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文書質問趣意書
遊戯施設の安全管理の徹底について
2007年10月3日
たぞえ民夫(世田谷区選出)
地方でも都市でも、遊園地での遊戯施設事故が重大な社会問題となっています。大阪府吹田市の遊園地「エキスポランド」で今年5月、乗客1人が死亡、19人が負傷するコースター脱線事故が発生しました。この事故は、コースターの車軸が金属疲労で破断したことが原因でした。このような痛ましい事故が全国で続発し、都民も胸を痛めています。
遊戯施設の検査標準(日本工業規格)は、全車軸を年1回調べるよう定め、メーカーも異常がなくても車軸を8年間ごとに交換するよう推奨しているにもかかわらず、車軸を運行開始から15年間1度も交換していなかったほか、探傷試験を先送りさえしていました。
事態を重く見た国土交通省は、特定行政庁や遊戯施設の所有者、管理者にたいして、緊急点検の実施を通知しましたが、都内では18ケ所の遊園地のうち、台東区内の「浅草花やしき」と、日野市内の「多摩テック」で、不適合とする損傷箇所が見つかり、都民から驚きの声が上がっています。
Q1 緊急点検の結果、遊園地からどのような報告が示されたのですか。
「多摩テック」には年間40万人が訪れ、都立多摩動物園にも隣接していることから、多くの都民が利用しています。これらの施設が安全対策を怠り、子どもたちや利用者の安全で楽しい遊び場という夢と期待を失うようなことは絶対にあってはなりません。
Q2 遊戯施設が集中する東京で、未然に事故を防ぐことは緊急の課題と考えますが、見解を伺います。
都内にある遊戯施設は、地元の特定行政庁と東京都が直接指導する施設に分類されています。例えば、文京区内の後楽園遊園地や、日野市内の多摩テックなどは特定行政庁である地元の自治体が監督していますが、あきる野市内のサマーランドは東京都が特定行政庁として監督しています。
そのため、都が直接監督していない遊戯施設は、実質的に地元の特定行政庁が定期点検などを対応するため、都は実態を掌握することが困難です。
Q3 遊戯施設の近代化や構造の複雑化に対応するため、東京都が都内の遊戯施設の全体を把握する必要があるのではないですか。
この問題を解決するには、おおもとである遊戯施設の定期検査を定めている建築基準法のあり方も問題です。
それは、建築基準法第12条3項で、「定期に検査をさせ」、特定行政庁に報告することを規定している定期点検と、日本工業規格(JIS)の検査標準で示している、「車輪軸は一年間に1回以上」の探傷試験をおこなうこととの関連が明確ではありません。
そのため、東京都は今年5月、建築基準法施行細則を改正し、施設の名称や知事が定める定期検査の成績表・検査表を補充し、車輪軸については探傷試験を追加しました。地方自治体がこのような対応をせざるをえないこと自身、建築基準法が社会問題になっている事態に十分に対応できないことを物語っているのではないでしょうか。こうしたことが、安全対策を遅らせている原因になっています。
Q4 建築基準法令の抜本的見直しを国に求めるべきではないですか。
4月の六本木ヒルズでのエレベーター火災、5月のエキスポランドでの死傷事故では、原因とみられる不具合が検査資格者による定期点検で見過ごされていた可能性が指摘されています。現在、遊戯施設やエレベーターの検査資格者は全国で約3万人いますが、検査資格者は、財団法人『日本建築設備・昇降機センター』が実施する4日間の講習修了者に資格が与えられ、検査業務が行なわれています。しかし、修理や交換が必要と判断するための判定基準が法律上位置づけがあいまいなもとで、一方、遊戯施設の近代化にともなう機械の高度化、複雑化が進行しています。定期点検をおこなう検査資格者の技術の向上は急がれています。
Q5 国に、3年から5年を周期とした定期的な更新講習の義務付けを求めるよう提案しますが、どうですか。
事故が多発している背景に、遊戯施設の所有者、管理者の安全管理をなおざりにしてきた国の姿勢を転換して、国民の命を守り、安心して遊戯で楽しめるための手立てが急がれています。遊戯施設の事故は、もはや一刻も放置できません。こうしたときこそ、都民のいのちを守る先頭に東京都が立つべきです。
Q6 都は、事業者が都内で遊園地を開設する場合は、規模と合わせて、すべての遊戯の種類と設置数など、事前に把握する必要があると思いますが、見解を伺います。
建築基準法第88条では、観光のための乗用エレベーターやエスカレーター、高架構造のウォーターシュート、コースター、回転運動をおこなうメリーゴーランドや観覧車、滑走面に水を流し、水着やゴム製などの補助具を使用して滑走するウォータースライドについて定期点検を規定しています。
東京都にあってはこれらの施設には、半年に1回の定期点検を義務付けていますが、基準法の対象になっていない、例えば軌道上をゆっくり走る豆汽車やゴーカートなどは、定期点検と報告義務は求められていません。
Q7 建築基準法88条の対象になっていない遊戯施設についても、都として点検整備の実施記録の報告を求め、状況を把握する必要があると考えますが、見解を伺います。
以上
回答
A1 大阪府で 5 月に発生したジェット・コースター事故を契機にした緊急点検では、都内は、116
の遊戯施設が対象となっています。
このうち、浅草花やしきのコースター、多摩テックのでんでん虫とガリオンで、車軸や車輪に関する不具合が、江戸川区のプールガーデンのウォータースライドで、滑走面に関する不具合が発見され、いずれの施設も是正済みと報告を受けています。
A2 年齢を間わず不特定多数の者の利用があり、近年、多種多様になっている遊戯施設の安全性を確保することは、重要な課題であると認識しています。
このため、都では、特定行政庁として、建築基準法に基づく定期検査や安全運行に関する指導を実施するとともに、区市とも連携し、都内の遊戯施設の事故防止に努めています。
A3 建築基準法に基づく遊戯施設は、建築確認や完了検査、定期検査等について特定行政庁が所管することになっており、特定行政庁ごとに、遊戯施設の実態を把握することが基本です。
都としては、これまでも、広域的な観点から区市との連絡会等を通じて、適宜情報を把握しています。
A4 国においては、大阪府で 5月に発生したジェット・コスターの死亡事故を受け、遊戯施設に関わる定期検査の方法、内容のあり方等について、社会資本整備審議会に諮り、検討していると聞いています。
A5 社会資本整備審議会において、法令改正や新技術に対応した検査方法、判定基準等を内容とした定期的な講習と修了考査を義務付けることを、既に検討していると聞いています。
A6 遊戯施設は、ブランコや滑り台などの簡易なものから、高速回転運行するコースターなど複雑で大規模なものまで様々です。
このため、建築物の構造等の最低の基準を定め、健康及び国民の生命、財産の保護を図ることを目的とする建築基準法は、第
88 条において、故障等があった場合に人命に危害が及ぶ可能性が高い一定の遊戯施設を指定し、構造強度等に関する基準を定め、設置時においては築確認と検査を行うとともに、完成後には定期検査報告制度を設け、その安全を確保しています。
それ以外の簡易な遊戯施設の安全確保については、所有者等の責任において行われることが基本であると考えます。
A7 建築基準法第 88 条に指定されていない遊戯施設については、利用者の安全を確保する上で、日常の維持管理が重要であるという観点から、所有者等の責任において、点検整備と記録を行うことが基本であると考えます。
以上