過去のページ

文書質問趣意書

2008年12月14日
日本共産党 大山とも子

公営住宅の高齢化対策について
―「戸山団地」を中心に―

 都営住宅をはじめとした、公営住宅居住者の高齢化が進んでいます。2008年1月1日現在の東京都の65歳以上人口の割合は19.38%ですが、都営住宅では、名義人の55.3%が65歳以上です。高齢化は都営住宅のみならず、住宅供給公社やUR住宅でも同様です。年齢が高くなるほど一人暮らしも増え、孤立や認知症、孤独死などの問題が起こりやすく、見過ごすことはできません。

Q1 「東京における高齢者の住まい方検討会」で、委員から「公営住宅の見守りについても見当も必要ではないか」「公営住宅に入っている人たちのことも踏まえて、高齢者の住まい方というところに……議論を進めていかなければいけないのではないか」という意見が出ていることを、どう受け止めていますか。

 私が住んでいる新宿区に「戸山団地」があります。戦後初の本格的な鉄筋コンクリート造りの不燃住宅として、1948年から建築がはじまり、1950年までの間に42棟1,072戸が建設されました。居住者の入れ替わりはあったものの、「戸山団地」は、居住者の皆さんが育ててきた樹木や植物が豊富で、住宅ができたころ、若木として植えられたであろう桜並木はすばらしいものでした。鉄筋コンクリートの住宅ではありましたが、潤いのある住宅でした。住宅が年月を経ると同じに、居住者の高齢化も進みました。
 1990年から始まった「戸山団地」の建て替えが、今年終了しました。新しくなった住宅には従前居住者と他の都営住宅の建替えまたは、取り壊しのために移転してきた居住者が入居しました。戸山団地がそうであるように、他の都営住宅から転居してきた居住者も高齢化しています。「戸山団地」の建て替えが終了すると、いままでの2倍以上、2,321戸という大規模な団地になる予定ですが、新たな居住者も含めて、気心の知れた「ご近所」になっていくことが求められています。

Q2 新宿区社会福祉協議会が実施した「戸山団地・暮らしとコミュニティについての調査」で、この戸数2,321戸の都営住宅「戸山団地」の高齢化率が5割を超えていること、75歳以上の約6割がひとり暮らしとみられることが明らかになりました。また、この調査では、「戸山団地」には若い世帯も入居しているが、高齢者世帯との交流がほとんどないこと、集合住宅におけるコミュニティのあり方について検討する必要があることが指摘されています。こうした調査を十分に参考にして、都の福祉政策、住宅政策、コミュニティづくりの政策を進める必要があると思いますが、どうですか。

 コミュニティが壊れてしまう原因はさまざまありますが、考えられることの一つは、住宅の規模や建て方です。旧戸山団地が4〜5階建てで廊下はなく、階段の両側に2戸ずつ、4階建てなら1つの階段を8軒で使用するものでした。1棟は、ほとんどが24戸か32戸のこじんまりしたものでしたから、階段毎のコミュニケーションが自然にできていました。その住宅が高層廊下型でしかも1棟の規模が一番小さな号棟でも59戸、一番大きなところは344戸という巨大な団地になりました。
 また、旧戸山団地と角筈アパートの居住者は、ほぼまとまって新しい建物に移転できましたが、他の都営住宅からの住み替えの方々は、同じ「戸山団地」でも、必ずしもまとまってはいません。長年かけて作ってきたコミュニティが壊れてしまったということです。そんな中で、他の住宅から引っ越してきた高齢者が広い「戸山団地」で買い物に出たけれど、帰れなくなってしまったということも珍しくありません。一人では外にもなかなか出られず、1週間誰とも口をきかなかったという人。同じ団地から引っ越してきた人に1ヶ月ぶりで会ったら、認知症がすすんでしまって、「あなた誰?」と言われたなど、高齢者にとっての困難は、たくさんあります。

Q3 福祉保健局と都市整備局などが連携して、都として、都営住宅をはじめとした高齢者世帯の多い共同住宅の高齢化の実態、孤立化やコミュニティの現状、居住者の要望などについて、調査を行うことを提案しますが、見解を伺います。

 人と会って、おしゃべりをすることは、認知症の予防には重要なことです。月に一度の掃除の日は、いろいろなところから引っ越してきた方々も含めて、顔見知りになるチャンスです。しかし、高齢で掃除はできない方々もいますから、役員さんは、お茶だけでも飲みにくるよう誘いますが、みんながお掃除をしているのに、自分だけお茶飲みもできないと、出てこられない方もいます。
 新宿区社会福祉協議会が「戸山団地・暮らしとコミュニティについての調査」を実施したとき、半年間、月に1回、集会室を借りて調査をしました。その時、相談窓口も開いたら、さまざまな相談がきたとのことです。そこに、人がいるから立ち寄ることができます。
 サークルは合わないという人も、掃除の時には出てこられないという人も、場所があって、常時人が居れば、気軽に立ち寄ることができます。横浜市では、市営住宅の空き部屋を活用した「高齢者支援拠点」を10月31日からスタートさせました。高齢者の孤独死防止の取り組みや見守り等を行うための拠点です。事業内容は@生活や福祉に関するよろず相談、A地域の福祉活動の「場」の提供(常設型サロン)、B地域の福祉保健情報の収集と発信です。拠点には常駐スタッフが配置されます。

Q4 「戸山団地」については、集会所の活用だけでなく、高齢者がいつでも立ち寄れ、おしゃべりや交流することができて、相談支援者が配置されているサロンのようなものを、ブロックごとに常設することが大事だと思いますが、どうですか。

Q5 「戸山団地」には、シルバーピアが308戸ありますが、団地全体がシルバーピア化している実態にあり、今後さらに75歳以上の世帯が急増することになります。シルバーピア以外の都営住宅にもLSA(生活援助員)を配置し、高齢者世帯の見守りや相談支援をおこなうなど、高齢化率5割を超える事態を踏まえた新たな対応策の検討が必要だと思いますが、認識を伺います。

 さまざまな年齢層、子どもも若者も働き盛りの人も高齢者も住んでいてコミュニティは活性化します。このようなソーシャルミックスが実現できない原因のひとつは、建て替えの時に従前居住者の住み替えだからと、1〜2人向け住戸の割合を増やしてきたことがあります。同時に収入基準も問題があります。さらに、来年4月から制度が改悪され収入基準がさらに低くなり、公営住宅が必要な子育て世帯が排除されてしまうことは重大です。

Q6 ソーシャルミックスを進めるためにも、公営住宅法施行令改定の撤回を国に求めることがますます重要になってきています。

Q7 都心の大規模団地で高齢化率が5割を超えるような現状は、改善していく必要があると思いますが、どうですか。

 新宿区社会福祉協議会が早稲田大学等と協力して、「戸山団地・暮らしとコミュニティについての調査」が実施されましたが、今度はこれらを活かしていくことが重要です。

Q8 「戸山団地」については、東京都も一緒に、新宿社会福祉協議会や近隣の早稲田大学などとも連携し、住宅政策・都市政策、地域福祉・高齢者福祉などの専門家、学生の力を生かした団地の活性化を進めることを提案しますが、どうですか。

Q9 新宿区社会福祉協議会の調査では、団地の建て替えにより1DKを極端に増やしたことが高齢化率を急速に押し上げたこと、「若年ファミリー向けの10年の期限付き入居制度なども、若い世代の入居で団地を活性化するというより、長い目で見たコミュニティづくりには、むしろマイナスに働くおそれもある」ことを指摘しています。こうした分析を、どう受け止めていますか。

Q10 これからの都営住宅政策については、住宅提供という視点だけでなく、高齢者も若い世代もバランスよく入居できるようにするとともに、さまざまな世代が交流できるコミュニティづくりの視点を、ハードとソフトの両面から重視する必要があると思いますが、認識を伺います。

以上