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文書質問趣意書

スポーツ振興について

2006年10月3日     
松村友昭(練馬区選出)

 いま、自治体としての都政に求められているのは、オリンピックをてこにした大型開発ではなく、東京において最も鋭く現れている格差社会の矛盾と痛みから、都民の暮らしと営業を守ることです。
 また、スポーツにおいても、オリンピックより、おきざりにされてきた本来の都民のスポーツ振興、すなわち、だれもが、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツを楽しめる環境づくりを都民は切実に求めています。
 ところが、都民をとりまくスポーツの現状はどうでしょうか。
私は、先日、スポーツ関係者から、「最近サッカーをやっている青年が『フランスに行って、東京との違いにびっくりした、やる場所を探すなどという苦労はまったくない』との便りをくれたが、東京では、どのスポーツをやるにも場所がない、何ヶ月もまえに申し込んでも抽選で、何倍、何十倍となって場所が確保できない。また、利用料が年々上がっていく、東京体育館のプールはわずか2年で倍の利用料になってしまった。何とかしてほしいというのがスポーツマンの切実な願いだ」との切実な訴えを聞きました。
 あらためて、調べてみますと、現在、都内の社会体育施設数は、ヨーロッパの諸外国の都市に比べて格段と少ないばかりか、国内でも人口の割合で見ると、47都道府県中、東京は45番目。2000年から2006年の間、都内の区や市は社会体育施設数を増やしている中で、都立施設は178箇所から137箇所に、面数では427面から374面と減らしているのです。
 都教育庁のスポーツ関係予算は、1999年度の50億円余が、2005年度は17億円余に、都立体育施設運営委託費は同じ6年間に30億円余から11億6000万円余に激減し、都立施設整備費も全く見られていないという状況が明らかになりました。

Q1,このように東京都のスポーツ環境の現状が、世界の諸都市ばかりか、国内との比較でも、スポーツ施設やスポーツ予算が貧弱なうえ、むしろ、石原知事になって後退させている現状について、どう認識されていますか。見解をうかがいます.

 石原知事は、第3回定例都議会の所信表明で、オリンピックに向けてのスポーツ振興として、東京大マラソンや東京国体の開催、また、旧・都立秋川高校の活用による、ハード、ソフト両面からのアスリート育成の支援策をうちだしました。
 しかし、オリンピックを言うならば、都の課題は、IOCがかかげるオリンピック原則、すなわち「スポーツを行うことは人権のひとつ」であり、「各個人はスポーツを行う機会をオリンピック精神に則りいかなる差別もなく与えられなければならない」との定めを実現し、住民を主体とした地域スポーツの発展、スポーツ振興都市づくりの土台をしっかりつくることではありませんか。
 オリンピック基金1000億円の一部を活用するだけでも思い切ったスポーツ施設の整備や振興が可能です。
身近なスポーツ施設の整備にとって、区市町村のはたす役割は重要ですが、そのためにも東京都の支援が欠かせません。私の住む練馬区を例にとっても、光が丘のスポーツ施設や旧中央大学のグランド跡地の取得等、すべて都の財政的支援があったからこそ、今では貴重なスポーツ施設が確保されました。

Q2,スポーツ整備のあらたな区市町村支援について、制度化などを含めた都の見解をうかがいます。

Q3,とりわけ、財政力の弱い多摩市町村への支援は緊急を要します。多摩国体についての支援策が打ち出されましたが、用地取得を含めた補助率引き上げなど、さらに抜本的な支援が必要です。見解を求めます。

 オリンピックレガシー(遺産)が重要とされながら、1964年の東京五輪会場としての役割を発揮した駒沢オリンピック記念公園陸上競技場の観覧席には、多数のひび割れが生じています。屋内競技場の改築も手がつけられておらず、大地震等の危機対応からも放置されています。都内でも数少ない硬式野球場が小雨でもグランドが水浸しとなって使えないなどというのが現状です。

Q4,こうした、老朽施設などをただちに改善すべきだと思いますが、見解を伺います。
また、今回、福岡市と国内選考を競う中で、東京には、国際大会が出来る施設が不足していることも露呈され、こうした施設の整備の必要が明らかとなりました。

 1964年のオリンピックに際し、多くの施設が建設されながら、その後、競技の発展に見合った施設の拡充や必要な整備などが行われずに、今日に至ったことによるものです。この教訓からも、オリンピックという一過性の施設整備ではなく計画的にすすめることが必要です。

Q5,都として、国と連携し予算を確保し、計画的、段階的に整備を進めるべきだと考えますが、見解を伺います。

 トップアスリートへの医学的なサポートはもとより、先端技術を駆使した施設・整備の提供や各種教育・研修活動、ライブラリーの整備、インターネットによる情報提供などを行う、スポーツ医学センターが日本でも自治体レベルで整備されています。既に14府県と横浜市には2つのセンターがありますが、東京にはありません。

Q6,東京でも検討すべきではないかと思いますが、それぞれ見解をうかがいます。

 何よりも重要なことは、スポーツ振興の計画化とそれにもとづく具体的なとりくみです。
 東京都は、スポーツ振興法に基づき、二〇〇二年度に「東京都スポーツビジョン」を策定して、今後この基本計画にもとづき、スポーツ振興の具体的な計画をつくるとしながら、財政が厳しいからと言って棚上げにしていることです。
この間、都スポーツ振興審議会では、「毎年一律一〇%削減という言葉だけが非常に重くのしかかって気持ちまでが萎縮していく」との意見も出されおり、本当に胸の痛みを感じます。その審議会も本年度はまだ一度も開かれていません。

Q7,ただちに審議会を開き、スポーツ振興の具体的な実施計画をつくるべきではありませんか。
Q8,都民の自主的なスポーツ団体への支援も重要です。スポーツ団体への財政支援の復活、大会開催への会場使用や減免措置の堅持・拡充を進めるべきです。答弁を求めます。

 障害者のみなさんが、身近な地域でスポーツを楽しめる条件整備も重要です。
 区市町村などの施設では、車椅子のバスケットをやりたくても体育館の床がいたむなどの理由でほとんど使えません。障害者スポーツにくわしい指導員もいません。
 このため、大都市東京で、障害者が安心してスポーツに親しむことが出来るのは、東京都障害者スポーツセンターと多摩障害者スポーツセンターの2ヶ所しかありません。諸外国にくらべ、あまりにお粗末です。

Q9,このような障害者スポーツの現状をどう認識していますか.区市町村や関係団体と連携して、さまざまな障害のある人たちが、身近な地域でスポーツに親しむことができる条件整備を推進することが急務だと思いますが、答弁を求めます.

Q10,障害者が利用しやすい施設整備、専門指導員やボランティアなどの人材育成、都立スポーツ施設、養護学校の体育施設を障害者スポーツに開放すること、都と区市町村、関係団体で障害者スポーツの振興策に関する協議会を設置し、都として障害者スポーツ振興実施計画を策定すべきです。見解を求めます。

以上

回答

A1 東京のスポーツ振興については、広域行政の立場から、区市町村や民間などとの適切な役割分担のもと、都民が安全かつ快適にスポーツを実践するための条件整備や諸事業の実施に必要な予算措置を行っています。
 今後とも東京のスポーツ振興に向けて、必要な施設整備や事業実施に努めていきます。

A2 スポーツの振興のためには、身近な地域に日常的なスポーツ活動の場を確保することが重要です。
 都教育委員会では、国に対して、スポーツ施設整備のための国庫補助制度の拡充を要請しています。

A3 平成25年の東京国体は、多摩島しょ地区を中心に開催します。平成18年8月には、区市町村及び競技団体に対する会場地の希望本調査を実施するに当たり、区市町村が総合的に判断できるよう、都としての財政支援の考え方を示しました。
 競技施設については、既存の施設を最大限活用することとした上で、国体を都と区市町村が共同で開催することなどを考慮し、施設整備に係る補助について、補助率2分の1、上限額を原則1億円、特例3億円としました。これにより、国体で実施する競技に必要な施設整備が図られると認識しています。

A4 駒沢オリンピック公園総合運動場では、平成18年度から、陸上競技場の大規模改修及び硬式野球場の管理棟改築工事を実施しています。
 今後とも、利用者が安全かつ快適に利用できる施設とするため、体育施設の整備に努めていきます。

A5 都立スポーツ施設は、国際大会も開催できる広域的施設としての機能を有することが重要であり、その整備については、大規模大会開催のための施設需要や都民のスポーツニーズ、財政の見通し等を勘案し、総合的に検討する必要があります。
 また、国に対して、スポーツ施設整備のための国庫補助制度の拡充を要請しています。

A6 ジュニア層からのトップアスリートの育成・強化については、スポーツ医科学のサポート体制を整備し、継続的に事業を実施していくことが重要です。
 都教育委員会は、2013 年の東京国体や、2016 年のオリンピック開催に向けて、関係機関との連携を図っていきます。

A7 都教育委員会は、平成14年度に都のスポーツ振興計画である「東京スポーツビジョン」を策定した後、平成16年度には東京都スポーツ振興審議会から、今後の具体的な取組についての提言(『「東京スポーツビジョン」の実現に向けた今後の取組について』)を受けています。
 この提言を踏まえ、今後も地域スポーツの振興、競技力の向上、競技人口の拡大、学校運動部活動の振興など、スポーツ振興の計画的な推進を図っていきます。

A8 現在、都教育委員会では、大規模なスポーツ大会開催に当たっての後援や共催名義の使用承認、都立体育施設の優先的な使用申込みや利用料金の減額、免除などにより、スポーツ団体の活動を支援しています。
 なお、施設の使用申込みや利用料金の減額、免除については、「東京都体育施設条例施行規則」に規定した内容で各施設の指定管理者と協定を締結しており、今後も引き続き適切に対応していきます。

A9 障害者がスポーツを行うことは、障害者本人の健康増進と社会参加を図る上で有意義であるとともに、スポーツを通じた交流は、障害に対する理解を深める契機になると考えます。
 区市町村においては、障害者が気軽にスポーツを楽しめるよう、身近な体育施設等で、障害者対象のスポーツ教室や市民とのふれあいスポーツの集いなどを行っています。
 都としては、社団法人東京都障害者スポーツ協会と協力して、障害者スポーツ指導員の現任研修やスポーツボランティアの養成講習会など、区市町村の人材育成に努めています。

A10 都は、障害者のスポーツ・レクリエーション活動の振興と社会参加の促進を図るため、障害者団体、東京都障害者スポーツセンターを設置しています。
 スポーツ団体等の代表からなる同センターの運営懇談会において、障害者スポーツに関する人材育成、スポーツ環境の整備、障害者団体の活動への支援など、障害者スポーツ振興を協議し、その実現に向けて取り組んでいます。

以上