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本会議 中途議決・討論   二〇〇六年三月八日

古館和憲(板橋区選出)

 日本共産党都議会議員団を代表して、第一三五号議案「平成一七年度東京都一般会計補正予算」ほか五議案に反対する立場から討論を行ないます。
 今年度補正予算案は、都税収入が、当初予算の見込額より三千百五十億円も上まわったことを受けて、提案されているものであり、この税収増を貧困の増大と社会的格差の拡大などに苦しむ都民のために使うことが何より、求められているものです。
 わが党は、この立場から、知事が補正予算案を提案した新年早々の一月十三日に、申し入れをおこない、都税増収分を、原油高騰に苦しむ都民の生活と営業の支援、介護をはじめとする高齢者福祉や公的保育などの少子化対策などの拡充、教育のための条件整備、若者の雇用対策、商工業支援など、緊急に手当てすべき事業にふり向けることなど、「都民のくらし、福祉中心」の補正予算を組むことをもとめました。
 しかし、議会に提出された予算案は、増収分の大半が社会資本整備基金や財政調整基金などの積立などにまわされ、事業費ベースでは二百七十九億円しか予算が確保されていません。しかも、そのうちの二百六十四億円が首都高速道路への支出金や環状二号線地区市街地再開発のための大型開発のために投入され、都民施策と言えるものはわずか十五億円、補正予算の〇・五%にすぎません。その内容も、国の予算化に連動して義務的に対応した私立学校施設のアスベスト対策やマンション構造設計偽装対策などで、切実な都民要望となっている高齢者介護や医療、少子化対策、教育、中小企業対策などの独自の施策は見あたらないのです。
 これは、東京都にくらべ、はるかに財政力が弱く、三位一体改革による歳入減に苦しんでいる他の県が、国の交付金事業はもちろんのこと、県独自に「原油価格高騰に対する対応」「緊急雇用対策」や「野菜の安定供給対策」「交通安全施設の整備費」など生活を守るための予算や、福祉の拡充などにとりくんでいるのとは対照的です。
 私は、首都高速道路など大型開発のための予算や基金に積み立てる一部を活用することで、数百億円の財源を確保することができ、わが党が提案している施策をはじめ、さまざまな都民要望にこたえることは十分可能であることを指摘しておくものです。
 補正予算を通じて、あらためて問われていることは、都政が、「住民の福祉の増進」という自治体の精神をとりもどし、都民のくらし福祉優先の立場に立ちかえって予算編成をおこなうかどうかということです。この七年間、石原知事は都財政は厳しいといって、「聖域なし」の都民施策の見直しを強行するとともに、切りすてでうかした財源を、もっぱら超高層ビルと大型幹線道路中心の「都市再生」につぎ込んできました。このため、福祉と開発の予算が逆転し、二〇〇〇年度には土木関係費より福祉関係費の方が多かったのに、二〇〇四年度では逆転して、土木関係費の方が百二十六億円多くなってしまうという、まさに予算の使い方の逆転現象がおきてしまったのです。
 では、この間、東京都の財政は本当に厳しかったのでしょうか。そんなことはありません。石原知事のもとでの、この七年間の実際の都税収入は、大きく伸び、二次にわたる財政再建推進プランの見込み額より約三兆円も上まわっているのであります。都民に「財政が厳しい」「赤字団体に転落する」などといって、老人福祉手当や老人医療費助成などの都民施策の「聖域なし」の見直しをもとめ、「痛み」を押しつけてきた「財政再建推進プラン」の論拠が成り立たないものであることは、明白ではありませんか。
 いかに財源に余裕があろうが、都民のためには徹底して使わないという、知事の姿勢に、つよい怒りを覚えずにはいられません。ないのであります。
 臨海地域開発事業会計の補正予算案は、産業労働局が所管していた「タイム二十四」と「ファッションタウン」の二つの三セクビルの破たん処理にともなうものです。予算案は、民事再生計画にもとづく処理によって、都が三セク救済のためにおこなった土地賃貸料の未回収分三十五億円を債権放棄する内容となっています。巨額の債務超過となっていたこれらの三セクビルを処理することは当然ですが、問題は、民事再生法を採用することで、出資者であり、経営者でもあり、融資によって二百六十億円も利益をあげてきた銀行の責任を免罪し、その債権を保全をする道を開いたことです。
 そもそもこれらの三セクビルは都民の財産であり、破たん処理は、これらの銀行に債権放棄させ、ビルを都民の財産として保持することを第一にしなければなりません。よって、銀行の責任を免責し、不要な都民の税金投入をおこなう補正予算案に反対するものです。
 同様に、巨額の債務超過状態となっているテレコムセンターなどの港湾局所管のビル三セクについても、ただちに破たん処理に踏みだすこと、その際、銀行の責任を明らかにして、債権放棄を求めるなど、都民の財産を保全する立場であたること、臨海副都心開発本体についても、オフィス開発の破たんを認め、開発の基本から抜本的に見直すとともに、都心とのアクセス道路などへの財政投入をあらためることを求めておくものです。
 最後に、小泉政権の庶民大増税や社会保障の連続改悪が、都民にあらたな負担と苦しみをもたらしている時に、都政が、「住民の福祉の増進」という自治体の姿勢をとりもどし、都民のくらしと福祉を守るために全力をつくすべきことを求めて、討論をおわります。

以上