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文書質問趣意書

2006年 6月19日
植木こうじ

エレベーターの安全確保のために

 6月3日に港区立住宅でおきたエレベーター事故で若い尊い命が奪われました。亡くなられた高校生のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族に心よりお悔やみ申し上げます。
 エレベーターは毎日日常的に利用するもので誰もが安全に管理されているものと思っています。そこでの死亡事故は絶対あってはならないものです。また、死亡事故に至らない事故の場合でも決して軽んじてはならず、今回の事故の教訓を明らかにすることはもちろん、エレベーターの適切な設置や保守管理のあり方、再発防止策を導き出さなければなりません。
 東京都が直接管理している都立学校関係を始め1813の都有施設でもシンドラー社製エレベーターが81基、都営住宅・公社住宅のエレベーターが3380基、シンドラー社製エレベーターが370基もあります。
 このうち都営住宅では、これまでもドアセレクター内の接点が接触不良でドアが開かずに閉じ込められる事態がおきたり、停止時に段差が生じてつまずく人もでるなどトラブルが昨年一年間では136件にも及んでいます。
幸い、これまでは大事故に至った事例はありませんが、港区のような事態が起きないという保証はありません。東京都内には全国でも一番エレベーター台数が多く、なかでも、都有施設など公共施設でシンドラー社製品が多く採用されている実態から見ても率先して事故防止策をとるようにすべきです。
 エレベーターの事故はシンドラー社製のほかと国内メーカーでも報告されており、安全を第一にすべき立場に立った政策の確立が急がれています。

Q1 まず、第1に、第3者の専門家による事故の原因と責任の所在の徹底究明をおこない、再発防止策を早期に確立するよう求めるものです。

 港区に事例でも保守点検に「異常なし」「安全は確認された」という結果であったのに事故がおきたわけです。住民からは「10階から1階までエレベーターが落下したことがある」という声があったと聞いていますが報告に問題がなかったかが、問われています。都営住宅についてもドアセレクター内の接点が接触不良による閉じ込められる事態がおきていても、「大きな事故がなかったので報告はありません」となっています。エレベ−ターの「維持保全の義務」は、「所有者または管理者」となっているが実際には「所有者または管理者」への報告自体が形式的なっている可能性があります。

Q2 この事態を重く見て、都営住宅のみならず、すべての都有施設について保守点検と事故報告の実態調査を行い報告と改善のルールを確立し安全対策マニュアルを作成すべきと考えるがどうか。

Q3 同時に、保守点検基準の改定の必要性も含めて国に検討を求めるべきです。

 第2に、「安ければ安いほど良い」という経済優先、価格競争を改め、品質保証、安全性能の確保を第一にする問題です。
 エレベーターの設置については入札或いは随意契約のあり方についても再検討が必要です。港区の事例では実際に発注した公社の保守・管理委託費用が5年まえに随意契約で446万円台の契約だったのが04年度からは入札制度に変わって06年度には115万円台の契約になっています。現在、捜査中で機械そのものに問題があったのか、保守・管理が問題かはまだ明らかになっておりませんが、設置後4〜5年たっていることからみても保守管理で問題が発見できなったことは問題です。価格競争で経済優先になってはいなかったかの検証が必要であり、エレベーター機器の設置、保守管理は「安ければ安いほど良い」ということであってはならないのです。エレベーターの保守管理契約は技術力を評価する総合評価方式をとっていないこと、最低制限価格制度の適用もないことについての新たな検証が必要です。

Q4 あくまでも技術力、品質保証、安全性能の確保を第一にする仕組みの確立のため、総合評価方式の採用、最低制限価格制度の適用をすべきです。お答えください。

Q5 また、都営住宅や全都有施設でのエレベーター管理について適切な安全点検項目、部品の交換など安全管理費用が適切に見積もられそのとおりおこなわれているかなどについて改めて保守管理の実態調査を求めるものです。

Q6 港区では保守管理業務を落札した業者が下請けにまるなげしたことも明らかにされています。保守契約で登録されている一級建築士若しくは二級建築士の有資格者以外が保守点検をおこなった場合、建築士法や建築基準法に明らかに違反になります。都有施設でこうした不適切なことがおこなわれていないか実態調査をおこなうべきです。

Q7 第3に、捜査中のシンドラー社製エレベーターについて、これから新たに都有施設で設置する計画になっている場合については、原因が明らかにされ再発防止策ができるまでは発注を控えることを求めるものですが、見解を伺います。

Q8 第4に、東京都が扱った民間の建物のエレベーターについて調査・点検を指示し、報告を求めていますが、これらについて一刻も早く報告をまとめ、問題点の有無、改善指導の必要性の有無などについて公表すべきです。

Q9 同時に、各特定行政庁とも協力して都内のシンドラー社製エレベーターのみならず、すべてのエレベーターの調査・点検をおこなうことを求めます。

 第5に、国土交通省に対して総合的なエレベーター対策の検討を求める問題です。
 今回の事故では、エレベーターそのもの安全性や保守管理、安全基準など多くの問題点が明かになりました。また、昨年の千葉北西部でおきた直下地震の際に、エレベーター閉じ込められる事態が起きたことや、六本木ヒルズでの長周期地震動によるエレベーターロープ切断事故も含めてそれら総合的なエレベーター安全対策が必要です。国土交通省でワーキンググループが設置され検討がおこなわれていると聞いています。

Q10 この際、国土交通省に対して、総合的にエレベーターの研究をおこない、抜本的な改善方針を確立するよう都として求めるべきです。

以上

A1 現在、警察などにより事故原因や責任め所在についての究明が進められており、今後はそれらの結果を踏まえて、国や区市、エレペーター業界など関係団体と連携し、都民が安心してエレペーターを利用できるよう、安全確保に万全を期していきます。

A2 港区内におけるエレペーターの死亡事故を受け、都営住宅を含む都有施設のエレペーターについて、直ちに、緊急点検と過去の不具合の発生状況の調査を行いました。
 エレペーターの保守点検の業務委託については、点検結果の報告の他、応急措置や故障時の対応等の安全対策を盛り込んだ「 維持保全業務標準仕様書」を既に定めており、これに基づく仕様により、的確な点検を行っています。

A3 エレペーターの保守点検委託契約における保守点検の基準として、東京都は「維持保全業務標準仕様書」を定めています。したがって、同標準仕様書の改定については、東京都が必要性を判断します。
 なお、改定する場合は、国及び他団体の動向も参考にします。

A4 レべーターの保守、点検委託契約については、「維持保全業務標準仕様書」に定めた業務内容の履行確保が図られていることから、総合評価方式の採用、最低制限価格制度の適用は考えていません。
 契約に当たっては、設置後5年未満のもの等の一部を除き、技術面・安全面等の観点から製造会社の系列下にある保守管理会社と特命随意契約を結んでいます。

A5 エレべーターの保守,点検委託契約に当たって、費用の算定については市場価格を反映した「維持保全業務積算標準単価表」に基づき、適正な見積りを行っています。
 また、委託業務については「維持保全業務標準仕様書」にしたがって、適切な保守管理を実施しています。

A6 建築基準法によるエレべーターの保守点検、いわゆる「法定点検」は、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する昇降機検査資格者が行うことになっています。
 都有施設のエレペーターの法定点検については、「維持保全業務標準仕様書」に定める業務計画書等により点検者の資格を確認し、こうした有資格者から適切に実施した旨の報告を受けています。

A7 シンドラーエレペータ株式会社製エレべーターの事故については、関係当局による調査が行われていますが、現時点においては事故原因の解明には至っていません。
 同社に対する指名については、こうした状況を踏まえ、慎重に検討し対応していきます。

A8 都が特定行政庁として所管している民間施設などのシンドラーエレペータ株式会社製エレペーターについては、管理者などに対して緊急点検・調査を指示したところであるが、結果については、それぞれの管理者から利用者への周知が図られるよう、都民の不安解消に向けて適切に対応していきます。

A9 現在、都内すペてのシンドラーエレべータ株式会社製のエレべーターに各特定行政庁に依頼し、調査・点検を進めています。その他のエレペーターの調査については、事故原因の究明等の状況を踏まえ適切に対応していきます。

A10 現在、事故原因の究明が警視庁などにより行われており、国土交通省においても、社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会が、エレペーターの安全確保の観点から調査・検討を開始しています。それらの結果を踏まえ、国土交通省や関係団体などと連携し、エレべーターの安全確保に万全を期していきます。

以上