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第一回定例会 予算特別委員会 討論 二〇〇八年三月二六日
古館和憲(板橋区選出)
日本共産党を代表して、第1号議案「平成二〇年度一般会計予算案」及び第百三十一号議案「平成二〇年度一般会計補正予算案」すなわち新銀行東京に対する四百億円の追加出資案他、十三議案に反対し、日本共産党提案の予算組み替え動議に賛成する立場から討論をおこないます。
はじめに一般会計予算案についてです。
日本共産党は、本会議及び予算特別委員会、常任委員会での質疑を通じて、知事が提案した来年度予算について、質疑を重ね、問題点を明らかにしてきました。
その第一は、都税の大幅な増収が見込まれるにもかかわらず、これを極力、都民のために使おうとしていないことです。
いま、たび重なる庶民増税と社会保障の負担増、さらには国の構造改革路線にもとづく賃金引き下げと非正規雇用の拡大などにより、貧困と格差が深刻化しています。さらに、昨年来の物価高騰も追い打ちをかけるなかで、東京都が、都民のくらしと福祉をまもる立場で、来年度予算を編成することがつよく求められているのです。
しかも、二〇〇八年度の都税収入は、過去最高の五兆五千億円が見込まれ、予算規模は六兆八千五百六十億円に達します。これは石原知事が就任した一九九九年度予算と比べ五千五百八十億円の増額、また、知事が予算を編成した二〇〇〇年度と比べ、八六九〇億円も増額となっています。いまこそ、多くの切実な都民要望に応えるべきです。
しかし、石原知事が提案した予算案は、第一に、福祉保健費も教育予算も今年度予算より減額され、中小企業対策費も一九九九年度と比べて六割に減らされるなど、都民のくらしと福祉の充実に背をむけるものとなっています。
日本共産党は、貧困と格差の是正をすすめるために、都が経済給付の充実と所得の再配分の強化に乗りだすことをもとめましたが、石原知事はこれを認めず、昨年の知事選挙で公約した中学三年生までの医療費無料化についても、予算化することを拒んだことは、公約を棚上げするものであり、認められません。また、知事が撤回した個人住民税減税の代わりに具体化されたワーキングプア対策などの「低所得者生活安定プログラム」も三年間の期限付きで、中身も相談や貸付が中心という不十分なもので、さらなる拡充を求めたことについても応えようとしませんでした。低所得者のための都営住宅の新規建設もゼロにしたままです。
第二に、大幅に伸びた税収が、もっぱらオリンピックをテコにした大型開発とインフラ整備のための基金のため込みに使われていることです。
日本共産党は、来年度予算案が、オリンピックをテコにした三環状道路などの大型開発には惜しげもなく予算をつぎ込むものとなっており、投資的経費が七年ぶりに七千億円台にのせられ、本来、国の責任でおこなうべき羽田空港再拡張のための無利子貸付など、経常的経費にふくまれる投資型経費をあわせるとバブル前の二倍の一兆円を超える規模にまで膨れあがるものであることを、きびしく質しました。
また、大幅な税収をもっぱら開発のための基金に積み立てるものとされ、来年度の基金残高が、三千億円のオリンピック準備基金にくわえインフラ整備のための基金をあわせて七千億円に達し、これに過去の借金の返済にあてるための減債基金を含めると、二年間の二・六倍の過去最高の二兆九千億円ものため込みがおこなわれることになることを明らかにして、ため込みをあらため都民要望の実現に使うことを求めましたが、都がこれを拒んだことは逆立ちした石原知事の都政運営をあらわにするものです。
これに対し、日本共産党が提案した予算組み替え動議は、予算の五・八%を動かすことで、貧困と格差に苦しむ都民のくらしと営業を守る施策を大きく充実するものです。すなわち、オリンピックをテコにした大型開発への投資やインフラ整備のための基金の見直しによって生みだした財源二九九四億円を、低所得者世帯への生活応援家賃助成事業の創設、制度融資の拡充など中小企業対策予算の増額、シルバーパスへの三千円パスの導入、後期高齢者医療の保険料軽減補助の創設、中学三年生までの医療費無料化、小学一・二年生からの三十人学級実施、木造住宅耐震補強助成、都立公園の整備など二つの温暖化対策などに、使うものです。都民の要望に応えるものと確信するものです。
各会派のご賛同をお願いするものです。
次に、一般会計補正予算案・新銀行東京に対する四百億円の追加出資についてです。
本予算案は、事前の提案説明もなく、第一回定例会開会日の二月二十日に突如、発表、提出されたものであり、予算の編成手順をまったく無視した異例なものです。
しかも、都のやり方は、四百億円の追加出資の根拠も再建計画の基礎的情報も明らかにせず、予算の承認だけを一方的にもとめるという議会制民主主義をないがしろにしたものであり、この点だけをとっても、認められるものではありません。
そもそも新銀行東京は、石原知事と知事の側近の大塚元出納長らによって密室での作業で計画されたものです。日本共産党は、銀行業は、本来、自治体が手を出すべきものでないこと新銀行東京が中小企業に役立つものとならないこと、計画は机上のプランであり、一千億円の出資金を失うものとなりかねないことを指摘し、政党として唯一反対し、くりかえし撤退を求めてきました。
結果は、わが党が指摘してきたとおりになり、新銀行東京は、一千億円以上の赤字をかかえ、都の一千億円の出資金はドブにすてられた結果になりました。
石原知事が自民党、民主党、公明党の三党などの賛成のもと、新銀行東京にのりだした責任は重大です。ところが知事は破たんの責任をあげて新銀行東京の旧経営陣に押しつけてきたのです。責任逃れに終始してきた姿は見苦しい限りです。
しかし、質疑を通じてうきぼりになったことは、破たんの責任が知事の言うように、旧経営陣にあるのではなく、知事側近が取りしきってつくりあげたマスタープランを旧経営陣に押しつけてきたことにあったことです。都は、当初、三年後も赤字とされていた計画を、五十四億円の黒字に書き換え、実現不可能な目標の上にたって、ズサンな融資で不良債権の山をつくらせたうえ、リスク商品の購入で損失を出し、過大な投資による高すぎる営業コストで赤字を拡大してきたのです。
わが党は、このことを旧執行役の証言や、都と新銀行東京のやりとりを記録したブリーフィングメモなどにもとづいて明らかにしたところです。知事側近が中心になってまとめた新銀行東京の調査報告書では、当初、盛りこまれるはずだった都のマスタープランの問題点と都の責任が削除されたことも報道されています。知事と側近による責任逃れは絶対に許されないものです。
さらに、四百億円の追加出資の根拠となっている再建計画については、知事と担当局は具体的情報をほとんど示せませんでした。知事が四百億円の追加出資までして銀行を存続させる最大の理由としたものは、現に新銀行東京から融資をうけている中小企業を守ることでしたが、これも他の銀行以上に貸しはがしをして、まじめに仕事をしている中小企業を破たんに追い込むことも明らかになりました。
再建計画は基本的にリスクの高いファンド事業などを中心にすえるもので、もはや存続の意義はまったくありません。
また、わが党は、自己資本比率四%を達成させるためには、四百億円どころかわずか三億円ですむことを明らかにするとともに、預金と中小企業への貸付を基本的に保護しながら、銀行業から撤退することが可能であることを、具体的プランで提示したところです。
四百億円の追加出資をおこなう必要はまったくありません。
いま、四百億円の追加出資に反対する、都民の声が急速に広がっています。東京都に寄せられている都民の声のうち八割以上が税金投入に反対を表明しており、日本共産党がおこなった二回のシール投票で一七三一人の方が投票され、うち一五三三人、八九%の人が反対を表明するにいたっています。マスコミの世論調査でも七割を超える人が反対の意志を示しています。六つの全国紙のすべてが社説でとりあげ、新銀行東京の撤退や税金投入に反対する論調を掲げたことも、都政史上、見られなかったものであり、ことの重大性を示しています。
一千億円の税金をドブにすてた責任はあげて知事にあります。それでもなお四百億円の追加出資をおこなうというのなら、知事を辞任し、選挙で都民の審判を受けるべきであり、これこそ、都民多数の声であることを重ねて強調するものです。
また、いまこそ都議会のチェック機能が都民から期待されている時はありません。新銀行東京の設立に賛成した政党も、都民世論にしたがうべきです。追加出資に反対することこそ、議会制民主主義をまっとうする道です。これまでの石原知事の新銀行東京をめぐる言明と約束がすべて破られてきたことからみても、与党がどのような付帯決議をつけようが、それが守られる保障はまったくありません。追加出資に賛成する自民党、公明党両党は都民のきびしい批判をまぬがれないことを指摘しておくものです。
なお、日本共産党は、議案審査にあたり、特別委員会の設置など徹底審議の保障、新銀行東京の「調査報告書」本文の提出などを提案しましたが、自民党、公明党の反対で実現にいたらなかったこと、本予算特別委員会における参考人招致の提案が自民党、民主党、公明党の各党の反対で否決されたことをきびしく批判し、討論を終わります。
以上