過去のページ
第一回定例会 一般質問 二〇〇八年二月二七日
たぞえ民夫(世田谷区選出)
輸入食品の検査体制は抜本的強化を、消費者団体や都民参加で食品表示の改善を
梅ヶ丘病院を中核とした子どもの精神医療体制の抜本的拡充を
輸入食品監視班の抜本的強化を
輸入食品にたいする日常的検査を提案
市場衛生検査所の体制拡充を
食品表示を改善するとりくみを
子どもの精神医療体制整備は急務
梅ヶ丘病院をなくすことは国家的損失
梅ヶ丘、府中、大塚の「都内三拠点整備」を提案
はじめに、食品の安全確保について質問します。
中国製冷凍ギョウザへの農薬混入や食品偽装の問題で、食品への不安がひろがっています。都民は、いったい何を信じて食べたらいいのかと、途方にくれています。
日本の食糧自給率は四割まで低下し、輸入食品がふえている一方、輸入食品総数に対し国がおこなっている検査率は、わずか十%です。しかも、結果が出るまで流通を留め置くものではありません。残留農薬検査ができる国の検疫検査センターは、横浜、神戸の二ケ所しかなく、わずか七十三人体制です。こんな事態をつくりだした政府の怠慢は、きわめて重大です。食糧自給率低下の一方で、あまりにもお粗末な輸入食品に対する国の検疫検査や、食の安全対策の現状について、どう認識していますか。
全国の自治体と連携して、抜本的強化を国に要請すべきと考えますが、答弁を求めます。
国が第一義的に負うべき輸入食品の検査が一割しか行なわれていないもとで、地方自治体の監視体制を充実することは重要です。
東京全体で、食品衛生監視員は都と二十三区に七百人いますが、輸入食品を専門に監視しているのは、都の健康安全研究センターに配置されている輸入食品監視班です。
区市町村の行政区域をこえて、都内全域の輸入食品を扱う事業所や倉庫に対し、直接監視指導に入ることができる権限をもつ輸入食品監視班の役割は、きわめて重要です。ところが、監視対象の輸入食品はどんどんふえて、事業所は千二百ヶ所におよぶのに、体制はわずか二班四人と聞いて、私は驚きました。監視班ができた一九九〇年以来十七年間で、わずか一人ふえただけです。
いまの体制では、全部の事業所をまわるだけで、まる四年かかります。これだけ輸入食品の種類と量がふえ、そのうえ通販やネット販売などを含めて事業者の形態や流通経路が複雑になり、監視に要する時間も手間も、以前にくらべ、はるかにふえています。輸入食品監視班の体制は、十倍にふやすぐらいの抜本的強化が必要だと思いますが、どうですか。
冷凍加工食品の残留農薬などの検査体制強化も、都が果たすべき重要な役割です。
冷凍ギョウザの問題をうけ、都は緊急検査を実施しましたが、輸入食品に対する残留農薬の通常検査の対象は、生鮮食品および冷凍野菜などです。「東京都食品衛生監視指導計画」の残留農薬の通常検査の対象として輸入冷凍加工食品を加え、日常的検査を始めることを提案するものです。
また、加工食品の検査は、生鮮食品にくらべて一項目あたり二割から五割も多く時間がかかります。迅速にかつ大量の検査をおこなうには、分析器などの検査機器と検査体制の大幅な充実が必要です。答弁を求めます。
市場衛生検査所は、都内十二か所の卸売市場および分場であつかう食品の監視と検査を担当しています。毎日、セリが始まる前の午前四時からの早朝監視と、昼間の通常監視をおこない、その日の内に検査結果を出す体制をとっています。
しかし、以前は各市場に監視員が配置されて毎日監視していましたが、いまは築地、足立、大田の三ヶ所に統合されたため、その他の市場は、週に一度出かけるのが精一杯です。東京の卸売市場は、全国の市場で流通する食品の二割をあつかっており、輸入食品も膨大な量におよびます。この貴重な市場衛生検査所の体制を拡充し、市場での輸入食品等の監視・検査体制を強化することも重要です。見解を伺います。
消費者に対し、いつ、どこで生産されたかの情報を提供できるよう、食品表示を改善することも必要です。
都は、加工品の原料、原産地の表示について検討を始めましたが、広く都民の意見を反映させるためにも、食品安全審議会に諮問するなど、消費者団体や都民参加のもとで具体化を進めるよう求めるものです。
あわせて、製造年月日の表示義務付けを求める都民の声が広がっています。都独自に義務付けることを提案しますが、それぞれ見解を伺います。
都は、事業者による自主的な食品安全の向上を奨励する、食品衛生自主管理認証制度を実施していますが、都内には多様な業種があり、事業所が十三万軒もあるのに、認証されているのは、わずか二百三十七事業所です。
食品衛生自主管理認証制度について、現在、二十二業種しかない対象業種を拡充するとともに、認証施設が大幅にふえるよう、手だてを講じることを提案するものです。答弁を求めます。
次に、都立梅ヶ丘病院と子どもの精神医療についてです。
いじめ、不登校、ひきこもり、拒食症、児童虐待による情緒障害、さらに自閉症やADHDをはじめとした発達障害がふえており、子どもの精神医療体制整備は急務となっています。ところが、専門の医療機関は全国でわずか十七ヶ所、八百二十七床しかありません。あまりの不十分さが問題になり、国も遅れを認めざるをえなくなって、専門医の育成対策などに着手しました。
その中で都立梅ヶ丘病院は、全国の三分の一にあたる二百六十四床を有する日本最大規模の、そして六十年におよぶ歴史をもつ、子どもの精神医療専門病院です。外来受診者は年々ふえており、年間四万人におよびます。数少ない専門医療機関を求めて、患者は関東一円はもとより全国からあつまり、現場が精一杯がんばっても二ヶ月待ちの状況です。
知事に伺いますが、子どもの精神医療の重要性を、どう認識していますか。
子どもの精神医療機関が少ないことが問題になっているときに、都が梅ヶ丘病院を廃止して、府中キャンパスに二〇一〇年三月に開設予定の小児総合医療センターに移転統合する計画を進めていることに、疑問や批判の声が広がっています。
私が話を聞いた子どもの精神専門医は、「梅ヶ丘病院は、総合病院ではできないことをやってきた。地域といっしょに、子どもたちを育て、はぐくむものをもっている。府中でそれをつくるのは何十年もかかる」と心配されていました。その思いは、多くの人に共通しています。だからこそ、家族会などによる梅ヶ丘病院の存続と拡充を求める請願が、三度にわたり都議会に提出され、署名をした人はあわせて十五万人におよぶのです。
長い歴史の中で、病院を中心に福祉センター、福祉作業所などが整備され、町全体が患者をあたたかくうけいれてくれる、「福祉のオアシス」となっています。その落ち着いた環境の中で、心の治療を必要とする子どもたちが、ゆっくりと回復し、社会への適応力を身につけてきました。
都は、府中への移転は充実だといいますが、ベッド数はへらされ、落ち着いた療養環境は激変します。日本を代表する拠点病院である梅ヶ丘病院をなくすことは、国家的損失といわねばなりません。
私は、梅ヶ丘病院を存続させて、府中への機能移転は最小限にし、大塚病院に新設する外来機能とあわせて、「都内三拠点整備」を提案するものです。国が子どもの精神医療体制の整備に、ようやく取り組もうとしているのです。梅ヶ丘病院がはたしている全国的役割を国に認めさせて、梅ヶ丘病院を中核とした子どもの精神医療体制の抜本的拡充ができるよう、国に対し財政負担をはじめとした支援を求めるべきです。見解を伺います。
国は来年度から、各都道府県で「子どもの心の診療拠点病院」を整備するためのモデル事業を創設することにしています。梅ヶ丘病院で実施されるよう取り組むべきだと思いますが、どうですか。
身近な地域で、継続して医療と療育をうけることができるようにすることも重要です。
厚生労働省の「『子どもの心の診療医』の養成に関する検討会」が昨年まとめた報告書は、各都道府県において、「医療機関、保健、福祉、教育等と連携した子どもの心の診療体制に関する整備計画を策定する」ことを提言しています。都が全国に先駆けてこれを具体化し、整備計画を策定することを提案するものです。
また世田谷区は、発達障害児を支援する「発達・発育センター」を整備することを発表しました。都として支援を拡充するとともに、今後、他の区市町村にも広げていくことが重要だと思いますが、見解を伺い質問を終わります。
【答弁】
○知事 たぞえ民夫議員の一般質問にお答えいたします。
子どもの精神医療についてでありますが、次代を担う子どもたちを心身ともに健全に育成することは、親はもとより我々大人に課せられた責務であります。子どもの成長にとって、心の健康は欠かすことのできないものであり、精神医療は、これを守り、支えるものと認識しております。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
○福祉保健局長 食の安全など十一点についてお答えいたします。
まず、国の輸入食品の安全対策についてでありますが、輸入食品の安全対策は、国における水際での検疫が基本であり、国は、食品の輸入届け出の増加に伴い、検査体制の強化を図ってきておりますが、さらなる充実が必要と考えております。このため、都は、毎年度国に対し検疫の強化など輸入食品の監視体制の充実を提案要求をしております。
次に、国への要請についてでございますが、既に全国食品衛生主管課長連絡協議会を通じて、輸入食品の安全対策等について必要な要望をしてございます。
続きまして、輸入食品の監視体制についてでありますが、輸入食品の監視は、ご質問にありました輸入食品監視班だけではなく、食品機動監視班や市場衛生検査所、保健所等が役割分担しながら行っており、取り扱っている食品の特性等を勘案した効率的な監視体制が構築できていると考えております。
次に、輸入食品の残留農薬の検査についてでありますが、今回の冷凍ギョーザ問題に際して、都は即座に輸入加工冷凍食品の緊急農薬検査を実施いたしました。今後も必要があれば、その都度検査を実施してまいります。
次に、検査の体制についてでありますが、都は既に輸入食品対策として検査機器を整備してまいりましたが、引き続き残留農薬の分析機能にすぐれた検査機器を計画的に導入するなど、着実に検査体制を整備することとしてございます。
次に、市場における輸入食品の監視・検査体制についてでありますが、市場衛生検査所は、流通規模が大きい築地市場、大田市場、足立市場に集中的に人員を配置し、監視指導の効率化や検査精度の向上を図っております。引き続き統合のメリットを生かし、輸入食品を含めた市場流通食品の安全を確保してまいります。
続きまして、加工食品の原料原産地表示についてでありますが、原料原産地表示のあり方については、関係各局による食品安全推進調整会議におきまして現在検討を進めているところでございます。
続きまして、食品の製造年月日の義務づけについてでありますが、食品の日付表示につきましては農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、いわゆるJAS法でございますが、このJAS法や食品衛生法により賞味期限や消費期限といった期限表示が義務づけられております。したがいまして、都独自で製造年月日を義務づけることについては考えておりません。
続きまして、自主管理認証制度についてでありますが、都は順次認証施設の拡大に努めてきましたが、引き続き対象業種の拡充を図るとともに、事業者向けセミナーの開催や認証シールの普及などに取り組んでまいります。
続きまして、医療について、まず、子どもの心の診療体制に関する整備計画についてでございますが、ご指摘の整備計画につきましては、まだ国の検討会の報告で言及されている段階のものでございまして、その必要性も含めて、国が判断すべきものと認識しております。
なお、先ほども申し上げたとおり、都は平成二十年度から子どもの心の診療拠点病院事業を開始することとしてございます。
最後に、発達障害児に関する区市町村での取り組みについてでございます。発達障害児一人一人の状況に応じたきめ細かな支援を行っていくためには、各区市町村において関係機関と緊密な連携を図り、地域で支援できる体制を構築することが必要でございます。既に都では、こうした取り組みを行います区市町村に対しまして包括補助等を活用しながら支援しているところでございます。
○病院経営本部長 二点のご質問にお答えいたします。
まず、都立病院におけます小児精神医療についてでありますが、近年、子どもの心身の健康な発達支援のため、小児科と精神科などの医師が協力連携して対応していくということが求められる一方で、専門的人材など限られた医療資源を有効に活用していくことが不可欠となっております。
このような医療環境に対します現状認識のもとで、都といたしましては、今後とも全国の小児精神医療をリードしていくため、診療規模を維持しながら、小児三病院を統合して、新たに小児総合医療センターを整備することによりまして、心から体に至る高度専門的な医療を提供することを目指しておりまして、お話の都内三拠点整備とは考え方を異にしております。
また、こうした医療体制を支える小児精神科医の育成、確保につきましては、これまで国に対して提案要求を行いますとともに、国の対応を待つことなく、既に都として独自に取り組んできております。
次に、子どもの心の診療拠点病院についてでございますが、既にこの一月に策定発表いたしました第二次都立病院改革実行プログラムにもございますとおり、小児総合医療センターが、今後とも、都における小児精神医療の拠点としての役割を果たしていくということとしております。
お話のモデル事業につきましては、いまだ国の要綱が発表されていない段階であり、今後適切に対応してまいります。
以上