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第四回定例会 本会議討論 二〇〇六年一二月十五日
松村友昭(練馬区選出)
石原知事の超豪華海外出張、ワンダーサイト事業の都政私物化など、都政運営で自治体のあり方にゆがみが
日本共産党を代表して、第二百二十五号議案、「東京都住宅基本条例」全部改定案ほか、二十議案に反対する立場から討論をおこないます。
国の悪政のもとで、貧困と格差が急激にひろがり、都営住宅に四十倍もの応募が殺到するなど高齢者や障害者、子育てファミリーのための住宅が不足するとともに、中堅サラリーマンにとっても、負担可能な安心して住みつづけられる住宅の確保が切実な課題となっています。ところが、「住宅基本条例」の全部改定案は、こうした課題に応えようとするどころか、逆に、住宅供給における公共住宅の役割を削除し、住宅供給をもっぱら民間市場にゆだね、公共住宅を救貧対策にせばめようとするものであり、認められません。
いまおこなうべきは、都営住宅の新規建設の再開であり、サラリーマンむけの低廉な家賃の公的住宅の供給や、マンション、木造個人住宅の耐震補強の助成などであることを指摘しておきます。
次に、認定こども園の認定基準に関する条例案です。
そもそも認定こども園制度は、自由料金・自由契約のため、保育料値上げや、配慮が必要な子どもが入れないという問題が生じかねないこと、職員配置や施設設備の基準が低すぎることなど、大きな問題があります。
だからこそ、他県は、三十三の道府県が意見公募を実施したほか、国の基準より引き上げたり、独自基準を条例に明記する努力をしているのです。
ところが都は、都民意見の公募なども拒否したまま、条例案を提出しました。しかも条例案は具体的な認定基準のほとんどを規則に委任し、基準は、職員の四割は保育士などの資格がない人でよいとし、保育室などの面積も、認証保育所と同じ低い基準にあわせるものです。保育料値上げに歯止めをかけるしくみもなく、東京都ほど基準の低い自治体は、ほかにありません。本条例案には反対です。待機児解消というなら、質の高い認可保育所の増設こそ必要です。
心身障害者扶養年金は、保護者なきあとの障害者の生活を支える役割をはたしている重要なものであり、廃止条例には反対です。都民からよせられた公募意見のうち九五%が、制度存続や都の責任をきびしく問うものです。この声にこたえて制度を継続するとともに、自立支援法による負担増に苦しむ障害者への経済的支援の拡充を求めるものです。
わが党は、今定例会において、知事の独断的手法が都政におおきなゆがみをもたらしている問題として、知事とそのファミリーによる超豪華海外出張とワンダーサイト事業における私物化についてとりあげ、知事の姿勢をただしました。これは、都民の間におおきな反響と怒りを呼び起こすものとなりました。
まず、十五回で二億四千万円を超える海外出張ですが、ほんどが出張する意味にとぼしく、観光目的が多いと言わざるを得ないものであることが、明らかになりました。豪華クルーザーを乗りまわしたガラパゴスでは、知事の出張の前に、環境局が十五日間かけて調査をおこなっており、ロンドンのオリンピック調査でも、三日間のうち、相手との会談はわずか四十七分、ヘリコプターによる視察も三十分にすぎなかったことなど、開示された文書によって明らかにされたのです。
最高で一回三千七百万円という、けた外れの税金が使われていることにも都民の批判が殺到しました。知事自身、飛行機で毎回ファーストクラスをつかい、最高、一日でサラリーマンの一ヶ月分の給料に匹敵する二十六万円ものホテル代を払い、現地の移動も動く応接室と言われる超豪華リムジンを乗りまわすだけでなく、知事夫人と特別秘書という身内も知事と同じような破格の扱いであることも怒りを呼んでいます。知事夫人は条例では公費を使うことは何も定められていないのに、飛行機もホテルも知事と同格であり、特別秘書もファーストクラスに同乗しています。
調べた範囲では、ほとんどの知事が、自分の判断で飛行機のクラスを下げたり、条例で規定されている料金内のホテル代にとどめ、上まわった場合は、自己負担とするなど節約につとめています。公費で夫人を同伴しているケースはありません。
知事の豪遊ぶりは本当に無責任です。わが党は、航空機代やホテル代を節約するだけで、廃止された盲導犬のえさ代補助や盲ろう者のための通訳介助者の養成事業などが復活できることを示すなどして、知事の姿勢をただしました。
知事は、「事務局に聞いてくれ」「事務局」が適切に処理していると自分の責任をたなあげするだけでなく、これからも「どんどん」海外出張をおこなうと開き直りました。再質問で「都民が納得できるものに厳選し、費用の節約に努める」ことを求めたのに対して、知事は、「担当の局長が答えたとおり」としか答えませんでした。
知事のトップダウンでスタートし、知事の四男の延啓氏とその友人夫妻を、設立から今日まで運営にふかくかかわらせてきたトーキョーワンダーサイトは、知事の都政の私物化の実態を示すものとなりました。
ワンダーサイトは、延啓氏が紹介した今村夫妻を、知事自身が館長、副館長に登用し、ワンダーサイト本郷にあるステンドグラスも延啓氏が原画を作成したものです。予算も、現代美術館や江戸東京博物館などの文化施設がのきなみ三割から四割も予算が減らされているのに、ワンダーサイトだけが増えつづけ八倍になっていることなど、まさに「聖域」ともいえる扱いをうけています。
本来、行政のトップに立つ知事が、自分の身内を公の事業にかかわらせることは、自治体のあり方にゆがみを生じさせかねないものであり、厳に戒めなければなりません。 実際、わが党は、知事の海外出張にあわせて計画された「東京ナイト」では、四男の旅費などを捻出するためにワンダーサイトの関係者が画策し、税金の迂回支出までおこなっていたことなど、関係者が知事四男への公費支出の画策をくりかえしていた事実を示したところです。
ところが知事は、「違法性」がないとひらき直るとともに、四男について、記者会見で「余人をもって代えがたい」とまでもちあげ、都の事業に「身内であってもどんどん使う」とまで言い放ちました。
石原知事が、豪華海外出張とワンダーサイトの問題を通して示した姿勢は、法律に違反していなければ、何をやってもいいという居直りです。倫理の基準をここまで引き下げてしまうなら、公人の行動規範とは言えないではありませんか。わが党は引きつづき徹底的に追及していく決意です。
知事のこうした自治体の立場から逸脱した姿勢は、この間の石原知事の都政運営をつらぬくものでもあったことを指摘しないわけにはいきません。
知事は、都民には「財政が厳しい」といって、高齢者の「命綱」となる老人福祉手当などの経済給付的事業を廃止し、それこそわずかな額の補助金やサービスまで大ナタをふるうことなどで、福祉関係費を六年間に五百四十億円も減らしました。その一方、本来、都が直接施行する必要のない首都高速道路品川線に千二百五十億円をつぎこむなど毎年一兆円規模の投資をつづけてきました。中小企業対策でも、予算を四割も減しながら、中小企業に役立たない新銀行に千億円もつぎこみ、その新銀行も破たんに直面しつつあるという逆立ちぶりです。
臨海副都心開発も、知事はいったんは破たんを認めながら、その処理を先送りして傷口をひろげてきたものです。今定例会に提案された臨海三セクの破たん処理も、このことで債務をふくらませたうえ、今回の処理では、都が一方的に債権を放棄する一方、大銀行に長期にわたる利益を保証するものであり認められません。この際、きっぱりと不動産業から手を引くべきです。
今日、都民のくらしと営業は、戦後最長の景気拡大という政府発表とは裏腹に、厳しさをましています。一方、都税収入は、この七年間に二つの財政再建推進プランにくらべて三兆円もおおく歳入される見通しで、知事はオリンピックのために毎年千億円以上も積み立てるとしています。これを都民の役立てるならば、高齢者のための医療や介護の負担増の緩和、子どもの医療費無料化の小中学生までの拡大、ワーキングプア対策、小中学校の三十人学級、中小企業対策などを一気にすすめることが可能です。
知事が、地方自治体の本来の立場にたちかえり、来年度予算において、オリンピックをテコした大型開発をあらため、切実な都民要望に応える予算を編成されることをつよく求めて討論を終わります。
以上