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第二回定例会  討論  六月二一日

たぞえ民夫(世田谷区)

オリンピックをテコに大型開発
毎年積み立てる一千億円のオリンピック基金を都民のくらし、福祉のためにふり向けるべき

 日本共産党都議団を代表して、第百四十八号議案、東京都都税条例の一部を改正する条例ほか六議案に反対する立場から討論を行います。
 都税条例の改正は、小泉内閣による庶民大増税に連動して、都民税・区市町村民税合計一六〇〇億円の増税を都民に押し付けるもので、家計所得が減りつづけ、貧困と格差がひろがっている都民生活の現状をますます深刻にするものであり、断じて認められません。
 これに連動して国民健康保険料や介護保険料、都営住宅家賃などが値上げになり全部あわせると一年間に二〇万円を越える負担増になる高齢者世帯もあります。
 せめて庶民増税による都民税の増収分約五〇〇億円を負担増に苦しむ都民のために活用するという立場をなぜとれないのかという都民の批判の声が高まるのは当然です。
 しかも、今定例会の直前に、合計特殊出生率が〇・九八と史上最悪を記録したことが明らかになったにもかかわらず、知事は、新たな少子化対策をすすめる立場を示しませんでした。介護保険の改悪にともなう高齢者の負担増、今議会中に強行された医療改悪による痛みの押しつけにも、都の考え方と軌を一にするものといって、何ら支援しようとしません。

 石原知事がその一方で、オリンピックをテコに、大型開発などに七兆円もつぎ込もうとしていることは、住民の福祉を第一とした地方自治体の本旨を大きくふみはずすものであることを指摘しないわけにはいきません。
 わが党は、本会議で、具体的な数字を示して、知事のいうオリンピックは「コンパクト」どころか「浪費型オリンピック」にほかならないことを明らかにしました。ところが、知事は、わが党の質問にまともに答えず、「過大な経費をかけない」、「浪費型オリンピック」ではないという答弁をくり返しました。
 知事の一連の答弁は、ごまかしにみちたものです。
 第一に、三環状道路などのインフラ整備をオリンピックにかかわるインフラ整備の負担ではないかのように強調したことです。わが党が指摘したとおり、一兆三五〇〇億円にもおよぶ外郭環状道路は、オリンピックまでに建設するものです。しかも、そのために首都高中央環状品川線のあらたな一千億円の都負担と同じように、本来必要のない、莫大な都負担が発生することになるのは避けられないでありましょう。知事が、突然言いだした都市計画にもない築地、羽田間のトンネル道路にいたっては、まさに、オリンピックのために浮上した道路です。これらの道路だけで六兆円もの財政投入が見込まれるわけですから、どう逆立ちしても「コンパクト」などといえません。
 ちなみに、福岡市では、東京とは違いオリンピック関連施設のなかに、幹線道路の整備などの「交通インフラ整備費」をちゃんと計上し、市民に明らかにしていることを紹介しておきます。
 第二に、八万人のメインスタジアムのための交通アクセスについて、口をとざしていることです。この点では、あらたな地下鉄などが必要となり、これだけでも二千億円もの、あらたな投資が必要となることを指摘しましたが、都は否定できませんでした。
 第三に、施設整備費にお金がかからないというのも事実とことなります。この点では、土地取得費を除外した施設整備費の五千億円のうちのわずか五百億円だけが都負担であるかのような答弁がありました。これに対しわが党が、メインスタジアムなどの主要三施設の予定地がいずれも臨海地域開発事業会計など公営企業会計の所有地であり、勝手に取り上げるわけにはいかないことを質したのに対して、「現時点」で新たな土地を取得する予定がないとごまかすだけで、これを否定することができませんでした。
 第四に、「民間活力」を導入するから、お金がかからないという弁解も説得力がまったくありません。この問題では、東京都の過去の教訓が生かされていません。例えば、民活法にもとづいて推進してきた臨海副都心開発です。わが党は破たんした臨海開発と臨海三セクは速やかに処理すべきと主張してきましたが、そのたびに、都は〃なんとかなる〃といって、都のばく大な財政もちだしをつづけてきました。ところが、三月以降、臨海地域開発事業会計と臨海三セクの財政破たんを事実上認め、土地の投げ売りと民事再生法申請という破たん処理を発表したばかりです。知事の肝いりで一千億円も投入した新銀行はどうでしょうか。開業後、一年たったのに、一千億円を予定した民間資金はいまだに百八十七億円程度でそっぽを向かれ、経営も決算で大赤字です。
 結局、都は、オリンピックの名のもとにばく大な投資を行うことを否定できなかったのです。大体、インフラにお金をかけないというのであれば、オリンピック開催準備基金をつくり、毎年一千億円も積み立てる必要がどこにあるのでしょうか。道路などインフラ整備に使うことを都も事実上認めたではありませんか。このような「浪費型」の開発はオリンピックの精神とは相いれないものであることを指摘しておくものです。

 毎年積み立てるというオリンピック基金、一千億円を都民のくらし、福祉のためにふり向けるべきです。
 たとえば、福祉であれば、少子高齢社会対策が急がれていますが、中学生までの医療費の無料化と高齢者の寝たきり手当などはあわせても二百億円程度で実現できます。障害者自立支援法による一割の利用者負担は三十億円もあれば解消できます。教育でも三十人学級を三年計画で全学年で実施するとしても、年百億円程度あれば可能ですし、都立高校の冷房化も百六十億円もあれば足りる話です。住宅も百五十億円もあれば、一千戸の都営住宅と一万戸の木造住宅の耐震補強が可能です。
 業者に喜ばれている新元気を出せ商店街事業も四十億円あれば、すべての商店街を対象にすることができます。常設展示場のある大阪のようなものづくり支援センターは三十億円あれば十分です。環境を最優先にするというのであれば、三百億円あれば、十ヘクタール必要な都立公園をつくることを指摘しておきます。

 最後に、石原知事は、わが党の質問に対して何一つ根拠を示さず「デマゴーグ」と誹謗し、都議会の品位をけがしたことです。いくら、知事がわが党の質問に具体的に反論できないからと言って、断じて許される発言ではありません。
 私は、知事がわが党に対してあびせた言葉は、知事自身にこそ当てはまることを指摘するものです。その一つは、知事は、「共産党が支持した美濃部さんがすべての公共事業を中止」したと言ったことです。これほど事実をねじ曲げた話は聞いたことがありません。公共事業をすべて中止する自治体などあろうはずがないではありませんか。実際、革新都政は、きびしい財政状況のもとでも、首都高速や橋梁、地下鉄、都営住宅などの公共工事を精力的に行いました。首都高速や橋梁について言えば、石原知事を含めた歴代の四人の知事のなかで一番、つくったのは革新都政です。
 わが党は、何度もこのことを指摘しています。にもかかわらず事実をゆがめてはばからない。本当に驚くべきことです。
 さらに、知事は、「学習指導要領の中に、国旗は日の丸とする、国歌は君が代とする規定がある」と答弁したことです。知事。国旗、国歌の規定があるのは国旗国歌法であり、学習指導要領ではありません。そんないい加減な知識で、教育を云々することはやめていただきたい。知事の猛省を促して討論を終わります。

以上