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第一回定例会 予算特別委員会 討論 二〇〇七年三月六日

清水ひで子(八王子市出身)

福祉、教育切りすて、大型開発推進の逆立ち予算

 私は、日本共産党を代表して、第1号議案、「平成19年度東京都一般会計予算」ほか15議案に反対、日本共産党提案の予算組み替え動議に賛成の立場から討論をおこないます。
 はじめに知事提案の一般会計予算案についてです。
 石原都政が誕生して8年。この間に、国政においては、小泉改革に代表される雇用と所得の破壊、庶民大増税と社会保障の連続的改悪がすすめられました。このため、貧困と社会的格差が急速にひろがり、とりわけ東京において顕著にあらわれ、都民生活の困窮に拍車をかけるものとなっています。
 このようなときに、都政が果たすべき役割は、「住民の福祉の増進」の立場にたって都民生活を守るために手だてをつくすことにほかなりません。
 ところが、石原知事はこの間いったい何をやってきたのでしょうか。2次にわたる「財政再建推進プラン」と「都庁改革アクションプラン」を策定し、プランの見込みより、3兆円以上も税収が伸びたにもかかわらず、全国の先進的役割を果たしてきた東京の福祉や教育、中小企業対策などの都民施策をおおきく後退させてきました。
 まず、福祉について言えば、石原都政のもとでの福祉対策は、増大する福祉のニーズ、都民の要望、都財政の改善を反映したものとはなっていないことです。
 ニーズで見ると、この8年の間に東京の高齢者人口は3割も増加しましたし、喫緊の課題である少子化対策も拡充が迫られるなど、格段にふえていることはあきらかですが、石原知事は、こうしたニーズにこたえるのではなく、福祉を後退させる道をすすめてきました。
 第1に、高齢者や障害者の医療費助成や老人福祉手当、シルバーパスなどの経済給付的事業に大ナタがふるわれたことです。また、盲導犬のえさ代補助などそれこそわずかな額の補助金もつめたく切りすてられました。
 第2に、高齢化社会を迎えながら、特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護基盤は、全国最低水準です。
 第3に都立施設でも、母子保健院の廃止にはじまり、都立病院や多摩地域の保健所の統廃合などがすすめられました。
 これを決算で見ると、石原都政のもとで、「福祉と保健」費は後退し、1999年度と2005年度の決算比で、450億円の減額となっているのです。 これは昨日の福祉保健局長の答弁で確認されました。これが石原都政の福祉の実態です。

 自民党、公明党は制度改正による当然減だと言いますが、全国の道府県が同様の条件のなかでも福祉の後退をくいとめたり、伸ばしているのと大違いです。また、都の政策判断による都立施設の民間移譲まで当然減に加えることまでやっていることを指摘しておきます。
 昨日の質疑で、「福祉と保健」費540億円減額という数字について言及がありました。
 公営企業会計決算の都立病院一般会計繰入金の1999年度と2005年度の差額は135億です。これと、福祉保健費の減額分405億円を合計すると、 540億円の減額です。根拠の明確な数字であることを申し上げておきます。
 また、福祉保健局長も福祉見直しで、980億円も切り下げをおこなったことを認めましたが、まさに高齢者福祉をはじめとした前例のない切り下げの帰結にほなりません。しかし、この間に都税収入は大幅増となったわけですから、このような切り下げをおこなわなければならない理由は見あたりません。むしろ、拡充することこそ可能であり、都民の要望にこたえる道です。
 その一方で、温存、拡大されたのが「都市再生」の名による大型開発にほかなりません。「都市再生緊急整備地域」や3環状道路など、投資的経費に首都高速への投資など経常経費に含まれる経費をあわせた投資型経費は、1兆円規模で高止まりし、都財政と都民施策をおおきく圧迫するものとなっています。また、中央環状品川線や羽田空港再拡張など、本来、国や事業者の資金と手で建設されるべき投資について、都が直接、事業に乗りだしたり、資金提供をおこなったりしていることは都政にゆがみをもたらすものになっています。また、知事が外郭環状道について、資金提供をおこなうと発言したことは重大です。
 こうした投資の結果、借金返しの公債費は5000億円を超え、都財政を圧迫するものとなっています。
 自民党、公明党がふれた隠れ借金にかかわるにかかわる発言について言えば、わが党委員が、2月22日の本委員会で指摘したように、石原知事が1992年よりまえの水準に都債の発行を抑えてきたならば、隠れ借金とされる減債基金積立額の不足は解消できていたことを指摘しておくものです。

 来年度予算も、この石原知事の逆立ちした都政運営の基本を引きつぐものとなっています。
 第1に、実質5000億円もの税収増が予定されているのにもかかわらず、基本的にこれが都民の生活と営業を守る施策にまわされていないことです。
 福祉をみると、高齢者に重い負担が押し寄せているもとで、住民税増税とそれに連動した負担増の緩和、重い医療費への対応などが、まさに待ったなしとなっているにもかかわらず、みるべき施策はなく、逆に、高齢者の「命綱」となっている老人医療費助成を今年6月末で廃止することは断じて認められません。
 また、いま、政治の重い課題となっているワーキングプア、若年層の雇用、生活問題についても、東京において、とりわけ深刻な事態となっているにもかかわらず、従来の雇用行政の枠にとどめ、わが党が要求したワーキングプアの実態調査すらおこなおうとしないことは、石原都政に財界よりの姿勢を如実に示すものです。
 教育についても、差別と選別の競争教育をいっそう推進するとともに、全国でただ一つ残された30人学級をはじめとする少人数学級の実施を拒みつづけています。また、カーテンで仕切って教室不足をしのでいる障害児教育の充実もたなあげされています。
 中小企業対策予算は、この8年の間に3割、ピーク時の半分の水準に切り下げられ、都内商工業は衰退の道を歩んでいます。
 さらに、二つの温暖化対策や、いつ来てもおかしくないと言われる巨大地震対策なども、必要とされる予算は計上されていません。
 第2に、こうして生み出された資金と大幅税収増によるお金が、オリンピックをテコにした3環状道路をはじめとする大型開発につぎ込まれようとされていることです。来年度の投資型経費、すなわち投資的経費に首都高への投資など経常経費に含まれる投資経費を含めたものは、増額され、石原知事就任時の1兆円台に復活させられています。
 しかも、投資の中身は、高齢者のための福祉施設、都営住宅、公園や中小河川などの生活密着型公共事業は後退させられたままで、手厚く予算が配分されているのが、知事のトップダウン事業であるオリンピックをテコにした3環状道路などの大型公共投資となっています。

 石原知事が提案した来年度予算案は、福祉、教育を切りすて、その一方で大型開発に税金をつぎ込もうとする逆立ち予算であり、反対するとともに、予算組み替えの提案をおこなうものです。
 わが党が提案する予算組み替え提案は、不要不急の浪費的事業にかたよった予算編成を都民本位にあらため、実質5000億円の税収増を切実な都民要望の実現に活用することで、都民施策の拡充にふみだすことをもとめるものであり、各会派のご賛同をお願いするものです。

 さて、本委員会でのわが党の追及によって、石原知事のトップダウン事業のゆがみ、身内や側近を重用した都政の私物化、税金の無駄遣いの実態が明らかになりました。
 知事自身については、この1年間に、都知事としての仕事をしていたのは、週3日、一日平均4時間9分に過ぎなかったこと、公務とされていながら、実は、知事が製作している映画の収録に出かけていたこと、その際、知事公用車が私的に利用されていたことも、わが党の調査により判明しましたが、知事は、まともな反省さえありませんでした。海外出張についても、自分や側近、夫人の高額な費用にはメスを入れず、経費の詳細の公開を拒みつづけています。
 知事の4男の延啓氏とその友人の今村有策氏を重用したワンダーサイト事業についても、知事自身がきっぱり改めることをいまだに表明していません。
 また、石原知事が、一部の知事に近しい人物を都政に重用していること、とりわけ、知事の盟友と言われる鳥海巌氏にいたっては、東京国際フォーラム社長、東京都教育委員、新銀行東京社外取締役など6つの役職をえていることも明らかにしました。鳥海氏は、いま紹介した3つの役職だけで2500万円を超える報酬を受けているのです。
 知事のトップダウンではじめられた三宅島公道バイクレースについては、テスト走行したレーサーから、危険であり、中止すべきとの意見が寄せられ、バイクメーカーからも賛同できないと明確に表明されていものであり、関係者の意見に耳をかたむけ再検討すること、真の復興支援の強化を求めるものです。築地中央卸売市場の豊洲移転も、移転先の土壌の汚染があきらかになり、関係者から移転中止を求める運動が広がり、毎日新聞は社説で、再検討を求めるまでに至っています。これも中止し、再整備について市場関係者、都民参加で再検討することを求めておきます。
 以上のように、石原都政は、福祉をきりすて、大型開発につぎ込む逆立ち政治と、トップダウンによるゆがみのもちこみをおしすすめただけでなく、豪華海外出張や接遇に名を借りた飲み食い、公用車の私的利用、4男とその友人の重用など、都政の私物化と税金の無駄遣いをおこない、都政に対する都民の信頼をおおきく傷つけてきました。
 石原知事には、知事の資格がないことを申し述べて討論を終わります。

以上