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二〇一〇年第三回定例会 築地市場特別委員会の閉会中の継続調査に関する討論 一〇月七日

清水ひで子(八王子市選出)

 日本共産党都議団を代表して、東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会の閉会中の継続調査に賛成の立場から討論を行います。

 築地市場の再整備問題を考える場合、何よりも重要なことは、特別委員会において、どの立場からの参考人の方々も強調されたように、食の安心・安全を確保するということです。その点で、豊洲新市場計画については、致命的ともいうべき重大な問題があります。
 そもそも豊洲新市場予定地は有害物質で汚染されたガス工場跡地であり、食の安心・安全を確保すべき市場用地に選定すること自体、おこなうべきではなかったのです。しかも、都の汚染対策なるものも、調査もしないで、有楽町層より深い部分は汚染されていないと断定したり、地下水の流れなどの解明もせずに地下水の管理ができるとするなど、重要な点で科学的裏づけをもたないものであったため、専門家から「絵にかいたもち」と酷評されてきたものです。

 そして、今議会における本会議及び特別委員会における質疑を通して、都が汚染対策の有効性を確認するためと言っておこなった適用実験も、実は重大な瑕疵があることがうきぼりになりました。

 第一に、なによりも高濃度汚染処理の実験はおこなわれず、基本的には低濃度汚染処理実験がおこなわれたにすぎませんでした。たとえば、三月の「中間報告」で、ベンゼン四万三千倍の土壌が環境基準以下になったかのように発表していた実験は、二・七倍という低濃度の土壌を処理した実験にすぎなかったのです。実際、わが党の追及に対し都は「四万三千倍のベンゼンが検出された区画」とか、「四万三千倍の含まれている土地」とごまかすだけで、「四万三千倍のベンゼンを含む土壌を処理した」とは言えませんでした。だからこそ都は、二〇万倍の土壌を人工的につくって追加実験せざるをえなかったわけです。しかし、その実験も、実は一度処理されたきれいな土壌にベンゼンをふりかけて室内で実験したものにすぎず、適用実験の名に値するものではありませんでした。

 第二に、ベンゼンの地下水実験も当初は、環境基準以下の水を環境基準以下にしただけでした。このため、追加実験をやらざるをえませんでしたが、これまた三九倍の濃度にすぎず当初計画していた五二〇倍の高濃度汚染処理実験はやらなかった、つまり、地下水も実験の目的を果たしていなかったのです。

 第三に、一〇月三日の特別委員会で私が取り上げた、汚染対策を行う土の約五〇%を占める洗浄処理実験です。適用実験報告書によれば、一m3のベンゼン汚染土壌に一時間当たり一〇〇トン〜二〇〇トンの水を使い洗浄したと書いています。このことを特別委員会で確認したところ、都は「そのとおり」と答弁しました。しかし、私が実験を行った企業を訪れ、話をうかがったところ、一般的に言えばという前提でしたが「一m3に一〇〇トンの水を使うということは、うつわに砂糖五グラムいれて水一リットル入れるようなもの。一m3の土壌に使用する水はせいぜい数トン程度、試験プラントでも実際のプラントでも一〇〇トンなど使用するはずがない、コスト的にもあわない」との話でした。明らかに報告書や答弁と食い違うものです。しかも、この企業は、ベンゼンを洗浄処理するプラントは技術的にできず、許可がとれないと言っているのです。実験には、このような重大な疑惑、ごまかしがあることが次々に明らかになっているのです。

 このほか、盛土の汚染問題にも、質さなければならない問題が数多くあり、議論はつくされていません。
 加えて、豊洲の新市場予定地は中高濃度の局所的汚染が広範囲に存在していることが特徴であり、百平方メートルに一か所ごくわずかな土を調べるという程度では汚染の全容をつかみきれません。だからこそ、これまでもきれいなはずの土壌が実は汚染されていたことが何度となく明らかになり、実験の中でも新たな中高濃度の汚染が発見されているのです。つまり、都が不十分な調査にもとづいて汚染していると認めた土壌だけ処理するのでは安全が確保されない。これが豊洲新市場予定地の真実ではありませんか。
 以上の立場から、わが党は、行政をチェックすべき都議会として、引き続きこの適用実験問題などについて徹底した審査をすべきことを厳しく指摘するものです。

 もともと、都が土壌汚染対策の有効性の根拠としてきたものも、一部の特定の「権威ある専門家」と称する人たちの意見を楯にしたものにすぎません。しかし、この中には土壌汚染対策の専門家は、ほとんどいないではありませんか。その「専門家」たちが、技術会議の報告書をまとめるにあたって「気がしております」「恐らく」「思います」などあいまいな意見で実験の有効性を確認したのです。科学的な検証とはほど遠く、ただただ「豊洲移転ありき」というものでしかありませんでした。

 土壌汚染対策に、これほどの問題があるにもかかわらず、自民党、公明党は、豊洲新市場予定地の土地購入の執行を主張、民主党も土壌汚染対策工事の実施設計費、建築工事の基本設計費など二〇億余円の執行を前にすすめることを表明したことは、都民の願いにそむくものです。

 今、都と都議会が、おこなうべきことは、豊洲移転の強行ではなく、より良い現在地再整備計画案を早急につくることです。築地での現在地再整備については、三月の経済港湾委員会の参考人質疑でも、豊洲移転推進の業界の方々も「今までの伝統ある築地で再整備したい気持ちはだれももっている」とその思いを訴えていました。よりよい計画ができるなら必ず全体の合意が得られると確信します。

 知事や自民党、公明党は、現在の築地市場の老朽化をあげて、現在地再整備をすすめる時間がないと言っていますが、新市場の整備を待たずとも、現在の築地の安全・安心を保障し、支障ない営業を確保するのは都の責務です。市場内の清潔なトイレの整備、雨漏り対策、鉄枠、コンクリートの落下防止、民間部分のアスベスト対策などは、直ちにやればよいではありませんか。

 特別委員会に提案され審議してきた現在地再整備案は、石原都政の市場整備の考え方を基本につくられた豊洲新市場計画の内容と同等であることを前提としているため、弱点、欠陥があります。それを補強し、前にすすめることこそ急ぐべきです。
 わが党はより良い現在地再整備案をつくる上で、三つの課題を解決する必要があることを主張してきました。
 第一に首都圏の拠点市場、大型量販店対応型整備など過大な施設計画ではなく、適正なものに正すこと、そのことによって業者負担も軽減できます。
 第二に整備費は、都の負担でまかなうことです。かつての現在地再整備計画では、建設費は民間に負担を負わせないものだったではありませんか。ところが都は、今回の案では、全面仮移転の場合七〇〇億円をこえる部分を民間に負担させることになると説明しています。これでは業者の合意は困難です。
 第三に仮移転を行う場合の費用についても都が負担することや、魚と青果を分離させるような仮移転をさけるため、市場の上部に人工地盤をつくることなどの改善も検討する必要があります。これらのことは、オリンピック基金の一部を使うことでできることを改めて強調しておきます。
 築地市場の整備は都民の食の安心・安全、食育の推進にかかわる重要問題であり、都内最大の観光スポットであること、などを考えれば市場会計だけでなく、オール都庁で取り組む一大プロジェクトです。財源は一般会計からも出す必要があるのです。

 意向調査についてですが、わが党が二〇〇七年一一月の国会で、市場の再整備計画について、関係者との合意問題についてただしたところ、関係者の理解などをうることが重要であると当時の総理大臣が答弁しています。土壌汚染問題が発覚してから、都による業者の意向調査は行われていません。都がより良い現在地再整備案をすみやかにつくり、現在地再整備がよいのか、豊洲移転ですすめるのがよいのか、業者全体の意向調査をすることが必要です。
 自民党や公明党は、「ここで結論をだして豊洲整備をすすめることがどうしても必要で、これ以上遅らせたら、議会の責任が問われる」などと、はきちがえた責任論を繰り返しのべています。しかし、問われるべきは、都が汚染にまみれた豊洲にしがみつき、ここまで問題を長引かせ、都民の信頼を損ねる対応を繰り返していることにあります。

 以上の立場から、特別委員会における調査を継続し、すみやかに問題を解決すべきことを申し述べ討論とします。

以上