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文書質問趣意書 不妊治療の充実について
2006年3月30日 河野百合恵(江戸川区選出)
東京都の合計特殊出生率は、2003年度に0.9987人と過去最低を記録しました。2004年度は、1.01人とわずかに増加しましたが、全国最低という憂うべき状況がつづいています。2005年4月に策定された「次世代育成支援東京都行動計画」には、「東京についてみると、全国より2年ほど早く、平成7年に高齢人口が年少人口を上回りました。東京は全国に先駆けて少子・高齢社会を迎えたといえます。」と記されています。少子化は、社会保障や社会構造にも影響することから、国をあげての対策を強めることが急がれると同時に東京都独自の対策も喫緊の課題です。
これまでも少子化克服のために必要な種々の子育て支援策が求められてきました。その一つに不妊治療充実の強い要望があります。
子どもの出生を望んでも願いがかなわない人たちは、「子どもを産むことが少子化克服の大事な問題なのだから、不妊治療対策にも力を入れてほしい」と切実に訴えています。
こうした要望の高まりのなかで、国が2004年度から体外受精や顕微授精を対象にした「特定不妊治療費助成事業」をスタートさせ、東京都も国の事業に合わせて不妊治療対策を実施し、2004年度は、約2億円の予算が執行され、2000件余の申請を受けています。
2005年度、国は、「母子保健医療対策等総合支援事業」として、不妊治療に対する支援事業を盛り込み、都は約4億円を予算化しました。また、国は、2006年度から、これまで2年間だった助成期間を5年に延期するなどの改善も予定しており、少しずつ、不妊治療対策が若い世代の人たちの声を受け止める方向で改善されてきています。
しかしながら、不妊治療対策は、まだ不十分な問題が多く残されており、更なる改善が必要です。希望するする人たちが安心して受けられる不妊治療制度になることを求め、以下、質問します。
Q1 不妊治療は、多額の費用がかかります。経済的なことが原因で、せっかく始めた治療を途中で諦めざるを得ない人が少なくありません。不妊治療が保険適用になれば、経済的な負担は軽くなります。現在、特定不妊治療費助成事業の対象である体外受精や顕微授精は保険が適用されません。これらの治療が保険適用になるよう、都として国に積極的に求めていただきたいと考えます。ご見解をお示しください。
Q2 現在の制度は、1年度あたり上限10万円の助成です。医療機関によって、いくらかの違いはあるものの不妊治療代は高額で、特定不妊治療は平均40万から50万円位かかり、場合によっては70万円余ということもあります。子どもをほしい人は、何年間も治療を受け続けますから、経済的負担は、想像以上に重いものがあります。
練馬区は、経済負担軽減のために2006年度から1年度あたり5万円の助成を実施、品川区も同じように3万円の助成を実施する方針を明らかにしています。また、大分市は、国の制度の2倍の20万円を助成しています。せっかく治療を決意したのに、経済的理由で諦めてしまう、こうした人を少しでも少なくするために、都も独自に助成額の引き上げを検討すべきではないでしょうか。お答えください。
Q3 品川区は、2006年度から区独自の助成制度創設を予定しています。保険が適用になるタイミング法や排卵誘発法、また、保険適用外の人工授精の自己負担分の2分の1、を助成するという制度です。大分県は、九州で合計特殊出生率が下から2番目ということを重く受けとめ、「次世代育成支援行動計画」の「おおいた子ども・子育て応援プラン」に不妊治療対策を明記し、人工授精や男性不妊への助成を行なっています。
東京都は、全国一の少子化進行という問題を抱えているのですから、国の制度よりも施策を充実させているこうした先駆的な自治体に学ぶべきではないでしょうか。
国の特定不妊治療で定められている体外受精、顕微授精にとどまらず、助成対象を拡大することを求めるものですが、いかがですか。
Q4 現行の制度は、前年の夫婦合算所得が650万との所得制限があります。全国的には、大分県、富山県などでは所得制限を設けていません。国よりも早く平成15年に助成を実施した富山県では、半年間で299組の申請があり、所得制限をなくしたことで利用者が増える傾向を示したことが報道されています。東京都も所得制限をなくすなど、できるだけ多くの人が利用できるようにすることが必要と考えます。所得制限の撤廃、あるいは緩和についてお考えをお示しください。
Q5 不妊治療費助成を受けるには、多くの書類を提出しなくてはなりません。手続が難しいとの声が出ています。助成申請書、指定医療機関の受診等証明書、婚姻関係を証明するもの、夫婦それぞれの前年所得の証明書、住民票、医療機関発行の領収書等等、などが必要とされ、この煩雑さを改善してもらいたい、と要望されています。申請書類は必要最小限のものに見直すなどのことを検討していただくよう求めます。答弁をお願いします。
Q6 私の知人は、江戸川区に住んでいますが、千葉県市川市の医療機関で治療を受けています。しかし、千葉県で治療を受けても都内に住所があれば助成を受けられることを知らなかったそうです。 都が実施している不妊治療費助成事業のPRをもっと積極的に行なうべきではないでしょうか。
また、江戸川区には、都指定の医療機関がありません。不妊治療は麻酔をかけるなど、身体的にも大きな負担がかかります。治療を身近なところで受けられるよう指定医療機関を増やしてほしい、との要望があります。医療の水準を十分に確保することに努めながら、都は指定医療機関を増やすことを求める都民要望に積極的に応えるべきと考えます。合わせて、ご見解をお聞かせください。
Q7 不妊治療は羞恥心や苦痛を伴い、精神的にも身体的にも負担がかかります。ホルモン剤の影響で心身のバランスがとれなくなる場合もあります。治療が成功して妊娠した後も、出産までのフォロー体制が大切です。カウンセリング、相談窓口の設置など区市町村や医療機関と連携した取り組みを進めていただきたいと考えます。また、患者会などへの支援についても、検討する必要があると考えるものですが、お考えをお示しください。
回答
回答1
体外受精や顕微授精の医療保険適用については、平成17年第三回定例会で答弁したとおり、従来から大都市衛生主管局長会等を通じて国に要望しており、引き続き他の自治体と連携を図りながら働きかけていくこととしています。
回答2
特定不妊治療費助成制度は、子どもを欲しいと望んでいるにもかかわらず恵まれない方々が不妊治療を行う場合に、その治療費の一部を助成する事業であり、平成16年度に国が開始したものです。
都としては、単独の措置については、慎重に対応していくべきと考えています。
回答3
不妊治療は、治療が長期間となる場合が多く、また、流産の確率や低出生体重児の出生頻度が高いなど、身体的、精神的負担や治療の安全性等について様々な意見があり、都単独の措置については慎重に対応していくべきと考えています。
回答4
特定不妊治療費助成制度に関する都単独の措置については、慎重に対応していくべきと考えています。
回答5
現行の提出書類は、助成の要件を確認するために必要最低限のものと考ています。
回答6
特定不妊治療費助成制度の普及啓発については、区市町村、保健所、指定医療機関でのパンフレットの配布やホームページヘの掲載などを通じて、不妊に悩む方々をはじめ、広く都民に対し積極的に取り組んでいます。
また、助成の対象となる医療機関については、治療の安全性の確保に十分配慮しながら、一定の医療水準を満たす病院・診療所を指定し、その拡充に努めています。
回答7
都は、平成8年度に設置した不妊ホットラインにおいて、不妊で悩んだ経験を持つカウンセラーが、不妊治療中の方をはじめ都民の不妊に関する悩みや不安に対し、電話相談に応じています。
以上