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文書質問趣意書
都市公園の整備・拡充について
2006年10月3日
たぞえ民夫(世田谷区選出)
地球全体の温度がこの百年で一度近く上がったといわれる中で、東京が三度も上昇しているなど、東京と首都圏でのヒートアイランド現象を解消していく手立ては、生存権にかかわるまったなしの課題になっています。
この問題について、気象学者などからもさまざまな実証研究がおこなわれていますが、最近の大手町と八王子の昼と夜の気温の変化についての検証で、昼間の気温が大手町が三十九度で、八王子が三十八度とあまり変わっていないのに対して、翌日の明け方の気温が都心では三十度を下回ることがないのに、八王子では二十四度に下がっていることが明らかにされています。
八王子の場合、緑をはじめ自然が多く残されており、それが夜間の気温を下げている大きな要因とされています。新宿御苑など広大な空間・緑地があることによって、周辺にくらべて気温をさげていることも指摘されています。
東京のヒートアイランド現象対策として、海風、谷風、山風などの風の道とともに、公園、樹木、芝生は大きな効果があることも検証されています。
快適な空間を提供する緑のしげる公園の確保はかかせません。ところが、東京23区の公園面積は、国内政令都市の中で最下位の14位で、一人あたりの公園面積は2・9uにとどまり、福岡市の三分の一という水準です。
都市公園の整備実績は、1998年度での公園整備費は460億円、用地面積は157354平方メートルでしたが、03年度の整備費は337億円、面積は35816平方メートルとなり、公園の整備は大きく立ち遅れています。
今、東京全体で都市計画決定している公園・緑地約10600fのうち、都民に公園として利用されているのは四割にすぎません。
Q 公園の整備については、都の計画の重要な柱に位置づけるべきだと思いますがどうですか。
都と区市町村は、こうした現状を改善するため、2015年までに優先重点公園・緑地を選定して、優先的に整備を着手するとしていますが、事業化計画検討の対象にしている2600fのうち、今回、優先重点公園・緑地に指定したのは、454fにしかすぎません。
しかも、優先に指定された公園・緑地についてさえ、緊急性、整備効果、財政的状況をにらんでおこなうことにしており、これでは事実上の先送りといわざるをえません。
Q 優先重点公園・緑地については、早急に事業化し、それをのぞいた事業化計画検討区域についても、いつ実施にふみだすのか、年次計画を策定して取り組むべきではないですか。
Q 同時に、都としての年度ごとの用地取得計画を明らかにして、それにふさわしい予算を組むことがなによりも求められていると考えますが、見解を伺います。
Q また、用地の買収にたいする国の補助のあり方についても、改善が急がれています。国からの国庫支出金は用地については3分のTだけです。道路、街路整備や河川整備と同様の補助率である2分の1に引き上げるよう、国に改善を働きかける必要があると思いますが、どうですか。
八王子市にある都立長沼公園は、五年前に事業用地の拡大をおこなうため、東京都都市計画審議会で民有地の用地取得区域を決定しました。
しかし、都はいまだ用地の取得を進めないため、土地所有者や市民は、都が一刻も早く用地取得をおこなうよう求めています。
Q 都市計画決定をおこなう場合、少なくとも用地取得実施の裏づけや見通しがあってこそ、本来の都市計画の手続きではありませんか。長沼公園の用地取得を明らかにして下さい。
Q また、今後の都市計画手続きは、事業の具体性をしっかり担保する必要があると思いますが、どうですか。
都市公園を整備するうえで、さまざまな取り組みが必要ですが、特に工場跡地の優先取得や、丘陵地の緑を乱開発から守るための、保全が有効な手段です。
財務省の私的研究会である、「国家公務員宿舎の移転・跡地利用に関する有識者会議」は、06年6月13日、「東京23区に所在する国家公務員宿舎の移転・再配置と跡地利用に関する報告書」を発表し、区部での売却処分をすすめるとしています。これによる売却益は4860億円と見込んでいます。私の地元、世田谷での移転による廃止予定宿舎は45ケ所にもおよびます。
Q この際、廃止予定にあがっている国有地を公園用地として積極的に取得するよう検討するべきと考えますが、どうですか。
平成15年10月に開かれた東京都都市計画審議会は、『現行の枠組みや概念にとらわれず、みどりづくりを戦略的に転換する』という答申がだされました。
都は答申をうけて、「みどりの新戦略ガイドライン」を発表し、民間の活力の導入をはかる「民設公園」などを提案しています。民設公園制度は、都が率先して用地取得をしなくとも都市公園を整備できるというものです。
Q 民設公園は、これを理由に都市計画上の規制をこえた超高層建物などを認めないこと、また、公立公園と同等に活用できることが不可欠ですが所見を伺います。
都の方針にたいして、東村山市は西武鉄道株式会社が土地処分をおこなう所有地のうち12000平方メートルの土地を公園に整備するため、西武鉄道に買収を働きかけましたが、2004年度の市財政は歳出410億円にたいして、土木費の内公園費は2億円たらずの財政力のため、自力での取得はできませんでした。今年7月の近隣地価調査によると、基準地の1平方メートル当たりの価格は22万円で、敷地を取得するには27億円にもなります。
結局、この土地は別の不動産会社が取得し、ここに超高層の集合住宅を建設する計画です。財政規模が小さくとも、取得できる柔軟な支援体制の拡充は欠かせないことが、教訓です。
都の補助制度である「市町村土木補助事業」では、公園用地の取得計画にたいして、国庫支出金を導入する場合、国の補助は3分のTで、残りの事業費のうち市は大部分を負担することから、財政負担はきわめて大きいものになっています。
また、市が国庫支出金で採択される公園面積は500平方メートル以上になっており、市町村が独自に取得する面積は大きく容易ではない状況です。
市の財政状況からみても、都の「市町村土木補助事業」の制度見直しが急がれます。
Q 緊急に、都市公園事業にたいする補助率を3分のTに引き上げ、それに伴い区市の負担を軽減する必要があると思いますが、見解を伺います。
都としての公園用地の取得は、10万u以上の都市基幹公園で、これにより都の取得用地面積が大きいため、用地買収に都みずからも容易に着手できないことが、都の事業を遅らせている原因になっています。
この際、都と区市町村が基準をさだめた公園用地取得面積の種別分担の柔軟な対応が必要です。
Q 10万uを超えない場合でも、都が率先して取得すること、また、区市の取得面積でも都が取得できるよう、種別分担基準の再検討をおこなう必要があると考えますが、答弁を求め質問を終わります。
以上
回答
A1 公園整備については、緑の重要性に鑑み、総合的、体系的に施策の道筋を示した「緑の東京計画」(平成12年12月)において、市街地の緑を回復する施策として既に位置付けています。
さらに、「緑の東京計画」の実現に向け、平成17
年度に「みどりの新戦略ガイドライン」や「都市計画公園・緑地の整備方針」を策定しました。
A2 「都市計画公園・緑地の整備方針」では、優先整備区域として約454
へクタールを定めており、その区域については、2015
年までに整備に着手する予定です。
優先整備区域以外の区域については、概ね10
年ごとの事業化計画の更新こ合わせ検討していきます。
A3 都立公園の用地取得の状況は、平成16年度25,255
平方メートル、平成17年度34,778平方メートルとなっています。
また、平成18 年度予算では、35,816平方メートルを取得する予定です。
今後とも、「緑の東京計画」に基づき、都民1人当たりの公園面積を平成27年度末までに7平方メートルとする目標の達成に向け、着実に取得できるよう、財源の確保に努めていきます。
A4 公園整備の用地取得の補助率については、平成13 年度から、国土交通省こ対し、3 分の1から2分の1に引き上げるよう要求しています。
A5 都は、平成18年3月に、「都市計画公園・緑地の整備方針」を策定し、事業対象地を、今後10
年間に整備に着手する予定の「優先整備区域」とそれ以外の区域に区分しました。
優先整備区域内では、用地取得を計画的に進めていますが、長沼公園は優先整備区域に指定していません。
長沼公園では、地権者の協力を得て、土地を無償で借りて整備し、開園する「借地公園事業」を積極的に実施しています。
平成15年度は、既に0.72へクタールの土地を借り受けており、年度内に公園整備を行います。引き続き平成19年度も借地による公園整備を実施していく予定です。
A6 都市計画公園。緑地は、将来」にわたり、良好な都市環境を確保するために必要な施設として都市計画決定するものであり、計画の決定に際しては、その実効性を確保する観点から検討を行っています。
A7 国家公務員宿舎の跡地を都市計画公園・緑地として活用することについては、都、区市町合同で策定した「都市計画公園・緑地の整備方針」を踏まえ、地域状況や土地状況などに応じ、適切に対処していきます。
A8 民設公園とそれに伴う建築物は、地元区市町が策定するいわゆる都市計画マスタープラン等のまちづくり計画と整合して計画されるものです。
また、民設公園は、都市公園に準じた機能を有するものです。
A9 都は、市町村に対する補助事業を通じて、公園等の整備促進とまちづくりの推進を図っています。
これまでも、都市公園事業に対する補助金については、可能な限りその確保に努めてきましたが、今後も課題を抱えている都財政の状況を考えると、補助率の引き上げは困難です。
A10 用地取得を始めとした公園整備の事業化計画については、平成18年3月こ現行の役割分担を踏まえ、「都市計画公園・緑地の整備方針」を都と区市町合同で策定したところです。
この方針に基づき、公園ごとに明示された事業主体が、着実に整備を進めることが重要だと考えています。
以上