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文書質問趣意書

都市農業の振興について

2008年3月26日   
村松みえ子(日野市選出)

 私は先日、地元の日野市で開催された「農業シンポジウム」に参加しました。4回目を迎えたシンポジムには、会場いっぱいの関係者や市民の方が参加し、「地球温暖化と農業」と題した講演と、パネリストの農業従事者、消費者団体、農業委員の発言に耳を傾けていました。私は、このシンポジュームに参加し、日野市内で都市農業をされている方々や、市の担当者の地道な努力を痛感しました。

 日野市は、都市化が進む中で、住宅地の中に農地があります。農家の人は、「農薬を散布するとき、近所の住宅にかからないように、風の少ない日をえらぶとか、防薬シャッターを畑の周りに張るなど工夫している」といった努力をしながら、農業をまもっています。また、収穫寸前に作物(果物や、野菜類など)をハクビシンや、鳥につつかれるため、その被害を受けないようにするためにも大変な苦労をしているということでした。

 一方、昨年後半から顕著になった国際穀物価格の急騰は、食料品や飼料の価格を上昇させ、国民生活をじりじりと圧迫しています。同時に、地球温暖化による農漁業の生産条件の悪化や食料資源の減少、発展途上国の人口増とバイオ燃料による需要の急増などのため、国際的な食料不足が現実の問題になっています。

 こうしたもとで、東京の農耕地面積は、1999年9,190haあったものが2006年度には8,320haと、この7年間で約9.1%も減少しました。生産緑地面積は、1999年3,925ha、2006年3704haと約6%の減少にとどまっていますが、日野市では、10年前に「農業基本条例を制定」し積極的に生産緑地指定をすすめ、1996年から2005年までの間に、133haから136haに増加しています。

 この背景には、日野市の取り組みがあります。その1つは、全国に先がけて制定した「日野市農業基本条例」です。その理念として、「農業振興は、新鮮で安全な農産物の供給をうけ、自然環境を享受する全ての市民に係わる施策として、将来の世代に継承していくことを目的に行わなければならない」としています。そして、具体的に農業経営の近代化、環境に配慮した農業、消費者と結びついた生産及び流通、農業の担い手の確保及び育成、農地の保全、災害への対応などが基本事項に掲げられています。さらに、具体的に市が責任を持って推進することとして、農業振興計画の策定と実施をあげ、市民の責務も明確にして、農業懇談会を設置し、農業施策の推進について、調査し、意見を求めるとしています。

 大阪府でも昨年10月、都市農業条例を制定し、関係者から歓迎されています。
 大阪府の条例の特徴は、第1に、地産地消や、農薬・化学肥料を半減させたエコ農業を実践する小規模農家、援農ボランティアなどの組織を担い手に位置づけて支援する自治体独自の制度を創設したことです。第2に、農地、里山、集落及び水路、ため池などの施設が一体としてある農空間は、「風格ある都市」づくりに欠かせないとしていることです。第3に、農地を新鮮で安全な食の供給基地であり、食育や景観形成、歴史・文化に触れる場、ヒートアイランド現象の緩和、防災など、非常に多面的機能ととらえていることです。

Q1 都としても、このように農業施策を都政の柱としてしっかり位置づけ、農業振興条例を制定して欲しいという声に応えるべきではありませんか。

Q2 また、都として日野市、稲城市のように、積極的に生産緑地を増やしている地域の取り組みを支援するとともに、他の自治体でも取り組めるよう制度化することを提案します。

 以下、具体的にうかがいます。
 現行制度による生産緑地の税の軽減制度の拡充について、都は重点事項として国に提案要求をしていますが、国の対応待ちということでは、困ります。

Q3 農業用施設用地など、農業の継続に欠かせない部分であるにもかかわらず、税法上除外されている部分について、都として積極的に負担軽減の方策をすすめるよう求めます。

Q4 生産緑地といえども、相続のために失わざるを得ない状況がおきています。そうした際に、地元自治体と連携して生産緑地を買い取る制度をつくって、公立の農業公園というものをつくるよう提案するものですが、答弁を求めます。

 都が主催して、八王子市小宮公園付近の宇津木で行っている、「農地と担手マッチング」事業は、農業を理解し、農業の専門知識を得るために農業の実習・講義など専門的に学ぶ事業として大変好評です。三宅島民が利用していた都有地を、1期2年かけて研修を行う事業ですが、1期生の公募70名に対して、245名の応募がありました。2期、3期も50名に対して、90名が応募するほどの人気がありました。八王子市で行うというのに、江戸川区や練馬区からも来ています。

Q5 区部でもやって欲しいという、強い都民の要望に答えられるように、こうした農業者育成事業をおこなう場所を、各自治体と連携していくつも創設するよう求めるものです。

Q6 また、都は農業体験農園を開設する際に、休憩施設やトイレなどの整備に対する補助を行ってきておりますが、こうした補助対象などを拡充するよう求めるものです。

 東京の温暖化は世界の気温が過去100年間で0.74度の上昇に対して、東京は3度の上昇と深刻な状況になっています。農地は、地球の温度を下げる役割を持っています。東京の農業を守ることは、地球環境を守ることにつながります。農地が、地球温暖化やヒートアイランド現象の防止など、環境確保の面から見直されています。

Q7 環境局として、あらためて農地、森林地が環境面で果たしている役割について、科学的データを調査することを求めるものですが、いかがですか。

Q8 さらに、地球温暖化対策の立場から都市農業を守る取り組みが必要と考えますがどうか。

 食料自給率が39%まで落ち込んだ今、安心・安全な地場産の食料品を求める声が広がっています。特に、中国の冷凍ギョーザに使用禁止の農薬が混入した事件、産地など食品偽装事件から、食の安全を求める声がかつてなく高まるとともに、地場産農産物への要求が上昇しています。

 日野市では、25年前から小・中学校の給食に地元産の野菜を供給してきました。それは、小学生が学校の行き帰りに近くの田畑に入って遊び、農作物を荒らすなどの被害に教育で都市農業を理解してもらおうということから始まりました。
 私は、小・中学校の給食の時間を見学させていただきました。当番の生徒が「今日の給食に出ているとうもろこしは、平山の遠藤さんが、4月に種をまき、草取りは、何回して今朝6時に畑からとってきたものです」と報告してみんなで「いただきます」と食べていました。このように農家の人が丹念に育てたものだということを確認しながら給食で利用するようになってから、田畑に子どもが入って遊ぶことがなくなったということも伺いました。
 また、大豆やトウモロコシに遺伝子組み換えが使われるという問題があったとき、栄養士さんが、「生徒に安全なお豆腐を食べさせたい」と市内の農家の畑を貸してもらい市民と共同して大豆を作って学校給食で使用しています。

Q9 学校、病院などへの地場産農産物の供給が急がれています。都として支援を求めるものです。

Q10 また、地場産の農産物を直接販売する共同直売所は、今日の都民の要望に応えるものであるとともに、農家にとっては農産物の販路としても、大変大きな役割を果たすものです。都として、共同直売所への支援を拡充するよう求めるものです。

Q11 消費者と農業従事者とお互いの理解を深めることも大切です。そのためにも、各自治体間での意見交換会や経験交流などを進めることが必要と考えますがいかがですか。

 東京都の「魅力ある都市農業育成事業」の改善も強い要望があります。日野市内にたった1軒しかない酪農家がこの事業を使って牛乳の搾乳機を購入し、アイスクリームショップを作ったのですが、東京都に提出する書類が多くてこの事業を進めるために、市の担当者がかかりきりで他の仕事に手が出せないほどだったとのことです。もっと簡素に効率よくできないかという意見もあります。
 また、イチゴを経営している農家では、これまで低い土地に這わせて作っていたのを、発泡スチロールを使い上に上げたところに栽培できるようになり、作業が楽になった。この事業も「魅力ある都市農業育成事業」を使ったのですが、希望する農家の人の年齢が70歳前ということで年齢を理由に1件の農家が事業からきられてしまったということです。
 これでは、都市農業を守ろうと頑張っている人のやる気をそぐことになります。
 また、農業者3名以上の事業が前提になっている点、補助の継続が認められず一年限りである点について、改善を求める声が寄せられています。

Q12 こうした声に応え、「魅力ある都市農業対策事業」について、もっと利用しやすくするため、年齢制限の撤廃、提出書類の簡素化など積極的に柔軟に対応できるよう改善を求めます。

 東京の農家総数は、1998年(平成10年)に16,600軒が、2005年(平成17年)には、13,748軒と7年間で2,852軒も減少しています。農業は、自然を相手にしているだけに、農産物の価格保障、農業所得補償など農業経営を守る支援策が欠かせませんが、特に最近では、原油高騰による施設栽培の農業者などへの燃料負担は、大変な重圧となっています。

Q13 施設園芸農家などを中心に、原油高騰の影響調査の実施、原油の価格高騰対策や省エネ施設の改善にたいして無利子長期融資の実施などを求めます。

答弁

A1 都は、東京農業の可能性を切り拓き、魅力ある産業としての東京農業を振興する方向を明らかにし、計画的に振興施策を進めるための指針として「東京農業振興プラン」を策定し、さまざまな農業施策を展開しています。したがって、条例制定の予定はありません。

A2 都は、区市町村が農業振興計画等を策定する際に必要な助言を行うとともに、区市町村における農業振興や農地保全の取組に対し、魅力ある都市農業育成対策事業などのさまざまな施策による支援を行っています。

A3 生産緑地地区の農地や農業用施設用地等の相続税制度は国の制度であるため、軽減措置などの改善について国に要望しています。

A4 都市計画に定める生産緑地地区については、相続等のために耕作を続けることが困難となった場合、「生産緑地法」第10 条に基づき、区市長に対して時価で買い取りを申し出ることのできる制度が定められています。区市においては、この制度に則り、適正な運用を行なっています。

A5 農業に関心を持つ都民を、自ら耕作できる技術を持った新たな担い手として育成する実践農業セミナーは、意欲ある都民に積極的な参加をいただいており、都民の要望に応えているものと考えています。

A6 農業体験農園の開設の際、都は、休憩施設やトイレ以外にも、農地の区画割、農地周辺のフェンス、農具置き場などの整備に対して支援を行っています。

A7 農地など都市の緑は、ヒートアイランド現象の緩和などの観点からも重要な役割を果たしています。都は、これまでも、農地や緑地などのヒートアイランド現象の緩和機能などについて、調査研究を行っています。

A8 ヒートアイランド現象の緩和を進めるうえで、地表面の被覆対策は重要なことから、今回改正した「東京都環境基本計画」においても、引き続き、都市農業の保全を施策の方向として位置づけています。

A9 都では、平成17年度から、地産地消学校給食導入モデル校事業や、学校栄養職員を対象とした地産地消料理講習会等を行ってきており、今後も、地産地消給食導入支援事業により、地場産農産物の学校給食等での利用に取り組んでいくこととしています。

A10 共同直売所の整備に対しては、都は、魅力ある都市農業育成対策事業等により、区市等が実施する施設整備やP R 活動に対する補助などに対し、既に十分な支援を行っています。

A11 都では、消費者と農業者の相互理解を深めるために、農業改良普及センターの「東京都農業改良普及事業フォーラム」において、消費者の現地見学や農業者との意見交換などを行うとともに、区市と共催で「都市農地保全自治体フォーラム」を開催し、農業体験等の事例発表などを行っています。

A12 魅力ある都市農業育成対策事業では、原則として年齢制限を設けておらず、提出書類については、事業の適正な執行に必要な書類の提出をお願いしています。

A13 都では、農業改良普及センターにおいて、農家から直接原油高騰の影響等についての意見を聴いています。原油高騰に対する農業者への金融支援としては、省エネ型施設を導入する場合の農業改良資金による無利子の長期貸付制度があり、また、農業経営に必要な運転資金としての農業近代化資金の借入れに対する利子補給を行っています。

以上