過去のページ

第三回定例会 討論  二〇〇八年一〇月六日

かち佳代子(大田区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第一五七号議案 「平成二〇年度東京都一般会計補正予算第二号」、他十一議案に反対し、日本共産党を含めた共同提案による東京都奨学費給付条例、東京都中小企業振興基本条例に賛成する立場から討論をおこないます。

 今定例会は、小泉内閣以来の構造改革路線による増税や社会保険負担増、雇用破壊の痛みに加え、原油・物価の高騰が国民に激しい痛みをもたらしている中で開かれました。
 日本共産党は、知事自らが小泉の構造改革を先取りし、福祉・医療など次つぎ廃止・民営化してきた責任を質しました。
 また「住民福祉の増進」を責務とする自治体として、都民生活防衛にこそ全力をつくすべきとの立場から、第一に低所得者の都民税減税と緊急生活応援手当て、学校給食費などの軽減、第二に正規雇用の拡大、臨時職員の時給千円以上への引き上げ、第三に中小企業・農漁業に対し、燃料費助成、制度融資の大幅な拡充と改善など、全体で千四百億円規模の財源で可能となる緊急対策を提案しました。
 知事は、構造改革を先取りしてきたことに何の反省も示しませんでした。

 日本共産党の都民支援の提案に対しても「そうした安易な財政運営というのは、私の考え方とは全く相入れない」などと“ばらまき”よばわりまでして拒否しました。
 その一方でオリンピック招致活動費や、四兆円にも及ぶ外環道建設の推進などという浪費は断固続けるというのです。“ばらまき”という言葉は知事にこそ当てはまるといわざるを得ません。

 補正予算も、財源は繰越金のみ。しかも六割近い五百四十億円は新銀行の減資に対応した減債基金積みたてです。
 日本共産党が提案してきた学校耐震化助成の拡充など、部分的前進はありますが、事業予算は四百億円に満たない上にほとんどが国の緊急対策との連動や上乗せで、きわめて不十分です。
 わが党は、緊急性のない新銀行対応の減債基金積立をやめ、五四〇億円を都民施策に使うべく組み替え動議を提案しました。この方向こそ自治体本来の姿であることを強調しておきます。

 日本共産党は今定例会で、他の会派との共同で二つの条例提案を行いました。
「東京都奨学費給付条例」は、高校教育費が大きく家計を圧迫し、学費が払えず退学などが起きている中で、生徒の教育を受ける権利を守るため、都として奨学費を給付する制度で、横浜など八政令市で実施中です。
 「中小企業振興基本条例」は、中小企業の振興のため、基本計画の策定、業種別施策、商店街や工業集積の活性化、伝統地場産業育成、取引適正化など、都の責務を規定するものです。
 この提案を質疑もしないでパフォーマンスなどと誹謗するのは議員の役割を否定することに他なりません。
 「返さなくて良い奨学金なら本当に助かる」との父母の声や、中小企業団体の強い要望で各県の振興条例が実現していることなどをもとに、東京での条例の立案と実現をめざすことは地方議員として当然であることを申し述べておくものです。

 今定例会では、石原都政による構造改革路線が大きく破綻し、各所に弊害が広がっていることが、わが党のみならず指摘されました。
 第一は、東京都老人医療センターと老人総合研究所の独立行政法人化、豊島病院の公社移管です。
 都は都立病院の第二次実行プログラムで、独法化は様ざま課題があって慎重に検討する必要があると判断したにもかかわらず、老人医療センターを強行することは全く筋が通りません。全国に誇る老齢期の医療・福祉・研究の三位一体の拠点を解体することにもなり、都民の損失は重大です。
 都立豊島病院の公社化は、「先に結論ありき」のおしつけであり到底認められません。地元の強い要望である全ベッド開設やNICU再開は都の責任でこたえるべきです。

 日本共産党が、市場原理主義の典型として認証保育を取り上げたのに対し、福祉保健局長は「基準を設け、指導監督をしているので市場原理主義とは違う」と答えました。
しかし、私たちの調査によって、小田急の子会社が世田谷の成城に開設した認証保育所で虚偽申請を行い、少なくとも二千七百五十万円が不正請求である事実が明らかになりました。
 都が認可保育所よりレベルダウンさせた基準さえ不正にごまかし、かつそれが都の監査で見過ごされてきたのです。局長の答弁とは裏腹に、市場原理主義がまさに横行しているではありませんか。徹底した調査と厳正な対処を強く求めるとともに保育への営利企業参入、認証保育所のあり方を抜本的にみなおすことを改めて求めておきます。

 新銀行東京の経営破たんに関連して、都議会議員や知事の側近などによる融資口利きがあったことについて、知事は「全ての申し込みについて厳正な審査を行い、融資の可否を判断して」いると述べましたが、これではなぜ四六〇億円もの損失がうまれたのか説明がつきません。
 知事がマスタープランでおしつけた、危険なポートフォリオ融資をわずか3日以内にコンピュータ審査ですますことや問題融資がきちんとした審査を受けず実行されるなど、知事の言う「厳正な審査」は実行してこなかったことは明らかです。だからこそ口利きやブローカーが幅を利かすことになったのです。
 自治体が設立した銀行への口利きは、それだけで大きな圧力となり、不正疑惑につながることは、専門家も指摘するところです。
 日本共産党は、議員による新銀行への融資斡旋を行わない申し合わせを提案しましたが、自民・民主・公明・ネットなどの会派から賛同を得られなかったのは、きわめて遺憾です。
 都はいまだに新銀行が中小企業に役立っていると強弁していますが、実際は中小企業の融資を減らしており、その存在意義はありません。知事は新銀行から潔(いさぎよ)く撤退するよう強く要求するものです。

 築地市場移転予定地、豊洲の土壌汚染問題で、市場長は、環境基準の千倍を超える汚染箇所が少ないことを挙げて「汚染の範囲は限定的」などと答えました。
しかし、委員会質疑で明らかにしたように、専門家は「基準の千倍のベンゼンは、百人に一人がガンになる確率の濃度」だと指摘しているのです。市場長の発言は、食の安全など どうでもよいというもので、断じて許されません。
 築地市場の現地再整備についても、市場の中に種地を確保できないなどと言い、中央区が築地市場の隣地を提案している事実を無視して姑息な答弁でごまかすなど、もってのほかです。
 知事、築地での再整備は可能です。関係者の大多数が求める築地の現地再整備に立ち戻ることを求めておきます。

 最後に、議員の海外調査について述べます。日本共産党の調査によって、二〇〇六年の民主党議員のブラジル視察及び自民・公明両党議員のアメリカ視察において、いずれも、報告書に他人の文章を大幅に盗用した疑いがあることが明らかになりました。
 日本共産党には「市民感覚では理解できないほどの高額な旅費を投じ、しかもその報告書が盗用なんて断じて許されません」などの有権者の声が届いています。
 マスコミでも「こんな盗用するなら、アメリカに行かないで、その先生から聞いて、報告したっていいくらいで税金の無駄遣いだ」などと厳しい批判が出ているのです。
 都民に謝罪するとともに海外視察を中止し、抜本的再検討をおこなうべきであることを申し上げ、討論とします。

以上