、この数年間をみると二ケタにのぼる看護師が退職し、16年度は22人が退職しました。さらに産休や病気による休職などであわせると42人が勤務につくことができない状況になっています。退職された方の理由は、「結婚」「サービス残業が多すぎる」「休みがとれない」「課題や役割が多すぎる」などであり、一刻の放置も許されない状況となっています。
Q5、年度当初からの看護師の過員配置などを実行することを求めます。
Q6、また、看護師確保の観点からも豊島病院の隣地にある豊島高等看護学校の再開を強く求めます。
豊島病院での医師の配置も急ぎ改善がもとめられている重要かつ緊急課題です。99年の改築された初年度は、医師、看護師など病院スタッフがほぼ定数どおりの配置でスタートしました。ところが、翌年には腎臓内科医師が欠員になり、その後補充されていないため、透析患者は、他の病院で診てもらうことに。重点医療の一つであった糖尿病も医師がそろわず糖尿病治療が後退するなど、この他にも専門医の確保についても課題を多くかかえるなど、早急な改善が求められています。
Q7、病院経営本部として、医師、看護師の定数配置について、重点としてその改善方策を確立し、万全を期すことを求めるがどうか。
豊島病院との統合民営化の対象とされた都老人医療センターは、研究機関やナーシングホームなど、日本の高齢者の福祉と医療が一体となった総合的なセンターとして日本でのさきがけとなってきました。この都老人医療センターが、愛知県大府にある『国立長寿医療センター』開設に多大な貢献をしたことは、すでに私の質問で明らかにしました。問題は、都老人医療センターが研究機関と福祉部門を兼ねたナーシングホームとの三位一体がばらばらにされ、本来の機能が果たされていないことです。東の都老人医療センターを核とした養育院、そして西の国立長寿医療センターが、存在意義をいかんなく発揮することこそ、21世紀における『公』としての責任ではないか。
Q8、したがって、都老人医療センターは、従前の三位一体の高齢者専門の総合センターとして拡充することを求めます。
豊島病院と老人医療センターは、もともと役割と機能もまったく違うもので、「統合民営化」計画自体が無謀なものです。
Q9、都立豊島病院と都老人医療センターとの統合民営化計画は、都として計画そのものを断念したものであり、その復活はありえないものです。都立豊島病院と都立老人医療センターについてはそれぞれ都立直営で存続させることを求めます。
回答
回答1
板橋区長からは平成17年11月14日付けで、東京都知事あてに、「豊島病院と老人医療センターのあり方の検討に関する要望書」を新たに受けていますが、今後の両病院のあり方については、こうした地域の要望にも配慮しながら、検討していきます。
回答2
豊島病院では、平成16年度に地域リハビリテーション支援センターに指定されて以来、アンケート調査の実施、講演会の開催、区との共催による事例検討会の開催など様々な活動を行っています。
回答3
豊島病院が担っている感染症医療については、今後、豊島病院のあり方を検討していく中で、都における感染症医療体制の確保の観点から、関係局間で十分検討していきます。
回答4
未開設の6階病棟の利用については、今後、豊島病院のあり方を見極めた上で検討していきます。
回答5
都立病院では、年度当初に、退職者数も勘案して過員を配置しており、豊島病院においても同様です。
回答6
少子化が進行する中で、質の高い看護職員を確保していくためには、養成対策に加え、定着対策や再就業対策などを総合的に実施していく必要があります。
都立看護専門学校については、こうした状況を踏まえ、養成規模の適正化及び教育内容の充実を図る再編整備計画を策定しています。
この中で、都立板橋看護専門学校に地理的に近接している豊島看護専門学校を廃止しました。
今後とも、この再編整備計画を着実に実施していきます。
回答7
都立病院の医師、看護師の定数については、提供すべき医療に応じて必要な人員を配置しており、豊島病院についても同様です。
回答8
老人医療センターは、高齢者の高度専門医療を行うモデル病院として、地域の医療機関や福祉施設との積極的な機能連携を図りながら、高齢者の生活の質の向上を図る医療を提供してきました。
今後、老人医療センターが果たしている役割や医療ニーズなどを踏まえ、そのあり方について検討を進めていきます。
回答9
豊島病院と老人医療センターについては、「都立病院改革マスタープラン」に基づき、統合民営化を検討してきましたが、板橋区からの要望もあり、豊島病院の板橋区移管に関してこれまで協議を行ってきました。
今回、豊島病院の板橋区移管を断念したことにより、豊島病院と老人医療センターの今後のあり方については、関係局間で協議を行い、結論を出していきます。
以上