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文書質問趣意書
2008年12月15日
河野百合恵(江戸川区選出)
中川の「親水河川、防災ベルト構想」について
今年11月13日、江戸川区土木部は江戸川区議会建設委員会に「中川親水河川・防災ベルト構想」(以下、「構想」とする)の資料を提出し、説明をした。「構想」は次の4項目を掲げている。
@ 治水対策としての堤防強化
A オープンスペースの創出(親水化などアメニティの空間)
B 防災拠点の確保(洪水時の高台一時避難場所、防災ステーション)
C 安全な街路整備
この「構想」の具体的な事業内容は、荒川放水路と並行して流れる中川を埋め立てて、荒川の中堤から東側に「夢の100ha余の土地を生み出し」、国土交通省の基準に基づいて荒川のスーパー堤防の役割を果たさせる、というものである。区議会建設委員会への報告からさかのぼって2ケ月前の8月15日、江戸川区長は「江戸川区における気候変動に適応した治水対策検討委員会」(以下、「検討委員会」)を設け11名の委員を委嘱している。
委員長は、関東学院大学の宮村忠工学部教授、他の10人の委員の中に東京都から総務局の総合防災部長、建設局の河川部長が委嘱されているが、江戸川区民に対しては、ほとんど何も説明されないまま発表された。この「構想」に対しては、当然のことながら異論が出ている。
江戸川区議会第四回定例会本会議において、江戸川区長は「中川親水河川、防災ベルト構想」に関する質問に対し、「治水や地盤沈下への対応策を江戸川区だけでなく、学者、東京都等で高いレベルの協議をして、権威ある成果を生み出す。中川を暗渠にする方法、全面的に埋め立てる方法など着想の段階で、結論は言えない」という趣旨の答弁をしている。しかし、11月の区議会建設委員会の資料には、事業区間10キロメートル、スーパー堤防となる幅員は240メートルなど、極めて詳細な計画が示されているのである。
国土交通省が主導するスーパー堤防事業は、区画整理事業などと合わせて進められてきたが、その多くは住民追い出し方の街づくりとなっているだけでなく、水害防止策としても効果が疑問視されている。この度の中川における「構想」も問題点が多くあるため、以下、都の考え方と対応について質問する。
Q1.「検討会委員会」の設置にいたる東京都と江戸川区、及び「検討委員会」に加わっている葛飾区や国との協議はどのように進められたのか、また江戸川、葛飾両区民への計画に関しての情報提供、周知はどのように行ったのか、説明を求める。
Q2.「構想」が出されている中川の河川管理者は東京都である。今回、江戸川区が「検討委員会」を設置し、中川の親水河川や防災化について取り組みを始めていることは、河川管理者である東京都の権限を超えたものではないか、との疑問が出されているが、東京都の見解を示していただきたい。
Q3.「構想」に関連して、現段階での事業年度と事業費の試算、および都の財政負担の見込みなど、「検討委員会」での協議内容について明らかにしていただきたい。
Q4.都は中川の護岸整備事業を取り組んできた。江戸川競艇場周辺などが残されていたが、整備事業は今年度でほぼ完了の見通しと聞いている。もし「中川を荒川のスーパー堤防に」との「構想」が具体化されたとしたら、これまで東京都が進めてきた護岸整備事業の意義が問われることになると考えるが、都の見解をお聞きする。
Q5.2つの河川の計画高水流量は、荒川が毎秒7700トン、中川が毎秒700トンとのことである。中川の流量を荒川に合流させるとしたら最大で毎秒8400トンの負担が荒川にかかることになる。荒川にその負担を担わせる場合、当然、河川の拡幅、築堤などの対策が必要になる。荒川の流量増について、東京都はどのような分析をし、見通しをお持ちなのか、お聞きする。
Q6.荒川が負担する流量の増加によって、上流域の水面上昇が起きることが予想される。足立区、墨田区をふくめ広範な上流の地域に影響が及ぶことが指摘されている。荒川、中川流域の各自治体や住民との協議、合意形成について、東京都が明確な方針をもって臨んでいるのかが問われるのではないか。現時点での都の考え方をお聞かせいただきたい。
Q7.「市街地にスーパー堤防建設は難しい。中川埋め立てなら、時間もお金も節約できる。10年で完成し、3100億円の事業費で実現できる」との意見もある。国土交通省管理の江戸川流域の北小岩、篠崎地域では、市街地にスーパー堤防建設計画を区画整理事業と一体で、国と江戸川区が進めようとしており、住民から激しい反発が起きている。都は、建設残土の活用方法の一つとしてスーパー堤防を推進する立場に立っているが、住民の合意を得るのが困難で、容易には進まない市街地におけるスーパー堤防建設に代わるものとして、中川についての「構想」が計画されているのではないか。所見を伺う。
中川の暗渠化、または埋め立てを計画している「構想」は、地球温暖化とヒートアイランド現象を緩和し、環境に優しい都市づくりをめざす、としている東京都の方針とは相いれないものではないかと考える。
韓国のソウル市では、暗渠にした水路の上の高速道路をとりはずし、清流・チョンゲチョンを復活させ、温暖化防止に貢献する都市づくりとして世界から注目を集めた。ソウル市民からも歓迎されている。
Q8.比較して、今、示されている中川の「構想」は、せっかく存在する貴重な水面を失い、ヒートアイランド現象などをより深刻にすることが明らかではないか。環境に配慮した持続可能な都市づくりに逆行する「構想」であると判断するが、東京都の認識をお聞きする。
Q9.石原都政が進める「都市再生」は超高層ビル建設や、中央環状新宿線、品川線などの地下高速・幹線道路づくりで大量の建設残土を排出している。今後、オリンピック招致を理由にした3環状道路整備の方針のもとで、大深度の外かく環状道路建設が強行されたとしたら、いっそう建設残土の排出は増加する。治水対策を強調しながら、実際は残土処理場としての意味合いが強いスーパー堤防建設よりも、都市再生路線を見直して、環境保全優先の街づくりの方向に都政のあり方を切り替えるよう求めるものだが、見解を示していただきたい。
Q10.環境負荷が極めて大きい上に、水害対策の効果が疑問視されている「構想」に対し、住民からの反対の声が強まっている。東京都は住民の声を受け止め、「構想」に対して反対の立場を明確にすべきと考えるが、お答えいただきたい。
以上