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第三回定例会 討論 二〇〇六年一〇月五日

小竹ひろ子(文京区選出)

中央環状品川線にかかわる工事契約ほか四議案に反対、子ども医療費の助成に関する条例ほか二議案に賛成
石原知事のトップダウンではじめられたワンダーサイトなど、独断的手法が都政にゆがみをもたらしている

 日本共産党都議団を代表して、知事提案の第二〇四号議案・中央環状品川線にかかわる工事契約ほか四議案に反対し、日本共産党都議団ほか三会派共同提案の議員提出議案第一六号東京都子ども医療費の助成に関する条例ほか二議案に賛成する立場から討論をおこないます。
 今議会では、石原都政が都民のくらしと福祉を守るという自治体の本来の役割を投げすてる変質の道を歩んでいることが、ますます浮きぼりになりました。その第一は、オリンピック招致をテコにした大型開発の問題です。
 知事は「世界一コンパクト」な大会にするとくりかえしますが、知事が無理に無理をかさねてオリンピック東京招致を押し通そうとすればするほど、財政負担が増大し、総事業費が八兆五〇〇〇億円にもなりかねないことが明らかになりました。
 まず、七兆円に及ぶインフラ整備についてです。知事は、「オリンピックの開催の有無にかかわらず、その整備が不可欠」と答弁しましたが。圏央道や外環道などの三環状道路ついては、巨額な財政負担と都民生活にしわ寄せをもたらすものとして、都民の批判をまぬがれないものです。くわえて、オリンピックに間に合わせて急いでつくるとなれば、首都高中央環状品川線のように都財政負担がこれもうなぎ登りになることは明らかです。
 今議会に契約案件が提案されている首都高品川線は、本来のルールであれば、一部の出資金で済むものが工事をいそぎ、都の直轄事業としたために、千二百五十億円も都民の税金をつぎ込む羽目になってしまったものです。
 さらに問われるべきことは、知事が、国内選考のプレゼンテーションで「東京プロパーの財政の責任でオリンピックと言うおおきなイベントを遂行する」などと表明したことです。わが党が指摘したように、国がメインスタジアムの建設を拒否すれば、都負担で建設せざるを得なくなるなど、際限ない財政投入になりかねません。しかも、競技施設の計画もズサンなため、IOC基準で競技をおこなうとすれば、都のごくひかえめな費用ではとうてい止まらず財政負担がおおきくふくれあがることは明白です。
 競技施設や選手村などを地震被害の危険が高い臨海地域に集中したことも計画のずさんさを示すものです。オリンピック招致本部長は、わが党が地震にともなう液状化と側方流動の危険について質したのに対して、主要施設は、「地域危険度測定調査」の「総合危険度ランクの低い臨海部」に配置するから問題ないという答弁を行いましたが、そもそも総合危険度は、人口の少ない地域が低く評価されるもので、広大な空き地というべき臨海部にこれを当てはめて安全と言い張ることできません。世界のトップアスリートと観客を招くというのであれば、少なくとも万全な防災の備えをおこなうことは最低限の責任であります。
 わが党は、小泉前政権のもとで格差社会がひろがり、東京においてその矛盾と痛みがもっとも激しく現れていることを、都民の生活の現状を示して告発し、知事がこうした現状に思いを寄せ、支援のために全力をつくすことを求めましたが、知事は、日本は「極めて公正」な社会であるといいはりました。これは、誰の目にも明らかとなっている顕著な格差を認めようとせず、痛みに苦しむ都民の生活を顧みようとしないものです。また、「国民全体で痛みを分担しあう必要が生じている」といいました。これも、これほど現実を無視した言い分はありません。国民全体で分担どころか、大企業や大金持ちには減税をくりかえして、もっぱら庶民には増税を押しつけてきた。これが現実ではありませんか。こんな間違った認識で都政をすすめられたら都民はたまったものではありません。
 また、わが党は、石原都政が、「官から民へ」「小さな政府」などといって、市場原理を都政にもちこみ、この七年間に一五〇以上もの都立施設を廃止したり民営化し、都立病院を公社化することで、深刻な医師不足や看護師の欠員をまねき、重大な事態に追い込まれていることを明らかにしました。都が模範としているサッチャー改革自体、その行き過ぎから、イギリス本国でも見直しがすすめられているものです。ロンドンプランなどでは、二極化の是正や若者の就労の確保、福祉施策の拡充に取り組まれていることに学ぶべきことを重ねて指摘しておくものです。
 わが党が、四会派共同で提案した三議案は、都民の福祉・くらしを守るという自治体本来の使命をはたす立場からのものであります。
子ども医療費の助成に関する条例は、現在要綱で実施している乳幼児医療費助成を条例化し、区市町村が自主的判断で対象年齢を中学生まで拡大し、あるいは所得制限を撤廃したばあいに都が費用の一部を負担するものです。
 今定例会において、都が対象年齢拡大について具体的検討に着手していると答弁しましたことは重要ですが、実際に何歳までひろげるのか、あるいは現行どおり小中学生も医療費無料になるのか、明確にされていません。
乳幼児医療費助成の拡充は、少子化対策のためにも待ったなしの課題であり、都議会においても多数の会派が要望しているのですから、議会としての権能を発揮し、都民と区市町村をあげた切実な要望にこたえることを心から訴えるものです。
 シルバーパス条例の一部改正は、住民税課税者について一律二万五百十円は高すぎるという高齢者の声にこたえ、たとえば三千円のパスを導入して所得に応じた費用負担にすると同時に、多摩モノレールと新交通ゆりかもめを対象交通機関に加えるものです。
 心身障害者福祉手当条例の一部改正は、身体障害者、知的障害者に支給されている障害者福祉手当を精神障害者にも支給するものです。身体、知的、精神の三障害にかかわる施策の格差解消という当然の流れにそった提案です。
 いずれも都民の切実な要望にこたえる条例提案であり、賛同をお願いするものです。
 わが党の質問で、石原知事の独断的手法が都政にゆがみをもたらしていることが明らかになりました。その第一は、新銀行東京であり、もう一つは、知事のトップダウンではじめられたワンダーサイトです。ワンダーサイトは、他の文化施設に比べて破格の補助金が配分され、今村有策参与夫妻が館長、副館長を務めるなど「ファミリー支配」ともいうべきもとで、都の監査でも、その乱脈ぶりが指摘されていたものです。ワンダーサイト以外の文化施設の予算に大ナタを振るったり、圧倒的に足りない小児病院を統廃合したり、わずか一〇万円しかかからない盲導犬のえさ代への補助を廃止する一方、このような放漫な都政運営をつづけることは、到底、「都民の理解」を得られるものではありません。
 さらに今議会のさなかに、都教委がすすめている日の丸・君が代の強制が、憲法及び教育基本法第一〇条に違反し、強制を指示した都の通達が唯一根拠としてきた学習指導要領からも逸脱するとした、画期的判決が下されました。ところが、知事と都教委は、この司法の下した判断の重みを一顧だにせず控訴したことは言語道断です。本議会でのわが党の質疑で明らかなように、石原知事も都教委も強制が正当なものであることを、何一つ示せなかったではありませんか。都の姿勢に対し、父母、教育関係者に止まらず、東京弁護士会などからも批判の声があげられています。少なくともすべての強制を中止し、再検討すべきことを重ねて表明しておくものです。
 最後に、本議会での石原知事の態度は、知事としての資格自体が問われることを指摘するものです。
 それは、知事が、知事の肝いりではじめられたワンダーサイトのずさんな実態に関する質問にも、日の丸・君が代の強制での学習指導要領の規定に関する誤った認識を問う質問にも、二度にわたって答弁に立たなかったことです。これらの質問は、一方は知事自身、記者会見で「トップダウン」であることを認めているものですし、もう一つは、知事の認識の誤りに関する質問であり、これを拒む正当な理由はまったくありません。
 都合の悪いことは、知事自身のことであっても、答弁を教育長や部下に押しつけていて、平然としている──まさに、知事の態度は、議会制民主主義を踏みにじるにとどまらず、行政のトップにあるまじき行為であることをきびしく指摘し、討論を終わります。