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第一回定例会 本会議最終討論 二〇〇七年三月九日

古館和憲(板橋区選出)

福祉や教育の切りすての一方、オリンピックをテコに大型開発を拡大しつづける予算に反対
石原知事のトップダウン事業、私物化、公私混同、知事資格に欠ける

 日本共産党都議会議員団を代表して、第一号議案「平成十九年度東京都一般会計予算」ほか四十九議案に反対し、わが党ほか二会派の共同提案議員提出議案「老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例(案)」に賛成の立場から討論を行ないます。

 はじめに一般会計予算案についてです。
 石原都政が誕生して八年、この間に、国政においては、小泉改革に代表される雇用と所得の破壊、庶民大増税と社会保障の連続的改悪がおしすすめられ、貧困と社会的格差が急速にひろがりました。ところが、このようなときに石原都政は、都民のくらしと福祉をまもるどころか、福祉を敵視し、二つの「財政再建推進プラン」と「都庁改革アクションプラン」を策定し、全国に誇る施策に大ナタをふるってきました。このため、東京では貧困と格差、都民生活の困窮がとりわけはげしいものになったのです。
 まず、福祉について言えば、石原知事は、「福祉は贅沢」などといって、かつて全国一を誇った東京の福祉を後退させる道を選びました。その一方で、都税収入が大きく伸びているにもかかわらず、高齢者人口の増大、少子化対策の拡充など、増大する福祉ニーズへの対応はきわめて不十分でした。
 第一に、高齢者や障害者の医療費助成や老人福祉手当、シルバーパスなどの経済給付的事業に大ナタがふるわれたことです。また、盲導犬のえさ代補助などそれこそわずかな額の補助金もつめたく切りすてられました。第二に、高齢化社会を迎えながら、特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護基盤はなおざりにされ、全国最低水準に後退してしまいました。第三に小児医療の充実どころか、都立母子保健院の廃止にはじまる小児病院の統廃合計画や、都立病院や多摩地域の保健所の統廃合などがすすめられました。
 これを決算で見ると、石原都政のもとで、福祉の経費は後退し、一九九九年度と二〇〇五年度の決算で、「福祉と保健」費は四百五十億円の減額となっているのです。
 これが石原都政の福祉の実態です。こんなに福祉を削ったのは、歴代の都知事のなかでも、全国の都道府県知事のなかでも、石原知事あなたぐらいではありませんか。
 くわえて、「官から民へ」といって「市場原理主義」をもちこみ、公共料金の引き上げや百五十を超える都立施設の廃止をおしすすめたことも重大です。
 教育についても、差別と選別の競争教育をいっそう推進するとともに、全国でただ一つ残された三十人学級をはじめとする少人数学級の実施を拒みつづけるだけでなく、私学助成の切り下げ、都立高校の統廃合、社会教育施設の廃止などをすすめました。また、石原知事のもとで、教育委員に、教育基本法改悪の推進者がすえられ、「日の丸・君が代」の押しつけなど、憲法を守るべき地方自治体の変質がすすめられました。
 中小企業対策では、予算がこの八年の間に三割、ピーク時の半分の水準に切り下げられ、工業集積活性化事業のうちきりや、商工指導所の廃止など大きく後退させられてきました。
 福祉や教育の切りすての一方で、温存、拡大されたのが「都市再生」の名による大型開発にほかなりません。「都市再生緊急整備地域」や三環状道路など、投資的経費に首都高速への投資など経常経費に含まれる経費をあわせた投資型経費は、一兆円規模で高止まりし、都財政と都民施策をおおきく圧迫するものとなっています。また、中央環状品川線や羽田空港再拡張など、本来、国や事業者の資金と手で建設されるべき投資について、都が直接、事業に乗りだしたり、資金提供をおこなったりしていることは都政にゆがみをもたらすものになっています。また、知事が外郭環状道について、資金提供をおこなうと発言し、さらなる都財政の浪費をおこなおうとしていることは、都政のゆがみをいっそう拡大するものです。
 こうした投資の結果、知事が投資のための都債発行をバブル前の水準に抑えていれば、大幅に都債残高を減らすことができたにもかかわらず、来年度予算では六兆六千八百八十六億円と過去最高、減債基金積立金を除いても五兆八千二百三十八億円で高止まりさせられ、公債費が都財政を圧迫しています。

 知事が本議会に提出した来年度予算も、逆立ちした都政運営の基本を引きつぐものとなっています。
 第一の問題は、実質五〇〇〇億円もの税収増が予定されているのにもかかわらず、基本的にこれが都民の生活と営業を守る施策にまわされていないことです。
 福祉をみると、高齢者に重い負担が押し寄せているもとで、住民税増税とそれに連動した負担増の緩和、重い医療費への対応などが、まさに待ったなしとなっているにもかかわらず、みるべき施策はなく、逆に、高齢者の「命綱」となっている老人医療費助成を今年度限りで打ちきろうとしていることは認められません。
 また、いま、政治の重い課題となっているワーキングプア、若年層の雇用、生活問題についても、東京において、とりわけ深刻な事態となっているにもかかわらず、従来の雇用行政の枠にとどめ、わが党が要求したワーキングプアの実態調査すらおこなおうとしないことは、石原都政の財界よりの姿勢を如実に示すものです。
 教育についても、全国で学習面でも生活面でも成果が確認されている三〇人学級をはじめとする少人数学級の実施を来年度も拒み、カーテンで仕切って教室不足をしのいだり、片道一時間以上もかかる通学バスなど劣悪な条件におかれている障害児の教育もたなあげされたままです。
 中小企業対策予算は、制度融資の原資が若干積み増しされたものの、業者の負担増となる部分保障制度の導入や、産業技術研究所の臨海部への移転などがもりこまれ、全体として後退の道を歩む予算となっています。
 さらに、ヒートアイランド現象と地球温暖化対策や、いつ来てもおかしくないと言われる巨大地震対策なども、みるべき施策は計上されていません。
 第二の問題は、オリンピックをテコにした三環状道路をはじめとする大型開発への投資がいっそう拡大、加速されようとされていることです。来年度の投資型経費、すなわち投資的経費に首都高への投資など経常経費に含まれる投資経費を含めたものは、増額され、石原知事就任時の一兆円台に復活させられています。しかも、生活密着型公共事業は後退させられたままです。
 わが党が予算委員会において提案した予算組み替えの提案は、こうした石原都政の逆立ち政治をあらため、都民のくらしと営業をまもる立場のもので、不要不急の浪費的投資を削減、中止し、介護手当の支給や中学生までの医療費無料化、三十人学級の実現、ワーキングプア対策など切実な都民要望の実現、さらに二つの温暖化対策の拡充や木造個人住宅の耐震助成など減災の立場での防災対策などを盛りこむことで、切実な都民要望と都政の課題に真正面から応えるものです。、自民党、民主党、公明党などの反対で成立に至りませんでしたが、この予算の方向こそ、都民の願いにこたえる道であると確信するものです。

 さて、わが党の追及で、知事のトップダウンによる事業が都政にゆがみをもたらし、公私を混同した都政の私物化による税金の無駄づかいと乱脈が持ちこまれていることが、浮きぼりにされたことは、おおくの都民に衝撃をあたえ、都政を揺りうごかすものとなっています。
 まず、トップダウンの事業の多くが、都民にとって到底容認できない重大な問題をかかえていることです。たとえば、新銀行東京は中小企業の役に立つどころか、五〇〇億円ともいわれる損失が見こまれ、日本銀行の考査が入るなど、事実上の経営破たんにおちいっています。築地市場の豊洲移転は、移転先の用地がベンゼン、ヒ素などの猛毒で汚染されており、市場関係者から環境学会が反対するばかりか、環境大臣も安全とは言えないと認めています。三宅島公道バイクレースは、非常に危険であることから、プロレーサーが中止すべきことを提言し、メーカーが賛同できないとしていること、島の復興に役立たないことが明らかになっています。いずれも、破たんは明らかであり、これ以上事態が悪化しない前に、見直しと中止をおこなうことを求めるものです。
 わが党は、こうしたトップダウン事業をはじめ、都政の重要問題が、知事と誰とも明らかでない相手との密室の飲み食いの場で談合されていることも明るみにしました。また、知事の私的諮問機関「東京の問題を考える懇談会」が、知事と親しい元丸紅会長の鳥海巌氏ら五名の財界代表者などによって構成され、「官から民へ」の流れなど、都の重要施策の決定に関する助言をおこなっています。この懇談会のメンバーなどが、都の参与や教育委員、新銀行東京の役員などになって、都政にふかくかかわり、ゆがめていることは見過ごすことのできない重大問題です。
 知事と夫人、側近による超豪華海外出張や知事の四男を重用したワンダーサイト事業にみる都政私物化にくわえ、知事の登庁日が週三日程度であることがかねてから問題になっていましたが、わが党の調査で、庁内、庁外あわせて一年で百三十日、一日平均約四時間に過ぎないことが明らかになりました。しかも、公務とされている時間に自分が製作総指揮をとる映画の撮影現場の見学に公用車を使って行ったり、自らの政治資金パーティーを開いていたのです。知事がなんと言い訳しようが、公務であることを証明する資料を示せないのでは、誰も信用できません。まさに知事の公私混同、無責任な仕事ぶりは、知事の資格に欠けるといわなければなりません。
 このような知事の浪費や都政私物化を許し、増長させてきたのは、自民党、公明党、民主党などが「オール与党」としてこれを容認するだけでなく、知事の言動を賛美してきたからにほかならないことを指摘しておくものです。

 政務調査費の使途が全国で大問題となっているいま、都議会の政務調査費は、全国最高額の一人月六〇万円、年間九億円を超える巨額の税金が投入されており、領収書を添付、公開することにより、その使途を明らかにすることは、一日も遅れさせることのできない緊急課題です。ところが、自民党、民主党、公明党は、「支出基準の検討」が必要などという理由で、今議会での採決に反対し、議会運営委員会での継続審議とすることで、領収書添付を先送りする道を選択しようとしていることは、断じて認められません。

 議員提出議案第一号は、高齢者の医療費助成マル福の六月末廃止を中止し、六十五歳から六十九歳までの医療費一割分を助成するものです。
 自民党は、高齢者だけ負担軽減するのは不公平だと言いましたが、高齢者になれば、二つ、三つと病気があるのが当たり前です。少ない年金で医療費がかさむ。そこへ手をさしのべるのは当然のことです。年金生活の高齢者に現役世代と同じ医療費三割負担は、あまりに重すぎます。しかも東京では、中学三年生までの子供の医療費無料化が広がっています。高齢者だけは負担が増える一方という道理はありません。段階的に元に戻すという現実的提案であり、賛同をお願いするものです。
 最後に、わが党は、来る都知事選挙において、全国最悪の逆立ち政治を転換するとともに、都政に私物化を排し、都民が主人公の都政を実現するために、吉田万三氏とともに全力をつくすことを表明し、討論を終わります。

以上