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第三回定例会 一般質問(全文) 二〇〇六年九月二七日
かち佳代子(大田区選出)
介護保険料の負担軽減、地域リハビリテーション支援センターなど高齢者介護の充実を
産業振興ビジョンの作成、メッキ産業支援など、東京のものづくり活性化へ支援策を
まず、高齢者介護について質問します。
四月から改定された介護保険制度のもとで、保険料が大幅値上げになる一方、「介護度が低い」と判定された高齢者からヘルパー派遣やデイサービスが打ち切られています。介護ベットや車椅子の貸与が認められず、各地で悲鳴があがっています。政府が言ってきた「自立支援」や「介護の社会化」と逆行する深刻な事態です。このままでは、「保険料だけとりたてて、介護は受けさせない」制度になりかねません。そこで以下、緊急の問題について提案します。
第一に、介護保険料の負担軽減です。住民税増税に連動した負担増が高齢者におしよせているだけに切実な課題です。
保険料を下げるには、国の財政負担を増やすことが必要です。事業費全体の二十五%が国の負担とされていますが、そのうち五%は調整交付金で、後期高齢者比率の低い自治体には少ししか配分されません。東京都全体で国から来る調整交付金は三・六%にすぎません。
全国市長会・町村会、東京都市長会・町村会も、調整交付金は国庫支出金の別枠にしてほしい、すなわち国庫負担割合を現行の二五%から三〇%に上げてほしいと政府に要望しています。介護保険事業を安定的に運営していくうえで切実な要望だと思いますが、知事はどう考えていますか。
東京都全体で二五%の国庫負担がきちんと支払われた場合、約六十五億円の増収となり、年間保険料は高齢者一人あたり平均二千八百円値下げができます。
都として国庫支出金の不足分を区市町村に支援し、保険料軽減ができるようにすることを提案するものです。見解を伺います。
サービス切りすてにたいし独自の支援をおこなう自治体への支援を
第二に、介護ベッドなど福祉用具の問題です。
東京都社会福祉協議会の介護保険居宅事業者連絡会は、介護保険制度改定にともなう利用者への影響調査結果を七月に発表しました。それによれば、約五割の人が、「今まで利用していた時間や回数を減らさざるを得なくなった」、四割の人が「今まで利用していたサービスが利用できなくなった」と回答しています。
このアンケート調査を見ても、「今まで利用してベッドが借りられなくなって困る」など、軽度の利用者からの苦情や相談が事業者にもよせられていることがわかります。この調査結果をどう受け止めていますか。
あるひとり暮らしの七十代の女性の一例ですが、大腿骨に障害があり歩行困難と痛みに苦しんでいます。心臓疾患で、心臓に負担をかけられない生活です。ベットで起き上がるのも、柵がなければ起き上がれません。ところが、要介護1だからベットは九月末までに返すように言われ、途方にくれています。この人は生活保護のため、自費でベットを買うことも借りることもできません。
二十三区介護保険課長会でも、人工関節で脱臼しやすい、全身が衰弱しているなど、介護ベッドなしでは起き上がりが著しく困難になるケースがあるとの意見が出されています。
こういう問題が現に生まれているからこそ、港、北、新宿、中央、千代田、江戸川、調布のように、独自の支援をおこなう自治体が相次いでいるのです。
区市町村が、自立支援のため必要と認めた高齢者に対し独自にベッドを貸し出す事業について、区市町村から申請があれば、包括補助制度「福祉改革推進事業」の活用について検討していただきたいと思いますがどうですか。
第三に、地域密着型サービスと、リハビリテーションの充実です。
「通えて、泊まれて、住むこともできる」小規模多機能ホームは、住み慣れた地域で、身近な人々との触れあいの中で過ごすことができ、とりわけ認知症高齢者に大きな効果があります。小規模多機能ホームは、全国で百五十か所整備されていますが、都内ではまだ五か所です。都の計画では、今年度二千人分、約八十か所、二〇〇八年度までに五千三百人分、約二百か所の目標です。
都として小規模多機能ホームの役割の重要性をどう認識していますか。今年度からスタートした地域密着型サービス重点整備事業を来年度も継続し、小規模多機能型居宅介護などの拠点について、整備促進を図る必要があると思いますが、答弁を求めます。
身近な地域におけるリハビリテーションの充実も緊急の課題であり、従事者研修や相談機関への支援などをおこなう支援センターの役割が重要となっています。
今年度までに島しょをのぞく十二医療圏に一か所ずつ整備が進められてきた地域リハビリテーション支援センターについて、今後その質の向上に積極的に取り組むべきと思いますが、所見を伺います。
近年、海外に展開していた製造業の国内回帰が話題をよび、国によるものづくり基盤法の制定など、日本のすぐれた製造業の再興にむけた流れがつよまっています。
地方自治体でも、大阪での工業集積支援や神奈川や神戸の臨海部地域での研究機関の集積、愛知での企業ブランドのとりくみなどがはじまっています。
こうしたもとで国内のものづくり基盤産業の全国の出荷額は、二〇年前と比べ一五年間に二割伸び、製造品出荷額も二〇〇四年度のデータで若干ですが伸びを示しているのです。
ものづくりの強化は欧米でもとりくまれています。ロンドンでは、世界都市にむかう過程で生まれた貧富の二極化を是正するために、製造業を育成することに力を注いでいます。ドイツなどの欧州各国でも、中小製造業の振興がおおきな流れとなっています。
こうした内外のとりくみに学んで、都内のものづくりの活性化にとりくむことがいそがれているのではないでしょうか。
そこで何点か伺います。まず、都内には、中小製造業が高密度に集積している城南地域をはじめとして先端産業、それを支える高度な基盤技術など、ものづくりが数多く存在しています。東京のこれからの経済的発展の一翼をになうものづくり企業の育成にむけ、支援策を充実させるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
また、多摩川をはさんで京浜工業地帯を構成する城南地域と、神奈川県と連携した広域的な工業支援の仕組みづくりの強化を提案しておくものです。
あらたな産業振興ビジョンの策定がすすめられていますが、城南をはじめとする工業集積を柱に位置づけ、将来的な展望をふまえた内容とすることが欠かせないと思いますが、どうでしょうか。また、産業振興ビジョンの検討にあっては、懇談会にとどまず、中小企業対策審議会の開催や区市町村、業者団体などの参画をはたらきかけ、よりよいものとすることも大切なことであると考えますが、知事の見解を伺います。
城南地域のものづくりの活性化のためには、いま、各企業が必要としている特許や技術などのシーズ、それを製品化し、販路を開拓するなどを一体的に支援できるシステムが必要となっています。城南地域に、試験研究と経営改善、インキュベータ施設、展示場や販路拡大などを一カ所に集約した施設をつくり、中小企業振興公社と連携したとりくみを展開することがいそがれていると思いますが、いかがですか。
城南地域の企業は「工場の中の工場」「フルセット産業」といわれるように、提供する部品や材料が、最終製品を生産するための装置に活用されるものが多数占め、お互いに支え合う構造をもっています。めっき産業はその要をなすものであり、国がすすめる「ものづくり基盤法」にもとづく支援が欠かせません。都として国の支援の拡充を働きかけるとともに、都として、無公害型メッキへの技術革新支援、技能検定支援の拡充、用水型産業として上下水道料金の軽減の継続などの切実な要望に応えることを提案するものですが、あわせて答弁を求めます。
優秀な技能や環境、雇用者対策など優秀な企業を育成することはこれからの国際的な競争にうち勝つうえで欠かせない要件となるといわれています。都には優秀な技術者を認定する「東京マイスター」制度がありますが、認定するだけで終わっており、産業振興につながらないなど改善の要望がよせられています。そこで、都としてマイスターのPRをおこなうことやマイスターのいる企業や環境、雇用などすぐれた企業を認定し、資格を授与する「ものづくり東京ブランド」を創設することなどは、検討に値すると考えますが、答弁を求めます。
東京の製造業は、重層的な下請け構造で構成されており、大手企業による手形による実質値引きや不当な単価の引き下げなどに直面しています。そこで、手形発行期間の短縮、対象業種の拡大など下請け二法の改正を国に求めるとともに、都として下請け二法の遵守を徹底するよう求めるものです。答弁を求めます。
また、原油高騰にともなう鋼材費や原料費などの影響も深刻です。対策を国に求めるとともに、都として原油対策特別融資の創設をもとめるものです。
○知事(石原慎太郎君) かち佳代子議員の一般質問にお答えいたします。
ものづくり企業の育成についてでありますが、東京には世界に誇る高度な技術を持つ中小企業が集積しておりまして、日本の経済を牽引していく原動力となっております。こうした東京のものづくり産業の育成のため、これまでもベンチャー技術大賞の創設やナノテクノロジーセンターの開設など、先進性と独自性を持った施策を実施してまいりました。
さらに、知的財産総合センターを設置し、国際競争力の強化を支援するなど、多面的に施策を展開しております。今後も、さらにこれらの試みを重視していくつもりであります。
他の質問については関係局長から答弁いたします。
○福祉保健局長(山内隆夫君) 高齢者介護に関する六点の質問にお答えいたします。
まず、介護保険の調整交付金についてでございますが、この交付金は、保険財政の自治体間格差を是正するため、国庫支出金の法定の負担割合である二五%のうちの五%分を財源として財政調整を図る仕組みでございます。
具体的には、要介護者の発生割合の高い後期高齢者が多い区市町村や高齢者の所得水準が相対的に低い区市町村に対し、国費を傾斜配分しているものでございます。
都内の各区市町村における介護保険財政は、相対的に見れば健全かつ円滑に運営が行われており、現行の調整交付金の仕組みは十分に機能しているものと認識しております。
次に、調整交付金に係る区市町村支援についてでございますが、調整交付金は、保険財政の自治体間格差を是正する有効な仕組みであり、その五%相当額と交付実績の差額について都道府県が支援することは、公費負担割合を明確に規定しております介護保険制度の趣旨から適当ではないと考えております。
次に、介護ベッドに関する調査結果についてでございますが、お話の調査は、制度改正直後の時期に、介護事業者の団体が会員事業者を対象として実施したものであり、その中で利用者からの声を事例として紹介していることは承知しております。
今回の制度改正は、心身の状態から見て特殊寝台の利用が想定しにくい要支援などの軽度者について、保険給付の対象外とし、適正化を図るものでございます。ただし、軽度者であっても、客観的判定に基づき、起き上がりや寝返りができない方、そういう方は対象とされます。
この半年間、保険者である区市町村や現場の介護支援専門員などの取り組みによりまして、利用者の理解も進み、円滑に見直しが図られてきているところでございます。
次に、独自にベッドを貸与する区市町村への支援についてでございますが、今回の制度改正は、軽度者への特殊寝台の貸与を見直し、給付の適正化を図るものであり、介護保険対象外の方に対し、区市町村が独自に介護ベッドを貸し出す事業について、都が支援する考えはございません。
なお、昨日の自民党の代表質問に対する答弁のとおり、制度改正以前から特殊寝台を利用してきた軽度者に対しまして区市町村がその購入費を助成する取り組みについては、都としては時限的な支援を実施することとしております。
次に、小規模多機能型居宅介護についてでございますが、このサービスは、通所を中心に、利用者の希望による泊まりや自宅への訪問の機能により、住みなれた地域で高齢者の生活を支えていくサービスでございます。
既に都は、今年度から三カ年の地域密着型サービス等重点整備事業を実施しており、これによりまして区市町村を支援し、小規模多機能型居宅介護拠点など、地域に密着した介護サービス基盤の整備促進に努めているところでございます。
最後に、地域リハビリテーション支援センターについてでございますが、都は、地域でのさまざまなリハビリテーション事業の充実を図るため、当該地域においてリハビリ医療の中核的な役割を果たしている病院を地域リハビリテーション支援センターとして指定しております。
支援センターの活動については、リハビリの専門家や関係団体等で構成する東京都リハビリテーション協議会の意見を聞きながら、二年ごとに実績を評価し、これを踏まえて再指定する仕組みをつくるなど、質の向上を図っているところでございます。
○産業労働局長(島田健一君) 七点のご質問にお答えをいたします。
まず、産業振興のための基本戦略についてでございますが、産業振興の将来像に関する懇談会の第一回懇談会を九月六日に開催するなど、検討を開始したところであります。
次に、基本戦略における関係団体の参画についてでございますが、産業界を初め、観光、まちづくり、環境など幅広い委員で構成される産業振興の将来像に関する懇談会を設置し、意見を聞くこととしております。
次に、城南地域のものづくりの活性化についてでございます。
現在、城南地域の中小企業振興の一大拠点として、中小企業振興センターを設置し、技術支援、経営支援などを展開しており、併設されている大田区産業プラザの展示場等と相まって機能集約が図られていると考えております。
なお、同センターにおいては、産業技術研究センターと中小企業振興公社による連携した取り組みが行われているところであります。
次に、ものづくり基盤法に基づく国の支援についてでございます。
いわゆるものづくり基盤法は本年六月に施行されております。現在、都としては、メッキ関連企業を含む中小企業に対し、中小企業振興公社及び業界団体を通じて、その普及啓発を行っているところであります。
次に、東京マイスターのPRについてでございます。
東京マイスター制度は、技能者の社会的評価を高め、技能水準の向上に寄与しており、その受賞者は、ものづくり技能の指導活動等を通して社会に貢献しております。都は、受賞者の名簿を作成し、区市町村や関係団体等に広くPRしているところであります。
次に、いわゆる下請二法の遵守についてでございます。
都はこれまでも、親事業者で構成される主要業種団体協議会を開催し、下請取引の適正化や法の遵守について周知徹底を図っております。さらに、中小企業振興公社においても、下請取引改善のための指導を行っております。
なお、いわゆる下請二法については、平成十五年に改正され、既に対象業種が拡大されたところであります。
最後に、原油高への対応についてでございます。
本年六月、都は国に対し、原油・石油製品の価格や供給の安定化等について提案要求を行いました。また、原油高などにより事業活動に悪影響を受けている中小企業に対しては、既に制度融資において、有利な金利が適用される経営支援融資など、適切な金融支援を行っております。
以 上