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文書質問趣意書

2006年10月3日
小竹ひろ子

一、東京都労働資料センターの存続と拡充について

 東京都労働資料センターは、労働に関する情報及び資料の収集、提供等を行うことにより、労使関係の近代化と労働条件の改善向上に資することを目的にして、1974年9月に設立されました。その後1978年4月労働研究所の設立に伴い、同研究所に併合され、2001年4月労働研究所の廃止により、産業労働局産業政策部調査研究課の所管、2002年4月には、中央労政事務所の所管となり、2004年4月からは産業労働局雇用就業部調整課の所管になり、同年7月現在地中野区弥生の旧中野技術専門校跡に移転しました。
 労働資料センターには、労働に関する情報及び資料が24万点(図書4万冊、資料3万点、定期刊行物17万点)保存されています。こうした事業は、国・地方でも少なく、その存在価値はきわめて貴重なものです。その利用は、労働者、労働組合関係者、中小企業の事業主や労務担当者はもとより、学識者、学生などからも歓迎されてきました。
 ここの資料は、一般の図書館にはない労働問題に特化した資料・データーであり、特に東京の労働運動の歴史的な資料や都内の労働実態調査等、貴重な資料となっています。以前は、労働研究所と併設した時もあり、研究所の研究調査とセンターの情報資料は労働分野はもちろんのこと、中小企業の経営団体にも大きく貢献したと言われています。
 これらは歴代の職員が、労働研究所、労政事務所とタイアップして集めたものであり、職員配置がなされている時は“資料センターニュース”が毎月出され、年間の蔵書目録も発行するなどの利用者サービスが行われ、関係者に喜ばれ、多くの人に利用されていました。

Q1 失業、リストラ、非正社員の増加など雇用をとりまく現状のもとで、労働者の地位向上、労働条件の改善、労使関係の近代化は喫緊の課題となっています。こうした、東京都労働資料センターの役割が、ますます求められている今こそ、その事業を存続・拡充することは自治体としての責務です。東京都として東京都労働資料センターを存続するよう求めます。

 労働資料センターを広く都民に利用されるようにするためには、利便性の向上も欠かせません。
 特に労働相談では、増加の一途をだどっていますが、労働事件の解決することはもちろん、労働者の地位向上、労働条件の改善、労使関係の近代化で労働事件を減少していく上でも、労働資料センターの資料は多いに利用価値があります。
 労働行政事業を行っているところ、特に労働相談情報センターなどの身近にあることは、利用者の利便性を確保する上で大変有効です。
 また、現在地に移転する前は、飯田橋に中央労政事務所と併設されていました。交通の便のよさと同事務所を訪れる人が気軽に利用できていました。

Q2 たとえば、元に戻すなど利用の向上をはかってはどうか。また、労働相談情報センターに併設してはどうか。お答え下さい。

 また、来年度からは、専任の職員がいなくなると聞いています。今でも専門性をもったOBの非常勤職員が、相談に応じて情報の提供サービスを行っています。

Q3 引き続き専任の職員を配置し、労働関係資料の収集や利用者の要望に応えられるようにすべきと考えますがどうですか。

Q4 現在、労働資料センターにはコピー機もありません。コピー機を設置して利用者の利便性を図ることは基本的なサービス向上です。また、予算をふやし資料センターニュースや図書目録を発行するなど、労働資料センターの存在を広報するよう求めます。答弁を。

二、文京区立大塚町公園及び区立元町公園の都市公園としての存続について

 文京区では、長い歴史があり地元住民に親しまれている2つの公園が、区の都合により現在地から他に移され、取り壊されようとしています。住民の怒りが大きく広がり、マスコミでも取り上げられて社会問題になっています。
 1つは、文京区大塚1丁目にある区立大塚町公園(通称新大塚公園)です。隣の区有地と一体にして、統廃合する2つの中学校(区立五中と七中)の新舎を建設する方針を、区教育委員会が発表しました。
 この新大塚公園は周辺住民に親しまれ、赤ちゃんからお年寄りまでたいへん利用度の高い、地域の交流の核にもなっている公園です。40年以上経るなかで、桜の大木がみごとな花を咲かせ、セミが繁殖する生態系ができるほど、自然豊かな公園です。住民は「新大塚公園を残して欲しい」と、文京区に約1万7千余の署名を提出しています。
 公園は一朝一夕にできるものではありません。長い間かかって自然が形成され、緑豊かなものになるのです。住民の交流の場として重要な役割を果たすとともに、住民は愛着を持っていることからも、別の新たな場所に代替公園を作れば壊していいのだとはなりません。今、「都市再生」の名でどんどん開発が進められ、貴重な緑が失われ、ヒートアイランドや温暖化など地球環境が大きな社会問題になっています。CO2削減に重要な役割を果たす公園の貴重な緑は、きちんと保存しなければなりません。
 都市公園法第16条一項には、「みだりに都市公園の区域の全部又は一部について、都市公園を廃止してはならない」とあります。しかし「廃止される都市公園に代わるべき都市公園が設置される場合」は除かれており、文京区はこのことをたてに、新大塚公園を廃止し、代替公園を五中跡地に造るとしています。代替公園は、現在地より1キロメートル離れ、崖地にあるため急な坂を上り下りしなければならず、高齢者の人達は利用できないなど、現在のような多くの利用者の要望に応えられません。また、五中学区域住民からは、学校をなぜなくすのかなど沢山の意見が上がっています。住民に納得できる説明がなされず、とうてい合意をできるようなものになっていません。 

Q5 五中跡地に造るという代替公園は、都市公園法第16条二項の「代わるべき公園」にふさわしくないのではありませんか。お考えを伺います。

Q6 都市公園の廃止、移転の場合には、周辺住民の合意の義務付けなど、厳密な対応が必要と考えますが、どうですか。

Q7 都として区立大塚町公園の存続のために、積極的な役割を果たすべきと考えますが、どうですか。

 もう1つは、文京区本郷1丁目にある区立元町公園です。区は、ここに区立総合体育館を移転することを発表しました。元町公園は、関東大震災後都内52ヶ所に作られた震災復興小公園のうち、唯一原型をとどめるもので、地元住民はもちろん、日本造園学会等専門家からも存続を求める声があがっています。区は6月5日、元町公園を元町小学校跡地に移転変更する案を知事宛に申請し、都は6月20日に都市計画公園の変更案について同意しました。
 元町公園について都教育委員会は、04年3月「史跡等整備委員会」の報告の中で、都の名勝の新たな指定対象とすべき6候補の筆頭にあげ、詳細調査を実施すべきとしました。都は04年9月に、都教委の担当者を通じ、文京区側に文化財指定にむけての話し合いを持ちました。
ところが文京区側は、その後きちんとした対処をしないまま、今回公園の廃止・移転を
うちだしたのです。文京区の都市計画審議会に諮しましたが、「文化財的価値について専門学識によろ検証をすべきだ」という多数意見で継続審議になり、ストップしています。

Q8 震災復興小公園として現存している唯一の公園である元町公園について、都は文化財としての価値をどう認識しているのか、伺います。

 建築史学会・日本造園学会は、「建築史・都市計画史・造園史上世界的にみても特筆すべき事業」「貴重な歴史遺産であり」「大正・昭和初期のモダニズム思潮が展開された造形点と景観を現在に伝えるわが国の近代都市の文化遺産」として高く評価し、元町公園の存続を求めています。また、文化庁文化財分科会第3専門調査会委員会からは、9名の連名で「元町公園の保存に関する意見書」が出されています。文京区の文化財保護審議会委員全員の「元町公園・元町小学校の保存活用についての要望書」も提出されています。いずれも貴重な文化財である元町公園を、保存すべきであるとしています。

Q9 元町公園を廃止してしまえば、関東大震災で、東京市時代に都自身が行った事業の痕跡が全くなくなってしまうことになります。歴史的な文化遺産は今こそ守り、後世に継承する姿勢に、都自身が立つことが求められています。その立場からの指導と説得を行い、貴重な財産を後世に残すべきだと考えますが、都の認識を伺います。

 今回、元町公園に伴い社会問題となっている文京区の文化財問題は、今回に限って起きたことではありません。1991年文京区庁舎(現シビックセンター)建設時の文化財保護法違反に連なる問題です。
 当時文京区は、文化庁や東京都から指導されていたにもかかわらず、文化財保護法80条に違反し(シビックセンターが特別名勝の小石川後楽園の景観を阻害したこと)、さらに埋蔵文化財調査をしなかったことで、社会問題になりました。そして東京都と文化庁に対し、文化財行政等に関する確約書と「文化財行政については都と文化庁に、今後ご指導たまわる旨」の"詫び状"を提出しています。

Q10 今回の元町公園の廃止は、この姿勢から大幅に後退し、約束をほごにしているものであり、都教育委員会として見過ごすことが出来ないと思いますが、見解を伺います。

Q11 都教委として、元町公園の詳細調査をきちんと実施するよう区に働きかけ、専門家の評価を求めるべきではありませんか。

Q12 元町公園について、都教委が「都指定名勝」の指定対象候補としてあげ、地元住民、造園や文化財関係の専門家から保存を求める声が上がっているのに、都市整備局の方では、区側の都市計画変更理由のみで簡単に移転廃止の同意書を出したのは問題です。軽率のそしりはまぬがれません。この問題をどうとらえ、対処しているのか。ここまで社会問題になっている状況の下で撤回し、保存を指導すべきですが、お答え下さい。

以 上

回答

A1 東京都労働資料センターについては、社会情勢の変化や利用実績、費用対効果など様々な観点から、今後の事業のあり方を検討しています。

A2 今後の東京都労働資料センター事業のあり方については、社会情勢の変化や利用実績、費用対効果など様々 な観点を踏まえ、現在、検討中です。

A3 今後の東京都労働資料センター事業のあり方については、社会情勢の変化や利用実績、費用対効果など様々 な観点を踏まえ、現在、検討中です。

A4 今後の東京都労働資料センター事業のあり方については、社会情勢の変化や利用実績、費用対効果など様々 な観点を踏まえ、現在、検討中です。
 なお、東京都労働資料センターについては、ホームページ等により、広報に努めています。

A5 都市公園法第16条第2号に関しては、公園管理者たる区が判断するものと認識しています。

A6 大塚町公園は都市計画決定された公園です。
 都市計画法では、都市計画の変更等に際して、公聴会の開催、意見書の提出、都市計画審議会への付議等、住民等の意見を反映させる手続を定めています。

A7 当該都市計画公園の存続等については、区が主体的に決定することとなります。
 東京都は区が定めようとする都市計画公園の決定・変更に関して、都市計画法第19 条に基づき同意協議に応じる立場です。

A8 文京区立元町公園は、東京都文化財保護審議会委員の学識経験者からなる『史跡等整備検討委員会報告』(平成16年3月31日)において、「名勝の新たに指定対象とすペき候補」とされた公園のーつです。
 区立元町公園は、関東大震災後の昭和5年に東京市が設置した震災復興小公園のーつであり、建設された当時の姿に近い状況で残された貴重な公園と認識しています。

A9 都教育委員会では、文京区立元町公園は震災復興小公園として貴重な文化財と認識しており、文化庁とともに文京区と協議を行っています。
 現在、文京区において適切な保護策の検討を行っています。

A10 お話の件については、国指定特別史跡及び特別名勝小石川後楽園の文化財保護法に基づく現状変更許可及び埋蔵文化財の規定に関するものであり未指定文化財である文京区立元町公園に関する取扱いとは異なるものと考
えられます。
 なお、区立元町公園に関しては、文化庁とともに文京区と協議を行い文京区において適切な保護策の検討を行っています。

A11 文京区立元町公園の文化財としての適切な評価は、区自らが区立元町公園の現状調査や歴史的価値の調査を実施し、専門家の意見等を踏まえて行うことが重要と考えています。
 このため、都教育委員会としては、文化庁とともに必要な調査について文京区へ働きかけています。

A12 文京区立元町公園の都市計画変更は区の主体的判断に基づき行われます。都市計画法第19 条第3 項の規定に基づく区からの都市計画変更の協議については、「元町公園の歴史性を継承する」という区の見解も踏まえ、同
意したものです。

以上