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本会議 オリンピック招致決議 討論 二〇〇六年三月八日

松村友昭(練馬区選出)

 東京オリンピック招致決議に反対する立場から討論をおこないます。
 わが党のオリンピックに関する基本的立場を表明しておきます。
 わが党は、世界の人々がスポーツを通じて交流する、「平和の祭典」としてのオリンピックそのものに反対するものではありません。しかし、オリンピックが巨大開発の口実とされたり、環境破壊につながるような計画とセットとされるのであれば、招致には賛成できません。
 この間の知事の一連の発言は、東京オリンピック招致が大型開発のテコとされ、都民と都財政に深刻な影響を及ぼす危険を明白に示しています。
 今定例会の施政方針演説では、オリンピックに向けたインフラ整備について、「幹線道路ネットワークなどの広域的な交通基盤の集中的整備」、「羽田空港の再拡張・国際化、横田基地の軍民共用化による空のアクセスの拡充」をすすめることを表明しました。くわえて、本会議質問に答えて、「首都圏三環状道路や都内の骨格幹線道路」などを「十年後のオリンピックをめざして集中的に整備をすすめる」と、さらに踏みこんだ答弁をおこないました。
 知事が例示した首都圏三環状道路について言えば、圏央道では、都は毎年数百億円の直轄事業負担金を支出しており、都が直接、建設にあたる首都高速道路中央環状品川線は一千億円以上の都負担が予定されているものです。また、外郭環状道路の整備は、本体だけでも一兆三千億円の事業費が予定されています。その外環道は、先月、全国の高速道路の整備計画を決定した「国土開発幹線自動車道建設会議」の検討路線にのっていない路線であります。国ですら、検討路線にも乗せていない道路を、オリンピックに間に合わせると言って、前倒ししてまで建設すると言うことになれば、都がこれまで以上に、巨額の税金を投入することは避けられなくなります。
 さらに、知事はマスコミのインタビューに答えて、「道路工事などさまざまな分野でアクセルがかかる」、「羽田と築地市場跡地をターミナルにして地下道路を造る」と述べています。羽田と築地を結ぶ、ほぼ十キロの地下道路を建設するとなれば、一キロ一千億円かかった首都高速道路新宿線の経費で計算すると、それこそ一兆円規模の大工事になることが予想されます。
 大体、三十年後も七兆円規模の借金をかかえることが見込まれている東京都のどこにそんな余裕があるというのですか。都が昨年十一月に発表した「人口減少社会における都財政運営のあり方」は、「高度成長期に形成された社会資本ストックの維持・更新経費が大幅に増加する一方、人口の減少により、社会資本ストックを形成する能力は低下する」、「漫然と支出を続けていけば、財政の破たんは免れない」と警告しているではありませんか。
 知事は、オリンピック招致を表明した当初から、自らが氏子総代をつとめる明治神宮周辺の大再開発にも言及しており、電通が再開発プランをもって大手ゼネコンなどを訪問していることも報道されています。知事の考えるオリンピックは、巨大な開発と一体となったもので、都財政への影響の点でも、環境への負荷の点でも、コンパクトにほど遠いものと言わざるをえません。
 知事は、「世界一コンパクトな大会を提言している。これでご判断を」と述べましたが、本来、コンパクトというのであれば、開催施設だけでなく、道路などインフラ整備や再開発を含め、コンパクトで都民の負担がかるく、環境においても、負荷をもたらさないものでなければなりません。
 一千億円のオリンピック基金も、結局のところ、こうした大型開発のためのため込みに他ならないことは明らかです。都民には福祉を切りすて、犠牲を押しつけておきながら、オリンピックを口実に不要不急の大型事業には大盤振る舞いをすることは許されません。
 オリンピック開催という大事業の準備を、都民の意見も聞かず、秘密裏にすすめていることも重大です。
 この間、都が公にした資料は、「東京オリンピック基本構想懇談会」の報告と、「2016年東京オリンピック主要関係施設 検討候補地図」だけで、わが党が要求している「懇談会」の議事録や提出資料、都が「電通」に委託した調査、開催経費の試算など、オリンピック招致の是非を検討するうえで、不可欠の資料を公にすることを拒みつづけています。まったく、道理のない不誠実きわまりない姿勢と言わざるを得ません。
 私は、昨年、いち早く市議会がオリンピック招致を決議した札幌市を訪ねて、オリンピック招致について調査してきましたが、札幌市は、札幌で開催する場合の経費を試算し、開催経費が一兆八三二八億円、うち札幌市の負担が二千五百五十億円もかかることを、市報で全市民に知らせています。その上で、市民アンケートをおこない、賛否がともに、三分の一という結果をうけて、市の財政状況も勘案し、市長が開催見送りを表明したのです。
 また、福岡市でも、開催概要計画を公表し、市民からの意見を求めており、秘密主義をつらぬく東京都とは大違いです。オリンピック招致にかかわるすべての資料を公にすることをつよく求めるものです。
 知事、オリンピックは、「平和の祭典」と呼ばれているように、オリンピック憲章の平和の基本理念の実現や国際交流に貢献できるものでなければなりません。とりわけ東アジアの平和と連帯に貢献することは欠かせません。しかし、知事はこれまで、オリンピック憲章やオリンピックの根本精神である「平和」について、一言も言及しようとしないことも重大です。私たちは、オリンピック招致をめぐるさまざまな問題について、都民のみなさんとともに厳しくチェックしていくことを申し述べて、討論を終わります。

以上