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第二回定例会 代表質問   六月一三日

大山とも子(新宿区選出)

総額七兆円を超えるオリンピック投資、コンパクトどころかとんでもない浪費型オリンピック
都政では教育基本法改悪の先取りともいうべき様々な違憲・違法行為が

道路だけでも六兆円

 日本共産党を代表して質問します。
 まず、オリンピック問題です。五月半ばにようやく「東京オリンピック基本方針」が発表されました。
 石原知事が示した方針には、いまわかっていることだけでも、見過ごすことのできない重大な問題があります。
 第一に、「世界一コンパクトな大会」というごまかしです。あたかも財政投資の規模もコンパクトであるかのようですが、「コンパクト」の根拠としてあげているのは、「半径一〇キロメートル圏内にほとんどすべての競技施設と関連施設を配置」することです。その一方で、「オリンピックを梃子に都市と社会を変革する」とし、「環状道路ネットワークの整備」とか「空のアクセス充実」「臨海地域の機能強化」などということがことさら強調されています。
 これらを実行すればコンパクトどころか途方もない財政投資が強行されることは明らかです。まず、道路建設です。オリンピックに間にあわせるという三環状道路だけでも、首都高速中央環状品川線で四千億円、圏央道で三九〇〇億円、外郭環状道路には大深度地下方式にした場合、一兆三五〇〇億円、その上部につくる四〇メートル幅の都道の建設は、住宅密集地の立ち退き・買収費用がかかり、推計では六千億円程度の費用がかかります。
 その上、この環状道路とネットワークを結ぶ放射五号、放射七号、新滝山街道などもあわせて促進することになりから、この三本だけでも約七百億円の事業費です。
 さらに知事が、オリンピックに向けて軍民共用化による民間機導入を主張している「横田基地」と都心を結ぶ高速道路「多摩・新宿線」を建設すれば二兆二千億円。知事が言い出した羽田空港と築地を結ぶ地下トンネル道路という都市計画にもない道路までつくれば一兆円規模になります。このように道路だけでも合わせると六兆円を大きく上回る規模になりかねません。
 オリンピックにむけた公共交通の整備も莫大な費用がかかります。晴海にメインスタジアムをつくっても八万人の観客を会場に直接、運べる公共交通はありません。知事が言及したようにバスや船を使ったり大江戸線やゆりかもめの延伸を行っても、せいぜい半分しか運べません。三・五キロ離れた東京駅などのターミナルからの地下鉄による大量輸送ルートをつくる可能性がつよいと思われ、全体で二千億円ぐらいの投資が予想されます。公共交通がととのっていない臨海部に主な施設を集中させることで、都市計画にもない新たな投資が必要となるのです。

施設建設費にも大きなごまかし

 オリンピック施設の建設費にも大きなごまかしがあります。
 メインスタジアムなどの施設整備関連経費が五〇〇〇億円かかると答弁がありました。これに加えて用地取得費があります。知事はこれらの施設は「都有地につくるから用地をいっさい取得する必要もない」といっていますが、事実は違います。
 臨海部のメインスタジアムと選手村の予定地は、都有地とはいっても臨海開発事業会計の所有であり、メディアセンターの予定地は市場会計の所有です。「臨海」開発はこれらの土地を売却しなければ財政が破綻するし、市場会計もその用地を売って豊洲への移転費用に当てる計画ですから、有償で買い取らなければなりません。違いますか。知事の答弁を求めます。
 これらの土地を、時価で買い取るとすれば約七〇〇〇億円の費用が必要になることを指摘しておきます。
 加えて、知事は、「オリンピックの主要な舞台となる臨海地域の機能強化するため」といって、臨海部を活動基盤とする第三セクターについては、破たんした三セクもふくめて統合し、臨海地域の開発、運営をゆだねようとしています。これは破たん処理を先送りするもので、傷口をますますひろげ、さらなる財政投入に道をひらくことにつながります。オリンピックにかこつけて、「臨海」開発の救済をおこなうことは許されません。これまであげたもろもろのオリンピック投資は総額で七兆円を大きくこえるものになりかねません。
 財政面でみれば「コンパクト」どころか、とんでもない〃浪費型オリンピック〃になるではありませんか。
 オリンピック関連投資を一体どのくらい見込んでいるのか、計画の全体と財政見込みを一刻もはやく都民に明らかにすべきと考えますが、あわせて、知事の答弁を求めます。

「環境最優先の大会」というが超高層ビルを乱立させて環境破壊

 知事は「環境最優先の大会」をもう一つの目玉にしていますが、東京が「地球温暖化対策において他都市を先導している」と自賛し、世界最高水準の温暖化対策やヒートアイランド対策を推進すると言っています。
 しかし、いったい石原都政の七年間で東京の環境は改善されたのでしょうか。世界をリードするような環境対策が進められたのでしょうか。地球温暖化の原因となる二酸化炭素について言えば、京都議定書にもとづいて六%削減しなければならないのに、逆に二三%も増加しているのです。熱帯夜や集中豪雨などヒートアイランド現象による異常気象があいついでいます。これは、石原都政が規制を緩和し、この間、東京ドーム百三十二個分の床面積の超高層ビルを乱立させることで、地球温暖化物質の二酸化炭素を六百六十万トンもふやしてきたことが大きな原因になっています。
 都市公園の整備をおこたり、パリの二分の一、ロンドンの五分の一にすぎず、国内政令市と比べても最下位にとどまっていること、多摩の自然も開発で破壊され、温室効果ガスを吸収するみどりがどんどん減少していることも指摘しないわけにはいきません。
 大気汚染についても、自動車排気ガスはディーゼルの浮遊粒子状物質こそ、ある程度改善されましたが、二酸化窒素は横ばい、光化学オキシダントはどの測定局でも基準を達成していません。都は、空中のダイオキシン累や二酸化炭素が大幅に減っていると言いますが、これは知事が改悪した旧公害条例によるとりくみと工場が減少したことによるものです。横田基地周辺では受忍限度を超える航空機騒音に住民が苦しんでいます。
 知事、「環境白書二〇〇六」は、二酸化窒素について自動車排気ガス測定局で「三四局中一六局の適合にとどまりました」、「二酸化窒素は横ばい」とはっきり書いています。しかも、六%削減すべき二酸化炭素を逆に二三%も増やしておいて、世界をリードする環境対策をすすめてきたなどと、よくいえますね。これでどうして世界最高水準の環境対策、ヒートアイランド対策をすすめられるというのですか。お答え下さい。
 とりわけ対策が急がれる二酸化炭素対策では、ロンドンが二〇五〇年までに二〇〇〇年比で六〇%削減する目標をもってとり組んでいるのに対し、基本方針は、「大会までに、大会開催によって排出される二酸化炭素の総量を大幅に上回る二酸化炭素の削減を達成する」としているだけで、京都議定書の目標達成などは眼中にありません。
 地球温暖化対策というのであれば、事務所、事業所の過度な東京集中をおさえるとともに、自動車走行量や排ガスの規制を強化することが欠かせません。
 また、都市公園を欧米並みの水準に引き上げること、稲城の南山や青梅丘陵など多摩地域の里山や自然の保護に全力をつくすことを基本に、総合的で実効性のある対策を確立することが不可欠であると考えますが、どうか。答弁を求めます。

環状道路の建設に突っ走るのは東京だけ

 知事が、オリンピックの名で加速させようとしている「都市再生」は、世界の大都市のと比べても異常なものです。その典型は、知事が、最優先にとり組むという環状道路です。
 そもそも東京には、首都高の内環状線と、八本の環状道路がほぼ完成しています。そのうえ、首都高中央環状線、外郭環状道路、圏央道の三つの環状道路が必要なのでしょうか。
 知事は、東京の環状道路は世界の大都市と比べて遅れていると言っていますが、事実と異なります。ニューヨークには、環状道路は一つもありません。そのかわりにトラックの都心部への流入を抑制する「トラックルート」というやり方が導入されているのです。ロンドンは一環状だけで何本もの環状道路をつくることはとっくの昔にやめて、かわりに混雑緩和制度と言って、環状道路内にはいる車に料金を課す制度やトラックの乗り入れ規制などを取り入れています。パリには、たしかに自動車専用の三環状道路計画がありますが、東京のように八本もの一般の環状道路はありません。自動車流入の抑制政策もなく、ひたすら集中をつよめ、やみくもに環状道路の建設に突っ走っているのは東京だけですよ。
 交通渋滞対策というのならもっとやるべきことがあります。東京大学の越教授は、「日常の大都市内の渋滞の場合、現実には数%から十数%の超過需要が発生しているに過ぎない」として、「現在ある道路をより有効に使いこなすだけでも、渋滞の大幅な削減、あるいは解消は十分に可能です」として、新規需要の抑制、トラック以外の物流手段の開発、信号改善や路上駐車の解消などを提案しています。
 幹線道路建設に重点をおくのではなく、都として公共駐車場の設置や商店街などがおこなう駐車場設置を積極的に支援すること、交差点改良やバスベイなどのボトルネック対策を抜本的に強化することこそが急がれていると思いますが、どうか。
 とりわけ外環道については、都の理不尽なやり方に、これまで協力してきたPI協議会の委員から抗議の声明が出され、計画の中止を求める住民の声がまきおこっています。三鷹市からは、「環境への影響が大きいと判断した場合は、計画を止めることもあり得る」という都の態度の堅持を求める意見書も提出されています。
 国が公式に凍結解除もしていない、「国幹会議」で検討もされていない、費用の負担もはっきりしていない、住民も合意していない、こんな異常なやり方は、かつてあったでしょうか。都市計画手続きを停止すべきですが、知事、どうですか。
 オリンピックをめぐる知事の独断的手法は目にあまるものです。基本方針に明記されたメインスタジアムの位置すら、知事は百%決まったものでないと説明する無責任な態度をとりました。都民がもっとも心配している財政計画もいまだに示されていません。
 都民と都議会には大事なことを隠しながら、白紙委任を取り付けたかのようなやり方は、都民や都議会を愚弄するものであり絶対許されないことを厳しく指摘しておくものです。

ヨーロッパの国々に学び少子高齢化対策を

 次に、都民の福祉、くらしの問題です。ところが石原知事のもとで、これらの課題は、都政の片隅においやられています。高齢者対策では、老人福祉手当などの経済給付的事業の徹底した切りすてでした。少子化対策も東京の出生率は全国最低、過去最低の〇・九八となったことが発表されましたが、知事は所信表明で、このことに一言もふれず、みるべき対策をすすめようともしません。
 ヨーロッパではどうでしょうか。経済給付的事業は福祉の重要な柱になっています。知事が先日訪れたイギリスのほか、多くの国が医療費の窓口負担は無料ないし少額です。高齢者の介護でも、イギリスでは、月額三万円から五万円の介護手当が出されており、ドイツやオーストリアの現金給付や手当も高く評価されています。少子化対策でもイギリスでは、児童手当など経済的支援の強化で出生率を二〇〇〇年の一・六四から二〇〇三年には一・七一に前進させています。
 イギリスをはじめとしたヨーロッパの国々での医療、介護への経済的給付事業について学ぶべきです。切迫している高齢者の介護、医療の新たな負担増への軽減策を検討することこそ急がれていると思いますが、どうですか。
 また、介護保険制度の改定で、要支援の高齢者にホームヘルプサービスの時間削減、特殊ベッドなど福祉用具の貸与打ち切りがはじまっています。しかし、寝たきりを予防し自立した生活にとって福祉用具は欠かせません。高齢者の状態に応じて福祉用具の貸与が継続されるよう、区市町村の独自努力への支援策などの検討を求めるものですが、答弁を求めます。
 知事、国内でも多くの県が、今年度予算の新規事業で少子化対策を戦略的課題に位置づけています。いまこそ、知恵と力を発揮して、少子化対策を一つひとつ具体化することが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

東京のものづくりの再生を

 もう一つ、東京が解決を迫られている課題が、ものづくりの再生です。
 そもそも、東京が急成長をとげ、世界都市といわれるようになったのは、東京に機械金属を中心とした高度な技術をもった中小企業が集積され、つよい経済市場が形成されてきたからです。
 ところが、石原都政はこの七年間、中小企業予算を連続して削減し、六割の水準まで引き下げてきました。ものづくり支援をつよめている大阪や兵庫、愛知などと違って、制度融資の改悪、工業集積支援や業種別支援の廃止、試験研究機関の統廃合をおしすすめることなどによって、都内中小企業、とりわけ製造業対策を後退させたのです。
 周知のように、欧米各国では、ものづくりの再評価がおこなわれ、「欧州製造業二〇二〇年の展望」では、製造業の復活が提唱されています。
 日本でも最近、海外進出していた家電や自動車メーカーが生産拠点を国内にもどす、いわゆる国内回帰がみられるようになりました。このため国もものづくりをささえる基盤技術といわれる鍛造、プレス加工、メッキなどの再生をはかるための「ものづくり基盤技術の高度化に関する法律」を制定しました。
 この法律は、大企業の下請け企業に対し、国が直接支援するものですが、大阪府は、九カ所の中小企業支援センターや総合的なものづくり支援拠点などを整備してきた経験を生かして、この法律を先取りする形で、研究開発費の支給、協議会の設置や中小企業の巡回訪問など、府としての独自の支援をはじめています。東京には、城南、城東、城北、多摩地域などこの法律の対象となる機械金属をはじめとする業種が多数集積されており、まさに東京のための制度といってもよいものです。
 ものづくり基盤高度化法を、都内製造業も活用できるように国に働きかけること、都として、同様の支援の仕組みをつくることをもとめるものです。
 また、都が策定を表明した産業振興ビジョンに、これらの製造業の振興を位置づけ、系統的な支援策を確立することを提案するものです。

教育基本法改悪を先取りし、違憲・違法行為

 最後に、教育の問題です。
 国会で審議されている教育基本法改定案の重大な問題点がうきぼりになりました。教育の目標に「国を愛する態度」など二〇項目をあげ強制することによって、憲法で保障された、内心の自由を侵すこと。戦前の軍国主義教育の痛苦の反省から、教育内容への国家権力の介入に歯止めをかけた第十条を変えて、国による無制限な「介入」に道を開くことなどです。
 東京都では、二〇〇一年に都教育委員会が教育目標から「憲法と教育基本法の精神にのっとり」という言葉を削除し、「わが国の歴史や文化を尊重し国際社会に生きる日本人の育成」と書き込みました。米長教育委員は、このことで「事実上教育基本法を改正した」と発言しました。実際、都政では教育基本法改悪の先取りともいうべき様々な違憲・違法行為がおこなわれています。

憲法、法律に違反した「日の丸・君が代」の強制

 その第一は、日の丸・君が代の強制です。
 二〇〇三年、都教委は「卒業式・入学式等における国旗掲揚、国歌斉唱の実施について」という「一〇・二三通達」をだしました。この通達にもとづいて、教師を「懲戒処分」でおどしながら職務命令で「日の丸・君が代」を強制してきたのです。起立斉唱やピアノ伴奏に、従わない教職員を停職三ヶ月という重い処分も含めこれまでに三四五人も懲戒処分しました。そればかりか、起立斉唱しない生徒が多ければ「指導不足」として教員への「注意・厳重注意」を下すことによって、生徒の内心の自由をも踏みにじっています。生徒は自分が立たなければ、先生が処分されると言うことで、「起立斉唱」を強制されているのです。
 最高裁判決は、子どもの学習する権利を保障する憲法二六条との関係で、「教育内容に対する国家的介入は、できるだけ抑制的でなければならない」とし、さらに、たとえ法律にもとづくものであっても、行政の裁量で行われる教育への介入は「不当な支配」に当たることがある、と述べています。都教委が「日の丸・君が代」の強制や教師への処分の唯一根拠にしている「学習指導要領」は、法律のどこにも出てこないもので、文科省がまさに行政の裁量でおこなっているものです。
 日の丸の位置、生徒や教師の座る位置など事細かな規定で学校をしばる一〇・二三通達は、文科省の裁量である「学習指導要領」からさえ逸脱するものです。しかも、もともと「国旗・国歌法」を制定する時、野中官房長官は、学校現場での内心の自由の質疑の中で、「起立する自由もしない自由もあるし、斉唱する自由もあれば斉唱しない自由もある」と答弁しています。これが立法の主旨なのです。
 都教委による「日の丸・君が代」の強制は、「思想及び良心の自由を保障する」憲法十九条にも、行政の「不当な支配」を禁じた教育基本法十条にも、国旗国歌法の立法趣旨にも反し、違憲・違法なものです。知事、どう認識しているのですか、見解を伺います。
 都教委は、生徒の内心にまで立ち入って強制しようとするものではないといいますが、現実は違います。今年の卒業式を前に、ある定時制高校卒業生は、三回にわたって副校長から起立斉唱を「指導」され、「私は自分で考えて立たないといっているのに、何度も言われて、怖くなりました」と語っています。
 これを生徒の内心の自由を踏みにじっていると言わずして、何というのでしょうか。文字通り、憲法十九条違反であり、許されるものではありません。一〇・二三通達をはじめ一連の不法な通達をただちに撤回すべきではありませんか、見解を伺います。
 そればかりか、「前・現生徒会長が生徒会で作成した、国旗・国歌反対のビラを全校生徒の机上に配布したこと」によって、校長と副校長が都教委に呼び出され、「注意」をうけています。高校生は意見表明の権利さえないというものであり、明らかに憲法二一条で定める表現の自由まで犯すものです。絶対に許されません。どうですか、明確に答えてください。

競争主義教育の一掃などで学力世界一のフィンランド

 子どもたちを競争に追いたて「勝ち組」「負け組み」に振り分け、差別と選別の教育をさらにすすめていることも重大です。政府が、教育基本法の改悪でまっさきにやろうとしているのは全国一斉学力テストです。東京ではこれを先取りし、中学二年生と小学五年生に一斉学力テストを実施、区市町村ごとの成績を発表しています。 その中で子どもたちはどうなっているでしょうか。
 成績が悪かった区では、類似問題でテスト、昨年のテスト問題でテスト、冬休み明けには業者テストとテスト漬けの中学校。成績を上げようと校長が事前に問題を教員に見せる。みんなに迷惑をかけるからテストの日は休んだという子どももいます。一斉学力テストの実施と公表が子どもたちをいかに傷つけているかは明らかであり、学力向上もにも結びついていないのです。
国際的な学力調査で、連続「世界一」になったフィンランドの教育では、どのような教育がおこなわれているのでしょうか。特徴は第一に、を教育から一掃したことです。一九八五年に習熟度別授業をやめ、勉強ができる子どもできない子どもともに同じグループで学するようにしています。できる子はできない子を教えることでますます学力が向上し、できない子の学力も向上するようになった。こうしたィンランドの教育は、東京の習熟度別授業、いっせい学力テストなど差別と選別をつよめることで、できない子をふやしている教育とは正ではありませんか。
第二に、学校と教師の自由と自立性が尊重されたこと、第三に行政は、不当な介入をやめ、教育条件の整備という本来の役割を果た。そして、二〇人程度の少人数学級が確立されました。
このフィンランドの教育には、日本の教育基本法の「人格の完成」をめざし、一人一人の人間としての成長を願う精神が生かされている。
知事、フィンランドの優れた教育にこそ、学ぶべきだと思いますが、見解を伺います。
東京でも学力テストや習熟度別教育などの競争教育から抜けだし、すべての子どもたちの発達を保障する教育をすすめることが必要とおもいますが、どうでしょうか。

三〇人学級は待ったなし

 さらに少人数学級の問題では、私たちの調査では、今年、都内で三一人を超える学級は小学校で五九%、中学校では八四・七%も占めています。いまや少人数学級にふみだしていないのは東京だけです。文科省の調査でも習熟度別指導よりも少人数学級の方が効果的と答える学校は八割を超えています。
 来年度から、都として三〇人学級にふみだすことはもう待ったなしであり、ただちにふみだすべきです。すくなくとも、区市町村に対する四〇人学級の押しつけはやめ、他県のように、すみやかに区市町村が加配教員を活用した少人数学級を選択できるようにすべきです。
 また、今年度からは、区市町村が経費を負担して独自に教員を任用できるようになりました。区市町村が任用する教員で少人数学級の実施を希望する区市町村には、それを認めることは当然です。それぞれ答弁を求め、再質問を留保し、質問を終わります。

【再質問】

 三点、知事に質問します。
 私たちはオリンピック自体を否定しているのではありません。オリンピックをてこに大規模開発を行う、これを反対しているんです。大変なことになるよといっているんです。
 知事は、三環状道路の整備などはオリンピックのためではないといわれましたけれども、オリンピックに間に合わせるために首都高速品川線は、都の直轄道路部分をつくり、一千億円も負担増となっています。外環道も無理やり決定に持ち込もうとしています。ここでも莫大な都負担が発生することになります。
 大体、羽田―築地間の地下道路、会場アクセスのための地下鉄などは都市計画にもなかったものです。
 では聞きますけれども、知事がいっていた、毎年一千億円ずつ積み立てるというオリンピック開催準備基金は何に使うんですか。十年で一兆円にもなるではありませんか。お答えください。
 次は、環境対策についてです。
 知事は、いかにも東京の環境が改善されているかのように答弁されましたが、都合のいい数字ばかりを並べています。大気汚染は、浮遊粒子状物質を除いては、全体としては横ばいです。ダイオキシン類、二酸化硫黄の減少は、工場の減少と旧公害防止条例の取り組みによることであることは環境白書に書いてあります。二酸化炭素は二四%もふやしています。
 一方、イギリスは、既に六%も削減しているんですよ。これで地球温暖化対策で東京が他都市を先導しているといえるんでしょうか。
 大体、知事自身、地球温暖化対策もヒートアイランド対策もうまくいっていない、ついさっき認める答弁をしたではありませんか。東京集中政策を進めて、どうやって世界最高水準の環境を実現できるというんですか。お答えください。
 国旗・国歌について、あの卒業式で三度も強制したこと、それは生徒の内心の自由を踏みにじっているではありませんか。それが違憲でないというなら、その理由を答えてください。

【答弁】

○知事(石原慎太郎君) 大山とも子議員の代表質問にお答えいたします。
 質問というより、非常に危険なデマゴーグという感じがしますがね。
 あなた方ね、共産党さん、オリンピックに反対のようですけどね、もし仮にですよ、努力しますけど、東京オリンピックが実現して成功したときは、共産党も賛成したなんていわぬでしょうな。これはみんなで覚えておこうね。
 オリンピックに関する経費についてでありますが、三環状道路の整備や横田基地の軍民共用化、羽田空港の再拡張、国際化などの施策は、オリンピックの開催の有無にかかわらず、東京の、ひいては国家の機能をさらに向上させ、国際都市間競争に打ち勝つためには必要な将来への投資であります。
 二〇一六年のオリンピック開催に向けてインフラ整備を一層促進し、都市問題の解決に大いに貢献していく有力なよすがでもあると思います。
 あなた、先ほどしきりにロンドンのことをいいましたが、私は最近、ごく最近、ヘリコプターでロンドンを飛び回りましてくまなく見てみましたが、東京以上にひどい渋滞ですな。環状線はできているけれども、足りないんですよ。一本じゃ足りないから、あんなことになるんですよ。道路をつくることが共産党にとってはよほど罪なようですけど、私は全くそうは思わない。
 オリンピックの招致、開催に当たっては、民間活力、資金などを積極的に導入するとともに、既存の施設を活用するなど、効果的で効率的な運営を徹底し、過大な経費をかけない方針であり、ご指摘の浪費型オリンピックは全く当たりません。
 次いで、環境対策についてでありますが、都は、ディーゼル車排出ガス対策において、世界的にもほとんど前例のない使用過程車の走行規制を実施し、都民の健康影響が最も懸念された浮遊粒子状物質について大変な大幅な削減をいたしました。
 これは、先日会いましたリビングストンも非常に評価して、東京のまねをぜひしたいといっておりました。
 国が示す環境基準が設定されているその他の大気汚染物質についても、私が知事に就任する前の平成十年度と直近のデータを比較しますと、光化学オキシダントを除き、八つの物質すべてで改善をしております。とりわけダイオキシン類は約八割、二酸化硫黄は約七割の大幅な削減を実現いたしました。
 また、地球温暖化対策については、事業者により高い二酸化炭素削減目標設定を求めておりまして、先駆的な制度を創設するなど、対策を強化しております。
 今後、さらに東京を安心して住み続けることのできる都市としていくために、一層強力に環境施策を展開していくつもりでございます。
 そのためにも、世界最高水準の地球温暖化対策として、より厳しい二酸化炭素の排出抑制や再生可能エネルギーの飛躍的な利用拡大など、国に先駆けた新たな方策を検討してまいります。
 次いで、外環道についてでありますが、外環道は、日本社会全体のダイナミズムを高め、我が国の国際競争力の向上、国家の繁栄、東京の発展に不可欠な道路であります。これまで、地元との話し合いも三百四十回以上に及び、先般、沿線の区長、市長からも意見を聴取いたしました。このような取り組みを重ね、今般、大深度地下への都市計画変更に着手いたしました。
 引き続き、外環道の早期完成に向け国を動かし、総力を挙げて一日も早い完成を目指しますし、また、その大きな引き金にもオリンピックはなると思っております。
 ちなみに、私が先日会いました、大ロンドン市制になってから初めて選挙で選ばれた市長のリビングストンは、レッド・ケンといわれて、真っ赤っ赤の真っ赤っ赤の政治家で、労働党が愛想尽かしてほうり出したそうですが、市長に選挙で当選しまして、どういう思惑か、また労働党はこれを抱えたようでありますけれども、彼の前歴、考え方については知りませんが、しかし、この人は非常に熱心にオリンピックを利用し、ロンドンの都市整備を、インフラの整備を含めて考えていますよ。少し共産党もこれを参考にして、もうちょっと合理的になったらどうでしょうか。
 次いで、少子化対策についてでありますが、我が国の総人口は、昨年、統計上初めて自然減に転じましたが、少子化は、社会がある程度豊かになり、高齢化が進んだ先進国では、長期的に見れば例外なく進行しているものと認識しております。
 しかし、フランスはそれに懲りて、この回復策をいろいろ講じておりますが、いずれにしろ、どのような状況にあっても、未来を担う子どもたちの健やかな育ちを支えることは、行政はもとより社会全体の責務であります。
 都はこれまでにも、子どもとその家庭を支援するため、福祉・医療改革や教育改革など、国に先駆けてさまざまな独自の施策を推進してまいりました。
 今年度も、区市町村の子育て支援策への主体的な取り組みを促すため、新たな補助制度を創設するなど、次世代の健全な育成のために必要な施策は既に実施しております。
 次いで、国旗・国歌の問題でありますが、これは既に教育基本法云々の前に、学習指導要領の中に、国旗は日の丸とする、国歌は君が代とするというきちっとした規定があるわけでありまして、これは最高裁の要するに判例でも、法律と同じような規制力を持つという裁定が下っております。
 いずれにしろ、その後に教育基本法が云々されているわけでありますが、私は、国旗・国歌の指導は違憲、違法なものでないとする都教育委員会の判断は至極妥当なものと考えております。
 次いで、フィンランドの教育についてでありますが、私は、これを称賛するあなた方と全く考え方が反対でありまして、首都大学の学長の西澤さんも持論としておっしゃっておりますが、まさに同じ意見でありますけど、小中学校における教育は詰め込みでなきゃだめだと思います。徹底して詰め込まなきゃだめです。
 そして、そこでやっぱり競争の意識を持たせ、人間、従前万能な人間はおりませんから、この点ではおれは劣る、この点ではまさるという、そういう相対的な人間観というものをきちっと備えて、その先、高校に行って感性、情念というのが育成されていく段階で、カリキュラムの選択の幅を与えるべきだと私は思いますが、いずれにしろ、フィンランドがどうか知りませんけれども、私は、それをそのまま日本に踏襲する必要は全くないと思いますし、戦後日本の教育は、行き過ぎた平等主義による画一的な教育が、子どもたちのさまざまな成長の可能性の芽を摘んできたと思います。
 個性、能力を重視し、それぞれが持つ可能性を存分に発揮させるような教育こそ大切であると思います。学校では互いに切磋琢磨し、競争しながら成長していくための、そういう試練が必要であると思います。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。

○教育長(中村正彦君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、国旗・国歌の指導についてでございます。
 学校における国旗・国歌の指導は、児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ、それを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために行っております。
 国旗・国歌について指導することは、生徒の思想、良心の自由を侵すものではなく、あくまでも教育指導上の課題として行っているものであり、通達を撤回する考えはありません。
 次に、校長、副校長への指導についてでございますが、ご指摘の事例については、校長、副校長が教員に対して、十分な指導監督を行っていなかったため、都教育委員会が管理職に対して、教職員への指導を徹底するよう注意をしたものでございます。
 次に、学力向上を図るための調査や習熟の程度に応じた教育についてでございます。
 児童生徒の学力の現状を把握することや、習熟の程度に応じた指導の充実を図ることは、児童生徒に確かな学力を身につけさせる上で必要不可欠なことでございます。
 都教育委員会は、今後もこれらの施策を継続して実施してまいります。
 次に、少人数学級についてのお尋ねでございます。
 限られた教員定数の活用につきましては、教育効果という観点から都教育委員会が主体的に判断すべきものと考えておりまして、これまで、少人数指導について、国の教職員定数改善計画を踏まえ、着実にその充実を図ってきたところでございます。
 都教育委員会としましては、学級には一定規模が必要である一方、基礎学力の向上に配慮してきめ細かい指導を行っていくため、少人数指導の充実に努めていくという方針に変わりはございません。
 最後に、区市町村が任用する教員をもって少人数学級の実施を希望する場合についてでございます。
 都教育委員会として、現在、みずからの経費負担により独自に教員を任用してまで少人数学級を実施したいとする区市町村の具体的な意向は伺っておりません。
 今後、仮に区市町村から具体的な意向が示された場合、その時点で当該区市町村から個別にお話を伺ってまいりますが、都教育委員会といたしましては、従前どおり、児童生徒が社会性を養うための教育効果の点で、生活集団としての学級には一定の規模が必要であると考えております。

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) オリンピックに関します二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、オリンピック関連施設についてでございますが、メーンスタジアム、選手村及びメディアセンターの整備につきましては、民間活力の導入などを検討しており、現時点において新たに土地を取得する予定はございません。
 次に、オリンピック関連経費についてでございますが、仮設施設費を含む大会運営費につきましては、ロンドンと同程度の三千億程度を見込んでおります。また、施設整備につきましてはおおむね五千億円程度、そのうち都の負担額は約五百億円程度と見込んでおります。

○環境局長(大橋久夫君) 環境に関する二点のご質問でございます。
 まず、地球温暖化対策についてでございます。
 二〇〇三年度に二酸化炭素排出量が約二四%増加している主な原因は、原発の長期停止に伴い、排出量が多い火力発電による電力供給がふえたためでございます。この影響を除けば増加率は約四%程度になりますが、削減目標の達成にはさらなる対策の強化が必要であることはいうまでもございません。
 このため、都に対して実効性のある対策の早急な実施を求めるとともに、都においても地球温暖化対策計画書制度の改正、運用強化などにより、事業所等から排出される二酸化炭素の削減に取り組んでいるところでございます。
 また、新自動車環境管理計画書の活用により、自動車からの排出量の抑制についても対策を強化いたしましたが、今後ともこれらの取り組みをさらに推進してまいります。

○建設局長(岩永勉君) 交通渋滞についてでありますが、放射、環状道路などの幹線道路の整備は、交通渋滞の解消や環境改善に寄与し、首都東京の発展に必要不可欠でございます。
 このため、特に効果の高い首都圏三環状道路や都内の骨格幹線道路などの整備を集中的に進めております。
 また、ボトルネック対策といたしまして、連続立体交差事業を初め、バスベイや荷さばき場などを設置するスムーズ東京21、右折レーンを整備する交差点すいすいプランなどの事業を積極的に実施しております。
 こうした総合的な取り組みによりまして、都内の走行速度が向上し、交通渋滞が緩和されるなど、着実に成果を上げておりまして、引き続き事業を推進してまいります。
 なお、先ほどのご発言で、一言だけつけ加えさせていただきますけれども、渋滞の問題に触れられまして、現状の道路を有効に使いこなせば足りるというご発言がありましたけれども、私どもの認識は全く逆でございまして、ネットワークの形成がいまだ不十分であるがゆえに道路を有効に使いこなすことができない、このように考えております。
 渋滞がわかっていながら代替の経路が選択できない、ここに問題があるのでありまして、私は、先ほど来申しましたように、三環状道路を初めとする骨格幹線道路の整備、これが不可欠でありまして、引き続き積極的に推進してまいります。

○福祉保健局長(平井健一君) まず、高齢者に対する経済的支援についてでございますが、我が国の医療保険制度や介護保険制度は、国民の生活を支える上で重要な役割を果たしておりまして、平均寿命世界一という成果は、これらの社会保障制度が有効に機能しているあかしでございます。
 しかしながら、本格的な少子高齢社会を迎えた現在、こうした大切な制度を将来にわたって安定的に維持していくためには、負担と給付のバランスの確保が必要不可欠でございます。
 したがって、今必要なのは、新たな経済的支援を実施することではなく、年齢にかかわらず社会保障制度を国民全体で支え、信頼されるものへと改革していくことと考えております。
 次に、介護保険による福祉用具の貸与についてでございますが、今回の介護保険制度の改正により、要支援・要介護一の軽度者に対する特殊寝台などの貸与につきましては、心身の状態から見て利用が想定しにくいことから、原則として保険給付の対象外とされました。
 ただし、軽度者であっても、日常的に起き上がりが困難であるなど、福祉用具の利用が必要と認められる方につきましては、引き続き保険給付の対象となります。
 また、経過措置として、現に貸与を受けている軽度者については、六カ月間の継続利用が認められております。
 こうしたことから、都として特段の対応は考えておりません。

○産業労働局長(成田浩君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の基盤技術の高度化についてでございますが、お話の中小ものづくり高度化法は、都内製造業でも活用が可能でありまして、既に都といたしましても説明会で周知するとともに、中小企業振興公社の経営相談や企業巡回などにおいても対応できるようにしているところでございます。
 また、都は、これまでも独自の支援策といたしまして、基盤技術の高度化を目指す中小企業等に対しまして、新製品、新技術開発支援事業や中小企業事業革新支援事業などを実施してきております。さらに、本年四月に地方独立行政法人化した産業技術研究センターにおきましても、基盤技術の支援強化を打ち出しているところでございます。
 次に、製造業の振興でございますが、東京の産業振興のためには、創業、研究開発支援などによる新産業の創出とともに、それらを支えるものづくり技術の強化が重要でございます。
 これまでも中小製造業に対し、技術、経営両面において、創業から事業再生まで総合的な支援を行ってきたところでございます。

【再質問答弁】

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) お話のインフラ整備につきまして、既存の計画がある事業につきましては、オリンピックを契機に加速することはあっても、オリンピックの開催の有無にかかわらず、将来の東京、ひいては日本にとって必要な事業であるということは知事が答弁されたとおりでございます。
 また、それ以外におっしゃった事業につきましても、結果としてオリンピックの開催に資するということは多々あろうかと思いますが、東京全体の将来像あるいは都市戦略の中でその必要性を検討されるべきものでございます。
 いずれにいたしましても、こうした事業でオリンピックに関係が深いものにつきましては、現在積み立てておりますオリンピックの基金を使って整備をしていくこともあろうかと思いますが、いずれにしても、十年間積み立てるともうオリンピック開催になってしまいますので、そこまでは積み立てられないと考えております。

○環境局長(大橋久夫君) 先ほど知事が申し上げましたように、国が示す環境基準が平成十年度と比較いたしまして、十六年度の直近の数字でございますけれども、これは一般環境大気測定局の数字でございますけれども、例えば二、三申し上げますけれども、浮遊粒子状物質では三六%の減、それから二酸化窒素は一三%の減、一酸化炭素は二九%の減、それからダイオキシン類七九%の減、ベンゼンは約六〇%の減、それからトリクロロエチレンは約五〇%の減、二酸化硫黄は六七%の減、まだございますけれども、このような数字が厳然とあるわけでございます。
 したがいまして、知事が申し上げた環境基準すべての大気汚染物質について、平成十年度と比べ、すべてにおいて減少しているということについて、正しい数字でございます。
 以上でございます。

以上