予算特別委員会しめくくり総括質疑 3月27日
曽根はじめ(北区選出)
米軍基地の強化、永久化にノーをいうのが本来の知事の責務
切り詰めた予算をまともに執行せず、毎年四百億から七百億円も使い残しの福祉保健費
基地機能の強化、永久化につながる再編計画を容認
〇曽根委員 日本共産党都議団を代表して質問します。
初めに、日本の平和と都民の安全にかかわる米軍横田基地の再編計画について伺います。
全国の米軍基地、自衛隊基地を抱える自治体で、米軍再編計画による新たな基地機能の強化、永久化を許さない住民ぐるみ、自治体ぐるみの闘いが広がっています。
沖縄県では、海兵隊のための新基地計画に反対の運動が広がり、県知事も議会で容認できないと表明しています。
山口県岩国市では、米艦載機の移転に対し住民投票が行われ、市民の過半数のノーの意思に基づいて、県知事は改めて政府に容認できないと申し入れました。
キャンプ座間への米陸軍司令部の移転が計画されている神奈川県では、自治体ぐるみの反対運動が広がり、県知事も先頭に立って、座間市、相模原市と共同で近く政府に申し入れることが計画されています。
平和を脅かし、周辺住民の犠牲をさらに将来にわたって負わせようとする計画に対し、自治体の長として当然の行為だと思います。ところが、石原知事は、早々と米軍再編計画に容認の態度を表明し、国会でも、全国で石原知事だけが容認であると防衛施設庁から紹介されました。驚くべきことです。
知事に伺います。米軍再編計画によって、横田基地の軍事的機能と役割はどのように変化すると認識しているのですか。
〇山口知事本局長 米軍再編の目的は、冷戦終結後の世界情勢の変化を踏まえ、核兵器拡散やテロなどの新たな脅威に対抗できるようにすることであるといわれております。
昨年十月公表された米軍再編協議の中間報告では、横田基地において、航空自衛隊航空総隊司令部の移駐や共同統合運用調整所の設置が掲げられており、在日米軍と自衛隊との連携により、我が国の防衛力の強化が図られるものと認識しております。
〇曽根委員 今、我が国の防衛力の強化といいましたが、昨年十月に打ち出された日米安全保障委員会、2プラス2の共同文書は、大体イラク戦争のような先制攻撃の戦争に日米が共同で対処することが共通の戦略目標とされているんです。米軍と自衛隊が一体となって地球規模で海外での共同作戦を可能にする体制をつくる、これが今度の計画の目的なんです。
その中で横田基地は、自衛隊航空総隊司令部が移駐し、米第五空軍司令部と一体の司令部体制をつくります。そして、今お話のあった米軍と自衛隊との共同統合運用調整所を設置し、ミサイル防衛の通信、指揮、統制の中枢拠点になることが盛り込まれています。これまでの米軍司令部機能、兵たん機能にとどまらず、米軍と自衛隊が一体となって地球規模で戦争する、その司令部としての役割を横田が担わされようとしているんです。明らかに横田基地が軍事的に新たな段階に入ろうとしていることを意味します。こうした米軍再編の方向は、横田基地を将来にわたって最重要拠点として確保しようとするものであり、基地の永久化を図ろうとするものです。
知事は、横田基地の返還を公約に掲げ、都の基本方針も基地の整理、縮小、返還です。しかし、再編計画を許せば、基地返還に近づくどころか、さらに遠のかせることは明らかです。知事、基地機能の強化、永久化につながる再編計画を容認したということは、事実上、返還の公約、方針を投げ捨てることにつながるのではありませんか。知事、お答えください。知事です。
〔発言する者あり〕
〇山口知事本局長 ヨーロッパでは、冷戦の終結を受け、米陸軍を約六割に削減するなど、在欧米軍の規模が大幅に縮小することになりました。ドイツのフランクフルト空港は、五十五年間の軍民共用化後、昨年、全面返還されております。このような例に見られますように、基地の機能は軍事的な情勢に合わせて変更されるものであり、永久化などと単純に論じることはできません。
東京都の米軍基地に対する基本姿勢は、整理、縮小、返還の促進であり、横田基地につきましては返還までの対策として軍民共用化を目指すものでございます。
横田は重要な基地として永久に残る
〇曽根委員 ヨーロッパで冷戦終結から六割に減ったと、米軍基地は。フランクフルトは返還されたと。全く日本の横田基地と情勢が違うんですよ。大体、横田と違ってフランクフルトというのは民間というか、地元の方が管理しているわけですね、航空管制は。横田のように米軍が管理しているんじゃないんですよ。ですから、返還は非常に楽だったんです。
横田の場合は、改めていいますけれども、昨年、座間市を訪問した防衛庁長官は、再編計画について、これは百年の計だとまで強調しました。二十一世紀にわたって米軍基地を継続するということなんです。横田基地の機能を強化し、返還が遠のくということは、我々だけでなく、軍事安全保障の専門家が共通していっていることです。
例えば、軍縮安全保障が専門の前田哲男東京国際大学教授は、横田基地の共同統合運用調整所について、日米の共同司令部、連合司令部となり、憲法九条が禁ずる集団的自衛権の行使につながりかねないと指摘しています。
また、軍事評論家の江畑謙介氏は、横田基地の軍事的な価値は高まっていると述べて、新聞でも、これは昨年の読売ですけれども、返還の可能性遠のくというふうに報道され、江畑氏はこの記事の中で、横田基地の返還は、アメリカの世界戦略が変わらない限りないだろうといっています。
米軍再編計画を容認するのではなく、きっぱりと反対することこそ、公約を守り、また、東京を含めて、これは関連の自治体が一致している返還を求めるというこの共同の目標にまさに近づくことじゃないですか。知事、もう一回、知事のお答えを聞きたいんです。
〔発言する者あり〕
〇石原知事 サービスだね、これは本当に。不勉強な学生に教えるみたいなもので。
あのね、アメリカはもともと基地を返すつもりは毛頭ないんですよ。だからね、ワールドカップをやっているときに私は韓国の政府と話をしてね、CIQ抜きにして、とにかく向こうも金浦空港をつくって、在来の空港をドメスチックにしたので、それじゃやっぱり横田とCIQ抜きにしてシャトル便を飛ばしましょうと。向こうも非常に喜んで、やろうと思ったら、アメリカが、ご存じでしょうけども、五十年耐用年数がある滑走路をつくり直すと、突然あそこの空港を閉鎖した、使わせないために。アメリカはそういうことすべて嫌なんだ。
私たちはね、それをひっくり返そうと思ったけど、森政府が何かしっかりせずにやられちゃったんだけども、いきなりなかなか返還は難しいですから、とにかくともかく、要するにあの管制空域というものを日本に取り戻して、だれが管制してもいいけど、自衛隊が管制するならそれで結構ですよ。それでですね、とにかくあの日本で一番長いランウエーを使おう、共同使用しようと、軍と。そうしたら、アメリカが−−まあ、トランスフォーメーションかなんか、外務省がぼんやりしているものだから、本当はこれに関係なかったんですが、巻き込まれましてね、何かあそこに軍軍共用すると。これはさんざんいったじゃないですか、今まで委員会の中で。自衛隊はだね、そんなものやりたくないんだ。アメリカに……(「容認するんですか」と呼ぶ者あり)それは自衛隊にいってこいよ、自衛隊にいって。国防省に何回もいっているよ。おまえら、共産党、もっと頑張ってやれ、国会で。
それでね、まあ、軍軍民共用化も結構だろうけど、機材一切持ってまいりません、あそこに日本の防衛のウオーニングシステムの本拠を置きますというけど、ウオーニングシステムの本拠を置いたって、仮に北鮮なり中共からミサイルが飛んできたって、撃ち落とす手段って持っているんですか、日本もアメリカも。そういう状況の中で、私たちはとにかく−−黙って見てください。必ずあそこから飛行機を近日飛ばせますから。民間、要するに民間機を。そうすりゃいいんでしょう。それがまず返還のための一歩のステージですよ。
首都圏が米軍の陸軍、海軍、空軍の司令部の拠点になろうとしている
〇曽根委員 知事、これは全く地方自治体の長としてあってはならない態度だと思うんですよ。まず第一に、共同使用を何とかしたいと。当面、アメリカ軍は返す気がないと。だから、返すという目標をもう事実上放棄して、自分がやりたい軍民共用化だけに突き進むと。そういうやり方は、ほかの自治体ではとっていませんよ。(発言する者多し)いや、いわせてくださいよ。首都圏規模での問題を見ましても(石原知事「今までのここの議会での議論を聞いてないよ」と呼ぶ)横須賀市は新たな原子力空母が配備されようとしているんですよ。
〇石原知事 私は、とにかく返還が最終目的だと。にわかにいかないから共同使用といってきたんだよ。それが外交の交渉の実利というものでしょう。
〇曽根委員 だから、私は、今度の横田の再編を認めることが最終的な目標だといってきた返還に近づくのかと。近づくことじゃないじゃないですか。基地の永久化ですよ。しかも、アメリカ軍の世界戦略が変わらない限り、横田は重要な基地として永久に残ってしまうということが軍事専門家でも共通していっているんですよ。これは我々だけじゃないんですよ。
しかも、知事は何かミサイルの話とかされましたけれども、ミサイル攻撃から日本を守るための機能が強化されると何が悪いかというような話でしたけれども、米軍のミサイル防衛システムというのは、基本的に米軍基地と司令部を守るためであって、日本全体の国民に対するミサイル攻撃の防衛力を高めるものじゃないんですよ。
中国の脅威の問題だって、大体中国の−−中国にだってもちろんいろいろ問題ありますよ。しかし、中国の問題をどう解決するかというときに、やはり中国とインド、インドとパキスタン、それぞれアジアの各国が敵対から和解に動いているという中で、中国とインドは二〇〇五年四月に長年懸案となってきた国境問題の解決に向けて本格的に踏み出しました。アジア全体が今ASEANなどを中心にして、紛争の平和的な解決に努力を始めているわけですよ。こういう流れの中で日本が本来の役割を果たす、このことが必要だということを改めて申し上げておきたいと思います。
首都圏の規模を見ても、横須賀に米軍原子力空母が配備されようとしていますし、座間市、相模原市にまたがるキャンプ座間には米陸軍の司令部と陸上自衛隊司令部が移駐される。横田と一体となって海外での作戦指揮を行う体制がとられようとしているんです。首都圏が米軍の陸軍、海軍、空軍の司令部の拠点になろうとしているんですよ。異常な事態ですよ。だからこそ相模原市長は、再編計画に対し、負担の強化だと、基地の恒久化以外の何物でもないとして、全く受け入れられないと表明しました。神奈川県知事も二月の会議で、基地の整理、縮小、返還が基本だと表明し、先週金曜日、三月二十四日には神奈川県と座間市、相模原市の三者で到底受け入れられないとの認識で一致しているんです。
関係自治体と連携して、米軍基地の強化、永久化に毅然としてノーをいうのが本来の知事の姿勢である、責務であるということを強く申し述べておきたいと思うんです。
軍軍民共用化で、騒音被害はさらに深刻化する
しかも、横田基地の再編で避けて通れないのは騒音問題です。米軍再編による基地機能の強化は、今までも受忍の限度を超えた周辺住民への騒音被害をさらに深刻化させるものです。事実、新たに自衛隊航空総隊が移駐することで新たな騒音がもたらされるのではないかと、周辺自治体からの強い懸念が寄せられています。
知事に伺いますが、自衛隊航空総隊司令部の横田基地移駐による航空機騒音の影響をどう認識しているのですか。
〇山口知事本局長 国は、航空自衛隊航空総隊司令部の移駐により、司令官等の移動用航空機の飛来はあるものの、軍用機が常駐されることはないとしており、航空機騒音の影響が拡大することはないと認識しております。
〇曽根委員 そんないい方は極めて無責任ですよ。我が党の参議院議員の文書質問に対して政府は回答していますが、この回答は極めて限定的なものです。つまり、航空機の常駐がないことは見込まれるという表現なんです。しかも、騒音の増大についても、現時点においてほとんどないと考える。しかし、現時点での判断であって、将来にわたって常駐や騒音増大は否定していません。なぜなら、新聞で報道されていますけれども、航空総隊司令部の移駐と連動して、入間にある第二輸送航空隊を移駐する案が示された経緯があるといわれておりまして、今後これが実行される可能性が否定できないからなんです。
しかも、防衛施設庁からの周辺自治体への回答によれば、航空総隊司令部の移駐によって航空機の飛来がふえることに触れているんです。もし読んでないとすれば、空自航空総隊司令部の移駐に当たり、司令部を初めとする自衛隊員の移動などのためにCH47JなどのヘリやU4、T4またはC130Hなどの輸送機の往来はあり得ると回答しています。これが実績では昨年、年間四百回と紹介されているんです。飛行場のない府中から横田に移駐すれば、利用回数がさらに上回ることは十分考えられることじゃありませんか。事実、昭島市はこのことを危惧しています。
こうした事実や経過を無視して、騒音が拡大しないかのように断言することは実に無責任であり、厳に慎むべきだと思います。
さらに重大なことは、軍軍民共用化問題です。知事、軍軍民共用化を進めれば、騒音被害は、この軍軍共用化だけじゃなくて、さらにこれは深刻化するというふうに考えますが、どう認識していますか。知事の認識をお聞きしたい。
〇山口知事本局長 国は、自衛隊との共同使用によりまして軍用機が常駐されることはないとしており、軍軍共用によって騒音の影響が拡大することはありません。また、民間機の騒音は米軍機と比べて極めて小さいことから、騒音に配慮した軍民共用化は可能であります。
今後とも地元の理解と協力を得ながら軍民共用化の早期実現を目指してまいります。
〇曽根委員 しかし、よくそういうことがいえますね。
そもそも騒音の受忍限度を超え違法状態
知事、そもそも横田基地の騒音は、既に受忍限度を超えるものです。違法状態なんですよ。最近発表された二〇〇四年度の航空機騒音調査でも、瑞穂町での固定調査では、年間の騒音回数が一万百七十一回、年間平均のWECPNL、つまり、うるささの実感をあらわす指数ですが、これは環境基準の七〇を大幅に超す八四ですよ。一日のピークレベルの平均が一〇〇デシベルという、いわば電車のガード下みたいな、大変な音の出ている騒音の日が三十八日もあったと報告されているんです。飛行経路の真下にある小学校では、米軍機の進入で授業は中断され、授業に集中できなくなるなど、子どもたちにも深刻な影響を及ぼしています。しかも、一過性ではなく、環境基準を超える騒音のもとでの生活が常態化しているんです。
私、訴訟団の方に拝島の方に行って会ってきましたけれども、訴訟団の代表者は、いまだに騒音被害を解決できないだけでなく、軍民による新たな騒音被害を押しつけることは絶対に許せないと訴えていました。
民間機の飛行機の騒音、軍用機を上回るものはいっぱい
しかも、先ほど民間機の音が小さい低騒音機を導入しているというようなお話がありましたが、しかし、それでも騒音被害は解消されないんですよ。成田空港の騒音調査でもこれは明白です。
最近、千葉県がことしの二月に発表した平成十六年度成田国際空港周辺航空機騒音測定結果報告書では、低騒音機になったにもかかわらず、固定測定局八十三局中、環境基準達成はわずか三十九局、半数以上の地点が基準オーバーなんです。成田空港の騒音影響区域は、さっきのW値七〇を超えるコンターは、南は太平洋、北は利根川まで、差し渡し五十キロ近く広がっているんですよ。こういう民間の航空機でも騒音被害が大きく出ている。これが今の違法状態に上乗せされるということなんですよ。それでも、民間機を導入しても騒音被害はふえない、問題はないということなんですか。もう一度お答えいただきたい。
〇山口知事本局長 先ほど答弁しましたように、特に民間機の騒音は米軍機と比べて極めて小さいことから、騒音に配慮した軍民共用化は可能であります。
今後とも地元の理解と協力を得ながら、軍民共用化の早期実現に努めてまいります。
〇曽根委員 私のいったこと、全然聞いていないじゃないですか。民間機の、例えば単体の飛行機の騒音だって、軍用機を上回るものはいっぱいあるんですよ。例えば、今、国内線でドル箱路線、大体ジャンボを使っていますよ。ボーイング747、このジャンボの騒音というのは一〇〇デシベルを超えているんですよ、単体の騒音が。さっきいった自衛隊機のC1だとか、こういうものは九四とか九七デシベルですから、それよりも上回る民間機が飛んでいるんですよ、成田はいっぱい。ですから、こういう問題を上乗せすることは許されないということを私はいっているわけです。
東京高裁判決で「異常な事態」、その上にさらに騒音を重ねる
大体横田の騒音問題というのは、昨年十一月三十日に東京高裁で判決が出されています。恐らく知事は、この判決、読まれていないでしょうから、これが極めて異例の判決だということを、ちょっと原文を読ませていただきますよ。
この判決文の最後には、横田基地の騒音について、最高裁判所において受忍限度を超えて違法である旨の判断が示されて久しいにもかかわらず、騒音被害に対する補償のための制度すらいまだに設けられず、救済を求めて再度の提訴を余儀なくされた原告がいる事実は、法治国家のありようから見て異常の事態で、立法府は適切な国防の維持の観点からも怠慢のそしりを免れない。ここまでいっている判決、今までなかったですよ。第五次訴訟ですけど、これは。これだけ厳しいことがいわれて、その上に騒音を重ねると。こんなことはあってはならないわけです。
地元の八王子市長である黒須市長は、この知事の軍民共用化構想について質問されて、これは内陸部にある空港でありますし、旅客機がふえるということは当然騒音がふえるわけですし、いずれにしても内陸部の空港としては問題があるなと、こういうふうに認識しているというふうに答弁しているんです。これは市議会の答弁。これは自治体として当たり前だと思います。
知事、軍民共用化は中止すべきなんです、やっぱり。現在の騒音のための対策こそ最優先で講ずることを強く指摘して、次の質問に進みたいと思います。
福祉保健費は、予算も決算も大きく後退
次に、行財政運営について伺います。
まず、福祉保健予算の問題です。
かつて都が自治体として独自に切り開き、国をも動かし、また全国の自治体に広がった福祉、医療などの都民施策が、石原都政の七年間で次々と縮小や廃止されてきました。その結果、都の福祉保健費は、予算でも決算で見ても大きく後退しています。
来年度予算案についても、国制度による義務的増額を除けば、実質減額ではないかと私たちは指摘してきました。これに対し、先日、本委員会で福祉保健局長は、三位一体改革等による予算への影響は、当然増だけではなく当然減もあるとして、これらをすべて加味した場合、実質三十五億円の増額だと述べました。
そこで伺いますが、福祉保健局が来年度予算で当然増、当然減とする事業と額はそれぞれどういうものですか。
〇平井福祉保健局長 福祉保健局の予算ということでございますが、三位一体改革などの制度改正に伴う影響などとして、当然増は国民健康保険財政調整交付金、介護保険給付費負担金、児童手当負担金などで、合わせて四百二十七億円となります。
一方、当然減は、介護予防地域支え合い事業、社会福祉施設の運営費や施設整備費補助の国交付金化などで、合わせて百七十三億円となります。
これらのすべてを加味すると、福祉保健局の予算は三十五億円の実質増となってございます。
福祉保健関係予算の拡充についてでございますが、福祉改革を進めていく中で、新しい都民ニーズに適切にこたえるため、厳しい財政状況にあっても福祉改革に必要な予算は十分に確保してまいりました。十八年度の福祉保健局の予算は、大都市東京の地域特性を踏まえ、都民ニーズに積極的にこたえるため、国に先駆けて取り組んできた介護予防システムの都内全域での展開、地域の実情に応じ区市町村の自主的な子育て環境整備を促進する包括補助制度の創設、障害者地域生活支援・就労促進三カ年プランの実施など、新たな施策を盛り込み、効果的、効率的な施策展開を図ったものでございました。
こうした結果、十八年度予算額は七千百十五億円、前年度と比べ二百九十億円の増で、増加額は全局の中で最大となってございます。
また、一般会計予算の目的別内訳である福祉と保健の構成比は、一八・二%と過去最高となるなどという状況になってございます。
〇曽根委員 聞いた以上のことを答える。こっちが先の質問ができないじゃないですか。
(パネルを示す)ここでパネルをお見せしますが、この皆さんから向かって左側の事業とこの額が、福祉保健局に説明していただいた当然増、当然減の中身です。
当然増が国民健康保険財政調整交付金百九十二億円、介護保険給付費負担金が百三億円、児童手当五十七億円、障害者自立支援法関連負担金五十四億円、地域支援事業交付金二十一億円、合わせて今いわれた四百二十七億円。
一方、当然減というのは、社会福祉施設運営費の国交付金化で五十二億円、施設整備費の国交付金化で四十四億円、介護予防地域支え合い事業で四十七億円、在宅介護支援センター事業補助十六億円、都立施設の民間移譲十五億円、合わせて百七十三億円。
差し引きすれば、実質三十五億の増額だというのが局の説明です。
しかし、この中には、国制度に基づく増減ということだったら当然入れるべき七十歳以上の老人医療費助成都費負担分の増額二十二億円が入っていません。その上、都の政策判断による都立施設の民間移譲まで当然減だというのは、これは無理な話です。
加えて、このパネルの右側の方の数字は、厚生委員会に議案として提出された当初予算概要に基づく数字です。国保の交付金や地域支援事業費は同じですが、介護保険給付費負担金の増額は、百三億ではなく百三十四億円です。児童手当は五十七億ではなく百三億円の増額です。
さっき答弁された数字は、三位一体改革に伴う負担割合の変更による影響だけを取り出して局で計算し直したもので、例えば児童手当では、対象年齢の拡大や所得制限の緩和による増額はわざわざ除外されています。こんなおかしな話はありません。
当初予算概要に出てくる数字から計算すると、当然増四百七十二億円、当然減は、都立施設の民間移譲なんていうのは無理がありますので百五十八億円、福祉保健局予算の来年度と今年度の差額は、正確には二百八十九億円で、差し引き二十五億円の実質減ということになります。
これに、予算書に出てこない障害者自立支援法関連負担金の当然増五十四億円まで、局がいうとおり入れたら、七十九億円の実質減になるんです。これは予算書に出ていません。
念のためにいっておきますが、我が党は代表質問で、国が国民健康保険に対する負担金を都道府県に押しつけてきたことや、国の制度である介護保険、児童手当などの事業費がふえたことを除けば、実質、今年度より減額だといったのであり、三位一体改革による増を除くと減になっているなんていうことは一言もいっていません。
国保の負担金も、介護保険給付の負担金も、児童手当も、七十歳以上の老人医療費助成も、全部法律に基づく義務的経費の負担増であり、これを除くと、当然減を考慮しても二十五億円、もしくは局の計算どおりの額を入れると七十九億円の実質減になることを改めて指摘しておきたいと思います。
それから、先ほど福祉保健局長は、来年度の予算について増額だということを盛んに強調されましたが、勝手に都合のいい数字を操作して議論しているのは局長です。例えば、来年度の福祉保健の予算額七千六百億円、構成比は一八・二%、これは十七年度と比べると、三百二十五億円、率にして四・五%増額だというような話がありましたけれども、これは目的別内訳の福祉と保健の割合は、実は、歳出の合計から一千億円のオリンピック基金などを勝手に引いた額に占める福祉保健の割合なんです。オリンピック基金をふやせばふやすだけ、福祉と保健の割合がふえるという計算。これはとんでもないごまかしですよ。
東京都が作成した「予算案の概要」に掲載されている一般会計歳出予算款別内訳を見ても、歳出の合計に占める福祉保健費の割合は、平成十七年度一一・八一%から、十八年度は一一・七六%に後退しています。
さらに決算で見れば、直近の二〇〇四年度と九九年度決算を比べると、この五年間に、福祉保健費は六千七百七十八億円から六千十六億円に、七百六十二億円も後退しています。一般会計に占める福祉保健費の割合は一〇・六%から一〇・〇%に後退しているんです。
石原都政のもとで、切り詰めた予算さえまともに執行せず、毎年四百億から七百億円も使い残しをして、福祉保健費は決算では予算以上の削減になっている。確定した決算の数字であり、これは事実はごまかせません。福祉保健局のいうことは本当にごまかしです。
先ほどの答弁が余計にあったから、私も答えさせていただきます。
介護保険・・・居住費、食費の自己負担導入で施設利用をあきらめる
それでは、福祉削減のもとで都民の実態はどうなっているか、この問題に進みたいと思うんです。老人保健施設など、介護施設で深刻な問題が起きている問題を取り上げたいと思います。
昨年十月の居住費、食費、いわゆるホテルコストの導入で、負担に耐えかねて施設を退所したり大部屋に移るなど、今までの介護サービスが受けられなくなる利用者が実際に生まれています。我が党が警鐘を鳴らしたとおりの事態が明らかになりました。それは東京保険医協会の介護保険二〇〇五年十月制度改定影響調査です。
都内六百三十カ所の介護施設を対象に調査を行い、百二十七施設から回答がありました。その結果、居住費、食費の自己負担導入を理由に退所された方が、二十施設で合計三十五人いることが明らかになっています。そのうち、要介護度四、五の介護度の重い人が過半数を占めています。退所後、自宅に戻った人が十二人、病院に入院した人が七人です。協会に聞いたところ、年齢は多くが八十代、九十代、最高が九十九歳です。大変厳しい話です。
このほか、居住費、食費の自己負担を理由に入所を取りやめた人も十五施設で五十七人に及び、これから入所を希望する人にとっても大きな障害になっているのが浮かび上がってきました。
ところが、知事は、ホテルコスト導入について、必要な見直しだ、再検討の必要はないと述べてきました。
これは知事にぜひお聞きしたいんですが、昨年十月の老人保健施設など介護施設への居住費、食費負担導入による利用者への影響を現時点でどう認識していますか。知事、お答えください(「平井局長」と呼ぶ者あり)知事、お答えください。
〇平井福祉保健局長 介護保険制度は、国民の共同連帯の理念に基づき、高齢者の介護を社会全体で支え合うことを目的に創設されたものでございまして、介護の必要度に応じて、一定の利用者負担のもとサービスを直接給付する仕組みとなってございます。施行後六年がたち、都民の理解も深まっており、制度として十分に定着しているものと考えております。
また、利用者負担が過重とならないよう、所得に応じた負担上限額を定めた高額介護サービス費の仕組みが制度創設当初から設定されております。
これらのことから、経済的給付などの新たな支援を行う必要はないものと考えております。
また、都は介護保険施設の事業団体と定期的に意見交換を行っておりますが、今回の居住費、食費負担の導入により退所者があったという話は聞いておりません。また、利用者からの苦情、相談につきましても、ホテルコストに関するものについて特に注目しているところでございますが、退所を余儀なくされたというものはございません。国にも確認したところ、退所が問題になった例は特にないということでございました。
なお、制度改正のあった平成十七年十月以降の特別養護老人ホームの月別退所人員について、過去三年間の動向と比較したところ、特段の変化はないことが確認されております。
都立ナーシングホームの例で申し上げても、十月の退所者数が、十四年度、十五年度、十六年度、十七年度と比べて有意のある差は認められません。
〇曽根委員 長々とお答えがありましたが、しかし、これはマスコミでも大変注目されて、東京新聞、大きく報道しているんですよ。記事の中で、介護が必要なのに、経済的な理由で施設サービスの利用をあきらめる人が出ているのは問題だ、結局、家族の介護負担がふえ、介護を皆で支えるという介護保険の目的は変質しているという東京保険医協会の調査担当者の指摘を紹介しています。見出しでも、家族介護の負担を減らすという介護保険の理念が揺らいでいるとの見出しがついています。
介護保険制度を将来にわたり健全かつ安定的なものにしていくために行ったなんていう話は全然違います。制度の根幹が揺らいでいるのが実態であり、これは見過ごしにできる問題じゃありません。
せめて実態調査はすべき
例えば、我が党の区議が板橋区の老人保健施設について調査した結果でも、これに応じてくれた五施設のうち、三施設で居住費、食費負担を理由にした退所者がいたことを確認しています。個室から大部屋に移りたいという人も少なくないことが明らかになっています。よくちゃんと話を聞けば、必ず実態は浮かび上がってくるはずなんです。
局長は、特段の影響は生じていないと答弁しましたが、何を根拠にそんなことがいえるんですか。知事、せめてこれは実態調査をすべきじゃないですか、東京都が。区市町村と協力をして。どうですか。
〇平井福祉保健局長 居住費、食費負担の導入に当たりましては、低所得者への配慮が十分なされており、基本的には問題はないと考えております。
しかしながら、大きな制度変更があったことを踏まえ、都としても、見直しの行われた昨年十月前後から介護保険三施設の事業者団体との意見交換を行うほか、都や区市町村に寄せられた都民からの苦情、相談の状況などを注意して見てきたところでございます。それらからも、施設にとっても、利用者にとっても、特段の影響が生じていないものと認識しており、実態調査を行う必要はないと考えております。
調査結果について詳細を把握していませんが、新聞報道によると、都内介護保険施設六百三十カ所のうち百三十三カ所から回答を得ており、回答率は二割となっております。その結果、全施設の三%に当たる二十施設において、食費、居住費負担を理由に退所された方がいたとの報告は受けています。
退所は三十五名で、その六割以上である二十二名が住民税の課税世帯の方ということであり、このことから、退所は負担能力のある方が自主的に判断された結果と考えております。
参考までに、都の都立ナーシングホームでの老人保健施設の十月退所者数を申し上げますと、十四年度四十二人、十五年度三十八人、十六年度三十四人、十七年度三十六人という実績でございます。
〇曽根委員 局長、聞いたことだけ答えてくださいよ。調査する気もないのに、長々と解釈論なんかやめてくださいよ。これだけ重大な事実を明らかにしたのに、実態さえ調べないというのは、大体住民生活に責任を持つ自治体の魂をなくしているといわざるを得ませんよ。都民の苦しみや痛みに目を向けようとしない驚くべき無責任な態度です。
板橋区では、区議会で我が党が質問したら、やっぱり事実を指摘されて、調査をすると約束しましたよ。これが当たり前の態度なんですよ。
低所得者に十分配慮されていると答弁されましたが、介護施設の居住費、食費負担で大きな問題になっているのは、負担軽減の配慮がされていない第四段階、年収二百六十六万前後の方なんです。低所得者ではないが、年金収入しかない中で、負担が月に五、六万ふえる。これは非常に苦しんでいるわけです。
私は、都民の痛み、苦しみに少しでも心を寄せる気持ちがあるなら、昨年十月以降の負担導入による利用者施設の影響調査を行い、対策を講じることを改めて求めておきたいと思います。
七年間の都税収入は二兆七千億円増
次に、知事がこうした福祉施策の見直しを、財政が厳しいといって都民に押しつけてきましたが、私、率直に聞きたいんですが、財政再建推進プランが始まった二〇〇〇年度から第二次財政再建推進プランの最終年度である二〇〇六年度における都税収入の見込み額と比較すると、実績及び実績見込み、都税収入の実績見込みはどれぐらい増収となるんでしょうか。
〇谷川財務局長 平成十二年度から平成十八年度までの七年間の都税収入は、平成十六年度までの決算額、平成十七年度最終補正後予算額及び平成十八年度当初予算額の合計で二十九兆八千七百九十五億円となっております。二次にわたる財政再建推進プランでの税収見通しの合計二十七兆二千百億円と比較して、二兆六千六百九十五億円の増となっております。
ただし、プランにおける税収見通しは一定の条件のもとで機械的に試算したものでございまして、この推計値と実際の税収額との間にどれだけ差が生じたかを議論することには余り意味を感じておりません。
〇曽根委員 そんなことありませんよ。石原知事の七年間で、二つの財政再建推進プランの税収見込みより二兆七千億円近くも増収となっているんです。七年のうち、プランより少なかったのは二年間だけで、あとはすべて税収増なんです。
確かに、この中には特別区への税連動経費とかありますが、全体の三分の一程度で、また、知事が繰り返しいっている一兆円の隠れ借金も半分圧縮されただけです。
税収増のもとで都民サービスの見直し、「都市再生」優先
それでは、税収が大きく伸びたもとで、都民サービスはどうなったかということなんです。
二つの財政再建推進プランで聖域なしの見直しのターゲットにされたのは、保育だとか、高齢者だとか、福祉サービス、教育費、中小企業対策、環境費などです。
その一方で、優先的に予算が回されてきたのは、知事が進める都市再生。例えば、一兆円近い資金が投資型経費に回されていますし、首都高、それから国直轄事業などへの負担は七年間で五千四百億円も投入されているんです。
その中の一つ、時間的にもうなくなってしまったんで指摘だけにならざるを得ませんが、臨海副都心開発は、今新たな計画を出そうとしていますけれども、石原都政の前までに四千四百億円の都財政を投入してきました。石原知事になってから、道路や三セク、有明の丘の引き取り経費などの一般財源の投入を初めとして、開発用地の無償提供など、約二兆円投入されました。これ以外に、さらに都心からのアクセスのための環状二号線や晴海通りの延伸などなど、これから約一兆円近い負担が待ち構えています。
率直にいいまして、この一年間を見ても、港湾局の方は八万平方メートル、四百二十五億円、土地が売れたといっていますが、これはほとんど底地買いであって、新規の開発の区画の契約は一つもありません。
さらに、土地を売るために、今、土地の証券化というようなことまで計画をされているようですが、これは大変危険なものです。
きょうは指摘だけにとどめざるを得ませんが、不動産のアナリストは、不動産証券化と自治体における活用可能性という論文の中で、臨海開発のような開発に関連した土地の売却に証券化を適用することには否定的な見解を述べています。土地売却などへの活用性はほとんどないといっています。また、再開発事業や都市開発事業についても不動産証券化のスキームを活用できる可能性は低いと考えられるというふうに述べています。
率直にいって、これが常識的な判断だと思います。危険な、どのような使われ方をするかもわからないような土地の証券化による売却、こういうやり方ではなくて、改めて私は、臨海開発の地域を残された貴重な都有地として都民のために残すと。そのために必要な借金の返済などについては都民にきちんと説明をして、過剰な投資経費を抑えながらやっていくと。今後の防災や緑、自然環境のために臨海開発用地を残すことを率直に提案をしまして、残念ながら、これで時間が来ましたので、質問を終えさせていただきます。(拍手)
〇松原委員長 曽根はじめ理事の発言は終わりました。
以上