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第一回都議会定例会 討論 二〇〇九年三月二七日
河野百合恵(江戸川区選出)
日本共産党都議団を代表して、第一号議案「平成二十一年度東京都一般会計予算」ほか二十六議案に反対、議員提出議案第一号「東京都奨学費給付条例」ほか一議案に賛成、議員提出議案第三号に反対の立場から討論します。
今議会は、自公政権がすすめた構造改革にくわえ、金融不況の影響と、それを口実にした大企業の雇用破壊によって、失業者が増大しつづけ、都民の生活がかつてない厳しさにおかれているもとで開かれました。まさに、東京都と都議会が、都民の深刻な実態に、いかに立ち向かうかが問われた議会でした。
知事提案の予算案は、緊急雇用、中小企業対策など、いくつかの前進的施策はあるものの、とても都民の実情に応えるものとはなっていません。
むしろ、石原知事就任以来十年間の都政版「構造改革」を徹底し、くらし、福祉・医療などの切り下げを都民に押しつける一方、大企業のための「都市再生」を最大の目的にして、三環状道路建設をはじめ投資型経費を連続的に拡大するなど、オリンピックをテコにした開発をいっそうおしすすめることを中心としたものといわざるを得ません。
実際、今議会では、清瀬、八王子の小児病院、梅が丘病院の廃止条例案が大きな争点となり、広範な都民の批判が広がりました。
いま、小児医療、周産期医療が危機的な状況におちいっている、まさにその時に、三つの都立小児病院を一気に廃止することは、知事の無責任さを象徴するものです。
医療人材不足だから「ない袖はふれない」、「三つの小児病院は存続できない」と言いますが、都立看護学校を四校も廃止して看護師養成を半減させたり、都立病院への財政支出を削減し、医師、看護師の待遇改善を怠ってきた石原知事の責任こそきびしく問われます。 「これ以上、子どもの命を脅かすのはやめて」と、連日都庁前での座りこみやデモ行進もおこなわれました。この声にこたえるべきです。青島知事の時の計画では、多摩地域に拠点病院をつくったとしても、清瀬、八王子の小児病院は存続させる必要があるとされていたのです。
わが党が提案したように、三つの小児病院を存続し、府中に新設する小児総合医療センターは必要最小限の規模からスタートし、医師確保をすすめながら段階的に拡大していく。これが最も現実的な道だということを、あらためて指摘しておくものです。
群馬県の老人ホームの火災で、東京の高齢者七名が亡くなりました。この問題から、都内の公的施設が足りないため、所得の少ない要介護高齢者が行き場を失い、他県や都内の「貧困ビジネス」と言うべき無届けの劣悪な有料老人ホームに依存している実態がうかびあがりました。
ところが石原知事は、「行政の責任だけではない」とか「日本ほど高福祉・低負担の国はない」などという責任のがれに終始しました。この十年、石原知事は高齢者は豊かになったなどと言って、老人福祉手当やマル福の廃止、特別養護老人ホームへの補助の大幅な削減、シルバーパスの全面有料化などをすすめました。その結果、総務省の最新統計によれば、東京都の歳出決算額にしめる老人福祉費の割合は、知事が就任した一九九九年は全国二位でしたが、二〇〇六年には四十七位と最下位に転落しました。そのうえ、来年度予算で特別養護老人ホーム整備の用地費助成を廃止しようとしていることはゆるされません。
国の「構造改革」路線と一体に全国に先駆けて福祉を切りきざみ、公的責任をなげだしてきた石原都政の異常な姿が、まさにここに表れていることを、厳しく指摘するものです。
都民の強い要求があるにもかかわらず、全国で唯一少人数学級を実施しないことも、子どもの教育費を出し惜しむ石原都政の冷たい姿勢を象徴的にしめすものです。これらの分野は、都民にとって、まさに「失われた一〇年」だったのです。
くらし、福祉の充実は、税金のムダづかい、浪費をただし、予算の使い方を都民第一に切り換えていけば実現できます。日本共産党は、この立場から、来年度予算の組替えを提案しました。
一般会計予算の五・二%を動かすことで、年金が目減りし、後期高齢者医療制度や介護保険負担増で苦しむ七十五歳以上の高齢者の医療費無料化を計画的にすすめること、保育園の待機児解消にむけた緊急対策として認可園増設の用地費助成を創設すること、不況で苦しむ製造業者を元気にするものづくり支援事業、延べ百万人分の緊急雇用、制度融資拡充、三〇人学級、都営住宅の新規建設など、百七十項目以上の都民要求を実現するものです。
そのため浪費的投資を大幅に削減し、一千億円のオリンピック基金の積み立てや、財政調整基金の一部を取りくずし、活用するものです。これに対し、公明党が「無責任」などと非難を浴びせましたが、とんでもありません。一兆円をはるかに越え、すぐに活用できる財調基金を、いま不況で苦しんでいる都民のために緊急に、そのごく一部を活用することの、どこが無責任なのでしょうか。
日本共産党は、今議会にも二つの政策条例を提案しました。
公立・私立高校生への奨学費を支給する条例案は、経済的な理由で部活や修学旅行に参加できない、卒業間際に授業料滞納で退学するなどの、深刻な教育格差を是正するために、他の政令都市でも実施されている制度です。
シルバーパス条例改正案は、所得に応じた三千円などのパスを発行するとともに、多摩モノレールやゆりかもめも利用対象にするもので、これにより、現在対象者の半分まで減っているパス利用者が大きく拡大することが期待されます。
いずれも、都民要望に応える提案として、各会派のご賛同をお願いします。
なお、自民党は、予算をともなう政策条例は知事との調整のうえ出すべきだ、などと言って反対しました。そんなことをいったら、知事が首を縦に振らない政策条例は出せないことになります。自民党の立場は、議案提案権という伝家の宝刀をぬく意志も気力もなく、さびつかせてしまうなさけないものです。日本共産党は今後も議会の条例提案権を最大限に行使して、都民要望の実現と議会の活性化を推進することを表明しておきます。
都民要望を実現する上で、いま石原知事の、二〇一六年オリンピック招致と、それを口実にした浪費をなくすことがさけて通れません。とりわけ、外郭環状道路は、地元住民が猛反対し、地元自治体の合意にほど遠い現状なのに、知事が「オリンピックに間にあわせる」という、計画前倒しの姿勢を変えていないのは、都民無視もはなはだしいといわざるをえません。建設費一兆六千億円のうち、都の負担分はますます膨れ上がる可能性が強く、その上、地上部道路や、東名高速道路以南と合わせると総額四兆一千億円です。
これらを含めた九兆円の浪費的投資を、都民は断じて認めないでしょう。
都民の多くは、「この経済不況のときにオリンピックどころではない、仕事やくらしを支える予算の使い方をしてほしい」と切実な声をあげています。知事は都民の声を真摯に受け止め、招致レースから、きっぱり撤退すべきです。
新銀行東京について、今議会で石原知事自身が、質疑の中で、「結果を見ればマスタープランが足かせ手かせになり、マイナス要因になったのではないか」などと述べています。
そうであるなら、旧経営陣の責任だけでなく、都が主導して作成したと産業労働局長も認めたマスタープランを何が何でもおしつけた、知事と大塚・津島氏ら当時の都庁幹部の責任を問わない理由は、何一つなくなるではありませんか。知事は新銀行東京破たんの元凶(げんきよう)としての責任をいまこそ果たすべきです。
知事提案の金融支援条例が、新銀行東京の破たんを何とか糊塗(こと)し、存続するために出された疑いが、質疑を通じて浮きぼりになりました。
東京都は、条例案を検討する際、中小企業融資を支えている信金協会や信組協会、東京銀行協会などの意見を聞くこともせず、特定の金融機関とのみ意見交換しました。まさに、異常です。
しかも、産業労働局長は、条例が乱脈融資の救済に悪用される危険性を否定できないうえ、「新銀行救済の意図はまったくない」とくりかえすだけで、制度の根幹については「検討中」「これから協議する」とくりかえすばかりでした。まさに、条例が制度設計もまともにできていない欠陥条例であることが浮きぼりになりました。
まともな中小零細企業支援条例として出し直すべきです。
築地中央卸売市場の豊洲移転問題について、わが党は昨年の専門家会議の調査報告書を全面的に分析し、これまで判明してきた二ケ所の有楽町層の欠落に加え、ゆりかもめの橋脚工事などによる有楽町層の破壊があることをつきとめました。
また、有楽町層が均一の地層ではなく、砂混じりの地層など水を通しやすいところが多く存在し、到底、「不透水層」だから安全などと言えるものではないこと、有楽町層の下に汚染が拡大している危険が明白なことを明らかにしました。
豊洲移転が、国の市場の広域化の考えを先取りし、大手流通資本や大規模小売店などに市場を開放するねらいがあることも重大です。食の安全を守るために豊洲移転を断念し、築地での現在地再整備に立ち戻ることを強く求めておくものです。
知事提案の安全・安心まちづくり条例改正案は、秋葉原などの凶悪な殺傷事件の防止をうたい文句にしながら、それと無関係な繁華街のパフォーマンス等を、干渉、禁止することを奨励し、言論、表現の無制限な規制につながりかねない性格をもつものであり反対します。
しかし、日本共産党は質疑を通じて、「都民の自主的活動を推進するもので、権利を制限したり規制を課すものでないこと」、「警察や事業者がおこなう『啓発活動』や『必要な措置』は、パフォーマンス等の街頭行為に対する個別的な指導や注意、要請は含まないこと」、「都が策定する指針に「規制を課すものでない」ことを明記し広報で徹底すること」、などを答弁として確認しました。
東京都及び警視庁の答弁は、「立法趣旨」として改正条項の解釈と運用を拘束するものです。日本共産党は、改正条例の解釈拡大・乱用を許さず、街頭での言論表現の自由を守るために全力をつくすものであることを申し述べ、討論を終わります。
以上