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第三回定例会 本会議討論 二〇〇七年十月五日

村松みえ子(日野市選出)

石原知事の公約違反と逆立ち政治をただし、地方自治体の本旨をまもるために全力をつくす

 日本共産党都議団を代表して、第一七七号議案、「公立大学法人首都大学東京中期目標の変更について」他七議案に反対し、わが党他三会派共同による議員提出議案第二〇号「公立の小学校及び中学校の耐震化促進のための助成に関する条例」に賛成する立場で討論を行います。
 公立大学法人に関わる四議案は、首都大学の独立行政法人に、都立産業技術高等専門学校を移管、統合させるものです。独立行政法人化された首都大学では、都の交付金が毎年減らされ、基礎研究部門では定期研究誌の購入さえ切り詰めるなど教育研究条件の悪化が深刻です。都立高専でも、独立行政法人になれば、教員への任期制が導入され教育の継続性が阻害されることや、予算が削減されることなどに危惧の声があがっています。独立行政法人化が教育水準の大きな後退につながることは明らかであり反対します。
 公立小・中学校の耐震化助成に関する条例は、児童・生徒が日中を過ごし、震災時は避難所となる小中学校の耐震化を、一刻も早く完了させるため、都として区市町村に助成することを制度化するものです。学校耐震化助成は、市長会の予算要望にもかかげられるなど切実な要望であり、二三区においても急がれているものです。静岡・宮城などでも独自助成が効果をあげており、本条例の制定はきわめて重要な意義を持つものです。ご賛同を強く訴えるものです。

 本定例会では、参院選挙で示された「格差と貧困を深刻にする政治は許さない」という国民の審判に応えて、都民のくらしをどう守っていくのかが鋭く問われました。ところが石原知事は、知事選公約だと公言してきた個人都民税の減税を突然撤回し、しかもこれを「公約の進化だ」と強弁しました。
 わが党の「明々白々の公約違反だ」という追及に対して知事は「共産党の好きな一種のばらまきにつながりますので、これは政策転換いたしました」という驚くべき答弁をおこないました。都民への減税が「バラマキ」だというなら、これまで国が超党派でおこなった定率減税などの減税も「バラマキ」というのでしょうか。
 大企業や大資産家にたいする減税には文句も言わない知事が、都民への減税を「バラマキ」呼ばわりしてはばからないことに、知事がいかに庶民の痛みをかえりみないかが明白に示されています。“
 知事自身が「税制のゆがみを正す」「税制のあるべき姿」とまで言って公約に掲げたのです。都民の支持を集めて当選したら、その公約を「バラマキ」だと言って撤回するというのですから、〃語るに落ちる〃であります。はじめから知事は、この公約を実行する意志はなかった、選挙目当てのカラ公約だったというそしりはまぬがれません。

 わが党は、貧困と格差に苦しむ都民に対して、知事が公約したささやかな都民減税の実施はもちろん、緊急の生活応援手当てやネットカフェ難民への住宅支援、さらには非正規雇用労働者の待遇改善などが不可欠であるとして、緊急提案をおこないましたが、今後ともその実現に力をつくすものです。
 豪華海外出張についても、知事は知事選のなかで「反省」を口にし、「都民への説明不足」や「事務方に任せきり」をあらためると約束してみせました。しかし、知事のツバル・フィジー視察について、温暖化の影響がもっとも深刻なツバルになぜ宿泊し、十分な調査をしなかったのかなど、わが党の質問にまともに答えることもできませんでした。また、条例の二倍もの豪華ホテル代を払ったり、多額の費用をかけ特定の通訳に依頼したことなどを指摘し、なぜ節約につとめないのかを質したのに対しても、知事は説明不能でした。この問題でも、知事の都民への約束は破りすてられたのです。
 ちなみに、今回知事は、航空機のファーストクラスがなかったために、やむなくビジネスクラスを利用しましたが、知事は何の苦情も言っていません。今後は、仮に必要な出張であったとしても、せめてビジネスクラスを利用して、節約に心がけるべきであることを申し上げておきます。

 猪瀬副知事の格差問題に対する認識と答弁についてもふれないわけにはいきません。
 わが党は、格差を否定し、格差是正にむけた政策を「バラマキ」呼ばわりしている猪瀬副知事の認識を質しました。ところが猪瀬副知事は、質問にまともに答えないばかりか、「一般論で貧しい人がいるというだけじゃ、いつの時代も同じですよ」という驚くべき認識を示しました。
 この数十年来、今日ほど貧困と格差の増大が重大な社会問題になったことはありません。この最大の原因が、自民党政治がすすめてきた構造改革によるものであることは、各政党やマスコミも認め、福田新首相も、先の所信表明で、「構造改革を進めるなかで、格差といわれるさまざまな問題が生じた」と言わざるを得なかったのです。いまどき、格差社会を否定するのは、猪瀬副知事ぐらいであり、時代遅れもはなはだしいと言わなければなりません。
 しかも、猪瀬副知事は、「しんぶん赤旗」が雇用労働者人口に占める非正規雇用労働者の割合が、一九九五年以後ふえているグラフを紹介していることをもちだし、自分が構造改革がはじまったとする二〇〇一年以前、すなわち小泉構造改革以前から、非正規雇用が増えているから〃構造改革が悪いわけではない〃と強弁し、「この記事をよく読んで質問していただきたい」とまで言いました。まさに天につばするものです。
 第一に、わが党は、小泉構造改革がすべての原因と言っているのではありません。猪瀬副知事が紹介した「しんぶん赤旗」の記事も書いているように、今日の構造改革路線で非正規雇用を増大させる方針は、九五年に、当時の日経連が提言した「新時代の『日本的経営』が端緒となったものです。雇用流動化の目玉といわれた労働者派遣法は一九八六年に制定され、九九年には「原則禁止から原則許可へ」と大幅緩和されました。二〇〇四年に製造現場への派遣を認めるなど、小泉政権のもとでいっそう加速した。これが動かしがたい事実です。
 しかも、小泉内閣が所得再配分機能を破壊したことによって、貧困と格差がいっそう拡大した、これも動かしがたい事実です。猪瀬副知事の答弁はまったく的はずれだったのです。
 第二に、わが党はいまなお、猪瀬氏が構造改革は避けて通れない道といいはり、国民のくらし、営業への支援などの政策を「自己責任時代となったのに」などと言っていることを指摘し、その認識について質したのです。これにも、まともに答えようとしませんでした。本当に不見識、不誠実です。
 わが党はまた、猪瀬副知事が、区市町村が少子化対策としてとり組んでいる「次世代育成手当」などを名指しで「バラマキ」と攻撃していることや、障害者自立支援法の凍結などをふくむ、民主党の参院政策に対して「バラマキ」といっていることにかかわって、障害者自立支援法の凍結について、「バラマキ」というのかと質しました。これに対し、猪瀬副知事は、「あたかもコメントしたかのごとく事実にもとづかない質問は、以後やめていただきたい」と質問の趣旨をねじまげることで答弁を拒否しました。事実に基づかないのは、猪瀬副知事です。わが党は質問で、副知事の「コメント」として問題をとりあげたのではないからです。
 医療制度、診療報酬制度に関しては、構造改革によって、医療費の負担増や医師不足などに見られるような医療の荒廃が引きおこされているのに、なお猪瀬副知事が、「診療報酬」や医師などの給料を引き下げよと主張するのかどうかを質したものです。これもまともに答えようとしませんでした。
 今回の答弁のなかで、猪瀬副知事は、公正、誠実に任務を遂行すべき副知事としての資質があらためて問われていることを指摘しておきます。

 わが党は、石原知事の公約違反と逆立ち政治をただし、地方自治体の本旨をまもるために全力をつくすことを表明して、討論を終わります。

以上