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二〇一二年都議会第三回定例会 討論 一〇月四日

あぜ上三和子(江東区選出)

 日本共産党都議団を代表し、第160号議案 東京都営住宅条例の一部を改正する条例ほか4議案に反対の立場から討論いたします。

 第160号議案は、「地域主権改革」等一括法の施行にもとづく「公営住宅法」の改正により、これまで国が規定していた都営住宅の入居収入基準や整備基準、入居資格要件を東京都が独自に定められるようになったことによるものです。
 都営住宅に入居できる収入基準額は、国の改悪にともない二〇〇九年度以降、それまでの月収20万円から15万8千円へと大幅な引き下げが行われました。このため、勤労者世帯では、収入の低いほうから20%強の世帯が応募可能だったのが、おおよそ10%から10数%しか応募できなくなるなど、多数の世帯が都営住宅の入居の道を閉ざされました。
にもかかわらず今回の都の条例改定は、現在の改悪された入居収入基準をはじめとした基準を固定化するものです。よって本条例改定には反対です。
 わが党が提出した修正案は、入居収入基準を改悪前にもどすことをはじめ、都営住宅の増設、中学生以下の子どもがいる子育て世帯などの入居基準を緩和し、幅広い世代の方が入居できるようにする対策を、もりこんでいます。この方向こそ、都民の願いにこたえる道であることを申し述べておきます。

 さて、今議会における論戦を通じて、福祉・くらし、経済政策、防災対策など、どの分野でも、石原都政には重大な問題があり、地方自治体本来の姿への転換が求められていることが、うきぼりになりました。
 第一に、都民生活、とりわけ高齢者福祉の問題です。
わが党は、東京の高齢者の国民年金受給額が月平均5万8千円とわずかなのに、今年度は、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料のトリプル値上げが押し寄せていることなどを指摘し、低福祉・高負担に苦しむ都民への支援を求めました。ところが知事は、「給付と負担のバランスを顧みない高福祉低負担の社会保障制度は到底、今後は成り立ちません」と、あたかも今の日本が高福祉低負担であるかのように強弁し、苦しむ都民に手を差し伸べようとしませんでした。
OECDが2007年に出した日本経済に関するレポートでは、日本の貧困層が受ける公的支出はOECD平均の6割にとどまる一方、支払う税などの負担は1・2倍、アメリカ、イギリスの3倍に上ると指摘し、低所得世帯への公的支出を増加させる必要があると勧告しているのです。
 国際的にも指摘されている日本は低福祉・高負担であるという現実を認めず、まったく逆の認識にしがみつくのは、高齢者の福祉に予算をふりむけたくないという知事の姿勢を示すものにほかなりません。
 このため都は、様々な独自施策を展開している。だから新たな支援はしないと施策の充実を拒否しました。
 要するに、知事の立場は、福祉の充実を求めるなら負担せよ、負担ができないなら福祉の充実はあきらめなさいというものです。それは、地方自治体のあり方とも、憲法第25条とも相容れません。
 憲法25条は、すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないとしています。都は、その先進的立場にこそ立つべきです。自治体本来の役割を発揮して都独自の支援策を講ずるよう強く求めておくものです。

 第二に、雇用・経済対策です。
 わが党は、東京の若者は非正規雇用が5割に達し、その8割が年収150万円未満にとどまるなどの事態は、社会の基盤を崩壊させかねない重大な問題であることを示し、都の対策の抜本的拡充を求めました。
 これに対し知事が、「企業が人件費抑制や雇用調整の手段として、非正規労働者を積極的に活用した面もある。国が労働者派遣事業の規制緩和を進めたことはこれに拍車をかけた、この現状は、本人にとっても社会にとっても不幸な事態である」と答弁したことは重要です。にもかかわらず都として、若者雇用対策の拡充にふみだす立場を示さなかったことは、責任のがれと言わなければなりません。
 同時に、わが党は、知事の経済政策が欧米の多国籍企業を呼び込むことを最重点にしていることを批判し、都がやるべきことは、落ち込んだ都民の購買力を引き上げ、都内事業者の9割を占める中小企業を活性化することであることを強調しました。
多国籍企業はこれまで世界中で、巨大な経済力の乱用、労働者や中小企業の利益との衝突などの問題を引き起こしてきました。このため、国際的に多国籍企業の活動を規制する努力がおこなわれるようになったのです。ILOは多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言を採択しました。これは受け入れ国の雇用を優先することや、合併や移転を検討する際に悪影響を最大限に緩和するため、政府や労働団体との共同検討など、多国籍企業が社会的責任を果たす最低限のルールをつくったものです。OECDも、同様の立場の指針を示しています。
 多国籍企業に社会的責任を果たさせることぬきに、減税までして呼び込んでも、さらなる雇用破壊、中小企業の淘汰につながる危険性が強いのです。多国籍企業に対し都が行うべきは、社会的責任を果たさせることです。そして何よりも、雇用を増やし、内需を拡大し、中小企業の技術を活かし、発展させるために、都が全力を尽くすことです。

 第三に、防災対策です。
 わが党は、災害対策基本法の都道府県の責務を示し、自己責任第一ではなく、都民の生命、身体、財産を守るための都の責務を第一に位置づけるべきことを求めました。ところが知事は、「身近なもの同士で助け合うことが、一人でも多くの命を救うことになるのは、まぎれもない事実」と、あくまでも自助・共助を中心にすえる立場を変えようとしませんでした。
 しかし、阪神淡路大震災で亡くなられた方の8割は、建物の倒壊などによる圧迫死などです。まさに即死状態であり、助け合う余地などなかったのです。また、延焼遮断帯だけでは、その内側地域の火災による延焼を防ぐことができないことは、わが党の代表質問で明らかにしたところです。したがって、建物の倒壊や火災を未然に防ぐ耐震対策、不燃化対策に、総力をあげて取り組むべきことを重ねて申し述べておくものです。
 また、わが党は、「地域防災計画修正素案」が強風下の広域火災、東京湾の石油タンク火災、立川断層帯地震による地盤変動による被害対策など最悪の事態を想定した対策を示していないことを指摘しました。これに対し都は、「指摘は当たらない」と強弁しましたが、わが党が指摘した対策は、「修正素案」には記載されていません。事実をゆがめるものです。東日本大震災の教訓から「想定外」はあってはならないことであり、最悪の事態を想定した実効性ある計画とすべきであることを改めて指摘しておきます。

 最後に江東区豊洲の市場予定地の土壌汚染問題についてです。
 九月十三日に発表された土壌汚染調査結果で、これまで東京都が、これ以上汚染が下に広がらないとしてきた不透水層の内部でさえも旧東京ガスの操業由来の高濃度汚染が広がり、都のいう不透水層にはその機能がないことが明白になりました。
 ところが、それでも都は、汚染は局所的、汚染があってもその直下2メートルにわたって汚染がないことを確認し、汚染がでた地点には人工的に不透水層を形成するので問題ないと言い張っています。
 青果市場となる5街区だけでも、新たに不透水層内部で環境基準の1000倍のベンゼン、74倍のシアン化合物が見つかりました。不透水層内部3メートル以上にわたって汚染され続けている所は30カ所以上、5メートル以上にわたって汚染されつづけている所が10カ所以上もあります。しかも、それらは局所的どころか全域にわたっています。
 今回の調査結果は、これ以上汚染が下に広がらない不透水層が市場予定地全面にあるとの前提で進めてきた都の汚染対策が成り立たないことを示しているのです。莫大な費用をかける欠陥工事をやめて、築地での現在地再整備に戻るべきことを厳しく指摘し、討論を終わります。