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文書質問趣意書
2008年10月2日
曽根はじめ(北区選出)
都営住宅の諸課題について
都営住宅は、この10年余りの間に、国による応能・応益家賃制度の導入、家賃免額制度の廃止、新規建設の凍結、指定管理制度による公募の実施、承継制度の見直し、そして来年度実施の入居基準改定など、めまぐるしい制度変更が行なわれ、そのたびに居住者の負担増や退去、サービス低下が押し付けられてきました。
このなかで、石原都政は国の政策を先取りする形で、一貫して都営住宅の戸数と予算を削減し、それによる応募倍率増加などの矛盾に対しては、入居対象をより低い所得階層にしぼりこむやり方をおしつけてきました。全体として公営住宅の役割を低下させてきたと言わざるを得ません。
その一方で、石原都政による東京一極集中政策の激化による東京の人口増と所得格差の拡大の中で、高齢者のみならず若年層にまで低所得階層が広がり、都営住宅の役割はむしろ重要さをましています。
いまこそ都営住宅は、都民のために大量の新規建設が求められているとともに、26万戸に及ぶ現都営住宅を、本来の役割にふさわしく維持・活用していくことが重要です。
私はこの立場から、今日における都営住宅の諸問題について、以下の柱にしぼって質問します。
1、都営住宅の入居基準改定について
2、都営住宅の建替えについて
3、都営桐ヶ丘団地再生計画について
1、都営住宅の入居基準改定について
国土交通省が昨年12月に発表した入居及び明け渡し収入基準の改定によって、来年4月から公募対象者が大幅に削減されるとともに、暫定期間を置いても、いずれ現居住者の約3割の家賃が値上げを迫られ、収入超過者には明け渡し努力義務と民間家賃が課せられることになります。
国土交通省は、「住宅困窮度の高い世帯に的確に公営住宅を供給できる」「応募倍率を引き下げる」としていますが、国民全体の平均所得が下がったのを根拠に、公営住宅の対象者を足切りにしたり、現居住者を追い出すことで問題解決を図るのは本末転倒にほかなりません。
第1に、国が決定した政令月収15・8万円、3人世帯で粗収入400万円という基準の妥当性についてです。
Q1.都は、入居基準引き下げで、対象外となる入居希望者の住宅が、前回基準改定後の10年間で、充足されてきたと考えているのですか。お答えください。Q2.これまでも公営住宅入居基準を国が一律に定めることには、都内勤労者の平均収入が全国平均より高く、実態に合っていないとの批判がありました。今回も新基準が全国平均の収入分布で下から25%ということなら、都内の平均では25%より大幅に低いと推定されますが、都は実態をどう把握しているのですか。
Q3.新たに入居基準オーバーとされた世帯が、民間の家賃を負担できるのか、はなはだ疑問です。3人世帯の粗収入で463万円の旧基準では、都内の平均約10万円といわれる2DK賃貸家賃は、収入の約四分の一でしたが、新基準の年収400万円では約三分の一の負担になり、格段に重くなります。かつて国や都が公営住宅家賃を収入の16〜18%、都民住宅でも25%程度に抑えるとしたことから見てもあまりに負担が重過ぎると考えますが、認識を伺います。
第2に、今回の措置で来年度から都営住宅申し込みができなくなる、年間申し込み数で数万から10数万の世帯への対策の問題です。
Q4.都は、これまでの都営住宅応募者で、応募資格を失う人数をどのように推計していますか。
Q5.また、これらの世帯に対する何らかの対策を検討する必要があると思いますが、どうか。
Q6.都営住宅に入居したくても入れない低所得者のために、家賃補助の創設を検討するよう求めます。所見を伺います。
Q7.都営住宅の家賃減免制度を2000年以前に戻すべきですが、どうですか。
2、都営住宅の建替えについて
都営住宅の建替えは、これまでの昭和30年代建設分から40年代建設分に広げられてきましたが、総予算を抑制するために、戸当たりの面積や設計の水準が大幅にレベルダウンさせられてきました。また都側の計画が一方的に押し付けられる事例が頻発しています。
都営住宅は、建替え後も長く居住できるよう、建物の耐震性やバリアフリーなど安全性に最善をつくすとともに、住む人の快適性を保障できるよう設計や間取りに創意工夫を凝らす必要があります。
また、老朽化した都営住宅の建替えは、居住者の高齢化のなかで、一人ぐらしや要介護者、通院者が多数に及ぶ場合が多く、きめ細かな対応が不可欠です。
団地自治会や個別居住者に対して、都側の一方的な工事スケジュールや移転計画を押しつけることなく、居住者の要望を十分に聞いて可能な点は最大限実現を図ることによって、全ての居住者の建替え事業への理解と協力が得られ、事業をスムーズに進めることも可能になります。以上の観点から質問します。
Q8.都営団地の建替えは、大規模団地はもちろん、規模は小さくても緑や広場、公益施設の配置などまちづくりの一貫であり、団地や近隣住民の理解と協力が欠かせません。
建替え計画の提案は住民全体に少なくとも一年以上前に行い、十分な説明を行なうこと。計画の具体化は居住者と近隣住民の参加でワークショップを行い、許す限り住民意見を取り入れるなど、住民の参加と公開の姿勢が必要と考えますが、所見を伺います。
Q9.建替え対象団地は長く住み続けている居住者が多く、地域に親しんでいること、通院や通学などの都合からも、できるだけ近接の住宅への移転希望が、遠隔地や都心など一等地への希望より多いのが通例です。戻り入居の希望も以前より増える傾向にあります。したがって移転住宅の斡旋は、戻り入居を基本に、近接の住宅の確保に全力をあげ、居住者の希望にこたえられる努力が必要ですが、どうか。
Q10. 1人世帯及び2人世帯向けの住宅については、最低限の生活を保障するため、面積の拡充が必要です。型別供給のうち2Kから2DKへの若干の改善はありましたが、不十分です。全体の面積を増やし高齢夫婦向けに2部屋を隣接する設計とすること、1DKは介護ベッドが入っても、介護するもう一人の就寝スペースが確保できる広さとすることなど、実態に即した間取りを工夫するよう求めます。答弁願います。
Q11.建替え後の住宅は、既存居住者の家族構成にあわせるだけでなく、ソーシャルミックスを前提に、新たな居住者向けに若年ファミリー世帯などにも対応できるよう、できるだけ多様な間取りの住宅配置とすべきです。
Q12.またシルバーピアやグループホームなど高齢者や障害者のためのケア付き住宅を計画段階から積極的にとりいれて、福祉機能を抜本的に高めるよう求めます。
Q13.移転のために居住者が必要な費用は全額補償できるよう、現在の全国一律による17万円あまりの移転補償費を引き上げる必要があると思いますが、どうか。
3、都営桐ヶ丘団地の再生計画について
都営桐ヶ丘団地は、5千戸を越える都内最大級の都営団地であり、再生計画に取り組んで20年になります。
1988年に再生計画の一次案が示されましたが、超高層住宅を乱立させる一方、建替えが20年余に及ぶ間、浴室のない住宅が1千戸以上、21世紀まで放置されるなど住民要望とかけ離れていることが指摘され、都が見直しを行って、超高層住宅の階数を下げ、再生計画全体を6期24年、前期・後期に分けたうえで、建替えが後回しになる地区は増築や浴室設置を先行させるなど大幅に改善された現在の計画が96年に着工しました。
この間、百回を越える大小の説明会や懇談を行い、概ね順調に推移して前期計画を終了しようとしており、後期計画の課題を明確にすべき段階に来ています。
これまでの経過をふまえ、都全体や地元北区にとって高齢社会のモデルともいうべきまちづくりのあり方として、今日の時代にふさわしいものとなるよう求め、以下質問します。
第一に、団地の規模として、最終的に約五千戸の都営住宅戸数を建替え後も確保するとともに、約1千戸の都民住宅等の公共住宅を整備して全体の戸数増を図るとともに、ソーシャルミックスを進めるという再生計画の基本構想を、最大限守れるようにする課題です。
Q14.桐ヶ丘の建替えでは、区内に建設された移転用住宅に移った方を除けば、建替えで域外に移転した方の多くは、優れた桐ヶ丘のコミュニティーや医療環境などを求めて戻り入居しています。また、緑の多い広い敷地は都営住宅の環境として貴重なものです。
したがって、都営住宅の既存戸数5千戸を確保すべきと考えますが、いかがですか。
Q15.当初計画の1千戸の都民住宅計画については、都として、都営住宅の入居基準を超える中所得層の都民に、負担可能な家賃で提供する新たな公共住宅の開発を検討してはどうでしょうか。
Q16.少なくとも、桐ヶ丘全体で6千戸の公共団地を目指すべきですが、どうか。
第二に、環境やバリアフリーに配慮したまちづくりのあり方についてです。
Q17.後期に建替えの対象となる桐ヶ丘のN地区は起伏の多い地形であり、自然を生かしながらも道路や建物の整備に工夫が必要です。
また高齢化のもとで、団地内の通過交通を避け、歩車分離が可能となる道路等の設計、ノーマライゼーションの観点の徹底など、高齢社会のモデルにふさわしい街づくりとすべきですが、いかがですか。
Q18.自然エネルギーを極力取り入れ、基本的に共用部分の電力を自家発電できる施設を計画すること、温暖化ガス吸収効果や冷却効果の高い植栽・公園などの配置、ビオトープ等自然再生の取組みなど、住民参加による地球環境に配慮した創意ある計画を求めます。お答えください。
第3に、福祉、医療、コミュニティーの環境整備についてです。
桐ヶ丘の前期計画では特別養護老人ホームやデイホーム、障害者の通所施設、児童館などが整備されました。
Q19.後期の中でも、ひき続き、小規模多機能型をふくめた特別養護老人ホームや通所の介護・福祉施設の整備が必要と考えます。さらにシルバーピアなど高齢者住宅の拡充、住宅を生かしたケアハウスやグループホーム、障害者の生活寮などを積極的に計画に取り込み、設計段階から工夫していくようにしてはどうでしょうか。
Q20.桐ヶ丘地域では、自治会等の総会が開けるコミュニティー施設が不足しています。北区とも連携して大小の集会施設などの配置をすすめるよう求めます。
Q21.団地内で2箇所の医療機関のうち、前期で桐ヶ丘診療所の入居する予定だった「1号館」計画が実現しないままです。後期計画の早いうちに、医療機関の配置が現状を基本に確保できるようにすべきですが、どうか。
第4に、住宅および商店街等生活施設の配置についてです。
前期計画の中で、建替え後に従前居住者の住宅を確保するという理由で、建物の住宅の大半が一人暮らし向けの1DKという例もありましたが、長期に活用していく公営住宅として、できるだけ多様な年齢・家族構成が居住できるよう工夫が必要です。
Q22.建物ごとの住宅配置にも、ソーシャルミックスの観点が必要と考えますが、どうですか。
Q23.建替えに伴い、団地内で居住者の移転によるローリングが行われるなかで、メゾネットタイプなど老朽住宅を早めに解消すること。
Q24.障害者住宅を思い切って増やすとともに、以前と同様に、入居者の状況に応じて室内を仕上げる方式を採用すべきです。
Q25.高齢化した居住者にとって、団地内の商店街は不可欠であり、可能な限り地元で営業が継続できるよう最大限の配慮が必要と考えますが、都の見解を求めます。
Q26.最終的に団地の敷地を民間企業に切り売りすることのないよう求めます。
Q27.また、桐ヶ丘北小学校跡地は、今後も地域の教育・コミュニティーにとって貴重なスペースであり、区としての活用計画があれば尊重すべきです。それぞれお答えください。
第5に、地元建設業者の活用についてです。
Q28.前期計画では、準超高層の住宅以外は、建替えでも増築でも、分割発注なども活用して地元業者が入札に参加する機会が多く確保されました。
地元建設会社も「建設不況のもとで息をつくことが出来た」「地元で評判を落とさぬよう仕事もがんばった」と胸を張ったとおり、地元業者の建てた住宅は概して入居者からも評判が良かったのが特徴です。
後期計画でも分割発注、地元発注を原則とするよう要望します。いかがですか。
以上