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文書質問趣意書
横田基地の「軍民共用化」を撤回し、基地の全面返還を求めよ
2007年12月17日
古館 和憲(板橋区選出)
いま、横田基地は、米国の全地球的な軍事空輸や緊急の出撃拠点としての機能を担うとともに、アジア全体の作戦を指揮する新たな司令部として、その軍事的役割を極度に高めている。
横田基地に常駐する第374空輸航空団が米本国から運ばれた大量の物資を世界に展開している各基地に輸送することを任務としており、イラクやアフガニスタンにも飛行している。横田基地からイラクへの軍隊派兵は2003年から2006年の4年間で現在わかっているだけで、延べ5回、千人近くにのぼっている。
同基地のホームページによれば横田基地が「アジア太平洋を結ぶ米軍のハブ空港に」との位置づけがされており、文字通り『総合主要基地』としての役割を担わされており、米国にとっては重要・不可欠な基地とされている。
さらに、2006年2月には「米軍再編」計画に基づいて日米共同の戦争司令部である「共同統合調整センター」(BJOCC)がつくられ、すでに活動をはじめている。
Q1、こうした事実について都はどのように把握し、どのように評価しているのか。
横田基地に今年の一月はじめに、米軍の新戦闘指令部「ケニー司令部ジャパン」(第13空軍第一分遣隊、50人)が創設された。これはブッシュ政権が 2002二年に打ち出した先制攻撃戦略に沿って、「地球規模でのテロとの戦い」に対応するための司令部機能の強化を目的とするもので、全世界で十個の「戦闘司令部」をたちあげる計画で、その一つが横田基地につくられたものである。
また、2010年には「米軍再編」の一環として航空自衛隊の防空指令機能を、府中基地から横田基地へと移転されることが予定されている。その際には自衛隊の新建物を、現在ある米軍第五空軍の建物と隣接するところに配置し、完成時には二つの司令棟が地下隧道によって行き来できるようにすることになっている。これによってこの戦闘司令部は、文字通り「陸海空の日米共同調整センター」として、本格的に稼動することになる。
Q2、日米共同の「統合作戦調整センター」の設置は、事実上、自衛隊が米軍の指揮のもとに置かれていることを意味しており、憲法違反の集団的自衛権の行使につながるもので、憲法が禁じている集団的自衛権の行使になるのではないか。認識を問う。
隔絶された地下複合施設であるこの「共同統合作戦調整センター」は、米軍が発行した「星条旗」によると「24時間を通じ、最大150人の人員が12時間制の交代勤務で運用」しており、その機能は「在日米軍総司令のブルース・ライト空軍中将に対して状況を逐一伝達するためのプラットホーム」としての機能をもつとされ、その中核となるのがCATフロア(クライシス・アクション・チーム)すなわち「危機即応態勢」の部署だとされており、「巨大な神経中枢」の役割を担うものと位置づけられている。
同フロアには、第5空軍、在日米陸軍、第3海兵遠征軍、第13空軍司令部、在日米海軍司令部とともに、日本側の担当者が肩をならべて配置に就くといわれており、米軍と自衛隊が、横田基地で一体化され、「地球的規模のテロとの戦いへの対応」などの任務を遂行することになる。
Q3 これは、首都にある横田基地の軍事的位置づけと役割が強まっていくことになり、首都東京の軍事的緊張は格段に強く増幅されることになるではないか。
これほどまでに、首都東京への軍事化が米日政府や米軍司令部などから具体化されてきている中で、石原知事の態度は、いっかんして「軍民共用化の推進」だけだ。
石原知事は「横田基地が兵站で、基地がほとんど使われていない」かのようにいっているが、横田基地の実態は、兵站基地どころか、米軍の中枢機能が集中し、実際の利用も知事の認識とはかけはなれている。
テロ特措法によって航空自衛隊の米軍空輸支援が、横田を基点に米空軍嘉手納基地や米海兵隊岩国基地などを往復しており、今年の九月までに輸送回数はこの間377回に達し、さらには横田からグアムの米軍基地への空輸、さらには米軍の航空機用エンジンや部品、整備機材、衣料品などもおこなっていること。
Q4 こうした事実を承知しているのか。
今年の六月十四日に、衆院安全保障委員会で米軍横田・座間基地を視察した際に、わが党の赤嶺政賢衆議院議員が、在日米軍司令官に「横田基地軍民共用化」問題にふれた際に、在日米軍司令官は「横田基地は軍事的所用が中心。米軍再編が大変であり、民間利用はあとの話だ。横田基地では毎月空域を制限してC130をつかった投下訓練を常時行っており、軍民共用についてはデメリットがあり、民間との調整をつけることが困難だ」との見解を表明した。
Q5 知事、米軍には軍民共用化の考えなどどこにもない。都民を欺くようなことはあってはならないと考えるがどうか。
Q6 知事になって8年が過ぎたが、いったい何が前進したのか。米軍とのやり取りを公開することを求める。
都民の願いは、ただちに軍事基地の全面返還だ。
戦争のための日米共同の司令部といえる「共同統合作戦調整センター」や「米軍と自衛隊司令部の共同」などが横田基地を中核として推進され、軍事的な指令基地の高度化、共同化が従前をはるかに越えて進められている事態に対して、唯々諾々と追認するようなことを、都民は願っているのでは断じてない。
米軍基地による騒音被害、落下物の脅威、さらには基地や関連施設でのジェット燃料などの有害物質の流出事故など、軍事基地が存在することによって引き起こされている、このような事態は抜本的転換こそ求められている。
「基地あるがゆえ」の損害・被害を受け続けてきた都民・住民の生命と安全を最優先することこそ、都政がなすべき最優先課題だ。
いま大切なことは、横田基地をかかえる自治体でも、米軍基地の返還こそ、自律した都民・市民、自治体の期待に応えることではないか。
Q7 なぜ、横田基地の『全面返還』を要求しないのか。
いま、横田基地はさらに「ミサイル防衛」についても重要な任務として担わされており、その具体化が、地対空ミサイル『PAC3』の配備だ。すでに今年3月には埼玉県の入間基地、そして11月には千葉県の習志野駐屯地に配備された。今後は、首都東京への配備だとして、都の管理する晴海ふ頭公園やお台場海浜公園を含めた、都内10箇所を候補地として、今月中にも移動展開訓練を実施することが伝えられている。
日本共産党は、12月10日に「ミサイル防衛を口実にした地対空ミサイル・パトリオット(PAK3)の配備と移動展開を止める」ことを防衛省に申し入れをおこない、「『ミサイル防衛』は、アメリカによる先制攻撃を可能にするもので、アジアと世界の安定を脅かす」「都民の憩いの場で訓練が行なわれることになれば、都民生活にも大きな影響が出る」として、@移動展開訓練は行わない。Aミサイル配備を中止し、配備済みのものも速やかに撤去することを求めた。
同席した日本共産党笠井亮衆院議員は、習志野駐屯地への配備では、防衛省が自治体に事前に公表しないよう要請しており、突然訓練があることも指摘し、重ねて訓練と配備の中止を求めた。これに対し、防衛省側は、移動展開訓練については「具体的な方針を固めたという事実はない」としながら、「一般論として訓練は必要だとし、展開地域も具体的に検討している」ことを認めた。年内の訓練や、住民への通知なしの実施の可能性も否定しなかった。
Q8 首都に検討しているミサイルの配備は行わないように、首都の責任者として、その配備計画の中止を強く関係機関に働きかけるべきと考えるがどうか。
回答
A1 共同統合運用調整所の設置については、平成18年5月に公表された「再編実施のための日米のロードマップ」に掲げられており、航空自衛隊総隊司令部の庁舎と同じ用地内に設置される予定であり、現時点ではまだ設置していないとの説明を国から受けています。
A2 国から、「従来より、自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下、各々の指揮系統に従って行動することとしており、このことは共同統合運用調整所の設置によって変わることはなく、自衛隊が米軍の指揮下に組み込まれることはない。」( 「横田飛行場周辺自治体かなの質問に対する追加回答」平成18年3 月15 日東京防衛施設局) との説明を受けています。
A3 現在進められている在日米軍再編は、弾道ミサイル攻撃といった事態への対処も含め、防衛力を強化し、我が国全体の安全性の向上を図ろうとするものであると認識しています。
米軍再編に伴う横田基地の位置付けについては、国から、以下の説明を受けています。「自衛隊施設及び横田飛行場をはじめとする在日米軍の施設・区域は、我が国に対する弾道ミサイル攻撃をはじめとする攻撃への対処能力・一抑止力を維持し、我が国の安全を確保する上での重要な基盤を提供するものである。」(
[ 横田飛行場周辺自治体からの質問に対する追加回答]
平成18年3 月15 日東京防衛施設局)
A4 いわゆるテロ対策特別措置法に基づく協力支援活動として、航空自衛隊が国内外輸送を行っていたことは承知しています。
国内輸送について、国は、「現在、横田飛行場、岩国飛行場及び嘉手納飛行場の間で主として米軍の航空機用エンジン、部品、整備器材、衣料品等を輸送している。」(
参議院議員近藤正道君提出テロ特措法に基づく航空自衛隊の空輸活動に関する質問に対する答弁書(
平成19年10月5日提出) ) と公表しています。
国外輸送について、「平成13年12月3日から在日米軍基地とグアム方面などとの間の国外輸送を開始した。」(
平成19 年度防衛白書) ことを公表しています。
A5 横田基地の軍民共用化については、平成15年5
月の小泉首相とブッシュ大統領のトップ会談において、その実現可能性について共同で検討することが合意されたものです。
その後、平成18年5 月の在日米軍再編の最終取りまとめ「再編実施のための日米のロードマップ」で、横田飛行場のあり得べき軍民共同使用の具体的な条件や態様に関する検討を実施することが明確に示され、日米両政府による協議が行われてきました。日米協議の検討期限は過ぎたものの、平成19年1
1月8 日、高村外相とゲイツ米国防長官の会談が行われ、引き続き日米協議が行われることとなっているものです。
A6 横田基地の軍民共用化については、知事自ら提唱し、米国政府高官や当時の小泉首相をはじめ日本政府に対し働きかけてきた結果、平成15年5
月の小泉首相とブッシュ大統領のトップ会談で、軍民共用化の実現可能性について共同で検討することが合意されたものです。その後、日米両政府間による協議が行われ、平成19
年9 月の日米首脳会談及び外相会談では、日本政府として共用化を実現したいという立場を、米側に対し明確に伝えており、現在、国の関係省庁と都が一枚岩となって共用化の実現に向けて取り組んでいます。
なお、軍民共用化に関する日米協議の具体的なやり取りについては、両政府間による外交交渉に関わるものであり、公表しないこととなっています。
A7 米軍基地対策の推進に関する都の基本的立場は、基地の整理・縮小・返還の促進です。
しかしながら、現在の国際情勢等を勘案すると、直ちに横田基地の全面返還がなされる状況にはないと考えられます。
そのため、返還までの対策として、軍民共用化の実現を目指しているものです。
A8 ミサイルの配備計画については、国が判断し作成するものであり、都として働きかける考えはありません。
以上