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文書質問趣意書

2008年6月23日
かち佳代子(大田区選出)

介護・福祉人材確保対策について

 近年、福祉分野で働く職員が急激に減少しており、障害(児)者施設や児童養護施設、保育施設でも、とりわけ、高齢者の介護施設や在宅介護サービスでも人手が足りず、事業の存亡にもかかわる事態となっています。とりわけ、高齢者が安心して介護がうけられるための介護施設での人材不足は深刻です。
 本年6月、わが党都議団がおこなった。特別養護老人ホームなどに対する物価高騰の影響調査のなかでも、経営と人材をめぐる訴えが、多くみられました。

 一例をあげれば、「職員配置数の是正。介護プランに基づく個別の介護を徹底すれば、高齢化、重度化、認知症化の顕著ななかで、3:1配置では無理がある。せめて2:1にすべきであり、当苑は1・8:1でやっている。都にたいしては運営費補助をお願いしたい」「財政力があれば、千代田区のような対応も可能だが、23区以外の市町村は困難だ。措置時代のような対応を検討してほしい。要望としては@地域区分の見直し、A介護報酬基本単価の引き上げ、加算を。B介護、看護の配置基準の見直しをしてほしい」「介護報酬が固定されている福祉業界では最終的に人件費に反映される。人があつまらなければ経営も立ち行かなくなる」など切々とかきこまれていました。

 都が実施した「特別養護老人ホーム等の経営実態に関する調査」結果でも、利用者数に対する職員配置は特養・老健ともに、国基準の1・4倍の職員を配置しています。職員比率も、平成16年度に比べ、18年度ではほとんどの施設で上昇しており、特養で約64%、老健で56%となっていますが、現行の介護報酬では、人件費率は40%に設定されており、現実との乖離が大です。それは、療養病床の削減計画がすすむ中、本来医療的ケアの必要な人や、重度の介護度の利用者が増加していることを、裏づけるものです。
 また、職員の平均勤続年数は常勤で約5年、老健で3・7年、非常勤ではいずれも3年未満であり、入退職が激しい状況をあらわしています。

 施設長の7割以上が緊急の解決の必要な課題として、「人材確保」をあげており、人材確保が困難な理由として、特養・老健とも「給与水準が低い」という回答が8割以上、「業務内容が重労働」との回答が7割強をしめています。
 東京都社会福祉協議会でも、04年11月に現況調査を実施し、その結果6割の施設長が「職員の確保が困難」と回答。とりわけ特養では9割の施設長が「困難」と回答しています。

Q1 介護・福祉人材不足を打開するには、賃金、労働条件、職員配置などの改善・充実が重要だと考えますが、都の認識はどうですか。

 かつて、東京都は都内の実情にあわせて、福祉人材確保のために公私格差是正事業や運営費補助などをおこなってきました。ところが、都は介護保険制度の導入をきっかけに「全国共通の制度である」として廃止してしまいました。当時、日本共産党都議団が独自に実態調査を行い、引き続き支援が必要だと繰り返しもとめてきたにもかかわらず、都は拒否してきました。
 今回、国に、「緊急提言」をしていますが、都自身としては、従来の都加算の復活や、特養に対する特別支援事業の拡充などの努力はなく、研修の強化などにとどまっています。
 一方、千代田区では、今年度から、「不規則な勤務ローテーションなどの労働環境の改善」「緊急対応も含めた地域格差解消にかかる手当て」「人材育成」などの名目で、施設への支援をはじめました。横浜市では、特養ホームにおける前年度の利用者が平均介護度を越えた施設には、人材確保のための一部補助を今年度からスタートしています。

Q2 都は、「特別養護老人ホーム等の経営実態に関する調査」の結果を踏まえて、国に対し介護報酬の増額や職員配置基準の改善などを緊急提言しました。そうであるなら、都として施策を拡充することも必要だとおもいますが、どうですか。

Q3 特養ホーム等に対する都独自の人件費補助を実施するよう提案するものですが、お答えください。

Q4 特別養護老人ホーム運営の厳しい現状が、増設への支障にもなっていることを、どう認識していますか。その中で、都の用地費助成を廃止することは、特別養護老人ホーム設置に逆行するのではないですか。お答えください。

 特別養護老人ホームの設置促進にむけ、用地費補助の存続をつよく求めておきます。つぎに、小規模な施設への支援について伺います。
 私は都内の入所定員30名、デイサービス24名の小規模の特養ホームで、理事長から伺いました。「夜勤もふくめると職員配置が常勤9人、非常勤7人。派遣職員4人であったが、国基準の3:1では足りず、2:1の配置でフル稼働している。05年までは、なんとか募集をすれば2ケタの応募があったが、06年以降、よくて2人くらいしか採用できない。初任給を少し上げても応募がなく、その結果、人件費率も年々上がり、現在65%であるが、このままいけば、危険水域の70%に達するのではないかと危惧している。平均勤続年数も常勤で2年。入れ替わりが激しい。人材を確保できなければ、利用者定数を減らさざるをえない」と、苦悩していました。

他にも、措置制度から介護保険制度への移行にともない、施設規模を無視した介護報酬が設定されたことにより、小規模な特別養護老人ホームの運営が、如何に厳しい現状におかれているかを、切々と訴える声が寄せられています。
 都の調査結果でも、「特別養護老人ホーム及び介護老人保健施設とも、小規模な施設の利用率は他の定員規模の施設と比較して遜色ないにもかかわらず、収支についてはいずれも施設平均を下回り、厳しい状況におかれている」「そのため、都は小規模な施設の整備がすすんでいない」と認め、国に対し施設の定員規模別に応じた段階的な介護報酬を設定するよう求めています。
 この問題についても、国に要望することは重要ですが、都の施策としてなにをするかが問われています。
 江東区では、60床以下の小規模な特養ホームの運営の困難さに手をさしのべています。収入基準の1〜3段階の利用者の食事の差額を支援するなど経営支援策を実施しているのです。

Q5 とりわけ、定員が60名以下のような小規模な特養ホームに対する支援の強化は急務です。都の認識と対応をお聞きします。

 都が実施した「小規模多機能型居宅介護実施調査」の結果、小規模多機能型居宅介護がきわめて零細かつ、事業の安定性を確保しにくい事業であるにもかかわらず、それにふさわしい制度設計、介護報酬の設定がされていないため、多くの事業所が赤字経営を余儀なくされていること等が明らかになりました。
 2007年9月1ヶ月の収支において、事業所の2/3が赤字であり、開設してから1年以上経過した都内の6事業所のうち、黒字に転換した事業所は2箇所にとどまっています。
 都は国に対し、小規模多機能型居宅介護の介護報酬の見直しなどを要望していますが、都として、整備補助の拡充や少なくとも、事業の立ち上げから運営が起動に乗るまでの運営費補助、宿泊室の利用料軽減助成などに踏み出すことが求められています。

Q6 小規模多機能型居宅介護については、都の「実態調査」の結果を踏まえ、都として新たな設置促進策を講ずることが必要です。今後の都の対応をお聞きします。

 障害者施設からも、「福祉の現場はワーキングプアの現状です。人に心をこめて向き合っている人が、プアというのはおかしいとおもいます」「福祉の現場から人材が流出し、人が集まらない。先行きの不安と賃金格差が根底にある。なんとか行政の力で支えてほしい」「福祉は人とのつながりが大事だが、人の確保ができない状態にあります」「働く側の条件向上がなんとしてもなされなければ、日本の福祉はありません」などの声が寄せられています。
 また、児童養護施設では、勤続年数が4年未満の経験の浅い職員(児童指導員、保育士)が全体の過半数におよぶこと、児童養護施設における退職理由は「うつなどの精神的な疾患」「燃え尽き症候群」が施設全体にくらべ2倍近い割合にのぼるなど、職員の疲弊・負担感が増大し、バーンナウトによる離職につながっている状況が明らかになっています。 

Q7 障害者福祉施設や児童養護施設の人材不足の深刻な現状については、どう認識していますか。また、今後の対応をお聞きします。

Q8 私立保育園などの社会福祉施設に対するサービス推進費補助を拡充し、職員の確保・定着を促進するため、経験年数加算を再開してほしいとの声が現場からあがっていることを、どううけとめているのですか。前向きに対応すべきとおもいますが、答弁をもとめます。

以上