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第三回定例会 一般質問 二〇〇八年九月二六日

河野 百合恵(江戸川区選出)

お金の心配をしないで、出産・子育てができるようになる経済的支援を
産後の家事援助、育児支援のためのヘルパー派遣、仕事と家庭の両立、認可保育園増設などに支援強化を

 

フランスの少子化対策の調査は

 子育て支援について質問いたします。
 結婚して子どもを産みたいけれど、現状では子どもを養う経済力はありません、妊婦健診の費用が高いことに驚いています、保育園が少ない、正社員は労働時間が長くて、子どもは持てない、これらは、都内の青年団体が取り組んだ東京の若者の雇用実態調査に寄せられた出産、子育てに対する若者たちの回答です。心痛む声がたくさん寄せられています。こうした中で、東京の合計特殊出生率は全国最低という深刻な事態が続いています。
 知事は、東京の少子化対策や子育て支援の重要性についてどう認識されていますか。
 四年前の我が党の代表質問で、知事は、フランスが思い切った経済支援を子育て家庭に実施していることを評価し、調査すると答弁されました。その後、どのように調査し、検討をされたのでしょうか、お答えください。

出産・子育てへの経済的支援を

 中でも切実な要望は経済的支援の充実です。お金の心配をしないで出産、子育てができるようになる、この大事な課題に対する都の見解を伺います。
 児童手当を都独自で拡充すること、出産祝い金の創設、育児用品購入費への支援、出産、育児支援の都営交通無料パス交付などに踏み出すことを提案しますが、いかがですか。
 私立幼稚園保護者負担軽減について、上の子が小学生になっても、下の子には第二子以降の割り増し単価を適用することなど、制度の拡充を求めます。お答えください。
 妊婦健診助成は、都内で十九区二町村が十四回までの助成を実施しましたが、まだ五回の自治体も多く残されています。
 厚生労働省は、妊婦健診は十四回まで公費負担が望ましいとしていますが、財政的には五回分を措置しているだけです。これでは不十分であり、財政措置の拡大が急がれていますが、どうお考えですか。
 同じ都民なのに、住んでいる自治体によって妊婦健診の費用負担に大きな格差が生じている現状を改善する必要があると思いますが、見解を伺います。
 子どもの医療費助成について、中学三年生までの医療費ゼロが知事の公約です。入院、通院とも無料化するのが当然だと思いますが、いかがでしょうか。
 出産のときの分娩費用は負担が重く、平均しておおよそ五十万円のお金を用意しなくてはなりません。国は、この負担を軽くするため、健康保険から支払われる出産一時金を医療機関が直接受け取る受け取り代理制度を導入しましたが、妊産婦にも医療機関にも使いにくく、利用がふえていません。都独自に使いやすい制度へ改善し、出産の入院費は出産一時金との差額だけ払えば済むようにすることを提案します。いかがでしょうか。

出産・育児ができる医療環境の整備を

 安心して出産、育児ができる医療環境の整備も大切です。都立墨東病院の産科医師が減ったことで、普通分娩を受け入れてもらえなくなったことは、区東部地域では衝撃的な出来事でした。江戸川区と江東区で一年間に生まれる子どもは一万人もいるのに、分娩を扱う病院は四カ所しかありません。出産できる医療施設を確保してほしいとの要望は切実です。
 都立墨東病院の産科での正常分娩受け入れを早急に再開してほしいという地域住民の切実な願いをどう受けとめていますか。再開に向けた取り組み状況をお答えください。
 産科医師の確保は急がれていますが、助産師の力を活用すれば正常分娩に対応できます。都立病院で助産師による院内助産や助産師外来を実施するよう求めておきます。
 小児科の医師不足も深刻で、江戸川区葛西地域にある東京臨海病院は、小児科医師不足のために、二〇〇六年の秋から夜間小児救急診療を休止しました。東京において夜間小児救急や産科の休止、廃止が相次いでいることを都はどう考えていますか。
 政府は、これまでの医療費抑制政策を転換し、医師や看護師を大幅にふやす必要があると考えますが、認識を伺います。
 意欲ある民間病院や公立病院が必要な医師を確保できるように、財政支援の拡充や、都職員として医師を雇用し、医師不足で困っている医療機関に派遣するドクタープール制度の実施、来年度から実施される医師奨学金の対象枠の大幅拡大など、都としてさらなる支援策に踏み出すことを求めるものですが、見解をお聞かせください。

出産後の育児支援の充実を

 出産後の育児支援の充実も急がれます。
 出産したばかりの新生児を抱えた母親が、体調がすぐれない中、授乳やおむつ交換に加えて、家族の食事準備、掃除、洗濯などをするのは大変なことです。産後の家事援助、育児支援のためのヘルパー派遣は大切であり、育児不安や産後のうつ症状であるマタニティブルーの対策にも効果があります。都は、育児支援ヘルパー派遣の重要性をどう考えていますか。
 東京都は、次世代育成行動計画で育児支援ヘルパー事業を位置づけ、来年までに四十九の区市で実施するとしています。既に四十六区市で実施されていますが、実施方法はまちまちで、対象者を限定していて利用者が年間わずか数人という区もあります。一時間当たり八百円から千円の負担を考えると頼めないという声も寄せられています。都として補助制度実施を初め、だれでも利用しやすい制度になるよう支援が必要ですが、いかがでしょうか。

 出産後の育児支援として、ショートステイやデイケアを進める都の子育てスタート支援事業が始まり、歓迎されています。区東部地域はマンションの建設が進み、そこに住む子育て世代の多くが核家族であるだけに、こうした育児支援は切実です。
 今年度は世田谷区、府中市、多摩市でモデル実施の予定ですが、希望する自治体が実施できるよう、さらに拡充していただくよう要望します。見解をお聞かせください。
 少子化対策、子育て支援にとって、働き方の改革は避けて通れません。仕事と生活を両立させるワークライフバランスを推進する重要性をどう認識していますか。また、今後どのように取り組むのか、お答えください。
 都は、仕事と家庭の両立支援に取り組む中小企業を登録し、育児休業支援への助成などを行う事業を開始しました。
 私は、江戸川区内の登録企業から具体的な取り組み状況を聞きました。この企業では、登録申請をしたことで社内に育児休業への理解が深まっていることなどで、引き続き取り組みを進めようという意欲が感じられました。多くの中小企業が利用できるよう、さらに拡充を求めるものです。いかがでしょうか。
 あわせて、産休も助成対象にすることや、申請書類の簡略化、通年で申請受け付けを行うことなどを要望しておきます。

認可保育所の増設と保育の質の確保を

 最後に、保育所の充実です。
 東京のことしの四月の保育園待機児は五千四百人を超え、昨年より九百人近くふえました。江戸川区でも、年度末の待機児は毎年六百人を超えます。こうした中、東京都が二〇一〇年までに認可園の定員を六千五百人ふやす三カ年計画を明らかにしたことは重要です。
 しかし、私たちの調査では、区市町村の増設計画は、この三年間でおよそ四千五百人分にとどまっています。認可保育園増設に向け、区市町村への支援を強化する必要があると思いますが、いかがですか。
 政府が保育制度を改悪し、直接契約、直接補助方式の導入や、保育の最低基準緩和、撤廃を行おうとしていることは重大です。日本保育協会、全国保育協議会、全国私立保育園連盟、全国保育士会の会長を集めたヒアリングが開かれましたが、すべての関係者が断固反対を表明しています。
 こうした保育制度改悪を政府に提言し、最低水準を満たしていない認証保育所を国の制度として認めるよう求めてきた石原知事の責任も極めて重いものです。
 知事が推奨してきた認証保育所で虚偽申請が明らかになり、ことし三月末に初の認証取り消しという事態が生じたことを知事はどう受けとめていますか。市場原理主義を保育に持ち込むやり方の大きな問題点が表面化したのではないですか。
 認可保育所の増設と保育の質を確保する、この両方を大切にする必要があると思いますが、知事の認識を伺い、質問を終わります。

【答弁】

〇知事 河野百合恵議員の一般質問にお答えいたします。
 東京における少子化対策、子育て支援の重要性についてでありますが、次代を担う子どもたちを健やかに育て、支えることは、これはもう親だけではなく社会全体の責務であります。それを果たさないと人間の未来はないと思います。
 都はこれまでも、大都市特有の保育ニーズに対応した認証保育所の整備などに取り組んできました。今後とも、働き方の見直しの推進や子育て支援サービスの改革に取り組み、子育ての喜びを真に感じることができる東京を実現していきたいと思っております。
 次いで、保育所の増設と質の確保についてでありますが、認証保育所は、大都市の保育ニーズに対応したサービスとして多くの都民の支持を既に得ておりまして、今後とも、認可保育所と同様に設置を促進してまいります。
 都は、認可保育所、認証保育所を問わず、不適正な事業者については指導を行い、厳正に対処する方針であります。
 希望するすべての人が安心して子どもを預けられるよう、質と量の両面から保育施策を充実していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。

〇福祉保健局長 十一点についてお答えをいたします。
 まず最初に、諸外国の子育て施策に関する調査についてでありますが、諸外国の施策については必要に応じて調査、研究を行っておりまして、こうした結果をさまざまな子育て支援策に活用しているところであります。
 次に、子育て支援に係る経済的な支援についてでありますけども、児童手当など子育てに係る経済的な支援については、税制のあり方も含めて、社会保障制度全体を視野に入れて行うべきものであり、基本的には国で対応すべき課題であると考えております。
 次に、妊婦健康診査の財政措置についてでありますが、望ましいとされております妊婦健診十四回分の財政措置について、都は既に国に働きかけを行っております。引き続き国に働きかけてまいります。
 次に、中学三年生までの医療費助成についてでありますが、昨日もお答えをいたしましたとおり、この制度については、少子化対策を一層推進するとともに、適切な医療を提供できる体制を確保するという観点から検討することが重要であります。また、助成内容の拡大に当たりましては、小児医療現場の厳しい状況や医療保険制度の相互扶助の理念にも十分に配慮する必要があります。このような考えのもとに、また、現行の所得制限を前提に助成内容の拡大を図る方向で検討をしております。
 次に、出産育児一時金についてでありますが、医療機関等が被保険者にかわって直接受け取ることのできる受け取り代理が国の制度として既に導入をされております。国において制度の改善に向けた検討を行う予定と聞いておりまして、その動向を見守ってまいります。
 次に、小児医療等の確保についてでありますが、都はこれまでも、小児の休日・全夜間診療事業を初め、周産期医療や救急医療を確保してまいりました。しかしながら、少子高齢化、医療の高度化、専門分化、さらには医師の過酷な勤務環境などから、小児科、産科を中心とした医師不足が顕在化をしております。都は国に対しまして、緊急に医師確保策を講ずるよう強く提案するとともに、病院の勤務医師の負担軽減や看護職員の確保対策に取り組んでいるところであります。
 次に、医師確保策についてでありますが、昨日もお答えをいたしましたとおり、これまでの医師養成数の抑制方針を転換した国の動向も踏まえながら、医師奨学金制度の拡充や地域医療を支えるための新たな医師確保策などを含めて検討してまいります。
 次に、育児支援ヘルパー事業についてでありますが、育児支援ヘルパー事業は、産褥期の母子に対する育児相談や簡単な家事等の援助など、養育の支援が必要と思われる家族にヘルパー派遣を行う事業でありまして、母子が安定した生活を始めるために重要であると認識をしております。
 次に、育児支援ヘルパー事業への支援についてでありますが、この育児支援ヘルパー事業は、区市町村が直接国の補助を受けて、その主体的な判断に基づいて実施するものであると認識をしております。
 次に、子育てスタート支援事業についてでありますが、平成十九年度から三年間のモデル事業として実施しており、今後、対象者の範囲やその把握方法、事業実施効果等について検証してまいります。
 最後に、認可保育所増設に向けた区市町村への支援についてでございますが、この質問につきましては、昨日も認証保育所と市場原理主義とを結びつけたご発言がございましたが、ただいまは、認証保育所は市場原理主義を保育に持ち込んで大きな問題を引き起こしている、ついては認可保育園をふやすために市町村に補助を行えというロジックでございますけれども、市場原理主義について申し上げれば、私の理解といたしましては、なるべく市場に干渉を行わず、すべてを市場にゆだねれば、公平さと繁栄が約束されるという考え方だと理解しております。
 都の認証保育所制度は、職員配置、施設設備等に関する基準を設けて指導監督を行っておりまして、市場原理主義の考え方とは違うものでございます。
 また、先般不正のあった事業者に対しまして、都は厳しい処分を行った事例をして、市場原理主義の問題点が表面化したというご指摘は当たらないものと考えてございます。先ほど知事からお答えをいたしましたように、都は今後とも、認可保育所、認証保育所を問わず、不適正な事業者があれば指導を行い、厳正に対処していきます。
 そして、区市町村への支援についてでございますが、都は今年度から、認可保育所だけでなく、認証保育所、認定こども園など多様な保育サービスを組み合わせ、今後三年間で一万五千人分の整備を行う保育サービス拡充緊急三カ年事業に全力で取り組んでおります。この目標を着実に達成するため、マンション等併設型保育所の設置促進などにより、区市町村への支援を強化したところでございます。

〇生活文化スポーツ局長 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、私立幼稚園保護者負担軽減についてでありますが、都では、園児保護者の負担を軽減するため、保護者の所得等に応じた補助を適切に行っているところでございます。
 第二子以降の割り増し単価の適用につきましては、昨日の代表質問でも私の方からご答弁申し上げましたが、子育て支援総体の中での位置づけなどを踏まえ、総合的に検討してまいります。
 次に、ワークライフバランスについてでございますが、ワークライフバランスは、働き方の見直しなどを通じて仕事と家庭や地域生活との調和を図るものでございまして、その推進は、子育て支援のみならず、男女平等参画社会の実現にとっても重要でございます。
 都においては、本年二月の東京都男女平等参画審議会専門調査会報告を受けまして、今年度、ワーク・ライフ・バランス実践プログラムを作成いたしまして、企業における具体的な取り組み方策を提示するほか、都民への普及啓発も行うこととしております。

〇病院経営本部長 墨東病院の産科に関するご質問にお答えいたします。
 墨東病院は、総合周産期母子医療センターとして、合併症妊娠や切迫早産、胎児異常等のハイリスク分娩など、高度な周産期医療に対応する役割を担っております。
 全国的な産科医不足の中にあって、墨東病院もその例外ではありませんが、限られた人材を有効に活用し、地域との役割分担を行いながら、リスクの高い分娩を最優先に対応しております。
 引き続き、こうした考えのもと、産科医師の確保に努め、周産期医療の充実に取り組んでまいります。

〇産業労働局長 育児休業支援などに取り組む中小企業への助成拡充についてのご質問にお答えをいたします。
 都は、中小企業において仕事と子育てなどの家庭生活を両立できる雇用環境の整備を促進するため、昨年度、両立支援推進助成制度を創設いたしまして、両立支援体制の整備に係る費用の一部助成を実施しております。
 さらに、今年度からは、事業計画に基づきまして助成の対象と規模を拡充しております。

以上