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第一回定例会   一般質問(全文)  二〇〇七年二月一六日

河野 百合恵(江戸川区選出)

石原都政は、この八年の間、中小企業対策予算を千九十億円、三割も削減
世界と全国の姿勢にまなび、中小企業支援を都政の柱の一つに位置づけよ

 東京の産業は、石原知事がすすめる世界都市戦略のもとで、金融、事務所サービス、IT産業などの集積がすすむ一方、製造業や商店街など地域経済の基盤となる中小企業は衰退を重ねています。地域経済の疲弊は、都民の貧困と格差の拡大、コミュニティ破かいに拍車をかけるものとなっています。
 ところが石原都政は、この八年の間、中小企業対策予算を千九十億円、三割も削減させ、工業集積地域活性化事業を廃止、区市町村の商店街振興プランへの財政支援は棚上げ、中小業者の「命綱」である制度融資は、預託原資を削減して、融資を七割に削減させるなど、中小企業への支援を大きく後退させてきました。また、先に発表された「一〇年後の東京」は、中小企業対策の重点をITやコンテンツ産業などの一部の産業に限定し、城南、城東地域に集積するものづくりや、地場・伝統産業、商店街支援や建設業支援をカヤの外におこうとしています。
 全国のおおくの自治体がきびしい財政のもとでも、予算を拡充し知恵を出して商工業支援のとりくみをつよめているのとは対照的です。ヨーロッパでは中小企業振興がEUの政策としておおきな流れになろうとしているのです。私は知事が世界と全国の姿勢にまなび、中小企業支援を都政の柱の一つに位置づけることを求めるものです。

国保料が高すぎて払えない事態が広がっている

 まず、商店街振興です。
 ある業者団体の女性部がおこなった実態調査では、売り上げが減ったとこたえた商店が七〇%です。東京都中小企業白書では、「全体の資金繰り状況が改善しているにもかかわらず、(小売業は)一部改善した時期をのぞけば低い水準で推移している」としています。大半の商店が、毎日の生活もままならない事態に追い込まれています。実態調査には、「税金、年金、介護と全部お金のかかることばかり。将来の見通しが立たない」「六五歳になったいまも、国民年金の給付がないため身体の悪い主人の介護をしながら店をつづけている」と悲痛な声がつづられています。
 商店が、このような現実におかれていることについて、心が痛みませんか。商店街は「地域のコミュニティの核」であり、「共通の財産」です。地域社会を守り、地域経済を立て直すためにも、商店街を守るとりくみを抜本的に強めることが重要と考えますが、それぞれ答弁を求めます。
 商店街の健康とくらしは深刻です。商店主が治療を受けられない原因の一つに、国民健康保険料が払えず、保険証をとりあげられ資格証に切りかえられるケースが増加しています。資格証の場合、医療機関の窓口でいったんは全額負担しなければなりません。都は悪質なケースしか「資格証」はだしていないと言いますが、事実は違います。自営業で経営不振のため保険料が払えなくなり資格証に切りかえられた人は数おおくいるのです。
 国保料が高すぎて払えない事態が広がっているのです。自営業者が営業不振などの場合に滞納せずにすむように、国保料の減免制度を活用するよう区市町村に指導することが必要です。
 また、区市町村や国保組合が、保険料減免および医療費一部負担金減免の拡充、傷病手当創設などに取り組めるよう、都が補助すること。資格証の発行について、中小零細業者の営業不振や継続した治療の必要な人などは配慮し、発行をおさえる姿勢を、都として区市町村に示すことも重要です。それぞれ、見解を伺います。

大型店やコンビニなどに商店街加入を求める条例制定が必要

 商店の経営支援では、第一に、都が二〇〇一年度、二〇〇二年度に区市町村に策定させた「商店街振興プラン」に対する支援です。都は、現在、このとりくみの一環として相談活動などのサポートをおこなっていますが、都が最初に約束した施策に対する財政支援は見送られたままです。区市町村のプランは五年を過ぎ、見直しの時期を迎えています。
 そこで、都としてプランのいっせい見直しと施策に対する財政支援にふみだすことを求めるものです。
 第二に空き店舗対策です。都は、かつて実施していた空き店舗対策を二〇〇二年度で打ちきってしまいました。江戸川区では、商店街が共同で生鮮三品の出店を検討したことがありますが、家賃負担などがネックになって実現にいたりませんでした。都は、「新元気だせ!商店街事業」で取り込んでいると言いますが、空き店舗対策は財政支援だけでなく、入居店舗の斡旋、経営相談など総合的で、息の長いとりくみが必要です。 
 そこで、空き店舗対策を独立した施策として、再開することを求めるものです。また、空き店舗をつくらないために、それぞれの商店を支援する個店対策にもふみだすことなど、生き残り支援のために、できることは何でもやる構えが必要だと思いますが、見解を伺います。
 大型店やフランチャイズなどを商店街活動に協力させることは重要です。世田谷区につづき、大分県や山形市などで、大型店やコンビニなどに商店街への加入を求める条例がひろがっています。街路灯や商店街の運営などの利益は享受しているわけですから、もっともなことです。こうした条例制定の必要について都はどう認識していますか。答弁を求めます。

建設産業振興プランの策定と支援強化を

 次ぎに、建設業の対策です。
石原知事のもとで、都営住宅や介護施設建設など生活関連の公共事業が後景に追いやられ、「都市再生」の名のよる大型開発や超高層ビル建設に力が注がれてきました。このため景気回復の遅れとあわせて、中小企業の受注機会が大きく減少してきました。
 私は、ある中小建設業者から話を伺いましたが、仕事の量は、一時の半分以下に減っているとのことでした。この一〇年間の倒産は、全企業の二割を占めるにいたっています。支援はまったなしです。
 国は、建設業を「地域の基幹産業」として位置づけ、「新しい建設業政策のあり方」を今年六月をめどに発表するとしています。こうしたもとで福島県は県の長期総合計画に建設業支援をかかげ、宮城県、長野県では建設業は地域経済の発展と雇用確保に欠かせない産業として、専門家を配置したワンストップサービスの相談窓口を設置するなどとりくみを開始しています。
 知事、建設業を現在策定中の「産業振興基本戦略」にしっかりと位置づけるとともに、建設業振興プランをつくり、支援を強化することを求めます。

住宅リフォーム助成の創設、木造住宅耐震助成の拡充を

 石原知事の「都市再生」のもとで、建設ラッシュと言われていますが、全体として、超高層ビルなど大型案件がおおく、中小企業は下請けとして、仕事の一部がまわされるだけです。
 いま、全国に住宅リフォーム助成や融資の制度がひろがっています。
 秋田県は、県民が長く快適な住宅に住めるようにするとともに、省エネルギー化・防犯性や耐久性の向上・バリヤフリー化などの改修や増改築に対し、五百万円上限の融資を、住宅建築課が所管しておこなっています。耐震補強工事助成も静岡、高知など一五県、都内でも二八区市町村にひろがっています。こうした助成や融資は、中小建築業者への支援にもなります。
 こうした他県の取り組みにも学び、都として住宅リフォームへの助成などを創設することを提案するものです。
 また、いつ起きてもおかしくないといわれている地震に備え、木造住宅の耐震改修助成制度の対象範囲や内容を抜本的に強化することを求めるものですが、見解を伺います。

建設業退職金共済制度の徹底を

 公共工事では、都営住宅、公園、福祉施設など中小業者が参入できる生活密着型公共工事の拡大、中小企業への分離分割発注、中小企業同士のJVの拡大がいそがれています。
 また、安ければよいと言う発想ではじめられた低価格での入札は、建築物の安全、下請保護、労働者の雇用と安全などに深刻な影響をもたらすものとなっています。
 低入札価格での契約を見直すとともに、談合、手抜き工事、下請けいじめなど悪質な行為をくり返す業者については、長期の入札資格の剥奪をおこない、健全化をはかることを求めます。
 建設労働者には、現場や事業所を頻繁にかえたり、「一人親方」として働く人たちも多いことから、働いた期間が通算されて退職金が支給される建設業退職金共済制度があります。しかし、この雇用期間を証明するためには、元請け業者が証紙を購入して、労働者の手帳へ証紙を貼付すること必要ですが、徹底されおらず、「元請け業者が証紙を捨ててしまったのではないか」との不信感も広がっています。元請け業者の責任で交付を徹底させ、工事ごとの報告をおこなわせるなど、改善を求めて、質問を終わります。

以上

【答弁】

○知事(石原慎太郎君) 河野百合恵議員の一般質問にお答えいたします。
 中小企業支援についてでありますが、中小企業の発展なくして、活力のある東京の実現はありません。中小企業支援が都政の重要な柱であることは論をまちません。
 これまでも、CLO、CBOの発行を初め、ベンチャー企業の育成やナノテクセンターの設置など都独自の産業振興策を打ち出し、国や他の自治体をリードしてきたつもりでございます。
 今後とも、技術開発や経営革新に意欲的に取り組む中小企業を支援していくことにより、東京の産業力を強化していくつもりでございます。
 他の質問については、関係局長から答弁します。

○産業労働局長(島田健一君) 五点のご質問についてお答えをいたします。
 まず、商店街の状況と支援策についてであります。
 商店街を含め、都内中小企業は、競争の激化、後継者不足など厳しい状況に置かれていると認識しております。そのため、都はこれまでも、新・元気を出せ商店街事業の充実強化を図りながら商店街の取り組みを支援してまいりました。
 次に、区市町村の商店街振興プランの改定と施策への支援についてであります。
 平成十三年四月に都が発表した区市町村商店街振興プラン策定に関する指針では、区市町村の主体性を最大限尊重しており、プランの改定は、区市町村がみずからの責任において行うものであります。
 なお、都は既に、区市町村のプランに基づいた商店街の取り組みに対して、支援を行っているところであります。
 次に、空き店舗対策についてであります。
 都はこれまで、新・元気を出せ商店街事業の充実を図り、空き店舗活用による商店街の活性化を支援してまいりました。本年度からは新たに、会社、NPO法人などのノウハウを活用できる商店街パワーアップ基金事業を開始し、支援の充実を図っております。
 次に、商店街への加入を求める条例についてであります。
 商店街が地域コミュニティの核として、その役割を果たしていくためには、地域の事業者同士の連携、協力関係が重要であり、そうした関係づくりは、話し合いや相互理解を通して進められるべきものと考えております。
 最後に、建設業振興プランの策定についてであります。
 平成十一年の中小企業基本法の改正の趣旨を踏まえ、都においても業種別振興を柱とする政策から、経営革新や操業等、業種にかかわらず意欲ある中小企業等の前向きな事業活動に対して支援する方向に政策を転換してまいりました。
 したがいまして、お尋ねの件について、基本戦略に位置づけ、プランを策定する考えはございません。

○福祉保健局長(山内隆夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、国民健康保険料の減免制度についてでございますが、国民健康保険は、受益と負担の公平の見地から、すべての被保険者が適正に保険料を負担することが原則でございます。その上で、天災、生活困窮等特別の理由がある被保険者に対しては、各保険者が条例等により保険料を減免することができることとされております。
 お話の自営業者が営業不振などにより生活困窮に至った場合には、各保険者によりまして、保険料の減免について適切な対応が図られていると考えております。
 次に、国民健康保険に対する都の補助等についてでございますが、都は、国民健康保険制度の健全かつ安定的な運営を図るため、法令に基づき、各保険者に対する財政支援を既に行っており、新たな支援を実施することは考えておりません。
 また、資格証明書は、保険料が長期間未納の方に対して、国民健康保険法により、被保険者証にかえて交付することが義務づけられており、各保険者は適切に対応していると考えております。

○都市整備局長(柿堺至君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、住宅のリフォームについてでございますが、都では、住宅リフォーム相談窓口を設置するとともに、マンション共用部分を対象とした改良工事への助成を行うなど都民が安心してリフォームを実施できるよう既に取り組んでおります。
 次に、木造住宅の耐震改修助成についてでございますが、住宅の耐震化は、自助、共助、公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本でございます。しかしながら、耐震対策上公共性が高い地域の住宅については、耐震化の促進を図るため、耐震診断及び耐震改修に関する助成制度を昨年四月から既に実施しております。
 都といたしましては、今後とも関係区と連携して住宅の耐震化に努めてまいります。

○財務局長(谷川健次君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、低入札価格での契約についてですが、工事案件におきまして、低価格による入札が行われた場合には、契約内容の適正な履行が可能かどうか、厳格な調査を経て、契約締結の可否を判断しております。
 施工段階においても、監督体制や検査体制を強化することにより、適正な履行の確保を図っております。
 また、すべての受注者に対し、建設業法を初めとする法令の遵守を厳しく求めるとともに、談合等の不正行為や粗雑工事に対しましては、平成十八年四月から入札参加資格取り消しの創設や指名停止期間の延長などペナルティーの強化を図っており、入札・契約制度の適正な運営に努めているところでございます。
 次に、建設業退職金共済制度についてでございます。
 都では、これまでも中小企業退職金共済法に基づく建設業退職金共済制度の普及促進に努めておりまして、建設業者団体に対しても、制度の周知徹底を図っております。都の発注する工事におきましては、東京都工事標準仕様書に基づき、請負者から掛金収納書を都に提出させ、証紙の購入を確認しております。
 今後とも、引き続き同制度の普及促進に努めてまいります。

以上