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文書質問趣意書
浸水被害防止対策について
2007年10月3日
河野百合恵(江戸川区選出)
地球温暖化が原因とされる集中豪雨が毎年のように日本各地に水害をもたらしています。今年9月も台風11号と秋雨前線で関東地方や東北地方に豪雨が降り、とりわけ東北地方では、秋田県の北秋田市や能代市には災害救助法が適用になりました。
東京では、2004年、2005年に連続して豪雨被害が発生しており、今年も多摩川の増水など心配な事態が起きました。
今年7月、東京都は都市整備局、建設局、下水道局が共同で「東京都豪雨対策基本方針の中間まとめ」を発表しました。中間まとめは、「近年、都内の一部地域において局所的集中豪雨が頻発している」とし、都の豪雨対策は「対策促進エリア」を設定し、重点的に取り組みを進めるとしています。都が選定した対策促進エリアは、区部西部に重点が置かれ、東部低地帯の江戸川区や葛飾区などは、対象からはずされています。
都は、近年、東京において時間50ミリを越える豪雨が増加しているとしながらも、対策エリアの選定について、かつて被害が多かった東部低地帯から浸水被害の形態が変化し、区部西部に大きな被害が発生するようになっていると説明づけています。
確かに、区部西部はヒートアイランド現象の影響などで「環八雲」が発生し、大量降雨の頻度が増していますから、集中豪雨対策を進めることは当然です。
しかし、同時に東部低地帯の浸水対策が、都民の生命と財産を守る自治体の使命に照らして、都政では避けられない喫緊の課題であることにかわりはありません。
私が住んでいる江戸川区では、2004年10月、台風22号が襲来した際、区内全域で床下浸水が起こり、江戸川区土木部に被害通報があったものだけで126ケ所を数えました。区部西部だけでなく、東部地域でも浸水被害は発生しているのです。
浸水被害があった地域では、下水道の水が逆流してきたり、お店の商品が水に浸かってしまったり、自動販売機にも水が入り故障するなど数えきれない被害がありました。区から支給される土嚢で、懸命に水の浸入を防ぐ住民の苦労は涙ぐましいものでした。地域住民は、今も大雨の予報があるたびに、不安で眠れないと話しています。
浸水被害は、行政の努力で被害を最小限に食い止めることができます。そこで、伺います。
Q1.江戸川区中央1.2丁目の境界に下水道が敷設された時、東京都は雨水を取り入れる貯留管を設置しました。貯留管が設けられた周辺地域では浸水被害が起こりませんでした。当時、都下水道局は、南側にもう1ケ所、貯留管を設置する計画を持っていました。しかし、今日にいたっても住民に約束した貯留管は設置されていません。そのために、2004年の時は、貯留管未設置の地域では、軒並み床下浸水の被害が発生し、近くにある江戸川区役所の土木庁舎にも水が入る事態になりました。都下水道局は、「江戸川区は比較的遅い時期に下水道ができた地域だから、今すぐ対応できない、都心の古くなっている下水管を改良することが急がれる」との態度で、区民の水害防止を求める要望に応えた対応をする意思を見せていません。
浸水被害から住民を救ううえで、効果が明らかな下水道貯留管を一日も早く敷設すべきではありませんか。お答えください。
Q2.都心部は、都市再生路線のもとで巨大開発が展開され、都民にとっては気の遠くなるような事業費が投入されています。
比べて、江戸川区民が望んでいる下水道貯留管の工事費は、都財政の現状なら十分生み出せる金額ではないでしょうか。下水道貯留管敷設の工事費はいったい幾らかかるのでしょうか。金額をお示しください。
Q3.毎年、発生する集中豪雨による被害を防ぐには、河川整備や、遊水地、調整池の増設、透水性舗装の促進や雨水浸透マスへの補助の充実などさまざまな対策を講じることが重要です。
これらの取り組みを、都は区部西部地域を重点に進める方針ですが、集中豪雨被害が起きる可能性がある地域について事業を進めていただくよう要望します。お考えをお聞かせください。
Q4,江戸川区の隣の墨田区では、早い時期から雨水の利用に力を注いできています。特に区民との協力で、各戸に雨水貯留タンクを置き、その費用を区が補助する努力も進めてきました。「町のなかに小さなダムを無数につくる」という考えにもとづいて取り組まれている雨水貯留タンクは、浸水被害を減らし、区民の環境問題への意識も高めています。
他の自治体にも助成制度は広がっています。
都が、墨田区のような努力をしている自治体の取り組みを広く都民や企業に知らせていくとともに、雨水タンクへの補助制度を創設するなどの支援策を講じることを求めるものですが、いかがでしょうか。
Q5.国土交通省は、1987年から首都圏・近畿圏の水防対策として利根川水系、荒川水系など5河川6水系で高規格堤防、いわゆるスーパー堤防の建設計画を進めようとしています。江戸川区もこれを受けて、江戸川流域の北小岩から篠崎地域や、荒川流域の平井・小松川地域にスーパー堤防を建設する計画を明らかにしています。北小岩地域のスーパー堤防計画は、江戸川右岸を約2.2キロメートルにわたって200から300mの幅で盛土して整備するというもので、対象面積は約48haに及びます。この地域には約1800棟の建築物があり、6000人近い人が居住しています。居住者は一度立ち退きを求められ、盛土したスーパー堤防の上の土地に区画整理事業が施行されて、新しい家を建築することになるのです。住民にとっては多大な犠牲が伴う公共事業となります。
北小岩や東小岩、篠崎地域などに、江戸川区が国土交通省とともに進めようとしているスーパー堤防事業は、住民の負担・犠牲があまりにも大きすぎること、水防対策として実際に必要で効果ある事業になるか、など疑問が数多く出され、批判、反対の声が高まっています。
北小岩・東小岩地域48haのスーパー堤防建設と区画整理事業にかかる予算額は1700億と言われています。事業を行なうとすれば、東京都も直轄事業負担金などの支出が求められることになりますが、都の負担は幾らになるのでしょうか。内訳、金額などをお示しください。
Q6.昨年7月に開催された利根川治水大会で、熊谷市長が「スーパー堤防は巨額の事業費がかかり、長く時間がかかる。また地権者の合意を得るのがむずかしい」と見解を示されて、熊谷市ではスーパー堤防建設とは違う水防対策に転じることを検討している、と発言されていました。治水対策を進めてきた自治体の長が疑問を呈し、また、計画が持ち上がっている江戸川区などでは、住民から強い異論が出ているスーパー堤防計画について、再検討すべきと考えます。どうお考えですか。
Q7.街づくり、災害対策は住民参加で納得・合意を大前提にすすめられなくてはなりません。都の財政負担も発生するスーパー堤防計画については、国や地元自治体、住民と十分に協議をし、住民の声を反映させた治水対策になるよう都としての役割を発揮していただくことを望みます。御所見をお示しください。
以上
答弁
A1 当該地区では、昭和60年代から平成のはじめにかけ、道路冠水や床下浸水が発生していました。
都は、浸水被害を軽減するために貯留管の整備を計画し、その一部を平成
11 年度に完成させました。これにより、当該地区では浸水被害が軽減され、着実に効果があがっています。
引き続き整備する予定であった南側の貯留管については、平成
16 年度の浸水被害を踏まえ、地域特性などを考慮した再検討を行い、計画を見直しました。
計画の見直しに際し区と協議した結果、区が計画している道路事業の施行に合わせて、拡幅される道路の下に整備することとしました。
A2 整備を行う貯留管については、今後、区が計画している道路事業の施行に合わせ、具体的な内容を検討していくこととしており、工事費についてもこれに合わせて算出します。
A3 平成 19 年 8 月に策定した東京都豪雨対策基本方針では、効果的・効率的な豪雨対策を実現するため、都内全域を対象に、過去の豪雨による被害や降雨特性などを踏まえて、流域単位、地区単位、施設単位で対策促進エリアを選定しています。
この対策促進エリアでは、神田川流域などでの河川整備、隅田川幹線地区などでの下水道整備を進めるとともに、これらの整備と合わせて雨水流出抑制などの流域対策を重点的に実施することとしています。
A4 各戸に置く雨水貯留タンクなど、小規模施設への補助については、墨田区のほか台東区、足立区などでも実施しています。
こうした地域の実情に応じた取組は、基本的に、その普及広報を含め区市町村が行うべきものと考えます。
都は、広域的自治体として、延べ床面積 10,000
平方メートル以上の大規模施設の設置を促進しています。
A5 江戸川のスーパー堤防は、国が事業主体となり全区間整備することとされています。
北小岩地区におけるスーパー堤防の整備は、現在、業化に向けた準備段階であり、事業費など事業内容については承知していません。
なお、国による都関連のスーパー堤防業が実施された場合、都は、可川法に基づく直轄事業負担金として、河川業費の
3 分の 1 を負担することになります。
A6 江戸川では、国が昭和 62
年度にスーパー堤防事業に手しています
市街化が進んでいる北小岩地区において、まちづくりと一体となって、洪水や地震に強いスーパー堤防事業を進めることは、江戸時の治水安全度を高める上で、意義のあることと考えます。
A7 スーパー堤防事業は、区画整理事業など、まちづくりと一体的に進める事業であり、住民の理解と協力を得ることが必要です。都は、事業主体である国や江戸川区と連携し、都民を水害から守るスーパー堤防の整備促進に協力していきます。
以上