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文書質問趣意書 児童養護施設、グループホームの増設とサービス推進費の改善拡充を求める
2006年3月30日 大山とも子(新宿区選出)
今、児童養護施設は、子どもが次から次と入ってきて、出たらすぐ入る、と言うのが実感だといわれています。東京都は、児童養護施設に対し、要養護児童の増加で、04年度までは都立施設に対し、また05年度以降は民間児童養護施設に対しても、定員を超えて児童を受け入れてほしいという依頼文書を出しました。一時保護所の入所率も2000年度平均は89.5%でしたが、2004年度は98.0%ですから、増加傾向で一時保護所も満杯状態です。養護を必要としている子どもたちに比べて一時保護所も児童養護施設も圧倒的に不足しているということは明らかです。
Q1 児童養護施設や一時保護所の不足について、どう認識しているのですか。
Q2 児童養護施設とグループホームを増設していくことが切実に求められていますがどうですか。
Q3 立川児童相談所一時保護所の廃止計画は中止され存続する予算が提案されました。わが党がつよく求めてきたことであり、歓迎するものです。墨田児童相談所一時保護所についても廃止せず、存続するべきです。見解を伺います。
私が訪問した児童養護施設の施設長さんは、常にほとんど定員が満杯であるため、虐待のケースなど、生命に危険があるような、優先順位が高い大変な子しか入れないのが実情だと、その深刻な現状をつよく訴えています。
児童養護施設は、さまざまなケースの子がいて、成り立ってきました。精神科への通院、入退院している子も増えていて、現在クリニックに3人通院、1人は入退院繰り返している、とのことでした。被虐待児は、職員をこれでもかこれでもかと、職員の弱いところを突いてきたり、いらだたせることなどで試してきます。心身ともに傷つき、大人が信頼できなくなってるのですからこれは仕方がないことだと言えます。
信頼関係ができて初めて子どもは心を開きます。それだけに、適切に対応できる職員が必要です。さらに、一人が落ち着いたころ、また被虐待児が措置され、落ち着いた子も動揺することもあります。被虐待児で、かっとすると、殴ったり、壁やドアを蹴っ飛ばしたりという状況の子もいます。訪問した時も通常は6人一部屋ですが、措置されてきた年長の子が、かっとすると危険なので、小さい子4人は、他の部屋に避難しているとのことでした。
その施設は、家庭的養護ということで、20年程前からグループホームを設置し現在は4ヶ所のグループホームがあります。集団的に大きいと、子どもは甘えなどの行動をあまり出せないので、大きな規模の収容的な施設から現在の生活施設にかえてきました。これは、子どもたちにとっては良いのですが、分散すればするほど、職員は多く必要となります。職員配置の不十分さが、グループホームを増やすうえでの障害になっています。
Q4 グループホームの職員配置体制の強化に向け、都の支援をつよめる必要があると思いますが、いかがですか。
Q5 児童養護施設にたいする国の職員配置基準は、3歳児で児童4人に職員1人、小学生以上では児童6人に職員1人というもので、実際にはこの人数で24時間365日の勤務体制をくむのですから、あまりにも低すぎます。職員配置の国基準の改善を、国につよく働きかけることが必要です。お答え下さい。
児童養護施設が満杯状態になり、職員体制の強化も緊急課題になっているなかで、都がサービス推進費補助を、職員の経験年数を加味しない方式に変えたうえ、削減をすすめていることは、矛盾をいっそうひろげ、事態をいっそう深刻なものとしています。
訪問した施設では、2004年、2005年とも420万円程度の削減で、とうとう職員を減らさざるを得なくなりました。2005年度には非常勤を含んで35人いた職員を2006年度は32人と夜間当直のための大学生アルバイトを配置することしか手段がないということになりました。予算的には2.5人分減らさなければならないからです。結局、グループホームは、現在は3人配置ですが2.5人の配置しかできません。
サービス推進費の最大の問題は、昇給財源がないことです。児童養護施設に入所してくる子どもたちは、さまざまな問題を抱えてきます。家庭崩壊、父母の精神障害、破産、それに加えて虐待を受けているケースが多くなっています。荒れて、職員に暴力を振るう、学校で暴れる。入所している子どもも、すんなりと成長するわけではありません。良いときも荒れるときもあります。すごくがんばっているという年があったかと思ったら、次の年には沈んだり、不安定さを受け止めながら成長していくことを助ける、高い専門性の求められる仕事です。職員には経験と学習と職員集団としての力量の向上が求められています。
そのためには、職員が継続して働けることが最低の条件ですが、継続して働くための昇給財源がないのですから重大な問題です。
Q6 サービス推進費の改悪で、昇給財源がないことについて、どう認識しているのですか。
Q7 また、措置される子ども、親の状況はますます難しくなっているにもかかわらず、サービス推進費削減で、人員を減らさなければならない現実をどう認識しているのですか。
児童福祉法が昨年改定され、退所後のアフターケアが養護施設の仕事になりました。このため、施設を出た後のケアについて国は、ファミリーソーシャルワーカーとして1人を増員しました。つまり、児童養護施設の職員は、ケアワークとソーシャルワークの両方ができなければならないことになりました。
虐待した親は、対人関係がもてない人が多く、「そうじゃなくて、こうしたほうがいいよ」などと言われても攻撃されたと受け止めてしまうケースも多いと言われています。また、親が孤立していて、1日に2回も3回も施設に電話をかけてくるケースも少なくありません。
このようななか施設の現場では、経験があり、専門性が高い熟練した職員の必要性が、施設の現場では高まっているのです。
ところが、いまのサービス推進費は実績払いなので、3歳児が1人いるかいないかで額が大きく変わってくるような不安定なものとなっています。
児童養護施設の施設長も職員も、児童が自立するときは1人当たり10万7400円、家庭に戻るときには6万5540円の加算というような、「出来高払い」ということ自体、全くおかしい。働きかけの過程が重要であり、それを保障できる人員配置と年数が必要だと訴えています。私が話を聞いた施設長さんは、「アフターケアまで含めると、15年ぐらいの経験がないと児童養護に求められる仕事はできない」と語っていました。
Q8 サービス推進費補助は、実績払いといった不安定な算定方法ではなく、職員の経験年数や必要な処遇が十分におこなえる職員配置を確保できるように改善することが、現場の切実な要求です。ぜひ、この要求にこたえていただきたい。
Q9 サービス推進費補助のこれ以上の削減はやめ、拡充・増額することを求めるものです。見解を伺います。
回答1
都は、社会的養護の需要を踏まえ、グループホームの設置促進を図るとともに、平成18年2月に新たな一時保護所を開設するなど、一時保護や措置が必要な児童について適切に対応しています。
回答2
都は、国に先駆けてグループホーム制度を創設し、これまでも家賃補助による支援を行うなど、積極的に設置を促進してきました。
こうした取組により、平成18年度には新たに20か所のグルーブホームの設置を見込んでおり、着実に基盤整備を図っています。
回答3
一時保護所については、保護需要を適切に踏まえ、都内の一時保護所の配置状況等を考慮した上で、児童相談センター西部一時保護所を開設し、墨田児童相談所一時保護所を休止するとともに、立川児童相談所一時保護所の継続を決定しました。
回答4
都はこれまでも、グループホームの拡充に向け、独自の支援策を講じるなど、積極的な取組を進めてきました。グループホームの職員配置体制については、平成18年予算特別委員会における議論などを踏まえた上で、更なる実態把握に努めながら十分検討していきます。
回答5
児童養護施設の望ましい処遇水準を確保するため、施設職員の配置について、従来から国基準を上回る措置を講じてきました。
国基準の改善については、平成18年予算特別委員会における議論などを踏まえ、入所児童の状況に応じたきめ細かな対応が可能となるよう、国に働きかけていくこととしています。
回答6
民間社会福祉施設サービス推進費補助は、利用者サービスの向上を目的としたものであり、施設職員の処遇を第一義的な目的としたものではありません。
なお、基本的な運営に要する経費については、措置費の中で確保されています。
回答7
児童養護施設やグループホームの運営は、基本的には措置費により必要な水準が確保されているものです。
民間社会福祉施設サービス推進費補助は、利用者サービスの向上に向けた施設の努力に応じて補助額が増加するものであり、また、再構築に当たっては経過措置を設けており、施設運営に支障がないと考えています。
回答8
民間社会福祉施設サービス推進費補助の再構築は、施設の定員、利用者数、職員の経験年数等に基づく画一的な仕組みを改め、施設における実際のサービス内容やサービス向上に向けた努力に連動したものとなるよう実施したものです。
再構築後の施設運営は、決算状況や運営指導等により把握に努めていますが、利用者サービスの向上に向けた敢組が着実に進むなど、おおむね順調に推移しています。
回答9
民間社会福祉施設サービス推進費補助の再構築は、サービスの質の向上を目指して、施設代表者との合意を得た上で実施したものです。
今後とも、社会状況や都民二一ズの変化を的確にとらえた、より効率的・効果的な施設運営に資する仕組みとなるよう適切に対応していきます。
以 上