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第二回定例会 一般質問 六月一四日
古館和憲(板橋区選出)
自立支援法施行後の実態は深刻、十月の全面施行にむけ都として緊急対策を
ものづくり支援センターなどで、都内製造業の活性化を
はじめに、障害者自立支援法への対応についてうかがいます。
自立支援法は、国会審議の時から、障害者と家族に重い負担を強いるなど、きびしい批判が寄せられていました。施行から二か月ですが、わが党は、実施後の影響調査を、都内四百十か所の通所施設に対し行い、百をこえる施設から回答がありました。利用者総数三千五百人をこえています。その結果、利用者負担では、「これほどの負担になるとは思っていなかった」。施設運営では、減収によって「施設の存廃にかかわる大変な事態」など、想像をこえる深刻な実態がうきぼりとなりました。
そもそも障害者は収入を得ることが困難で、障害二級年金の場合、月六万六千円、それに加えて一万五千円の都の福祉手当と、一万円前後の作業所の工賃に頼らざるをえないのが実態です。政府は、負担上限額を設けるなど低所得者に配慮したと言いますが、現実はどうでしょうか。わが党のアンケート調査では、施設利用者の九七%が負担増となっており、これまで無料だったのが月額二万円以上の負担となった人が約四割におよびます。その結果、十五人が通所を断念し、退所を検討中の人が六十七人もいます。
私自身、本当にひどいと痛感したのは、障害者が作業所で得る工賃より施設の利用者負担が上回る事態が起きていることです。作業所で働いていた工賃が月一万円ぐらいなのに、二万円をこえる定率負担が生じています。「自立どころか就労への意欲を失わせる」「何のために働いているのかわからない」など、怒りの声が寄せられています。これで、どうして「自立支援」と言えるのですか。
施設の運営も深刻です。これまでも多くの施設は、収入が少ない中でも職員の献身的な努力によって支えられてきました。ところが自立支援法によって運営費の単価は下がり、そのうえ利用者が休んだ日は運営費から減額される「日払い方式」に変えられました。その結果どうなったでしょうか。わが党のアンケートでは、施設の七二%が減収となり、それも約半数の施設が一割から二割も減収となります。年間三千万円以上も減収する施設もありました。
政府や都は、定員の拡大や開所日を増やすことで減収は補てんできると言いますが、定員を増やし土曜・日曜も開所するなど「対策を講じても減額が生じる。抜本的な見直しを図ってほしい」、「人員削減や賃金カットはもうできない。すでにぎりぎりです」。これが施設からの訴えです。
知事、自立支援法施行後の現状を、どう認識していますか。
障害者のみなさんの切実な声に耳をかたむけて、負担増の状況や、施設運営への影響について、都として実態把握につとめる必要があると思いますが、どうか。
また政府に対し、制度の改善と再検討をおこなうよう、つよく要請していただきたい。答弁を求めます。
十月の自立支援法全面施行にむけ、都として緊急の対策が必要です。
第一に、利用者負担の軽減です。
都のホームヘルプサービスに限定して一〇%の定率負担を三%に軽減する措置では、不十分です。多くの障害者は、グループホームに住んで昼間は作業所に通うとか、在宅で作業所、ホームヘルパー、ショートステイを利用するなど、多くのサービスを組み合わせて使うことで、なんとか生活を支えています。そのひとつひとつに定率負担がかかります。お金のない人はサービスを使えない、そんな事態は許されません。だからこそ横浜市は、すべての在宅サービスを対象に、住民税非課税世帯は自己負担なしの無料を継続しているのです。予算的には人口三百六十万人の横浜市で七億円です。東京都ができないはずはありません。
都が実施している「三%軽減」の対象サービスを通所施設やグループホーム等にもひろげるなど、都の利用者負担軽減策の拡大を提案するものですが、見解を伺います。
第二に、施設運営および区市町村への支援です。
東京都は、福祉水準を引き上げるため、障害者施設にたいし、都加算やサービス推進費などの都独自補助を行ってきました。施設運営はすでに大幅減収となっていますが、十月からの全面施行により、いっそうの減収が見込まれています。それだけに、わが党のアンケートでも、「都独自補助は命綱」「仮に削減されれば施設を休止せざるをえない」の切実な声が多数寄せられています。
グループホームなど施設は十月から自立支援法にもとづく新体系に移行します。移行後も、都加算補助やサービス推進費を維持し、いままでの運営水準が低下することのないよう、手立てを講じていただきたい。
また、小規模作業所、ガイドヘルパー、手話通訳派遣などは、区市町村の地域生活支援事業に移行しますが、国の補助金はわずかで、現行の都加算補助と同様の都独自補助なしに、サービス水準を維持できません。利用者、施設関係者、区市町村からも不安の声があがっています。都はこの問題をどのように認識し対応するのか、答弁を求めます。
第三に、精神障害者福祉の拡充です。
精神障害者施策は、知的障害や身体障害者の分野にくらべ十分ではないことは、東京都自身も認めてきました。三障害一元化という自立支援法の理念にもとづき、遅れている精神障害者福祉サービスの格差是正は急務だと思いますが、認識と対応を伺います。
なかでも心身障害者福祉手当や、サービス推進費補助について、身体、知的障害のみ対象という枠をひろげ、精神障害者も対象に入れることを求めておきます。
精神障害者が除外されている民営バスの半額乗車制度も、実現に向けて努力を求めるものです。所見を伺います。
都内の製造業の復活の取り組みがはじまっています。私の地元、板橋区では、先端産業に応用されている医療分野、精密加工分野などで新たな事業がとりくまれ、製造出荷額や従業者数で二十三区中二位の地位をしめるにいたっています。
こうした取り組みを支えているのが、町工場と大学、研究機関によるネットワークであり、「板橋の町工場の技術力を含めた潜在能力は高く、その底力は強い」と評価されるほどです。この先進的経験を普及し、都内製造業の活性化にむすびつけることが緊急の課題となっています。
そこでまず、二十一世紀を展望した場合、重要な分野となるナノテクやITなど高度な先端・基盤産業の進展から立ち遅れることのないよう、都が積極的に支援していくことが、求められていると思いますが、知事の見解を伺います。
私は大阪府のとりくみを調査してきましたが、九カ所の地域中小企業センターをはじめ、直営の産業技術研究所、クリエイションコア東大阪などの支援施設に加え、国、府、市町村、産技研、商工会議所などが参加して「地域中小企業支援機関連携会議」をつくって、府の産業政策づくりに反映させています。
都としても同様の会議をたちあげ、官民共同での産業振興施策の拡充に努めることが欠かせないと思いますが、いかがですか。
また、大阪のクリエーションコアは、国のインキュベーター機能に加え、府独自に、販路拡大に役立つ常設展示場、産学公連携、創業支援、海外との取引のためのホームページづくり、金融相談など、ものづくりに役立つあらゆるシステムを集約したワンストップサービス施設として、大変役立っています。都としてもこうしたワンストップサービスの「ものづくり支援センター」を早急に検討すること、あらたな起業を支援するインキュベーションマネジャーを拡充することを求めます。
さらに城北のものづくりを支えている産業技術研究所は、現在地に直営で存続させることを重ねて求めるものです。それぞれ答弁を。
国際競争に打ちかつ上で、企業イメージの向上がかかせません。愛知県では、優れた理念をもち、環境に配慮したり、優れた製品をつくっている企業を「愛知ブランド企業」と認定し、ロゴマークの使用を認めるなど企業ブランドを戦略的に位置づけています。
東京でも、優れた技術をもっている企業を推奨する「東京ブランド」の創設を提案するものですが、どうですか。
ナノテクや先端技術に果たすメッキの役割が再注目されています。東京には全国の三分の一のメッキ業が集中しており、東京のフルセット型ものづくりに欠かせないメッキ産業の支援を抜本的につよめることをもとめて、質問を終わります。
【答弁】
○知事(石原慎太郎君) 古館和憲議員の一般質問にお答えいたします。
障害者自立支援法についてでありますが、障害者自立支援法は、自己決定と自己選択及び利用者本位の理念のもとに、障害者施策の一元化や制度運営の安定化を目指し、新たな障害福祉体系を構築するものであります。
この自立支援法の改革の理念は、これまでも都が全国に先駆けて実施してきた、利用者本位の新しい福祉を目指す福祉改革の考え方や取り組みと合致するものであると思います。
今後、この理念の定着を図るとともに、都の先導的取り組みをさらに前進させ、区市町村とともに連携しながら、障害者が地域の中で自立し、安心して暮らせる社会を実現していきたいと思っております。
次いで、先端技術への支援についてでありますが、東京の産業の活性化、経済の発展のために、先端技術分野への重点的支援が重要であることは論をまちません。
都はこれまでも、平成十七年二月に、最先端の超微細加工機を備えたナノテクノロジーセンターを開設するとともに、ベンチャー技術大賞などにより、先進的で高度な技術を有する企業を積極的に支援してまいりました。
さらに、世界に発信するIT拠点としての秋葉原の整備を進めるなど、都は既に全国に先駆けて先端産業の支援を行っております。
他の質問については関係局長から答弁いたします。
○福祉保健局長(平井健一君) 障害者自立支援法につきまして七点のご質問をいただきました。
まず、障害者の負担や施設運営についてでございますが、都は、さまざまな機会をとらえて、障害者関係団体や施設運営者等から意見を伺っておりまして、既に実態把握は行っているところでございます。
次に、国に対する要請についてでございますが、都では、障害者自立支援法が真に障害者の自立を支援するものとなるよう、法の成立以前から、ホームヘルプサービスにつきまして低所得者への配慮など、制度の円滑な運営に資するため、必要な国への提案要求を繰り返し行ってまいりました。
なお、法の附則第三条では、法施行後三年または五年後に、施行の状況等について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずることと定められているところでございます。
次に、利用者負担軽減策の拡大についてでございますが、障害者自立支援法では低所得者に対するさまざまな配慮がなされておりますが、これらに加え、既に都としてはホームヘルプサービス利用者に対する定率負担導入の激変緩和、障害児施設等入所者への医療費助成制度の対象拡大、精神障害者の通院医療費自己負担分の無料化など独自の負担軽減措置を実施しており、これ以上の拡大は考えておりません。
また、横浜市はすべての在宅サービスを対象に無料を継続している、都の軽減措置では不十分とのお話でございますが、障害者自立支援法における定率負担の導入は、サービスの利用者も応分の費用を負担し、みんなで支える仕組みを構築するものでございます。その上で、月額負担上限額の設定や個別減免の実施など、低所得者の方に配慮した軽減策が講じられているものでございます。
都としましては、ホームヘルプサービスが最も基幹的な在宅サービスであることから、法を円滑に施行するため、定率負担導入に係る激変緩和措置を講ずるものでございます。
次に、障害福祉サービスの運営水準についてでございますが、現行の居宅サービスは本年十月から、また施設サービスは五年間の経過措置期間を設けた上で、障害者自立支援法に規定する新体系のサービスに移行しまして、移行後は、提供するサービス内容や利用者の障害程度区分に応じまして報酬額の設定がされていることとなっております。
お尋ねのグループホームに対する都加算補助や民間社会福祉施設に対するサービス推進費助成につきましては、今後、障害者自立支援法の施行状況や報酬体系など国の動向を踏まえ、予算の範囲内で適切に実施してまいります。
次に、区市町村で実施する地域生活支援事業についてでございますが、地域生活支援事業に係る経費は、国の統合補助金により充当されることとなっております。この補助金は、個別事業の所要額に基づく配分は行われず、事業実績割合、人口割合で配分されることとなっておりまして、都としては、これまでも国に対し必要な財源措置を講ずるよう要求してきたところでございます。
地域生活支援事業につきましては、現在、各区市町村において地域の実情に応じた実施方法を検討しておりまして、都としては、区市町村の主体的な取り組みを促進してまいります。
次に、精神障害者福祉サービスについてでございますが、都では、いわゆる社会的入院患者の退院促進や低所得者に対する通院医療費についての独自の助成など精神障害者の特性を踏まえた継続的な支援を行ってまいりました。これらに加えて、障害者自立支援法による新たなサービス体系のもとで、精神障害者に対する福祉サービスの基盤整備を初めとした多様な施策を強力に進めていく必要がございます。
このため、本年一月に策定した障害者地域生活・就労促進三カ年プランにおいては、精神障害者のグループホームや通所施設などの基盤整備について計画化し、今年度既に実施しているところでございます。
最後に、精神障害者への民営バス割引制度の適用についてでございますが、障害者の運賃割引制度につきましては、鉄道、バス等のそれぞれの事業者の判断と負担により行われているものでございます。
都としては、民営の交通事業者に対し、運賃割引制度の精神障害者への適用を毎年要望しているほか、従前から国に対しましても、精神障害者の運賃割引について関係機関に働きかけを行うよう提言しているところでございます。
○産業労働局長(成田浩君) 都内製造業の活性化についての五点のご質問にお答えいたします。
まず、官民共同での産業振興施策の拡充についてでございます。
都では既に、区市町村や商工会議所、商工会との連携を日常的に図っておりますとともに、産業技術研究センターでは、業種別交流会や技術研究会を常設し、業界や中小企業者との意見、情報交換を進めているところでございます。
次に、ワンストップでのものづくり支援等についてでございます。
都では、中小企業のさまざまな経営相談に専門家が対応するワンストップ総合相談窓口を中小企業振興公社に設置するとともに、地域中小企業振興センターにおいては、技術、経営の両面からの支援サービスをワンストップで提供できる体制を整備しております。
また、インキュベートマネジャーにつきましては、中小企業振興公社や産業技術研究センターの各種支援事業と連携し、充実した支援機能を果たしているところでございます。
次に、産業技術研究センターについてでございます。
地方独立行政法人としたことにより、中小企業のニーズに弾力的かつスピーディーにこたえることが可能となりましたことから、今後とも、このメリットを最大限生かしながら、地方独立行政法人として運営してまいります。
また、現在地での建てかえについてでございますが、事業を継続しながらの工事となり、工期が長期間にわたることに加え、振動や騒音により試験研究に支障が出るなどの問題があるため、現在地での建てかえは考えておりません。
次に、東京ブランドについてでございます。
都では、平成十二年度に東京都ベンチャー技術大賞を創設し、世界に通じるようなすぐれた技術、製品を開発した中小企業を顕彰してまいりました。これまで五十二の企業が同賞を受賞しておりますが、その多くが信用度を増し、事業の拡大を実現しておりまして、同賞はまさに企業のブランド力を創出する機能を果たしていると考えております。
最後に、メッキ産業の支援についてでございます。
産業技術研究センターでは、メッキの専門研究員を配置し、日常的な技術支援を行うとともに、メッキ技術に関する研究開発に取り組んでおります。こうした中、クエン酸を利用し、新たな環境基準をクリアしたメッキ液の開発が実現し、メッキ産業の環境対策に貢献することが期待されているところでございます。
以上