東京都立学校の授業料徴収条例の一部を改正する条例提案説明
2008年12月15日文教委員会
古館和憲(板橋区選出)
本条例改正案は、経済的な困難が高校生を持つ家族にも広がる中、授業料を値下げすることにより、経済的な負担を小さくし、経済的理由で教育を受ける権利を阻害されないための一助とするための改正です。
東京都が行なった「都民の生活実態と意識」の調査によると、高校生の親の年代であろう50〜59才の生計中心者の年収が500万円未満の割合は36.4%であり、18才未満の子どもがいる世帯の年収が500万円未満の割合は29.3%です。つまり、高校生を持つ親世代の約3割から1/3程度が、年収500万円未満と考えられます。
国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩氏の研究では、「世帯所得400〜500万円の生活水準が、人々が考える『日本の社会において普通に生活するための最低限』の生活ぎりぎりのラインであり、世帯所得がこれを下回ると、必要と感じつつも充足できない項目が増えていくことが示唆される。」と指摘されています。つまり、高校生を持つ親世代の1/3程度の世帯は、収入が500万円未満と言うことですから、普通に生活する上で、必要だと思っても充足できない収入だと言えます。
そんな中で、積立金が払えず修学旅行に行けない生徒も、経済的な問題で自分の希望した学校をあきらめざるを得ない生徒もいます。定時制高校では、生徒のアルバイトが家計の足しになっている、アルバイトで自分の学費は出しているなどの生徒もめずらしくありません。
教育費負担が重いのは、低所得の世帯だけではありません。東京都の「都民のくらしむき」平成18年では、高校生の子どもをもつ世帯の1ヶ月あたり消費支出は平均を大きく上回っていることを示し、「子どもが高校・大学にすすむ時期には世帯主の収入では、家計を支えられないと考えられる」と分析しているのです。
都立高校の授業料についていえば、東京都は不交付団体であるにも関わらず、国が地方交付税算定の基礎としている公立高校の授業料基準にしたがって、最近では2年ごとに値上げを繰り返し、加えて今年度から、冷房機のリース代、電気代を全額授業料に転嫁したため、都立高校の授業料はとうとう全国でも2番目に高いものにしてしまいました。
国際的には教育は「無償化」が主流であり、高校の授業料についていえば、無償に到達しているのは、OECD加盟30カ国の中で26カ国になりました。
東京での高校進学率は定時制も入れれば97%を超え、高校で学ぶことは普通のことになっています。若者が学ぶことは社会の財産であり、教育の利益を受けているのは個人のみならず、社会全体であり、社会の発展にとっても重要なことです。だからこそ、世界の大きな流れは、教育の「無償化」なのです。
今回の授業料の設定の根拠は、勤労者世帯の収入が低下している中、現在の収入と同程度の収入である1990年度の授業料に合わせました。したがって、全日制は年間122,400円を88,800円に、定時制は33,360円を24,000円にします。その他の授業料も1990年度に合わせました。
必要経費は全日制と定時制合わせて約35億円です。その気になれば東京都で、すぐにでもできることです。
以上の趣旨をおくみとりのうえ、委員各位のご賛同を心からお願いもうしあげ、提案説明とします。ご審議のほどよろしくお願いいたします。
以上
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