過去のページ

第二回定例会 一般質問  二〇〇七年六月二〇日

村松みえ子〔日野市選出〕

競争教育やめ、30人学級、市町村立学校の耐震化、冷房化など条件整備を
シルバーパスの多摩モノレールへの適用は切実な要求

世界の流れは「脱競争」教育

 子どもと教育について質問します。
 まず競争教育の問題です。日本の競争教育は、国連子どもの権利委員会が二度も改善を勧告するなど世界的に見ても異常です。とりわけ都は、小中学校での一斉学力テストや習熟度別授業を推進し、競争をあおってきました。
 それで本当に学力が身についたのでしょうか。例えば学力テストは、どの問題を間違えたか知らされないので、子どもたちが勉強に役立てようがありません。区や学校の順位だけが重視され、保護者からは「子どもは点数ばかりを気にするようになった」という声があがっています。

Q 習熟度別授業は、つまずいた子もしっかり教えてもらえるのではという都民の期待とは裏腹に、実際には、ゆっくりコースは到達目標が低く設定されています。これでは一度ゆっくりコースになったら、低学力のまま固定されてしまい、学力格差がどんどん開いてしまうではありませんか。こんなやり方はやめるべきです。答弁を求めます。

 極度の競争教育で子どもたちは傷つき、ストレスをためています。差別感や無力感にもつながっています。点数や競争が最優先され、「テスト対策の大量の宿題や補習に、子どもが疲れている」という事態が生まれています。
 世界では、競争をやめて学力世界一になったフィンランドが注目されるなど、「脱競争」の流れが大きくなっているのです。

Q 今子どもたちに必要なのは、仲間同士が学び合い励まし合って、高まっていくことであり、そうした中で学力とともに、自己肯定感を育み、人間性や仲間を大切にする力を育むことではないでしょうか。お答えください。

東京都だけ少人数学級を拒み続けている

 次に三十人学級についてです。
 東京都が四十人学級に固執している間に、他の道府県はすべて少人数学級に踏み出しました。私たちは今年二月、全国調査をしましたが、大きな特徴は、「一人一人に」「個に応じた」「きめ細かい」対応ができるようになったと、約八割の県が回答していることです。また、過半数の県が、「学級が落ち着き、子どもたちの情緒が安定した」「学力向上が進む」「発言機会が増え、積極的に授業に参加するようになった」などをあげています。また、欠席日数や不登校などの減少を十五県があげ、少人数学級が学習面だけでなく生活面でも良い効果をもたらすことが明らかになりました。「教室が広々使える」など空間的なゆとりも重要な効果です。だからこそ、他県は財政的には厳しくても、さらに実施学年を広げているのです。
 一方、東京では現在、三十六〜四十人の学級が小中学校あわせて六、六七二学級、二十五万人もの児童生徒が在籍しています。四十一人以上の学級もあります。そのような学級では、「一人一人」「きめ細かい」対応はとても無理です。おとなしい子は、一度も先生と話さないで一日が終わってしまうことも珍しくありません。
不登校の生徒が減少したと答えている秋田県や山形県と比べると、中学校の不登校生徒の割合は一・五倍にもなっています。
 私が訪問した中学校三年生、四十人のクラスは、一番前の席の生徒は先生の横に机を置き、首を真横に向ける形で授業を聞いていました。教室に入ろうとすると、入り口のところに一番後ろの生徒の席があり、机をずらさないと教室に入れません。ロッカーが小さいため机の横にカバンを置くので、先生は机と物の間をすり抜けながら生徒の指導をしています。空間的なゆとりなどまったくありません。
 副校長先生は、「教室に生徒がびっしりと入り、狭いし、子どもたちの気持ちは雑になります。」子どもたちにきめ細かく対応したいのですが、現実はなかなかできません。「クラスの規模が小さいことはベストです。」と話していました。これが現場の声です。

Q 知事、一人一人が確かな学力をつけているフィンランドも一クラスの人数は二十人程度であり、欧米では二十人程度の学級が常識です。全国でも東京都以外のすべての道府県が少人数学級に踏み出し、大きな効果をあげています。ひとり東京都だけが少人数学級を拒み続けているという事態を知事はどう考えているのですか。

Q 東京の子どもたちにより良い教育条件を整えるためには、ただちに三十人学級に踏み出すことを検討すべきではありませんか。

Q 知事は現場主義と言いますが、知事も教育長も東京の小中学校で子どもたちが四十人学級でどういう状況になっているのか、見に行ったことがあるのですか。また、全国の少人数学級での実践を一度でも見に行ったことはあるのですか。もし、行ったこともないのだったら、見に行くべきです。知事と教育長の答弁を求めます。

市町村に対し、学校耐震化、冷房化への財政支援を

 子どもたちの教育環境も重要です。
 先日文科省が発表した全国の小・中学校の耐震化率を見ると、一九八一年以前の建物では、二十三区は平均七割を超えているのに、多摩地域は五割を越えただけで、十%から三十%台がまだ九市もあります。東村山市では、学校の施設整備予算は七億円で、小、中学校一校ずつ、二億円を学校の耐震化に使うと、水道の改修、屋上の防水対策、トイレの改修、外壁の落下対策などは後回しにせざるをえません。
 青梅市でも、老朽校舎の改築もお金がかかるため、今後十九校の耐震化は、いつまでに百%完了するとは言えないとのことでした。
 教室の冷房設置も同じ問題があります。二十三区ではほとんどの学校で冷房が設置されていますが、多摩地域では扇風機設置がせいぜいです。国の「学校環境衛生の基準」では、夏の気温が二十五度から二十八度が最も望ましいとしていますが、ここ数年、三十度を超える日が増えています。
 このように、耐震改修も冷房の設置も進まない理由は、税収の差が二対一と、多摩地域の財政力が弱いからです。

Q 知事、問題は教育へ思い切ってお金を振り向けるかどうかです。知事は、選挙の公約で「子どもたちは東京の宝」と掲げました。その子どもたちが猛暑の中、冷房もなければ、地震がきたら壊れかねない学校で勉強をしなければない。こんな状況を放置できますか。

Q 学校の耐震化は子どもの命と安全にかかわると同時に、地域の避難所にもなるところです。だからこそ法律で義務付けられた「東京都耐震改修促進計画」で、病院や庁舎と同じ防災上重要な建築物として位置づけ、都は二〇一五年までに百%の達成を目指しているのです。そのための財政支援は欠かせないと思いますがどうですか。

Q 同時に市町村に対し、学校の冷房化への財政支援を行うべきです。今年は、とりわけ猛暑になるといわれています。お答えください。

多摩都市モノレールにシルバーパスの適用を

 最後に、多摩都市モノレールについて伺います。
 モノレールが開通してから、沿線各地でバス路線が廃止され、高齢者はたいへん不便な思いをしています。モノレールへのシルバーパス適用の要求は切実です。
 多摩地域は都営地下鉄も都電もなく、シルバーパスが使えるのはバスだけで、二十三区と大きな格差があります。ところが、今年度開通予定の日暮里・舎人ライナーはシルバーパスを適用する予算がついているのに、多摩都市モノレールに適用しないのでは多摩格差がさらにひろがってしまいます。

Q 多摩都市モノレールは、都営交通でないといっても、都の監理団体です。シルバーパスの適用範囲を都営交通とバスに限定した条例を改正し、多摩都市モノレールを対象に加えることを求めるものです。お答えください。

再質問を留保し、質問を終わります。

【再質問】

 知事に再質問いたします。
 まず、三十人学級についてです。
 私は、小中学校の一クラスが四十人の学級を知事が見に行ったことがあるのか、なければ見に行ってほしいと聞いただけです。なぜこんなことにも答えられないのですか。あるのかないのか、ないとしたらこれから行く気があるのか、はっきりと答えてください。
 知事は四十人学級が適切だといっていますが、現場も見ないでどうしていえるのですか。逃げずに答えてください。
 第二に、小中学校の耐震と冷房化について、知事は、教育環境の整備は設置者の責任と答弁しました。しかし、知事は、自分がやりたいと思った学校への防犯カメラの設置や校庭の芝生化には、設置者でなくてもお金を出しているではありませんか。
 学校の耐震化や冷房化は、子どもの命と健康にかかわる緊急課題です。子どもたちは東京の宝といいながら財政支援に踏み出さない、これは絶対許せないことです。ぜひ財政支援に踏み出してください。
 最後に、福祉保健局長は、条例で決まっているから多摩都市モノレールにシルバーパスは適用できないといいましたが、知事、だったら条例を変えればいいではありませんか。
 以上、石原知事の答弁を求めます。

【答弁】

○知事(石原慎太郎君) 村松みえ子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、学級規模についてでありますが、学級編制基準をどう定めるかについては、教育行政の根幹にかかわることでありまして、法的にも、所管する教育委員会がその専門的な立場から判断すべきものであります。児童生徒が集団生活の中で社会性を養うという観点から、集団生活としての学級には一定規模が必要であるとする教育委員会の判断は妥当であると考えております。
 次いで、学校施設の改善についてでありますが、各区市町村は、学校の設置者として施設等の教育環境整備に取り組んでおります。子どもたちの安全確保を第一としてその維持管理に取り組んでいくことは、設置者の責任であります。何もかも東京がやれというのは、ちょっと筋違いじゃないでしょうか。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。

○教育長(中村正彦君) 六点の質問にお答えいたします。
 まず、習熟度別指導についてでありますが、習熟度別指導は、個々の児童生徒の学力を最大限に伸ばすためのものでありまして、低学力を固定化するものではございません。この指導は、すべての児童生徒に確かな学力を定着させるために極めて有効でございます。
 次に、今、子どもたちに必要な教育についてでありますが、子どもたちが思いやりの心を持ち、これからの社会をたくましく生きていくためには、互いに切磋琢磨する中で、確かな学力の定着や社会性の育成を図るとともに、豊かな個性や創造力を伸ばす教育を進めることが重要であります。都教育委員会は、学力向上とともに、望ましい集団活動や体験活動を通して、個性の伸張や人と人とのかかわりを大切にする教育を推進しているところであります。今後ともこうした教育を充実してまいります。
 次に、学級規模についてでありますが、基礎学力の向上に配慮してきめ細かい指導を行っていくためには、教科等の特性に応じた多様な集団を編成できる少人数指導が有効であり、着実な成果を上げており、今後ともその充実に努めてまいります。
 一方、生活集団としての教育効果を考えた場合、児童生徒が集団の中で互いに切磋琢磨し、社会的適応能力をはぐくむため、学級には一定規模が必要であると考えております。
 次に、現場主義についてでございますが、先日も知事と一緒に学校訪問をしたところでございます。都内の少人数指導を導入している各学校では、きめ細かな指導を行い、着実かつ多くの成果を上げております。都教育委員会といたしましては、今後とも、教育現場の実情を踏まえ、少人数指導の充実に努めてまいります。
 次に、区市町村立学校の耐震化についてであります。
 耐震化につきましては、設置者である区市町村が、それぞれの地域の状況に応じ、国の助成制度も活用しつつ、計画的に施設の改築、改修を進めていくべきものであります。都教育委員会といたしましては、学校の耐震対策がより一層促進されるよう、国において必要な財源確保を図ることを国に対して引き続き働きかけていくとともに、区市町村が学校施設の耐震化等を推進するよう、必要な指導助言を行ってまいります。
 最後に、学校の冷房化についてでありますが、都教育委員会といたしましては、区市町村立学校施設の冷房化につきましては、各区市町村教育委員会において、地域の実情、特性等を踏まえ、それぞれの考え方に基づいて対応しているものと考えております。

○福祉保健局長(安藤立美君) 多摩都市モノレールへのシルバーパスの適用についてでございますが、シルバーパスは、高齢者の社会参加活動を促進するために、利用を希望する方に対しまして社団法人東京バス協会がパスを発行し、都が補助を行っている事業でございます。
 東京都シルバーパス条例により、シルバーパスの利用対象は都営交通及び路線バスとなっておりまして、新たな利用対象交通機関の拡大は考えておりません。

【再質問答弁】

○知事(石原慎太郎君) 小学校の視察は、議員時代に何度もいたしました。

○教育長(中村正彦君) 現場主義については、今知事がお答えしたとおりでございます。
 それから、耐震化と冷房化につきましては、議員ご指摘のとおり、各区市町村によって相当な差があることは確かでございます。ただし、ご答弁申し上げましたように、区市町村立学校の耐震化、冷房化につきましては、それぞれの区市町村で設置者責任として対応すべきものと考えております。

○福祉保健局長(安藤立美君) シルバーパスについてでございますが、新たな利用対象交通機関の拡大は考えてございませんので、条例の改正も考えてございません。

以上