予算特別委員会 討論 二〇〇六年三月二八日

大山とも子(新宿区選出)

大幅税収増の活用と不要不急の事業の見直しで、都民施策の拡充を

 私は、日本共産党を代表して、第1号議案、「平成18年度東京都一般会計予算」ほか11議案に反対、日本共産党提案の予算組み替え動議に賛成の立場から討論をおこないます。
 はじめに知事提案の一般会計予算案についてです。
 小泉内閣の雇用と所得の破壊、庶民大増税と社会保障の連続的改悪がすすめられているもとで、とりわけ東京において、貧困と社会的格差の広がりと都民生活の困窮が顕著になっています。こんな時だからこそ、地方自治体としての東京都には都民のくらしと福祉、安全をまもることに全力をあげることがますます求められています。来年度の都税収入は2500億円の増収、今年度最終補正予算とあわせれば5700億円もの増収が見込まれます。これらを都民のために使うこと、不要不急の事業を見直し、都民施策の拡充を図ることが求められていますが、知事の提出した予算案は都民の願いにこたえるものにはなっていません。

 第1に、深刻な貧困と格差の解消、庶民大増税などから都民生活を守る問題です。
 私たちは、他県に比べても東京で顕著になっている貧富の格差の拡大について、就学援助の受給率、国保収納率、国民年金納付率、ジニ係数などの指標をもとに具体的に示し、知事が事実を直視し是正するため努力することを求めました。
 しかし、知事は社会的格差の存在は認めたものの、「どの社会でも格差はある、日本の格差は決して危機的なものではない」と言う答弁をくり返し、都民の中でますます格差が深刻になりつつあることにまともに目を向けようとしませんでした。
 とりわけ、若者の中で非正規雇用が増大し、賃金格差が拡大していることが日本社会の格差拡大のあらたな要因となっていることは、専門家でも、共通した指摘となっており、政府自身でさえも認めざるを得ない実態です。にもかかわらず、知事が「フリーターやニートは穀つぶし」だなどと、不安定なくらしや仕事に苦しんでいる若者への侮蔑的な発言をくりかえしたことは絶対に許せません。産業労働局長も若年者の格差は拡大しつつあることを認めたものの、都としての施策の拡充には背を向けました。かさねて、都が若者の雇用、生活の改善のために手だてをつくすことを求めておくものです。
 高齢者の分野は、今までも所得格差が大きいことが問題になっていましたが、その上、老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小、非課税限度額の廃止、来年度は住民税率のフラット化などの負担が雪ダルマ式におそいかかることを質疑を通じて明らかにしました。
 これに対して、福祉保健局長は、しぶしぶ高齢者世帯の所得格差を認めたものの、税制改定の影響は許容の範囲などとして、是正の解消に努めることを拒否したことは、「住民の福祉の増進」を責務とする自治体として許されない態度と言わざるをえません。

 第2に 知事が、来年度を「第2次財政再建推進プラン」の「最終年度」と位置づけ、福祉や教育、中小企業対策などの予算を後退させていることです。
 福祉の分野では、老人医療費助成の廃止に向けた削減、認可保育所・学童クラブへの都加算補助の廃止などがすすめられています。また、介護保険の改悪で、施設利用者の食事代などいわゆるホテルコストの負担増によって老人保健施設や療養型の介護施設から退所せざるを得なくなった実態を示して、対応を求めたのに対して、こうした事実を認めようとせず、実態調査さえも拒んだことは、行政としては不誠実な態度と言わなければなりません。
 こうした福祉の切りすてがすすめられた結果、来年度の福祉保健局予算が国制度による義務的増額を除けば、実質減額となりました。わが党のこの指摘に対して、福祉保健局長は、三位一体改革での予算への影響を加味すると福祉保健費は実質35億円の増額だと述べましたが、事実はわが党が指摘した通りであることは、総括質疑で明確になりました。
 すなわち、福祉保健局長が答弁した数字は、国制度にもとづく増減と言うことでは当然入れるべきものを入れていなかったり、国制度にもとづく増減とはまったく関係のないものまで入れたもので、公正性に欠け、恣意的なものと言わざるを得ないものです。厚生委員会に提出された当初予算概要にもとづいて計算すれば、差し引き25億円の実質減となることが、厳然たる事実なのです。
 また、「福祉と保健」の目的別予算の割合を多く見せるために、都が、一般歳出のなかに、当然、入れるべきオリンピック基金をわざわざはずすことまでしていることも異常です。
 石原都政都が福祉を後退させていることは、決算数字に明確に表れています。1999年度から2004年度までの決算で、福祉保健費は762億円の減、10.6%から10.0%に割合も後退していることを指摘しておきます。
 教育の分野では、全国で、東京を除く46道府県が少人数学級にふみだし、学習集団の上でも生活集団の上でも効果が明らかにされているにもかかわらず、30人学級をかたくなに拒んでいることは重大です。教員定数の削減によって、先生の多忙化がすすみ、教育現場にあまざまなゆがみが生まれようとしていることも明らかにしたところですが、ゆきとどいた教育のために予算を抜本的に拡充することをあらためて求めておくものです。
 中小企業対策予算は来年度も削減され、11年連続の後退、ピーク時の半分にまで後退させられています。このため、切実な要望である制度融資の利用が激減するなど、弊害が顕著になっていることを指摘しておくものです。

 第3に、「財政が厳しい」と言いながら、「都市再生」の名のもとに超高層ビルと大型幹線道路などの投資に、1兆円近い資金をつぎ込んでいることです。
 石原都政は、この7年間、圏央道や首都高速道路中央環状線をはじめとする大型道路や汐留、北新宿などの大規模再開発を促進してきました。この中には、東京都が本来、負担する必要のない1km1000億円もかかる首都高への貸付金、国直轄事業負担金などが含まれており、これだけで7年間で5400億円も投入されています。
 また、石原知事は、羽田空港再拡張、首都高中央環状品川線、新銀行など、1000億円を超える投資やため込みなど、以前の都政ではやられてこなかった巨額の、しかも、本来、都が負担する必要がない税金投入をすすめました。これらは都が本当に、「財政が厳しい」と言うならば、到底、つぎこむことなどできない性格の投資です。
 破たんがあきらかな臨海副都心開発への税金投入も都財政を圧迫しています。臨海副都心の土地処分はすすんでおらず、基盤整備のための6000億円にのぼる借金の返済の見通しはついていません。このまま放置すれば、そうばん、多摩ニュータウンなどの「隠れ借金」と同様に、一般財源による補填が避けられなくなることは明らかであり、計画の抜本的見直しと都財政投入をやめるようつよく求めておくものです。
 あわせて、本格的な少子高齢社会をむかえ、持続可能な都市づくりに転換すべきであることを指摘しておきます。

 第4に、「官から民へ」、「小さな政府」路線の問題です。
 石原都政がすすめている「官から民へ」、「小さな政府」路線にもとづく、都立施設の廃止や民間移譲、指定管理者制度の一斉導入などが、本来の自治体のあり方を変質させ、あらたな形で都民に痛みを押し付けるものであることも質疑を通じて明らかになりました。
 わが党は、そのひとつが、石原都政がすすめてきた、東京の公的保育の変質をもたらす、営利企業中心の認証保育所A型を東京の保育の中心にしていく方向です。本予算特別委員会でのわが党委員の質疑を通じて、認証保育所が認可保育所や公立保育園にかわりうるものではなく、その補完的役割を果たすものに過ぎないこと、都の考えが、東京の保育を利潤追求のビジネスに開放することで、できる限りお金を使わないですむ、安上がりの保育行政に展開しようとしていることを、明らかにしました。石原知事の「国基準の保育所を作っていたら、金もかかる」との答弁は、思わず本音が吐露されたといわざるを得ません。
 子ども達の豊かな育ちを保障するためには、東京の保育を公立・認可保育園を中心にすえることが重要であり、来年度予算案での、都加算の廃止は断じて許せないことを再度、指摘しておきます。

 知事が、東京オリンピック招致をテコに大型開発をすすめようとしていることが、質疑を通じてうきぼりとなりました。
 知事が、この間、表明してきたインフラ整備は主なものだけでも、圏央道、外かく環状道路、首都高速中央環状品川線、区部および多摩地域の骨格幹線道路、羽田空港の再拡張、国際化、羽田空港と築地を結ぶ地下道路などで、場合よっては、6兆円もの投資が必要となるものです。知事が言う「コンパクト」な大会とはほど遠いものです。
 とりわけ、外環道路は、知事本局が、わが党への説明会で、計画を前倒しして2016年のオリンピックの間に合わせることを表明したものであり、知事がオリンピック招致と大型開発をリンクさせていることを、図らずも明らかにしたものです。しかし、外環道路は、東京地裁でも、高速環状道路も3本つくることに疑問が出されているものであること、住民の合意も得られていないこと、あらたに上部道路が計画されていることなど、問題が山積みしているものです。また、知事が突然、言い出した「羽田―築地間」のトンネル道路は、都市計画にもないもので、これだけで1兆円もかかりかねないものです。このような開発がオリンピックを口実にすすめられることになれば、都財政にも東京の環境にも多大な影響をあたえることは避けられません。
 オリンピック招致に関しては、オリンピック懇談会の議事録、提出資料、都が電通に委託した調査、開催経費の試算など、オリンピック招致の是非を検討する上で不可欠な資料を公にすることを拒みつづけていることも問題であり、すべての資料を都民と都議会の前に明らかにすることを重ねて求めておくものです。

 わが党が提案しました来年度予算案の組み替え提案は、来年度に見込まれている2500億円の都税の増収を、都民本位に活用することと、不要不急の大型開発に偏った予算の使い方をあらためることで、都財政の立て直しと都民施策の拡充にふみだすことをもとめるものです。
 具体的には、都民のくらしと営業を守るために「生活保護の拡充」「東京雇用センター」の新設「新元気だせ商店街事業」の拡充また、3000円券のシルバーパスの発行、マル福の68歳、69歳の現行制度での存続、小学校6年生までの所得制限なしの子ども医療費無料化の実現、生活面でも学習面でもよい効果が明確になっている30人学級の段階的実施に踏み切ること、ハイパーレスキュー隊員の増員など、都民の切実な要望にこたえるものです。各会派のご賛同をお願いするものであります。

 最後に、今予算議会では、知事の暴言も見過ごすことはできないものです。わが党委員の質問のなかで、「黙って聞け」とか、「この野郎」などとどなったことは、本委員会の品位を汚す知事としてあるまじき発言であり、猛省することきびしく指摘して、討論といたします。

以上