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第三回定例会 代表質問 二〇〇九年九月一四日
吉田信夫(杉並区選出)
総選挙、都議選で示された都民の審判をどう受け止めるのか
高齢者福祉について
少子化克服について
都立小児病院存続について
三〇人学級について
浪費の見直しについて
新銀行東京について
築地市場の豊洲移転について
【答弁】
〇知事
〇教育長
〇福祉保健局長
〇知事本局長
〇生活文化スポーツ局長
〇病院経営本部長
〇都市整備局長
〇産業労働局長
〇中央卸売市場長
【再質問】
【再質問答弁】
日本共産党都議団を代表して質問します。
都議選、総選挙は、国民、都民が自民、公明政権にノーの審判を下す歴史的なものでした。都民は、暮らしも雇用も破壊し、都民を苦しめてきた自民党政治への怒りを表明し、暮らしや福祉を大切にする政治に変えたいという願いを突きつけたのです。
この思いは、都議選告示後の世論調査で、投票に当たって都民が最も重視をしたのは、医療、福祉三五%であり、さらに雇用、景気対策二八%、教育、文化一一%と、この三つだけで七五%を占めていたことでも明白に示されています。
都議選では、新銀行東京の継続と築地市場の豊洲移転計画へのノーの審判も下されました。世論調査でも、新銀行東京はやめる方がよいが七六%、築地市場の豊洲移転に反対は五七%に達したのです。
知事は、所信表明で選挙の結果について一言も触れませんでした。しかし、今、知事に求められていることは、選挙で示された都民の願いに正面からこたえ、暮らしや福祉の充実を都政の最重点に位置づけ、都政のゆがみと浪費を一掃することではありませんか。
日本共産党は、この立場に立って、掲げた公約の実現を目指すとともに、各党のマニフェストなどで共通する政策については、よりよいものとして実現するよう誠実に努力をするものです。
以下、都政として緊急に取り組むべき課題について提案するものです。
まず、高齢者福祉の拡充です。
選挙によって、世界に例のない高齢者いじめの後期高齢者医療制度の廃止を求める議員が国会でも都議会でも多数となりました。高齢者が人間として大切にされ、安心して医療を受けられる政治を進めてほしいという切なる願いが示されたのです。
知事は、この結果に示された都民の思いをどう受けとめますか。改めて高齢者いじめの後期高齢者医療制度を廃止するよう国に要望することを求めるものです。お答えください。
都は、少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」実現検討会の試案を発表しました。この中で、高齢者が一人として漏れることなく、安心と安全に満たされた老後を送れる社会を実現するとしたことは重要です。
しかし、そのためには、住まいだけでなく医療や介護、経済支援など、各分野での具体的な手だてをとることが求められていると思いますが、どう考えていますか。
まず急務なのが医療の保障です。今、多くの高齢者は、生活苦の中で安心して医療にかかることもできない状況に追い込まれています。世界ではイギリス、イタリアを初め、医療費無料が常識で、一部負担のある国でも低額に抑えられています。この中で日本の高い医療費は異常です。
日本医師会を初め、医療関係団体もそろって医療費の窓口負担軽減を求めているのです。高齢者が安心して医療を受けられることを保障することは政治の責任だと考えますが、知事、いかがですか。
既にお年寄りに優しいまちを宣言した日の出町は、そのために七十五歳以上の高齢者への医療費無料化を実施し、他の自治体でも無料化の努力が始まっています。七十五歳以上の医療費無料化への都民の願いをどう受けとめているのですか。都として高齢者への窓口負担軽減に向けた検討を行うことを求めるものです。
我が党は二○○一年に兵庫県尼崎市における高齢者グループハウスなどを視察し、以来、認知症のあるなしにかかわらず利用できるグループホームなど、ケアつき住宅について提案してきました。ようやく都が「すまい」の検討会の中でケアつき住宅の整備などを打ち出したことは重要です。そこで伺います。
ケアつき住宅の整備をどのように促進し、低所得者が利用できるようにするためにどのような対策をとるのですか。地域全体の見守り体制をどのように進めるのですか。
特別養護老人ホームの入所を待つ人が都内で四万人に及ぶもとで、施設整備も急務です。先日の厚労省の発表でも、東京都の介護施設整備の達成率は四四%と、全国でも最低水準であることが明らかにされ、都議選でも介護施設整備は各党の共通した政策になりました。特別養護老人ホーム、療養病床など、介護施設整備の目標と整備促進のための手だてをどう考えているのですか。
七月に知事が国に提出した提案要求では、地価の高い東京の事情を踏まえ、国に財政支援の充実を要請しています。都としても、特養ホーム整備への用地費助成復活などの財政支援を強化すべきではありませんか。また、人材確保のためにも、運営費への助成が必要ではありませんか。お答えください。
少子化克服のためには、子育てしながら働ける環境の構築や住宅の確保、経済的支援を初めとした子育て支援の抜本的拡充など、総合的な対策が欠かせません。この立場で、私たちはこれまでも積極的に提案をしてきました。
この点で、知事が所信表明で、少子化対策について、保育や医療、教育の拡充はもとより、雇用の安定や住宅の確保など、重層的、複合的な施策を構築し、三カ年にわたり集中的に取り組んでいくと述べたことは重要です。
重層的、複合的な少子化対策について、どのような構想と具体策を考えているのですか。年次計画や財政計画を含め、いつ都民に示すのですか。お答えください。
保育園の待機児の急増が重大な社会問題になっています。このため、二つの選挙を通じ、認可保育園をふやすことを中心に待機児を解消していくことが多くの党の方向になりました。各区市町村でも待機児解消のさまざまな努力が始まっています。都としても、待機児解消に向けた認可保育園のさらなる増設計画をつくることが求められていますが、どう考えますか。
高校の学費は、OECD加盟三十カ国のうち二十七カ国では無償であり、奨学金は給付というのも世界の常識となっています。日本共産党は、都立高校授業料の軽減、給付制奨学金の創設を条例提案してきましたが、残念ながら否決されました。
しかし、今や、教育費の負担軽減を求める声は大きな世論となり、各党が高校授業料の無償化や軽減を公約し、給付制の奨学金については一致をしたのです。また、文科省も概算要求するに至りました。
知事、この新たな流れをどう受けとめていますか。経済的な理由で高校の教育をあきらめざるを得ない生徒を一人として出してはならないと思いますが、いかがですか。都として、少なくとも給付制の奨学金制度の創設に踏み切るべきです。答弁を求めます。
三月の都議会で、我が党を初め、民主党、生活者ネットなどの反対を押し切って、八王子、清瀬小児病院、梅ケ丘病院の廃止条例が強行されました。しかし、施行日は決まっておりません。
都議選の結果は廃止反対の勢力が過半数となりました。これが都民の審判です。きょうも都庁前で座り込みが続けられました。三つの小児病院の存続を求める世論と運動はますます高まっています。知事、都立三小児病院存続の大きな流れをどう受けとめているのですか。
多摩地域では小児救急医療が不足しており、八王子、清瀬の両小児病院では年間二万件を超す救急医療にこたえているのです。NICUや二次救急医療、重度の障害を持つ子どもの医療を提供しているこれらの病院の役割はかけがえのないものです。
今、新型インフルエンザの大流行は目前であり、乳幼児は重症化の危険性が高いとされています。乳幼児に多いインフルエンザ脳症などは命にかかわり、まさに一刻を争います。
こんなときに清瀬、八王子小児病院を廃止するなど論外ではありませんか。知事、そう思いませんか。民意にこたえ、新たな事態に対応するためにも、小児病院廃止計画は白紙に戻して、都民参加で存続に向けて再検討することを求めるものです。お答えください。
我が党は一貫して三十人学級実現を要求してきました。ところが、都は、全国で唯一、四十人学級にしがみついてきたのです。
しかし、この問題も流れが大きく変わってきました。さきの総選挙では、自民党は四年以内に少人数学級を実現すると公約し、民主党も公約するなど、少人数学級は党派を超えた政策となっています。
知事、この国民的総意ともいうべき流れをどう受けとめているのですか。民意を真摯に受けとめるべきではありませんか。見解を伺います。
今こそ、三十人学級を初めとした少人数学級に踏み切るべきです。ましてや、区市町村が独自に実施することや、少人数指導のための加配教員を少人数学級実現のために活用することさえ認めないのは許されません。直ちに改めるべきです。答弁を求めます。
暮らしを守るためにも浪費をなくせ、これが選挙で示された都民の声です。実際、都民が都議選で重視したことの中で、石原知事が推進しているオリンピック招致はわずかに三・五%にすぎず、オリンピックを看板とした巨大開発や、税金を湯水のように使った招致活動に対する都民の厳しい批判が示されました。
招致経費は明らかにされたものだけで百五十億円に上り、昨年の北京五輪への出張経費は六千五百万円、五輪計画説明のための六月、スイス出張は二千五百万円、開催都市を決定するコペンハーゲンでのIOC総会に向けて、一度しか着ないプレゼン用オーダースーツは一式三十万円、五十人分をつくると報道されるなど、目に余るものです。知事、都民からの税金のむだ遣いという批判の声をどう受けとめているのですか。
知事がオリンピックに間に合わせるといって進めている一メートル一億円の外かく環状道路についても批判が広がり、新政権の発足を前に、国交省は業者選定に入れず、事業は事実上、中断に追い込まれています。
実際、民主党内に、高速道路に多額の国費を投入するのは問題だとする意見があることなどが理由になっていると報道されています。
仮に、新政権が高速道路無料化政策をとれば、高速道路の管理、建設に莫大な税金投入が避けられません。この問題を含め、今、高速道路の整備、管理などのあり方をどうするのか、国民的議論と合意が求められているのです。
知事、外環道路は建設すべきではありません。少なくとも、建設を凍結し、都民的議論を尽くすことが必要だと考えますが、お答えください。
むだな公共事業と批判されている八ッ場ダム建設について、国交省は本体工事の入札延期を表明しました。知事は、中止になったらこれまでの負担金を返還請求するといっていますが、これは負担金を人質に建設続行を求めるものであって、とんでもないことです。
都民を初め、我が党や民主党などの反対を押し切って、不要なダム建設を推進した責任は知事にもあるではありませんか。知事に求められているのは、その責任を率直に認め、民意に沿ってダム建設中止に協力していくことではありませんか。答弁を求めます。
次に、新銀行東京と築地市場の豊洲移転問題についてただしたいと思います。
都議選の結果は、反対を表明する会派の議員が多数派を占めるものとなり、いずれも都民のノーの審判が下ったのです。
ところが知事は、所信表明でこの二つの問題について一言も触れませんでした。そればかりか、新銀行東京の延命と豊洲移転をあくまでも既定路線として進めようとしています。
知事、都議選での新銀行東京と築地市場の豊洲移転ノーの都民の審判をどう受けとめているのですか。見解を伺います。
私は、都民の意思を受けとめて、方向転換を求める立場から伺います。
まず、新銀行東京です。
都議選後、新銀行東京の六月期決算が発表されましたが、その内容は不良債権比率がさらに増加し、このままでは営業コストは再建計画の三割増になる見込みであることなども、さらなる経営悪化を示すものとなりました。
しかも、日銀から七百九十億円もの借り入れまでして、国債を購入することで利ざやを稼ぐなどという投資会社まがいのことまで行っています。この結果、運用資金に占める有価証券への投資の割合が五六%を占めるといういびつな銀行になっているのです。
ところが知事は、この現実から目を背け、開業以来初めて黒字になったと強弁しています。しかし、この黒字なるものも、融資が減ったことで前期に積み立てた貸倒引当金が戻ってきただけの話にすぎません。
しかも、再建計画で示された三つのプランのうち、成長型企業支援融資、ファンド投資は見るべき実績はなく、ほとんど役立っていないのです。知事、これが厳然たる事実です。違いますか。
何よりも問われなければならないことは、中小企業のための銀行という設立目的からますます乖離していることです。新銀行東京の中小企業への貸し出しは三分の一にすぎなくなりました。都市銀行や地方銀行の中小企業への貸し出しがそれぞれ七割の水準を確保していることと比較すると、極めて異常です。
中小業者からは、融資を断られたという声も寄せられています。これで一体、どこが中小企業のための銀行というのですか。我が党は速やかに清算に入ることを提案するものです。
専門家の意見では、資本金を別にしても、新銀行東京の資産は、まだ負債を九百億円以上も上回っており、やり方によっては預金者保護と中小業者の資金を保障しながら清算を進めることは可能です。
例えば、まず清算期間を定期預金者や貸出返済を考慮して三年から五年程度とし、その間に貸出金の戻りや有価証券など、資産の売却、コストの圧縮などによって、順次満期に達した預金者に滞りなく返済する方式です。
その場合、新たな貸し出しは停止すること、口ききのあったものなど、悪質な破綻債権は直ちに処理することは当然です。
その上で、知事が新銀行存続の最大の口実としている中小企業への融資についてですが、企業存続が必要であり、資金提供の継続を求めるまじめな中小企業に対しては、必要に応じて世界都市博覧会のときのように、特別の融資を都として実施するなどの措置をとればいいのです。知事、メンツにこだわらず、こうした方向こそ検討すべきではありませんか。
そのためにも、金融専門家などを交えた第三者による経営分析と処理方針を検討する場を早急に設けることを提案するものですが、いかがですか。
都が実施しようとしている金融支援条例は、我が党の質疑により、新銀行東京の救済につながる危険のあることが明白になりました。いかなる形でも新銀行東京の救済につなげないことを明確にすべきです。
また、条例に大問題があるのですから、要綱については議会に報告し、同意を得ることが必要だと思いますが、見解を伺います。
築地市場の豊洲移転については、第一に、危険な有害物質に汚染された土地に、都民の食を預かる市場を移転することは許されません。
総選挙後の九月二日に発表された環境確保条例に基づく土壌汚染調査で、改めて基準の千二百倍のベンゼン、八十六倍のシアンなど、千三百七十一カ所から環境基準を超えた汚染が検出されました。
先行する専門家会議の調査では、環境基準の四万三千倍のベンゼン、九百三十倍のシアン化合物も検出されています。
しかも重大なことは、いずれの調査でも、水平方向の地下水の移動汚染、東京都が不透水層といっている有楽町層以下の汚染の調査が実施されていないことです。既に移転予定地は「ゆりかもめ」の橋脚や水道管埋設などで有楽町層の下まで工事が及び、有楽町層が破壊されていることは明白です。
専門家は、封じ込めやリスク管理方式で対策をとっても、生鮮食品を扱う市場の安全は確保できないと指摘をしているのです。
知事が都議選で示された民意に基づいて行うべきは、土壌汚染について、すべての情報を公開すること、環境や地質、土木などの専門家、業者など、関係者も交えた検討会を立ち上げ、都民参加でこの問題を考える場を早急に設置することだと考えますが、知事の答弁を求めます。
第二に、現地再整備に向けた新たな検討に入るべきです。
現地再整備については、これまでに東京都が提案をしたローリング方式以外にも、地下利用方式、つり上げ式の総二階の人工地盤を利用する方式など、検討に値する方法が考えられています。
こうした方式であれば、営業しながらの建てかえが可能です。技術的にも、頻繁に走行している鉄道の線路の上部での難工事を実施し、斜張橋のような数百メートルにわたる橋を少ない橋脚でつくるなどの現在の技術をもってすれば十分可能です。
知事がいうアスベストについても、工事終了後に適正に処理すればよいわけであり、現地再整備を不可能とする根拠はありません。答弁を求めます。
にもかかわらず、なぜ知事が移転に固執するのか。その最大の理由は、何よりも築地市場を競り売りによる評価機能を持った市場から、大手の量販店や流通業者、外食産業が歓迎する流通センターのような巨大施設につくりかえようとしているからにほかなりません。
知事は日ごろ、技術というものは日々進歩、開発されていると、日本の土木、建築技術を高く評価しているのですから、現在地再整備の検討を直ちに開始すべきと思いますが、見解を伺います。
再質問を留保して質問を終わります。
〇知事 吉田信夫議員の代表質問にお答えいたします。
高齢者の医療制度についてでありますが、現在の長寿医療制度は、国民皆保険を堅持する観点から、社会全体で高齢者を支える仕組みとして構築されたものであると認識しております。
高齢者の医療制度は、我が国の社会保障制度の根幹にかかわる問題でありまして、国の責任において議論を尽くすべきであると思います。
次いで、高齢者の医療費負担についてでありますが、世代間の負担の公平性や負担と給付のバランスなどを考慮し、国民皆保険を堅持できる持続可能な制度として構築することが責任ある政治のあり方と考えております。
次いで、都立の小児三病院についてでありますが、国の医療政策の失敗によって、小児科、産科を初めとした医師不足は全国的に極めて深刻な状況にありまして、限られた医療資源を最大限に有効活用することが従前にも増して重要となっております。
こうした中にありまして、都は多摩地域における小児救命救急、周産期医療を初めとした高度専門的な医療の一層の充実を図るため、小児三病院を移転統合し、小児総合医療センターを開設するわけであります。
また、これとあわせて、小児病院が転出する地域の小児医療体制についても、着実に整備を進めてまいります。
今後とも、来年三月の新センター開設に向け、これまでの方針どおり取り組んでまいります。
なお、今回の都議選の結果は、国政の影響を大きく受けたものでありまして、小児三病院の移転統合と関係づける論は余り妥当ではないと思います。
次いで、パラリンピック・オリンピック招致についてでありますが、現在の世論の支持率は八○%を超しておりまして、現在、国を挙げて招致活動に取り組み、東京を世界にアピールしております。
こうした招致活動は、IOCの定めたルールやプログラムにのっとり、さらには過去の開催都市の経験などを踏まえまして、都議会で議決をいただいた予算の範囲内で行っているのでありまして、税金のむだ遣いという指摘は当たらないと思います。
次いで、外環道の建設についてでありますが、外環道は、ひとり東京のためだけではなく、広く国全体に便益を及ぼす重要な社会資本であります。
また、費用対便益が全国でもトップレベルでありまして、環境改善の効果も極めて大きく、まさに必要な道路であります。
都市計画変更後も、八十回を超える住民との話し合いを重ね、本年四月に地元の意見や要望に対する国と都の考え方を示し、五月には国においても事業化されました。
これを凍結するという主張は、社会工学的にも、まあまさに迷妄に近いもので、論外であります。
新政権においても、外環道のこうした国家的役割を十分認識し、国として安定的な財源確保と早期整備を目指し、事業の推進を図るよう強く求めてまいります。
次いで、今回の都議選についてでありますが、今回の選挙に限らず、都議選とは、知事と議会の二元制のもとで、その時々の都政のさまざまな課題について、総体として都民の判断を仰ぐものと考えております。
さらに加えて今回は、地方自治体の選挙の枠組みを超え、国の総選挙の前哨戦にされてしまいました。
これによって、新銀行東京や築地市場の豊洲移転を初め、都政の限られた案件について審判が行われたものとは考えておりません。
次いで、新銀行東京の今後の方向についてでありますが、新銀行東京は、現在も三千億円を超える預金を有するとともに、他の金融機関では支援が難しい、赤字、債務超過先を含む約一万社に及ぶ取引先を支援しております。
多数の関係者の存在を承知していながら、こうした現実に目を背け、現に営業している銀行の信用というものを全く考えず、一方的に清算を主張することは、まさに乱暴でありまして、金融機関においても、信用は最も重要な要素でありまして、公の立場にある者は、金融機関の信用にかかわることについては発言を慎重にすべきだと思います。
新銀行東京は、銀行経営のプロが社長に就任し、再建に向け懸命に努力をしております。その成果は着実にあらわれておりまして、経営再建を果たすことこそが最も必要なことであると思います。
次いで、土壌汚染に係る検討会の設置についてでありますが、新市場予定地の土壌汚染対策については、まず専門家会議で都民に公開の上、市場として食の安全・安心を確保できる対策の内容を検討し、それを受けて、技術会議で、汚染を除去する具体的な技術、工法について、科学的な見地から検討してまいります。
技術会議では、原島座長を初め、各分野の最高権威の学者の方々があらゆる角度から詳細に検討し、その結果、日本の最先端技術を活用した、信頼性が高く、安全性に不安のない対策が提言されました。
このように、土壌汚染について重層的に検討するというやり方は、日本ではかつて例のないものでありまして、安全性に万全を期したところであります。
また、対策を検討する際に実施した調査データについてもすべて公開しておりまして、改めて検討会を設置する考えはございません。
他の質問については教育長及び関係局長から答弁いたします。
〇教育長 まず、教育費の負担軽減についてでございますが、都立高校においては、受益者負担の観点から授業料を徴収しておりますが、経済的に厳しい状況の家庭等につきましては、就学の機会を確保するために、従来から授業料減免制度を設けております。
平成二十年度におきましては、都立高校生約十三万人のうち、一五%の二万人が減免制度の適用を受けております。
その効果でございますけれども、平成二十年度中の経済的理由による中退者は、全日制で一年間で五十七名、定時制で六十八名、合計百二十五人でございまして、全体十三万人の中の○・○九六%に当たります。効果があったものと考えております。
次に、減免制度につきましては、年度途中においても受け付けを行うなど柔軟な対応を行っておりまして、合格発表時や入学後の保護者会その他の機会を通じて制度の周知を図っているところでございます。
また、急激な経済の停滞を受けた昨年の十一月以降につきましても、家計への影響を考慮し、さらなる周知徹底を図ってきたところでございます。
教育費の負担軽減につきまして、授業料の実質無償化、所得段階別給付など、さまざまな政策、主張があることは承知しておりますけれども、いまだその全容が明らかになっておらず、現行制度との整合性、国と地方との役割分担、財源措置等の課題がありますことから、この問題につきましては、今後とも、国の動向を注視しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。
次に、少人数学級についてでございます。
公立小中学校の学級編制の標準は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律、いわゆる標準法の第三条第二項により四十人と定められております。
また、このただし書きでは、都道府県教育委員会が児童生徒の実態を考慮して特に必要と認める場合には、四十人を下回る数を学級編制基準とすることができるとされておりますが、東京都教育委員会としては、教育効果の観点から四十人を基準としているところでございます。
学級編制につきましては、標準法の定めが極めて重要な意味を持ちますが、現在のところ、このことに関する国の動きは明らかでございません。
今後も、国の動向を注視しつつ、都教育委員会として、学級編制のあり方について適切に判断をしてまいります。
三十人学級を初めとした少人数学級の実施についてでございますが、都教育委員会としては、生活集団としての教育効果を考えた場合に、児童生徒が集団の中で互いに切磋琢磨し、社会的適応能力をはぐくむため、学級には一定規模が必要であると考えております。
さらに、基礎学力の向上に配慮いたしましてきめ細かな指導を行っていくためには、教科等の特性に応じた多様な集団を編成できる少人数指導が有効であり、その充実が必要であると考えております。
次に、少人数学級を区市町村が独自に実施することなどについてでございます。
公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律により、学級編制については、都道府県教育委員会がその基準を定め、区市町村教育委員会は事前に都道府県教育委員会に協議し、同意を得なければならないこととされております。区市町村が独自に少人数学級を実施することはできない定めとなっております。
また、限られた教職員定数の活用につきましては、教育効果という観点から、東京都教育委員会が主体的に判断すべきものと考えておりまして、少人数指導のための加配教員を少人数学級編制に転用することは認めていないところでございます。
〇福祉保健局長 七点についてお答えいたします。
まず、長寿医療制度についてでありますが、本制度につきましては、国における今後の動向を見守ってまいります。
次に、高齢者への医療や介護、経済支援についてでありますが、都は「十年後の東京」計画において、世界に先駆けて超高齢社会の都市モデルを創造することとしており、既に、医療と介護等が連携して高齢者の地域での生活を支えるネットワークづくりや、多様な支援策による介護基盤整備などに取り組んでおります。
なお、高齢者への経済支援等の所得保障は経済政策や社会政策の課題であり、負担と給付のバランスをいかにとるかという問題として、基本的に国の責任で対応すべきものであります。
次に、高齢者の医療費についてでありますが、国において、今後、高齢者医療制度について議論が行われると認識をしており、都として、新たな医療費助成制度を創設する考えはございません。
次いで、低所得者が利用できる住まい等についてでありますが、少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」実現プロジェクトチームでは、低所得者だけでなく、高齢者が適正な負担で入居できるケアつき住まいや、地域全体に安全と安心を提供する仕組みの検討を行っております。
事業の詳細につきましては、今後さらに検討を進めていくこととしております。
次に、介護保険施設などの整備目標と整備の促進についてでありますが、都は、介護保険の保険者である区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、計画的な基盤整備に努めております。
また、整備に当たりましては、平成二十年度から、高齢者人口に比べ整備状況が十分でない地域の補助単価を最高一・五倍に加算するなど、多様な手法を活用しながら着実な介護基盤の整備に努めております。
なお、お話の厚生労働省の発表で、都における介護保険施設などの整備の達成率が四四%であることについては、第三期計画期間である三年間だけの数字であり、累積で申し上げれば、例えば、特別養護老人ホームでは、利用者見込み数に対し、達成率は約九五%となっております。
次いで、特別養護老人ホームの用地取得助成事業等についてでありますが、たび重ねて答弁しているとおり、国の規制緩和や定期借地権制度の導入、さらには融資制度の充実など、状況が大きく変化をいたしました。
こうしたことから、本事業については、平成二十年度着工分をもって終了しており、復活することは考えておりません。
また、介護人材の確保等については、既に本年度、特別養護老人ホームなどの施設を対象として、求人、採用活動経費や職員の資格取得経費などについても補助を実施しております。
最後に、認可保育所の増設計画についてでありますが、待機児童の解消に向けて、認可保育所だけでなく、大都市東京に合った保育サービスを提供する認証保育所や認定こども園などを整備する保育サービス拡充緊急三カ年事業に取り組んでおりますが、今年度の整備目標を当初計画の一・五倍の八千人に引き上げることといたしました。
平成二十二年度以降の整備計画につきましては、今年度策定する次世代育成支援後期行動計画の中で定めてまいります。
〇知事本局長 少子化対策についてでありますが、現在、少子化打破・緊急対策本部において、関係各局が連携いたしまして、子育てに必要な保育、医療、教育、住宅、雇用など、各分野ごとに現状やニーズを分析しながら、新たな少子化対策の立案作業を進めております。
今後、こうした作業を積み重ね、国を先導する重層的、複合的な施策を構築いたしまして、年内に策定する「十年後の東京」への実行プログラム二○一○や、来年度予算案に反映させてまいります。
〇生活文化スポーツ局長 二点のご質問にお答えいたします。
まず、教育費の負担軽減についてでございますが、私立高校におきましては、保護者の経済的負担の軽減を図るため、学校への基幹的補助である経常費補助を通して授業料の抑制を図りますとともに、平均的な所得以下の保護者を対象に、所得状況に応じて返済が不要の特別奨学金制度を実施しております。
また、経済的理由により修学が困難な高校生に対して育英資金を貸与するなど、都として幅広い修学支援策を実施しているところでございます。
教育費の負担軽減につきましては、さまざまなご主張、政策が述べられておりますが、いまだ国の制度変更の内容が明らかになっておらず、また、現行制度との整合性を初め、さまざまな課題もございますことから、今後、国の動向を注視しながら、適切に対応してまいります。
次に、給付制の奨学金制度についてでございますが、私立高校におきましては、経常費補助、特別奨学金、育英資金により、保護者の経済的負担を軽減しております。
いずれにいたしましても、給付制の奨学金制度につきましては、教育費負担軽減のための対策でありますことから、先ほどご答弁申し上げたとおり、いまだ国の制度変更の内容が明らかになっておらず、また、さまざまな課題もあることから、今後、国の動向を注視しながら適切に対応してまいります。
〇病院経営本部長 二点のご質問にお答えいたします。
まず、新型インフルエンザの流行と小児病院の移転統合についてでありますが、現在の新型インフルエンザ対策は、感染者は原則自宅療養とし、重症者のみ入院対応とすることを基本に、都内のおのおのの医療機関において、一般診療として実施することとなっております。
小児病院が移転する地域においては、小児医療体制の整備を着実に進めてきておりますことから、小児病院移転前後を通じて、新型インフルエンザに関しても、他の地域と同様に対応できると考えております。
次に、都立の小児三病院の存続についてでありますが、医療人材の不足など、今日の危機的ともいえる厳しい医療環境において、小児医療サービスの向上を図るためには、限られた医療資源を最大限に有効活用することが不可欠であります。
こうした考えに基づき、小児病院を移転統合して、小児総合医療センターを整備し、周産期医療や小児救急医療等の一層の充実を図ることとしております。
また、小児病院が転出する地域における小児医療体制については、八王子の二つの大学病院に小児病床を新たに十二床確保できる見通しとなったことなど、種々の条件整備が着実に整いつつあります。
今後とも、新センターの開設に向け、これまでの方針どおり、取り組みを進めてまいります。
〇都市整備局長 八ッ場ダムについてでございますが、国と利根川流域の一都五県におきましては、今日まで、地元の意向を最大限に尊重しながら、法律に基づく手続を積み重ね、事業を推進してまいりました。
ダムの恩恵を受ける関係都県はもとより、水没地の関係住民も一致団結して、ダムの一日も早い完成とダムをつくった上での生活再建を切望しております。 八ッ場ダムが治水、利水の両面から都にとって必要不可欠な施設であることは、これまでも再三申し上げておるわけでございまして、建設中止などということは全く考えておりません。
なお、建設費負担金は、ダムの完成により施設の効果が発揮されることを前提に支出しております。仮に事業が中止されるような場合、都民に損害を与えないよう、国に納付額の返還を請求することは至極当然のことでございます。
〇産業労働局長 三点のご質問にお答えいたします。
まず、新銀行東京の第一・四半期決算についてでありますが、新しい経営陣のもと、新銀行東京は再建に向け積極的な取り組みを行っております。
厳しい経済環境下で、さきの四半期決算で開業以来初の黒字に導くことができたことは、こうした努力の結果であり、正当に評価すべきであります。
例えば今回の黒字は、融資の減少による貸倒引当金の戻りにすぎないとのお話でありましたが、これは新銀行東京が取引先へのきめ細かな対応により延滞の防止などを図ったことによるものでございます。
また、日銀借り入れは、国の金融政策の一環として行われており、多くの銀行が活用しているものでございます。
銀行の経営につきましては、個別の要素のみを拾い上げるのではなく、決算として総合的に判断すべきものであります。
続いて、新銀行東京に関する新たな検討の場についてでありますが、先ほど知事が答弁されましたとおり、金融機関の信用にかかわる問題であり、偏った一方的な見方で銀行の今後について具体的な手法に及ぶ主張は不適切であると考えます。
新銀行東京は、新たな経営陣のもとで経営再建に向け着実に取り組みを進めています。また、銀行の監督は国の専管事項であり、都が第三者による検討の場を設ける考えはございません。
最後に、東京都と地域の金融機関とが連携して実施する金融支援に関する条例についてでありますが、本条例に基づく新たな融資制度は、現下の厳しい経済状況のもと、都と地域の金融機関とが連携して、資金繰りに苦しむ中小零細企業を支援することを目的にしたものでございます。いかなる金融機関に対しても、経営そのものの支援を意図するものではありませんし、本条例に大問題があるとのご指摘は全く当たらないと考えます。
なお、制度の実施に当たっては、融資要綱により具体的な融資対象の要件や融資条件などを定めますが、これは条例の規定を踏まえ、執行機関の責任で策定するものでございます。
〇中央卸売市場長 二点のご質問にお答えいたします。
まず、現地再整備を不可能とする根拠についてであります。
築地で再整備を行う場合には、工事を行うための作業スペース、工事用搬入路、仮設建物のスペースとして一定規模以上の種地が必要でございます。
しかし、築地市場は既に敷地の九四%が施設や構内通路などに利用されており、残りの六%の敷地も場内に分散しており、工事に必要なまとまった広さの種地を確保することができません。
このため、現在の建設技術を活用し、つり上げ式の人工地盤方式など、さまざまな工法を採用したとしても、実際に工事を進めることが難しく、また、築地では地下に多くの構造物が存在しているため、地下空間を利用することも困難であります。
かつて、ローリング方式で現在地再整備を行おうとしましたが、工事用の種地が十分確保できず、営業への深刻な影響が懸念されたため、本体工事に着手する段階で中断した経緯があります。
また、既存の建物に影響を与えずに工事を行うことができない以上、アスベストはその都度適切に処理しなければなりません。
さらに、財政面におきましても、跡地の売却収入を見込めないことから、中央卸売市場の保有する資金では再整備に要する事業費を賄えないと考えます。
これらの事実から、現在地では具体的な実現性のある再整備計画を作成することは不可能であります。
次に、現在地再整備の検討についてであります。
現在地再整備は、いずれの工法でも必要な種地が確保できないこと、営業を続けながらの長期にわたる工事が市場業者の経営に深刻な影響を及ぼすこと、事業費の不足に対する補てん財源が見込めないことなどから、現実的に不可能であります。
既に築地市場は老朽化、狭隘化が深刻であり、地震時の耐震性やアスベストなど安全性の面からも早急に豊洲地区への移転が必要であります。
新市場予定地の土壌汚染につきましては、環境、土木など各分野の最高権威の学者の方々で構成される技術会議から、科学的知見に基づきあらゆる角度から詳細に検討した信頼性の高い対策が提言されております。
都といたしましては、万全な土壌汚染対策を確実に実施することで安全を確保し、豊洲新市場の整備を進めていくことが重要であると考えております。
3点、知事に再質問します。
まず、少人数学級の問題です。
私は、わが党だけでなく、総選挙で民主党が「少人数学級を推進します」と公約し、自民党も公約したことをあげ、そこに示された民意をどう受け止めているのか、政治家たる知事の答弁を求めたのです。
教育長が「国の動向を注視しつつ、適切に判断する」と答えたことは重要ですが、本日の毎日新聞には、日本PTA全国協議会など23団体による「少人数学級の実現を」という全面広告が掲載されています。少人数学級へ、おしとどめることのできない流れが、ひろがっているのです。
石原知事は、この国民的総意を受け止め、国とも協議するなど、民意にこたえるべきです。知事の答弁を求めます。
次に新銀行東京問題について、2点質問します。
第1に、知事は、「ノー」の「審判がおこなわれたもの」ではないと強弁しました。とんでもないねじ曲げです。都議選の世論調査では、「清算する方がよい」とする人が71%をしめたのです。その結果、新銀行東京に反対する会派の議員が過半数を占めたということが厳然たる事実です。知事は潔く(いさぎよく)都民の審判に従うべきです。知事、どうですか。
第2に、わが党が「清算」の方向を検討するよう求めることこそ、民意にかなったものです。それを「乱暴」と決めつけることこそ、都民の意見には、聞く耳をもたないという、きわめて乱暴なものです。わが党は、現に融資をうけている中小企業対策もふくめ、具体的な対案を示したのです。知事の明確な答弁を求めます。
〇知事 再質問にお答えいたします。
少人数学級についてでありますが、お尋ねの件は、都教育委員会が専門的かつ総合的な見地に立って判断すべきものであると思います。
それから、都民の要するに認識、どれほど専門性、どれほど銀行の実態に精通して下されたのか、私は非常にその点では不審です。これは、イエスかノーかといえば、それはあなた方がいろいろなものを言動されて、非常に都民の認識も偏ったものになりかねない。私は、その数値云々によってこの大事な問題を決するつもりはございません。
それから、あなた方がおっしゃった具体的な案というものは、私、全く非現実的でありまして、これをもたらせば、非常に銀行そのものが不幸なことになると思います。
以上