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本会議 討論 二〇〇六年三月三〇日
かち佳代子(大田区選出)
大型開発を優先、都民施策の切りすての都政を転換し
都民要望実現と財政の建て直し、都政転換にふみだす予算を
私は日本共産党を代表し、第一号議案、「平成一八年度東京都一般会計予算」外四五議案に反対し、わが党が提案した老人医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例に賛成する立場から討論を行います。
小泉内閣による二〇〇六年度予算が成立し、定率減税全廃や医療改悪など二兆七千億円もの新たな負担増が国民を襲い、貧困と社会的格差がますます深刻化しようとしているいまこそ、東京都が地方自治の原点に立ち、貧富の格差是正に取り組み、都民一人ひとりの生活・営業を守り、安心してくらせるよう全力を尽くすときです。
しかし知事提出の来年度予算案は、二千五百億円も増収がありながら、これを都民のために活用することなく、むしろ投資的経費を二年連続増額するなど、もっぱら「都市再生」最優先に編成されたと言わざるを得ません。
社会的格差の問題についても、知事は格差の存在こそしぶしぶ認めたものの「危機的ではない」「格差が生むダイナミズムは十分ある」などと開き直り、格差解消に取り組む立場を示しませんでした。
とりわけ東京の若者の中で、貧困と格差が広がっているにもかかわらず、知事はこの是正に取り組むことを拒否するばかりか「フリーターやニートはごくつぶし」などという、あってはならない暴言を吐いたことは許されるものではありません。
格差が深刻な高齢者の問題についても、知事は国際的にも広く行われている経済給付的事業を充実させることは、「人間の意欲を失い、かつ活力を奪おうとするもの」と決め付けました。
さらに、負担増による介護施設からの退所者問題での調査や負担の軽減に向けた提案に対して知事は答弁に立とうともせず、かわりに答弁した福祉保健局長も拒否をつらぬいたことは、いまの都政を象徴するものです。
しかしこの中でも、この間、日本共産党がくり返し求めてきた、新たに住民税課税となる人への現行千円のシルバーパス負担のすえおきが明言され、軽費老人ホーム入居者の負担の据え置きの検討が表明されたことは、重要です。
「官から民へ」の弊害が耐震偽装問題などで浮きぼりになっているにもかかわらず、都立施設の廃止や民間移譲、指定管理者の一斉導入などが、何の反省もないまま進められていることも指摘しないわけには行きません。
なかでも保育の分野で、子どもの豊かな成長を保障するために都が行ってきた認可保育所への補助を削減する一方、石原知事が推進する営利企業による認証保育所A型を保育の中心にすえようとしていることは、重大な問題です。
日本共産党は、営利企業による認証保育は、保育料が高いうえ、子どもたちの保育環境や保育士の労働条件を犠牲にしていることを指摘し、これを中心におくことは、安上がりの保育をすすめることが目的であると追及しました。これに対し知事が、「東京で保育所なんてできっこない」「金もかかる」と答弁したのは、思わず本音が出たものです。改めて、質の高い公立、私立の認可保育所を中心にすえた保育行政に立ち返るべきことを、きびしく指摘しておきます。
本議会で、石原都政と一部与党は、あたかも福祉保健予算を増やしているように宣伝しました。
しかしたとえば、「三五億円の実質増」だとの福祉保健局長の主張は、当然増に入れるべき予算が除かれる一方で国制度によらないものを当然減に加えるなど恣意的であることも明確になりました。事実は、来年度の福祉保健局予算は国制度による義務的経費の増減を正確にみるならば二五億円の減額となります。また「福祉と保健」の目的別予算割合が十八・二%で過去最高といいますが、これは構成比を大きく見せるために一般歳出に当然入れるべきオリンピック基金をわざわざはずして計算したとんでもないごまかしです。。
都営住宅の新規建設は石原都政のもとでたなあげされ、中小企業予算は毎年で減らされ、最高時の半分まで減額されてしまいました。
教育の問題では、来年度も都民の願いである三十人学級が拒否され、とうとう全国でただ一つ、東京都だけが少人数学級を拒みつづけることとなります。
決して、東京都に都民要求を実現する財源がないわけではありません。来年度は二千五百億円もの都税の増収が見込まれているのです。しかし、その多くが石原知事の推進する「都市再生」につぎこまれ、大型開発を中心とした投資予算は経常経費に含まれるものも合わせて一兆円近い規模で高止まりを続けています。
しかも、オリンピック開催に向け、社会資本の整備のためにオリンピック準備基金に一千億円も積み立てます。これは、主にオリンピックをテコに三環状道路ばかりか、羽田・築地間の地下道路などなんでもありの立場で大型開発を強行していくものにほかなりません。
石原知事は、この七年の間、「財政が厳しい」、「赤字団体に転落する」などといって二次にわたる「財政政再建推進プラン」を策定し、福祉をはじめとする都民施策の切りすてをすすめてきました。しかし、実際の都税収入は、わが党が明らかにしたとおり、二次にわたるプランの収入見込みより二兆七千億円近く多かったのです。これを活用すれば、都財政の立て直しと切実な都民要望に応えることは十分可能だったのです。
福祉の切りすてによって、とりわけ高齢者の福祉水準は大後退し、特別養護老人ホームは二五位から三一位に、老人保健施設やグループホームの整備率はいずれも全国最下位水準を低迷しています。
一方、「都市再生」の名のもとに、丸の内や汐留、北新宿など大型開発、圏央道や首都高速道路はじめ大型道路の建設に優先的に予算が配分されてきました。本来、都が負担する必要のない首都高への無利子貸し付けや国直轄事業負担金など五四〇〇億円にものぼります。また、臨海副都心開発の救済にも莫大な一般財源と都有地の無償提供で二兆円、羽田空港再拡張、首都高速道路品川線の都の直轄街路事業化、新銀行東京への一千億円規模の出資など、以前の都政ではありえなかった浪費的投資がくり返されてきました。
自治体として最優先すべき都民のくらしや福祉をないがしろにし、大型開発を優先させてきた、逆立ちした予算運営をいまこそ都民要望実現と、財政の建て直しを両立させる財政運営へと転換すべきです。
日本共産党が予算特別委員会で提案した予算組み替えは、税収増と不要不急の公共事業や開発へのためのためこみの見直しなどで確保した財源を使って、少子・高齢社会対応基金、三〇〇〇円のシルバーパスの発行、小学校六年生までの子ども医療費無料化、三〇人学級の段階的実施、中小企業制度融資の拡充など切実な都民要望に応えようとするものです。この方向こそ都民の願いにこたえる道であることを確信するものです。
またわが党が提案した老人の医療費助成に関する条例の一部を改正する条例は、生活習慣病など罹病率が高まる六十代後半に、逆に収入が年金などに限られ、この間の増税や負担増で高齢者の受診抑制が進んでいる中、老人医療費助成のこれ以上の縮小、廃止を中止し、現行の六八歳、六九歳までの医療費助成制度を継続するものです。高齢者のくらしと、健康をまもるための最小限度の提案であることを申し述べておきます。
三月十三日、教育長は都立高校の卒業式で生徒が君が代斉唱で起立しなかったことを「学習指導要領に基づく指導が不十分」と決め付け、全都立学校校長に対し、国旗掲揚及び国歌斉唱の児童・生徒への指導を教職員に徹底するよう命令する「通達」を出しました。これは生徒の口を無理やりこじ開けて歌わせる、文字通り生徒の内心の自由を侵害するものにほかなりません。実際、都立の卒業生から「事前に学校から執拗に起立するよう話があった」との訴えが、わが党に寄せられています。
憲法遵守の義務を負っている教育長が、学習指導要領の一項目を唯一の根拠に、憲法が保障する生徒の内心の自由をふみにじることは、教育行政の自殺行為であり絶対に許されません。
「卒業式は最後の授業。主役は生徒と先生だ。教育委員会の過剰な介入で大切な思い出を汚してはならない」「教員むしばむ君が代神経症」「「憲法に反し本末転倒」などとマスコミもいっせいに報道し、短期間に四八校の都立高校保護者が連名で抗議と撤回の申し入れを行いました。これこそ都民の良識の声ではありませんか。
日の丸・君が代を押し付ける都教委の通達や指導文書を直ちに撤回し、いっさいの強制を行わないよう厳しく求めるものです。
最後に、わが党の質疑のなかで、知事が「黙って聞け」「このやろう」などと怒鳴り、発言している議員にたいして再三にわたって野次を飛ばすなど、知事としてあるまじき言動がくりかえされました。石原知事になるまでは都議会でありえなかったこうした事態が繰り返されていることは、都議会の品位をいちじるしく汚すものであり、猛省を厳しく求めて、日本共産党を代表しての討論とします。
以上