過去のページ

二〇一二年都議会第三回定例会 代表質問 九月二五日

大島よしえ(足立区選出)

 

一、都民福祉の充実について
二、若者の雇用対策について
三、経済政策・産業対策について
四、財政運営について
五、防災対策について
【再質問】

答弁
石原知事
教育長
東京都技監
福祉保健局長
産業労働局長
財務局長
都市整備局長
総務局長
【再質問答弁】

 

一、都民福祉の充実について

 日本共産党都議団を代表して質問します。
 雇用の破壊や社会保障の改悪による、国民・都民の困難は、ますます深まり、広がっています。いま都政に求められているのは、何よりも都民の深刻な痛みの現実をつかみ、都民のくらしを守ることです。ところが知事の所信表明では、この問題への言及はありませんでした。知事の地方自治体の長としての姿勢が根本から問われています。

@ 都の調査によると、高齢者の約4人に1人は年間100万円に満たない収入しかありません。また国民生活基礎調査によれば、高齢者世帯の1割以上は「貯蓄がない」と答えています。東京の高齢者の国民年金受給額は、平均でも月額わずか5万8千円です。しかも頼みの綱の年金はさらに引き下げられ、消費税増税もまちうけています。
 今年度は、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料のトリプル値上げもおしよせました。後期高齢者医療保険料は平均9%、介護保険料は23%、国保料は23区では十年連続の値上げです。私たちの調査では、通知が届き始めた直後から都内自治体の窓口に、少なくとも12万件を超える疑問や苦情が寄せられました。8月末に都内で実施された「国保・医療何でも相談会」では、6本の電話が鳴りっぱなしでした。「保険料が払えない。国保料6000円、介護保険料は夫婦合わせて9840円、後期高齢者医療保険料は月額2万円。医療費も毎月約2万円かかる。とても生活できない」など、深刻な相談が相次ぎました。
 このような深刻な現状にある高齢者、都民がたくさんいることを、知事はどう認識しているのですか。

 知事は、少子高齢化を理由に、「『高福祉・低負担』は到底成り立ち得ない幻想」だと言い張っています。これは、福祉の増進という地方自治体の本旨を投げすてた、自らの特異な立場をごまかすための空理空論です。
A 2009年のインターネット調査では、3万3千人の回答者のうち約半数の方が、今の日本の実感を「低福祉・高負担」だと答えています。日本医師会のアンケート調査では、医療費の支払いが負担だと答えた人が、3割負担の人では67%に達しています。そして12%の人が、実際に過去1年以内に、経済的理由で受診しなかったことがあると答えています。知事、このような調査結果を、どう受け止めますか。いまこそ、こうした国民、都民の意見、福祉の実態を直視すべきではありませんか。そして、住民を守るべき地方自治体として、「低福祉・高負担」に苦しむ都民への支援と福祉の充実に、全力をつくす必要があります。いかがですか。

B 都は、国保財政安定化支援方針で、国民健康保険は他の社会保険と比べて、1人当たりの収入は少ないのに医療費は大きいから、保険料で賄うことは非常に困難であるという認識を示しています。にもかかわらず指導助言だと言って、各保険者が給付に見合った保険料率となっているか検証を行うことを強調しています。つまり、医療費に見合った保険料に値上げしていきなさいということです。だからこそ国保料値上げがつづき、都内で68万世帯が滞納せざるを得ない事態になっているのです。都民の生活実態から見れば、これ以上の国保料の引き上げは困難な状況にあることを、どう考えているのですか。都としてやるべきは、値上げへの指導ではありません。区市町村国保料・国保税の負担軽減のための支援にこそふみだすべきです。見解を伺います。
 23区の国保料は、来年度は負担増を抑える経過措置がなくなり、このままでは、さらに大幅値上げとなります。夫婦2人で年金収入200万円だと、現在は年間約7万4千円の保険料ですが、経過措置がなくなれば10万4千円にはねあがります。少なくとも来年度以降も経過措置を継続できるよう、都の財政支援が必要です。

C 後期高齢者医療をめぐる実態も深刻です。保険料の滞納件数は集計可能な21区26市の合計で約5万4千件にも達し、老人保健法では禁止されていた有効期限が短い短期保険証の発行は、このわずか半年間で、それまでの3倍の1163件に上っています。この事態をどう認識していますか。国や区市町村、広域連合の問題だと言って、手をこまねくのではなく、都として必要な財政支援をして、困っている高齢者の負担を軽減することを求めます。お答え下さい。

D 予防対策も重要です。人間ドックは、がんや生活習慣病などの早期発見や予防に効果があります。このため、都内で16区市町村が受診料助成を実施しています。人間ドックの重要性をどう認識していますか。都内どこに住んでいても補助が受けられるようにするために、都として支援することを提案するものです。

E 高齢者が積極的に外出することは、健康づくりの基本です。高齢者が安心して町に出て行動ができるよう、シルバーパスの費用負担を軽減し、三千円、五千円などのパスを新設するとともに、多摩モノレールおよび東京メトロへの適用を検討するよう求めます。見解を伺います。

二、若者の雇用対策について

深刻化する若者の雇用についても、国や企業まかせにせず、都が思い切った対策をすすめるべきです。
@ 東京では、15歳〜24歳の失業率が7・5%という高い水準です。非正規雇用は雇用者の2人に1人に達し、その約8割は年収150万円未満です。非正規の若者の多くは、正規の仕事に就こうと思っても、ぬけだせない現状がひろがっています。知事、意欲ある若者が仕事につくこともできず、生活もままならない実態があること、そして、その要因をどう認識しますか。社会の基盤を崩壊させかねない重大な問題ではありませんか。

A 若者雇用の現状を、大企業のシンクタンクも深刻に受けとめています。三菱総研の主任研究員がNHKとチームを組んでまとめた本の中で、「日本経済の立て直しには、積極的雇用政策と子育て支援が大きな柱になる」ことを提言しています。正規社員も所得に不安を抱え、解雇通知に怯えていることを指摘し、このままでは20年後には失業率は10%を優に超え、780万人に達すると予測しています。団塊ジュニア世代へのアンケート調査では、20年後のこの世代の姿は、賃金カットと負担増に苦しみ、転職を繰り返し、定職につけず、結婚もできないものだったと言います。同書では、この要因として、経済不況などのほか、雇用のセーフティネットの崩壊をあげています。そして、非正規社員を技術力・知識力をアップさせて正規社員として採用する、所得水準を改善することが日本経済にとって非常に大きな課題で、企業の社会的責任だと指摘しています。知事、都としてもこうした立場で国や大企業に進言し、自らも取り組むべきではないですか。

B OECD各国も、若者の雇用対策に力を入れています。イギリスでは「地域雇用パートナーシップ」を通じて、3年間で若者をはじめ25万人以上を就職させています。職業訓練機能と求人をセットにし、求職の開拓、掘り起こしを行い、面接までスタッフが付き添いアドバイスするなどの手厚い支援を無料で行っているのです。このような成功例に学び、きめ細かな若者雇用の対策を都としても実施することが必要です。

C また、高校卒業者などを対象とした、1〜2年間の無料低額の職業訓練カレッジを創設することや、職業訓練校の統廃合をやめて拡充することなど、若者の職業教育、職業訓練を抜本的に強化することを求めるものです。いかがですか。

三、経済政策・産業対策について

@ 知事の経済政策には、重大な問題があります。それは、欧米の多国籍企業をよびこむことを最重点にしていることです。たとえ多国籍企業のよびこみがうまくいったとしても、経済はよくなりません。これまで内外の多くの多国籍企業は、国内の生産ラインを縮小し、雇用を破壊してきたではありませんか。そして、利益があがれば株主配当や経営者への報酬を引き上げ、巨額の内部留保をためこみ、金融投機を行ってきました。違いますか。いま都がやるべきは、落ち込んだ都民の購買力を引き上げることや、都内事業者の9割をしめる中小企業を活性化することです。知事の見解を伺います。

A EUは、2000年に「小企業はヨーロッパ経済の背骨である。」という「小企業憲章」を制定し、取り組みを進めています。イタリア、フランス、ドイツでは、職人企業、マイスター制度で技術熟練を残し、ワインや雑貨がグローバルで評価され、イタリアの高級車フェラーリ―のエンジンは全部手づくりの鋳物で作られています。
 これに対し、東京の中小企業はフルセット型といわれ、つくれないのは原料ぐらいと言われてきましたが、大企業の国内生産ラインの縮小などもあり、国や都が見るべき対策をとってこなかったため、それを維持できなくなっています。加工しにくい材料や複雑な加工などは、熟練した職人による手先の技術の正確さは、コンピューターをも上回ります。こうしたものづくり技術は、小零細企業に蓄積されてきました。その熟練技術がいま日本、東京で枯渇するような事態になろうとしているのです。知事、いまこそ、東京のものづくり技術を守り発展させるために、都の総力をあげるべきですが、いかがですか。

B 都が実施している技術支援の事業は、きわめて不十分です。群馬県などがふみだしたように、ベテラン人材を「ものづくりインストラクター」として養成し、経営、生産管理、技術の継承・発展など、地域の中小企業の要望に応じて数多く派遣することが求められますが、お答え下さい。

C いま、再生可能エネルギー産業の発展にむけ、東京の中小企業の技術力を生かして取り組み、地域の特性などに見合った多様な製品を開発し、販売できるようにすることが重要です。雇用効果も大きなものがあります。都はこの問題に取り組んでいますが、助成期間は短く、予算も数億円にすぎません。これでは、新たな産業をおこすことにはつながりません。再生可能エネルギー産業育成の予算を抜本的に増やし、中・長期の展望をもった計画をつくるべきです。

D そのためにも、地域ごとに、どのような製造業種が残っているのか把握する全面的な悉皆調査を、都内の大学・学生などとも協力してただちに行い、分析しデータ化することを求めるものです。

E なかでも風力発電は、部品を一万点以上必要とし、製品の多くが精密な回転部分を持つ機械製品です。まさに東京の強みを発揮でき、得意とする分野です。都内中小企業の新たな産業の中心にもなりうる分野です。都はようやく、風力発電を「ものづくり技術が大いに発揮される分野」として位置づけましたが、取り組み始めた段階にすぎません。位置づけを高めて、対策のテンポを抜本的に引き上げることが必要です。見解を伺います。

四、財政運営について

@ 都税収入が減っているとはいえ、都の予算は全会計でおよそ12兆円におよびます。オリンピック開催準備基金4100億円などもあります。浪費を削り、こうした財源をうまく使えば、重大な困難に直面している都民生活を守る財源は十分あります。いかがですか。
石原知事は、国際競争力を口実にし、新たに防災対策という看板まで加えて、民主党政府といっしょに、ゼネコン型大型開発など浪費的投資を進めています。

A 大型開発の最重点とされているのが、外かく環状道路です。練馬〜世田谷間、約16キロメートルの建設着工式が先日行われました。地上部道路「外環の2」も、住民との間で話し合いの最中なのに、大泉ジャンクション地域の1キロメートルのみ先行して事業認可をとり、用地補償費50億円、工事費20億円を投入します。現場を見るという知事の約束はどうなったのですか。約束さえ破り捨てて、ごり押しする。このような乱暴なやり方は許されません。大型道路をつくれば自動車交通を誘発していたちごっこになり、東京一極集中も加速します。しかも地下本線と地上部をいれると総額約2兆円、1メートル1億円以上もかかります。これだけのお金を福祉・くらし、中小企業支援に投入すれば、一石二鳥三鳥の経済効果があるのです。外環道建設は中止し、お金の使い方を改めるべきです。知事いかがですか。 
 知事の海外出張のムダづかいにも言及しないわけにはいきません。石原知事就任以来の海外出張経費は実に5億円に迫るものであり、2009年度1年間だけで、1億3000万円も使っているのです。その一方で、暮らしにかかわる都民の要求はないがしろにされています。

B 視覚障害者にとって、貴重な学びの場となっている1回わずか3万円の「視覚障害者教養講座」の回数が、年間12回から11回に削られました。熱中症対策として、生活保護を受けている高齢者へのエアコン購入設置費1台4万円の補助が昨年実施されましたが、今年度は打ち切ってしまいました。昨年の実績は364世帯、1440万円です。こんなわずかな予算で喜ばれ、当事者にとっては切実な予算を削ることは許されません。これらの事業を拡充、再開すべきですが、見解を伺います。

五、防災対策について

 つぎに、緊急課題となっている防災対策について質します。地域防災計画修正素案は、部分的な前進面もありますが、全体的としてきわめて不十分かつ重大な問題があり、抜本的な見直し拡充を求めるものです。
@ 修正素案は、ひきつづき基本理念として「まず第1に『自らの生命は自らが守る』という自己責任原則」だ、と強調しています。災害対策基本法では、都道府県の責務として、住民の生命、身体及び財産を災害から保護することを明記し、そのために防災に関する計画を作成し実施する「責務を有する」と規定する一方、住民にたいしては「防災に寄与するように努めなければならない」とするにとどめているのです。当然、災害から都民の生命、身体そして財産を守るための都の責務を第1義的に位置づけられるべきです。あえてそうしなかったのは、都民に主たる責任をおしつけようとしているとしか考えられません。知事、いかがですか。

A 修正素案が、強風下における広域火災による延焼被害や、東京湾に立地する5000基をこえる石油タンクなどの火災被害、立川断層帯地震にともなう地盤変動による建築物や鉄道などの被害について、対策を示していないことも大問題です。都は、考えられるすべての問題で、最大の被害を想定した減災目標をつくり、総力をあげて予防対策に取り組むべきです。また、その裏づけとなる実施計画を、すべての事業について明確にして取り組むことが求められています。

B 東部低地帯に300万人、海抜ゼロメートル地帯に150万人が住む東京では、堤防、水門などの強化対策は都民の生命、財産を守るうえで最重要課題です。都が調査した結果、わが党が指摘してきたように、耐震化ずみのはずの堤防の調査地点の4割で破損の危険性があること、調査した16カ所の水門すべての門柱が損傷し、閉まらない危険性があることなどが明らかになりました。これまでこの状態で放置してきた責任は重大です。
 津波による浸水は、20センチでも人は歩けなくなり、車も走れなくなります。また、自動車火災がひろがることも指摘されています。知事は最大級の地震、津波から守る取り組みを進めると発言しましたが、それなら堤防・水門は破損しないという誤った前提での被害想定を抜本的にやり直し、大雨や高潮などの複合災害を含めた対策を進めるべきですが、お答え下さい。

C 木造住宅密集地域対策について、知事は不燃化特区の先行実施とともに、延焼遮断帯の形成のために特別の対策を講じると強調しました。しかし多くの計画は、防災の名で未整備の都道を一気に通そうとするものです。たとえば、北区の補助81号線は、計画路線と並行してすでに新たに道路が整備されているなど、延焼遮断帯はできているのです。しかもこの計画は、鎌倉期から室町期に創建されたといわれる無量寺の本堂と、300種2000本の樹木がある貴重な庭園、墓地を破壊するものです。再検討すべきです。見解を伺います。

D わが党は、延焼遮断帯を否定するものではありません。しかし都が示している延焼遮断帯のうち、区域内面積100ヘクタールという一番小さな一般延焼遮断帯の内側でも、阪神淡路大震災の全焼失面積を上回るほどの大きさです。延焼遮断帯は、その内側の延焼を防ぐものではないのです。この問題を、都はどう考えているのですか。木造住宅密集地域の安全化対策で緊急に必要なことは、地域内の住宅耐震化、不燃化のための支援を抜本的に強化することです。都はこれらの助成を大幅に拡充し、少なくとも木造住宅密集地域全域に拡大すべきです。部分的な不燃化・難燃化への助成も検討すべきです。

E また、延焼遮断帯整備などのため立ち退きが必要な場合でも、住民の理解と納得をえて進めるべきです。そのためにも、同じ広さの住宅に住めるようにすること、共同建替えへの技術的、財政的支援の拡充など、きめ細かい支援の強化が必要です。答弁を求めます。

 最後に、いま都政は、都民生活の現状と福祉のあり方から見ても、防災対策や経済対策のあり方から見ても、地方自治体本来の姿に立ち返ることが痛切に求められていることを申し述べ、再質問を留保して質問を終わります。

以上

〇石原知事 大島よしえ議員の代表質問にお答えします。
 まず、都民生活に対する認識についてでありますが、るる年金や保険料などのお話がありましたが、高齢者の生活実態はさまざまであります。
 一方で、急激な高齢化が進むこの国で、年金や医療、介護にかかる費用が増大することは自明の理でもあります。
 ゆえにも、給付と負担のバランスを顧みない高福祉低負担という社会保障制度は、到底今後は成り立ち得ません。
 にもかかわらず、共産党は相変わらず、ばらまき福祉を主張しておりますな。財源となる消費税には反対する一方で、行政への過剰な期待をかき立て、国民に幻想を振りまくのは無責任としかいいようがない。
 今なすべきは、少子高齢社会におけるあるべき国家の姿を国民に指し示し、確固たる意思で新たな社会保障のありようを形づくっていくことであります。
 こうした考え方は、これまでの都議会における議論の中で再三にわたって申しております。

 次いで、非正規で雇用された若者についてでありますが、近年進んだ働き方の多様化によって、労働者が柔軟に働き方を選択できるようになった反面、企業が人件費の抑制や雇用調整の手段として、非正規労働者を積極的に活用した面もあります。さらに、国が労働者派遣事業の規制緩和を進めたことがこれに拍車をかけました。
 こうした状況の中で、正規雇用を望みながらも、やむなく非正規で雇用された若者たちは、十分な技術を体得することもできずに不安定な就労を続けておりまして、この現状は、本人にとっても社会にとっても不幸な事態であると思います。
 この問題を本質的に解決するためには、国が実効性のある経済対策を進め、雇用を拡大していくことが不可欠でありますが、残念ながら国は有効な対策を打ち出しておりません。
 都はこれまで、国に先駆けて、都独自に生活費の支給と一体となった低所得者向けの職業訓練を実施するとともに、雇用の創出や就職支援の強化など、切れ目のないさまざまな雇用対策を講じてきました。
 今後とも、必要な施策を多角的に実施してまいります。

 次いで、外国企業の誘致と都内中小企業についてでありますが、世界が時間的、空間的に狭小なものとなって、国際化という言葉自体が陳腐になりつつある現代で、当然のことながら、企業活動は一国にとどまるものではありません。
 グローバル化の時代を勝ち抜いていくには、海外から人、物、金を呼び込んで、それを活用しながら、国や企業の発展につなげていくことが極めて重要であります。
 外国企業も含めた企業間の取引を通じて経済というものは成り立ち、発展していくのでありまして、すぐれた技術を持つ日本の中小企業も例外ではありません。
 東京には、世界的な競争力を持ち、我が国産業の活力の源泉である中小企業が数多く集積しておりまして、日本経済を支えて雇用の機会を提供しております。
 国が効果的な成長戦略を示さない中、都は中小企業の経営支援を行うとともに、新たな取引先の確保や新事業の創出のほか、制度融資の拡充などさまざまな支援をしてまいりました。
 今後とも、誘致した外国企業との連携策を講じることを含めて、中小企業の活性化に資する取り組みを行って、東京の経済の発展を図ってまいります。
 最後に申しますが、今の質問を聞いておりますと、外国企業を一方的に批判しているように聞こえますけれども、外国の会社も東京の中小企業にとっては大事な取引先でありまして、懸命に顧客開拓に取り組む中小企業の足を引っ張るような発言は当たっていないと思います。

 次いで、防災対策における都と都民の責任についてでありますけれども、何度も申し上げてもご理解いただけないようでありますが、いざというときは、まずみずからの身を守り、身近な者同士で助け合うことが、一人でも多くの命を救うことになるのは、紛れもない事実であります。
 阪神・淡路大震災を経験されたある語り部の方は、減災は一人一人の心の中で育つもので、お互いを助け合うことによって被害を少なくできると語っておられて、また、東日本大震災では釜石の奇跡も起こりました。
 行政の責任は、現実に立脚して、実効ある対策を講じることでありまして、今回の地域防災計画は、過去の大震災の生きた教訓を踏まえて、自助や共助の重要性を訴えたもので、公助には公助の役割があるのは当然のことであります。
 この計画では、首都圏の物流を支える道路ネットワークの整備、上下水道や水門、防潮堤の耐震化など、行政の責任において実施すべき対策を盛り込んでおりまして、責任を都民に押しつけているとのご指摘は全く的外れであります。
 こうした共産党独特の空疎な議論に惑わされることなく、引き続き東京の総力を結集して、自助、共助、公助のすべてにわたり、防災対策を着実に推進していきます。
 他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁します。

〇教育長 視覚障害者教養講座についてでございます。
 都教育委員会は、視覚障害者に対し、教養を高め、日常生活を豊かにするための学習機会を提供するとともに、視覚障害者の自立と社会参加を促進するため、視覚障害者教養講座を昭和四十八年から実施してまいりました。
 本講座の実施内容及び回数につきましては、視覚障害者団体から推薦された運営協力者と協議し、これまでの参加者数等も勘案して決定をしております。
 今後とも、視覚障害者のニーズや実績などを踏まえ、本講座を実施してまいります。

〇東京都技監 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、外環についてでございますが、外環は、首都圏の渋滞解消や排出ガスの大幅な削減などによる環境改善はもとより、陸海空の要所を結ぶネットワーク形成により、我が国の国際競争力を高め、再び成長軌道に戻すなど、その経済波及効果ははかり知れないものがあり、整備に伴う直接的な便益だけでも事業費の二倍以上となります。
 さらに、切迫する首都圏直下地震などに備え、日本の東西交通の分断を防ぎ、広く国民の生命、財産を守るためのまさに命の道として、一刻も早く完成させなければなりません。
 今回、都が事業化した大泉ジャンクション地域の地上部の道路の整備は、関係権利者の円滑な生活再建を図るとともに、外環本線によって分断される一方通行の狭隘な都道を、歩道を備えた往復二車線の道路として改良し、地域の安全・安心を確保するものでございます。
 都は、引き続き国など事業主体と連携し、二〇二〇年夏までの開通に向け、外環の整備に全力で取り組んでまいります。

 次に、木造住宅密集地域における都道の整備についてでございますが、木密地域においては建物の不燃化の促進を図るとともに、延焼遮断や救助、救援、避難等のための都市計画道路の整備が極めて重要でございます。
 そのため、都は、震災時に特に甚大な被害が想定される整備地域において、防災性の向上に大きな整備効果が見込まれる新設道路などを特定整備路線の候補区間として六月に公表いたしました。
 なお、補助第八一号線近傍の道路は、整備されている区間や幅員が限られており、延焼遮断の機能を果たせないため、特定整備路線の整備が不可欠でございます。整備に当たりましては、関係権利者の理解と協力を得て事業を進めてまいります。
 今後とも、地元区と連携を図りながら、木密地域を燃え広がらないまちにすべく、命を守る道路を全力で整備してまいります。

 最後に、延焼遮断帯整備などのための関係権利者への対応についてでございますが、都はこれまで、事業用地の取得に当たりましては、公正かつ適切な補償を行うとともに、代替地や都営住宅のあっせんなど、関係権利者の生活再建に配慮した取り組みを行ってきております。
 特定整備路線の整備においても、公正かつ適切な補償のもと、今後、生活再建に向けた支援策の制度案を取りまとめ、きめ細かな対応を行い、関係権利者の理解と協力を得て整備を進めてまいります。

〇福祉保健局長 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、都民への支援と福祉の充実についてですが、今年度の福祉と保健の予算額は九千九百八十二億円、一般歳出に占める割合は二二・一%と、いずれも過去最高となっており、在宅療養の推進や子育て家庭に対する医療費助成、障害者の就労支援、低所得者や離職者対策など、都はさまざまな独自施策を展開し、都民の福祉の充実を図っているところでございます。
 なお、負担についてさまざまな調査結果があることは承知しておりますが、医療保険制度では、七十五歳以上の高齢者が医療機関を受診した場合、窓口で支払う一部負担金は原則一割となっているほか、医療費負担が高額となった場合には、年齢や所得に応じて負担の上限が設けられております。
 また、介護保険や障害者サービスについても軽減措置がとられており、都独自の負担軽減も実施しているところでございます。

 次に、国民健康保険料の負担軽減についてですが、都は国民健康保険制度の健全かつ安定的な運営を図るため、法令等に基づき、各保険者に対する財政支援を既に行っており、保険料負担軽減のため、新たな支援を行うことは考えておりません。
 なお、国民健康保険制度は保険料と公費等によって運営されるものであり、都は財政の安定化を推進するため、各保険者の実情を踏まえつつ、給付に見合った保険料の賦課、医療費の適正化、収納率向上等について必要な助言、指導を行っているところでございます。

 次に、後期高齢者医療制度についてですが、短期被保険者証は、保険料を一定期間滞納し、督促に応じない方などに対して、面談の機会をふやし、納付の促進を図ることを目的として交付しており、適切に運用されているものと認識しております。
 都は、法令等に基づき、既に国や区市町村とともに応分の負担を行っており、低所得者に対する保険料の軽減措置について、さらなる財政支援を行うことは考えておりません。

 次に、人間ドックの受診料に対する支援についてですが、がんや生活習慣病などの早期発見や予防のため、区市町村は法に基づき、がん検診や特定健診を実施しており、その費用の一部は公費で賄われております。
 これに対し、人間ドックは個人の意思で受診することが基本であることから、都として受診料の支援を行うことは考えておりません。

 次に、シルバーパスについてですが、本事業は若年世代との間に負担の不公平があるなどの課題があったことから、平成十二年に都民の理解を得て見直しを行い、所得に応じて区市町村民税非課税の方は千円、課税の方は二万五百十円の利用者負担をいただく仕組みとなっております。
 ご提案の内容が区市町村民税課税の方の二万五百十円の利用者負担を引き下げるという趣旨であれば、そうした措置を実施する考えはございません。
 また、シルバーパスの利用対象は、東京都シルバーパス条例により、都営交通及び路線バスとなっており、新たに利用対象交通機関を拡大する考えはございません。

 最後に、生活保護受給者への冷房機器購入費助成についてですが、国は昨年七月、受給者に対し、生活福祉資金等からの貸し付けを利用した冷房機器の購入を認めましたが、現状では生活保護費以外に収入のない者は、この貸し付けを受けることができません。
 低所得者世帯に対する所得保障は、基本的に国の責任であることから、都は冷房機器の購入経費を生活保護の一時扶助の支給対象とするよう国に提案要求しており、今後も強く求めてまいります。
 なお、昨年度、都が行った区市への補助は、健康維持管理上、冷房機器が必要と判断される高齢の受給者等を対象に、平成二十三年度限りの緊急措置として実施したものでございます。

〇産業労働局長 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、若者の安定的就業に向けた取り組みについてでございますが、やむなく非正規で雇用された若者の問題を本質的に解決するためには、国が実効性のある経済対策を進め、雇用を拡大することが不可欠です。
 都は、既に職業訓練や就業支援の充実に取り組むとともに、国の施策強化に向けた提案要求に加え、経済団体への雇用拡大の要請も行っております。

 次に、若者に対する就業支援についてでございますが、都は意欲ある若者に対して、東京しごとセンターにおける個別担当制のキャリアカウンセリングや、多様な職業訓練の機会を提供するなど、きめ細やかな支援を既に実施しております。

 次に、若者向けの職業訓練についてでございます。
 都はこれまでも、専門知識や技能に加え、社会人としての基礎力を付与する若年者就業支援科を設置するなど、若者を対象とした職業訓練の充実を図っております。
 なお、現在都が進めている職業能力開発センターの再編整備は、統合に合わせ、施設を大規模化し、機能を拡充するものでございます。

 次に、ものづくり技術に係る支援についてでございます。
 都では、中小製造業の技術の発展を支援するため、新製品、新技術に関する助成や都立産業技術研究センターにおける技術支援などの取り組みを既に進めているところでございます。

 次に、中小企業の要望に応じた支援についてでございます。
 都では、それぞれの企業の要望に応じて、都立産業技術研究センターによります各企業の現場での技術支援など、きめ細かいさまざまな対応を既に行っているところでございます。

 次に、再生可能エネルギーに関する中小企業への支援についてでございます。
 都は、既に環境分野を対象とした産業を重点的に育成するとの方針のもとで、新製品や新技術開発の支援など、さまざまな施策を展開しております。

 次に、製造業に関する調査についてでございますが、都はこれまでも、中小製造業の状況などについて定期的に調査を実施し、その実態を的確に把握しているところでございます。

 最後に、風力発電分野の中小企業の支援についてでございます。
 先ほども申し上げましたが、都は環境分野を重点的に育成するとの方針のもと、この分野についての中小企業の製品化や事業化を既に支援しているところでございます。

〇財務局長 都の財政運営についてでありますが、都はこれまでもむだをなくすという視点に立って、歳出の精査を徹底しながら、福祉や医療、防災対策、雇用や中小企業対策、外環道の整備を初めとする都市機能の充実など、必要な施策に的確に財源を振り向け、都民生活の向上に努めてまいりました。
 引き続き、財政の健全性に十分留意しながら、都政の諸課題に取り組んでまいります。

〇都市整備局長 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、外環の地上部に計画されている道路の視察についてでございますが、知事から現場を見ると指示を受けており、今後適切に対処してまいります。

 次に、木密地域内における住宅への助成についてでございますが、都は防災都市づくり推進計画に定める整備地域を対象として、住宅の倒壊による道路閉塞や大規模な市街地火災を防止するという公共性の観点から、区と連携し、耐震化助成を行っており、引き続き整備地域に的を絞って重点的に助成を実施してまいります。
 また、老朽住宅の共同建てかえや延焼遮断帯となる道路の沿道建築物の不燃化建てかえ等に対し、地元自治体と連携して費用の一部を助成しており、今後ともこうした必要な支援を行ってまいります。
 延焼遮断帯の内側の市街地につきましては、木密地域不燃化十年プロジェクトの不燃化特区を活用して、より強力に不燃化を推進することとしております。

〇総務局長 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、最大の被害を想定した対策等についてでございますが、四月に公表した新たな被害想定では、東京の実情に即して、実際に起こり得る最大の被害像を明らかにしており、今回の地域防災計画の修正素案では、この被害想定を踏まえた減災目標を掲げております。
 また、具体的な取り組みとして、強風下において延焼を防止する延焼遮断帯の整備、石油等危険物施設の耐震化や油が流出した場合の火災発生防止等の応急対策、建築物や鉄道施設の耐震化といった内容を盛り込んでおり、対策が示されていないとのご指摘は当たらないと思います。
 都は、既に「二〇二〇年の東京」への実行プログラムなどに基づいて、防災対策を着実に推進しており、また、震災対策条例に基づく事業計画策定についても地域防災計画の中に組み込まれており、検討を進めてまいります。

 次いで、被害想定の見直しや複合災害への対策でありますが、今回の地域防災計画の修正素案は、新たな被害想定で明らかになった東京の防災上の課題などを踏まえて策定したものであり、複合災害も含め、あらゆる事態に備えた対策を講じております。
 この素案では、最大級の地震動にも対応するため、堤防、水門等について新たな整備計画を策定し、さらなる耐震強化を推進することなどを示しました。
 今なすべきことは、被害想定を見直すことではなく、最新の知見や被害想定に対応した対策を早急に講じていくことであります。
 また、地震、高潮が複合的に発生した際などに起こる大規模水害に備え、自治体の区域を越えた広域避難対策についても盛り込んでおり、今後、具体的な取り組みを着実に進めていくべきものと考えております。

【再質問】

 石原知事に再質問を行います。
第1に、わが党は高齢者の生活の深刻な実態、福祉の貧困さ、負担の重さの実態を明らかにし、苦しんでいる都民への支援を求めました。ところが知事は、現在の社会保障制度があたかも「高福祉低負担」であるかのように言い張り、都民の苦しみに背を向けました。知事、保険料や医療費が払えず、病院にも行けない、この実態が「高福祉低負担」というなら、高福祉である事実、低負担である事実を具体的に示すべきです。お答えください。

 少子高齢化で医療や介護の費用がかさむというなら、何よりも無駄遣いを一掃し、富裕層・大企業の応分の負担を求めること、そして、少子化対策、雇用の拡充、さらに一人当たりGDPを高めることにこそ力を尽くすべきことを申し述べておくものです。

【再質問答弁

〇福祉保健局長 都民生活に対する認識についての再質問でございますが、高齢者の生活実態はさまざまですが、現在、低所得者の高齢者に対しては、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療等において、さまざまな負担軽減策が講じられており、都としても、法令に基づき応分の負担を行っております。
 しかし、先ほども知事から申し上げましたように、今後、急速な少子高齢社会が進む中では、こうした現在の社会保障システムを維持していくことは困難であり、負担と給付のバランスを考えながら、新たな社会保障のありようを形づくっていくということが必要であるということでございます。