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2013年都議会第1回定例会 代表質問 2月26日
清水ひで子(八王子市選出)
一、都民のくらし、福祉について
二、急速に進む高齢化への対応について
三、保育園の待機児解消について
四、雇用対策について
五、中小企業への支援について
六、買い物弱者と商業支援について
七、原発・エネルギー政策について
八、震災対策について
九、社会資本整備と財政運営のあり方について
十、憲法について
【答弁】
〇知事
〇東京都技監
〇福祉保健局長
〇都市整備局長
〇産業労働局長
〇総務局長
〇財務局長
〇環境局長
一、都民のくらし、福祉について
日本共産党都議団を代表して質問します。
猪瀬都知事は初めての施政方針表明を行いましたが、いま都民のみなさんが政治に求めていることは何かということに思いを寄せざるを得ませんでした。私が毎日のように都民のみなさんから訴えられることは、暮らしが苦しい、景気をよくしてほしいという思いです。そこで私は、何よりもまず、都民の暮らし、福祉の問題について、知事の所信をただしたいと思います。
いま、安倍政権は、民主党との合意による消費税の大増税と社会保障の全分野での給付抑制・予算削減を本格化させています。
@ 知事は石原前都政の方向を基本的に継承していくことを表明しましたが、石原前知事は、消費税増税は当然という立場でした。都民の収入が減り続けている中で、消費税増税を行えば暮らしも景気もますます落ち込むことは確実であり、断じて許されません。知事、この問題についてどう考えているのですか。
A 福祉についても、石原前知事は「何がぜいたくかと言えばまず福祉」だと言って、老人医療費助成や寝たきり高齢者への1か月5万5千円の福祉手当を廃止するなど高齢者への福祉を切り下げました。高齢者一人当たりの老人福祉費は3割も減らされ、決算総額に占める老人福祉費の割合は全国2位から44位へと最低クラスになりました。
知事、東京の高齢者の国民年金の平均受給額は、月額5万4千円に過ぎません。都独自のセーフティネットであった医療費助成や福祉手当などがあればどんなに助かるでしょうか。知事はこのセーフティネットをなくされた生活の困難はどんなものなのか思いをはせたことがありますか。知事は、石原前知事の「何がぜいたくかと言えばまず福祉」という立場をも継承するのでしょうか。
いまこそ、所得の低い高齢者へのセーフティネットを再構築し、住民の暮らしを守るという地方自治体としての役割をはたすことが求められていますが、知事の所見を伺います。
B 毎年のように上がり続ける国民健康保険料・保険税が、区部でも市町村でも、都民の重い負担になっています。
区部では、特別区長会が来年度の国保料の値上げを合意しました。赤ちゃんから高齢者まで、家族一人ひとりにかかる均等割が1200円上がります。2011年度から行われた値上げを抑えるための経過措置も廃止されます。新たな減額措置が行われますが、対象者も金額も大幅に縮小されます。今回の値上げで、夫婦2人で夫の年収が200万円の世帯の保険料は約15万7千円になってしまい、3年前と比べて72%もの値上げになるという深刻な事態です。市町村でも今年度21市町村で値上げが行われ、来年度もさらなる値上げが懸念されています。
そもそも区市町村国保の加入者は、3分の1以上が若者など非正規労働者です。そのほか年金生活の高齢者や、中小零細の自営業者です。保険料が高すぎて払えない滞納世帯が、東京では加入世帯の23%におよびます。滞納により、保険証を取り上げられて資格証になった方が2万6千世帯を超え、医療機関の窓口で全額支払わなければならないため、具合が悪くても受診せずに、手遅れとなって命を落とす事態も各地で相次いでいます。知事は、国民健康保険をめぐる、こうした深刻な事態を、どう認識していますか。
C 国に対し、削減してきた国保への国の負担の復元と拡充をきびしく求めるとともに、区市町村が国保料・国保税を値下げできるよう、都独自の補助の実施を決断すべきです。いかがですか。
急速に進む高齢化への本格的対応は、都が取り組むべき緊急課題です。
@ 知事は施政方針で、高齢者のケア付き住宅に言及しました。私たちは、12年前に、兵庫県尼崎市をはじめとしたグループハウスなどの調査にもとづき、新しいケア付き住宅を東京から発信するよう提案しました。ようやく東京都がケア付き住宅の整備に踏み出したことは重要であり、大いに改善・拡充していただきたいと思っています。
たとえば、ケア付き住宅の中心であるサービス付き高齢者向け住宅の家賃は都内では平均で10万円を超え、食費や介護・医療サービスの負担も加わるため、厚生年金受給者でも入居はきびしい状況です。所得に応じた家賃補助制度もありますが、区市町村の財政負担が伴うことなどにより、都内で実施している自治体は少数です。低所得者も入居できるよう、また介護、医療、見守りのなどの多様なサービスを利用して安心して住み続けられるよう、さらなる拡充を進めることが求められていますが、いかがですか。
A 低収入で介護を必要とする方の行き場がなく、施設を転々とせざるを得ない「老人漂流社会」とも言われる深刻な状況が生まれています。高齢者人口当たりの特別養護老人ホームの整備率が全都道府県中41位、認知症高齢者グループホームは47位など、介護施設の整備が圧倒的に遅れていることが、こうした深刻な事態を生み出しています。知事は、この「老人漂流社会」と言われる現状と、立ち遅れている介護施設整備の現状を、どう認識していますか。
B とりわけ、都内で4万3千人におよぶ特別養護老人ホームの待機者解消は急務です。何年も待ち続けて亡くなる方がたくさんいます。ところが、現行の高齢者保健福祉計画による特養ホーム整備の目標数は2014年度までの4年間で8000人分増やすだけであり、少なすぎます。私はアクションプログラムに位置づけて、整備目標を抜本的に引き上げ、緊急に大増設をはかるべきと思いますが、いかがですか。
保育園に入れない、待機児問題は深刻です。
女性が子どもを産んでも安心して働き続けられるように、保育園を整備することは、少子化対策にとって重要な課題のひとつです。
@ 18日には、小雨が降る中、杉並区役所前に、認可保育園に申し込んだのに入れなかった子どもの保護者が大勢集まり、新聞やテレビでも報道されました。保育士などの職員数、施設の広さ、園庭などの環境が整っている認可保育園への入園を、つよく訴えているのです。0歳児を連れた母親は、両親ともにフルタイムで共働きなので、4月からの入園に合わせて、職場復帰を考えていたと言います。それが、「希望者多数のため内定できませんでした」の通知が来て、目の前が真っ暗になったそうです。
わが党の調査によれば、現時点までに明らかになった都内18区24市6町村で、来年度、認可保育園に入りたいと申し込みながら入れない子どもは、約二万二千人にものぼります。深刻なのは、杉並だけではないのです。(日本共産党都議団の調査結果)
知事は、この問題について記者会見で、保護者がなぜ認可保育園を希望するのかに思いをはせることなく、厚労省の認可保育園重視に問題があるとする認識を示しました。しかし保護者が、より良い環境の認可保育園を求めるは当然のことです。
厚生労働省は、認可保育園を極力つくらずにすませようと、認証保育所などを利用できた場合には「待機児」から外すという定義の変更をしました。知事は、厚労省が変更した「新定義」にそって「待機児」は少ないと言っているのです。厚労省を批判するなら、認可保育園への待機児が増えているにもかかわらず、少子化だから認可保育園は極力つくらないという立場をとってきたことこそ、きびしく批判すべきではありませんか。
A 認可保育園に入れない待機児が増えているもとで、認証保育所や小規模保育所の補完的役割を否定するものではありません。しかし、これらの保育所の基準は認可より低いうえ、規模も小さいのです。わが党はいっかんして認可保育園整備を求めてきましたが、この数年、国の安心こども基金などもあり、東京でも整備が進み始めました。この3年間で、1万7500人分つくったのですから、やる気になれば、認可保育園も大幅に増設できるのです。都は、この方向こそさらに推進し、国有地や都有地なども活用し、区市町村とも協力して、都民が強く求める認可保育園の大幅増設をスピード感をもって進めることを求めるものですが、いかがですか。
次に雇用対策について伺います。
@ わが党は昨年から、都内の「若者・子育て世代実態調査」を行っています。一番多かったのは「給料が安い」という声でした。「少ない月は、五万円以下の給料だった」「以前と同じ業務内容なのに、年収150万円以上手取りが減った」「これまで残業代で稼いでいたが、営業不振で残業代が無くなってしまい、これでは暮らせない」など、雇用環境にかかわる深刻な声が多くよせられました。
東京の労働者の現金給与総額は、この十数年間で年八十五万円も減少し、若年労働者の二人に一人は非正規雇用、その8割が年収二〇〇万円にも満たないのです。三〇代、四〇代になっても不安定雇用から抜け出せず、年金など社会保険料が払えない労働者が増えれば、日本の社会保障制度は、土台から崩れます。知事、こうした声、そして深刻な事態をどうとらえ、都としてどう対応するのですか。
私は、働く者の雇用を安定させ賃金を増やし、東京の明るい未来、経済の活性化をめざす、提案を行います。
第一に、雇用の確保、就労支援です。
A 安心して働ける雇用環境、正規雇用への就労支援の拡充が求められる時に、知事が基本的に継承していくという石原前都政は、労政事務所の縮小、都立職業訓練校の縮小と授業料の有料化など、労働行政を後退させてきました。
猪瀬知事による来年度の雇用就業対策も、学校を卒業しても就職できない人の就職支援や非正規の若者の正規雇用化支援などの事業費の削減をはじめ、今年度比85億円の減額です。今年度最終補正予算をふくめても、10億円の減額です。知事、雇用対策を抜本的に拡充すべきです。
B そして、職業訓練校の施設内訓練の定員を大幅に増やし、有料化した授業料を無料に戻し、都の職業訓練機能を大幅に拡充すること、求人の掘り起こしと面接支援など、ハローワークと連携して一体で、若者の就労支援を進めることを提案するものですが、いかがですか。
C また、都として、教員や消防士、救急隊員の採用、環境、福祉、介護分野の職員などの増員を実施することを求めるものです。お答え下さい。
第二に、賃金引き上げに取り組むことです。
D わが党の国会質問をうけ、安倍首相が経団連など財界3団体トップに賃金引き上げを要請しました。大企業の本社が集中する首都の知事として、どのように受け止めますか。
E 大企業がためこんでいる二百六十兆円もの内部留保の1%程度を活用すれば、多くの大企業で賃上げができます。東京都も知事を先頭に、財界・大企業に対し、賃金の引き上げと、中小企業の賃上げのため、下請代金引き上げをはじめとする公正な取引実現を申し入れるよう求めます。
F 最低賃金時給一〇〇〇円以上への引き上げは、労働団体の一致した要求となり、国の中央最低賃金審議会も目標としてかかげています。都としても最低賃金時給一〇〇〇円以上という明確な目標をもち、実現のために力をつくすことが重要です。知事の所見を伺います。
G そのために、中小企業に対しては助成が必要です。最低賃金を引き上げるために、フランスでは三年間で二兆二千八百億円もの支援を行い、アメリカでも五年間で八千八百億円の減税を行っています。ところが、日本は年間約五十億円にすぎません。国に抜本的な増額を求めるとともに、都としても中小企業への助成や支援を行い、最低賃金引き上げに取り組むことを求めますが、いかがですか。
第三に、公共サービスや公共事業でのワーキングプアをなくすことです。
H 地方自治体が契約する公共工事や委託事業に従事する労働者の賃金が、その地域の標準的な賃金水準を下回らないように条例で規制し、労働者の生活できる賃金を保障する仕組みである公契約条例制定の取り組みがひろがっています。東京でも多摩市、渋谷区、国分寺市で制定されています。経団連などの代表も加わった政府の雇用戦略対話ワーキンググループも、官公庁の公契約において、最低賃金の引き上げを考慮すべきとしているのです。都としても公契約条例を検討することが重要だと思いますが、いかがですか。
次に中小企業対策についてです。
石原前知事のもとで、中小企業問題などに専門能力をもった職員が相談にのったり、区市町村の産業政策づくりも支援していた商工指導所を廃止するなど、中小企業対策を大後退させ、1998年には6・2%の構成比をしめた商工費は、2006年には3・3%、全国平均の半分にまで下がりました。ここ数年、中小企業予算は回復してきましたが、まだまだ不十分です。
@ 東京の中小企業は、事業所数、従業者数、出荷額も売上高も、大幅に減少しています。都道府県の商工費は全国平均で普通会計の8・9%ですが、東京は5・6%にすぎません。猪瀬知事が施政方針でかかげた中小企業施策も、デフレ不況のつづく中、事業所数で9割、従業者数で6割をしめる中小業者の要求にこたえるにはきわめて不十分であり、抜本的な拡充が必要です。
預託原資などを除いた中小企業対策予算は二百四十億円ですが、これを倍増して仮に商工費にあてはめると、その割合は約6%です。まず第一歩として中小企業対策予算を倍増し、中小企業の活性化に全庁あげて取り組むべきだと思いますが、知事、いかがですか。
中小企業金融円滑化法が3月末で打ち切られようとしていることは重大です。経営環境が厳しい中小企業の資金繰りだけでなく、住宅ローン利用者の支援としても喜ばれてきた制度です。助かったという業者が多くいますが、景気回復がないまま、打ち切りが行われれば、倒産、廃業が続出し、地域経済にも大打撃を与えます。中小企業、国民にとって命綱ともいえる仕組みを断ち切ることは許されません。
A 私は第一に、円滑化法の再々延長を国に申し入れることが必要だと考えます。第二に、経営や技術の専門家を配置した相談窓口を充実すること。第三に、仕事がなくてやっていけないわけですから、都として中小企業への官公需の発注を大幅に増やすとともに、仕事をあっせんすること。第四に、いま政府が検討している支援機構は、企業の清算を進めるものになることが心配されています。きめ細やかな対策による企業の再生支援を強化することが重要です。見解を伺います。
B 存亡の危機にひんしている町工場とその技術を守るために、経営が成り立つまでの支援策として、借り工場の家賃や機械・設備のリース代などへの直接補助を実施することを求めるものです。お答え下さい。
コンピュータ技術の発展を、中小企業の製品化に役立てることが重要です。
C 超高性能なスーパーコンピューター、スパコンは、これまで何年もかかっていた開発期間を大幅に短縮して製品を完成させることができるなど、二一世紀の産業革命とまで言われています。私は、スパコンがある東京工業大学で、話を聞きました。活用はまだ大企業が中心ですが、「設計開発期間の短縮ができた」「開発コストが大幅に削減できた」との評価がでており、ものづくりのいくつかの業種が集まって最終製品をつくる場合などの活用が期待されています。
都は、大学などのもつスパコンを中小企業が活用できるよう、大学などの研究機関と連携して、ソフト開発など技術的支援や人材の育成、普及啓発を推進し、スパコンを活用した中小企業の製品開発を支援するなど、コンピュータ技術の発展を中小企業振興に役立てることを求めるものです。見解を伺います。
次に買い物弱者と商業支援です。
@ 大型店の進出や撤退が野放しになり、消費の冷え込みなどで商店街が衰退し、その役割をはたせなくなっている地域が増えています。同時に、そのことなどによる買い物弱者が、東京で五十一万人におよぶことが社会問題になっています。知事は、東京の商店街および買い物弱者の現状を、どう認識し、対応するのですか。
わが党は、商店街を日常生活に欠かせない機能をもった「地域の公共財産」と位置づけ、この公共財産の再生こそ買物弱者を解消していく道と一体であると主張してきました。
東京都が「買い物弱者支援モデル事業」を始めたことは重要であり、補助の期間を延長するとともに、補助対象地区および対象事業の拡大、地元自治体や商店街をはじめ事業者の負担軽減などの拡充を求めておくものです。
次にエネルギー政策について伺います。
@ 現在、東京には、福島の原発からも柏崎刈羽(かりわ)原発からも、電力は来ていません。昨年の猛暑も日本は、原発なしで乗り切れました。知事は、就任以来、「東京はすでに脱原発状態」という発言をされています。そして、廃炉に向けた工程表が必要だとも述べています。その一方で、柏崎刈羽原発の再稼働については「国が決めることだ」と述べています。
知事は、東京におけるエネルギー戦略として、石原知事と同じように、原発は必要だという立場をとるのでしょうか。それとも原発ゼロの立場をとるのですか。明確な答弁を求めます。
知事が言うように、東京湾岸にある老朽化した火力発電所を、より高効率な環境負荷の少ないものに置きかえることや、東京電力をはじめ、9電力会社の地域独占体制の改革を進めることは重要なことです。しかし、最も重要な再生可能エネルギー対策は立ち遅れたままです。
A 都は「再生可能エネルギー戦略」で、2020年までに東京のエネルギー消費にしめる再生可能エネルギーの割合を20%にすると、目標をかかげてきましたが、現状は、0・7%であり、都外での水力発電をふくめても2・9%にすぎません。あと7年で、どう達成させるのですか。
B この不況の時に百万円以上の負担をして、ソーラーパネルを設置する意欲を高めるためには、初期投資負担の軽減が必要です。飯田市で実施しているような初期投資ゼロのしくみをつくることが必要ではありませんか。
都は、金融機関と連携して低金利制度を検討するというなら、他の自治体がしているように、ゼロ金利に近い制度にすべきです。見解を求めます。
エネルギーの最大消費地であるこの東京で、当面その2割を代替エネルギーに転化することができれば、原発ゼロ、安全でクリーンエネルギー都市東京を切り開けます。なんとしても実現を図ることを、つよく求めておくものです。
次に、震災対策への取り組みです。
@ 石原前知事は防災対策について、都による予防対策重視から、自己責任第一に変質させました。堤防など都市インフラの耐震化は遅れ、木造住宅密集地域の安全化も進んでいません。猪瀬知事は、石原前知事の自己責任第一という原則を継承するのですか。
そもそも災害対策基本法は、住民の生命、身体及び財産を守ることを都道府県の責務として定めています。知事は、この責務をどう認識していますか。この立場にたって被害軽減のための予防対策を重視し、住宅をふくむ都市インフラなどの耐震化に万全をつくすことが重要だと考えますが、知事、いかがですか。
A 巨大地震から都民の生命、財産を守るために都がいま行うべきは、都市インフラなどとともに住宅の耐震化を強力に促進することです。都の地域防災計画でも建物の耐震化で6割の命を救うことを掲げています。ところが都の木造住宅耐震改修助成制度は、木造住宅密集地域の中で指定された整備地域内で、かつ一定の道路に面していないと受けられず、多摩地域ではまったく利用できません。他の府県では対象地域を限定せずどの地域でも助成を受けることが保障されており、地域限定は東京都だけです。
防災会議地震部会の副部会長をつとめた中林一樹(いつき)氏は、著書の中で、住宅が壊れてからの支援より、壊れる前の補強への支援こそ大切であり、耐震補強の促進は、高齢化が進展する21世紀の最も基本的な災害を減らす課題だと重要性を強調し、避難所や仮設住宅の負担が軽減され費用の無駄遣いにならないと発言しています。こうした指摘をどう受け止めますか。
B 都民の生命、財産を守ろうとするなら、地域を限定せず住宅耐震改修助成を行うとともに、助成額を大幅に増やすことが必要です。お答え下さい。
C 知事はもっぱら、幹線道路整備と再開発中心の不燃化特区による木造住宅密集地域対策を強調しています。しかし墨田区では、従来のこうした施策を再検証し、主要生活道路の整備と地域内の耐震化、不燃化を促進すること、高い費用がかかる耐火建築への建て替え中心ではなく、一律100万円の助成で住宅の部分不燃化を図る制度を昨年末からスタートさせ、注目を集めています。この制度づくりに参加した専門家は、負担を抑えることで住民の利用を促すとともに、効果の面でも延焼を大幅に遅らせるとともに、耐震性の強化や断熱効果もあり、一石三鳥の効果があると強調しています。こうした取り組みをどう認識していますか、都としても普及のための手だてをとることが重要だと考えますが、どうですか。
D 防災対策のうえで、地域に根差した消防団の役割は重要です。そのためにも区部、市町村とも、団員の処遇向上や装備の充実・強化をはかることが求められていますが、どう対応するのですか。お答え下さい。
次に、社会資本整備と財政運営のあり方についてです。
いま、認可保育園や特養ホームなど、暮らしと福祉のための緊急整備とともに、東日本大震災や笹子トンネルの事故の教訓からも、社会資本の耐震強化と維持更新対策を抜本的に強化することが求められています。
@ 建設局は水門、堤防の緊急点検を実施した結果、施設の耐震化、耐水化強化のために10年間で1800億円規模の計画を進めることになりましたが、都市インフラの耐震強化のために莫大な財政投入が必要なことは明らかです。道路、橋梁などもふくめ耐震強化のために今後必要となる事業費はどの程度と推計していますか。
A 今後の維持・更新のために必要な財政負担も明確にする必要があります。国の社会資本整備審議会の小委員会も、インフラの健全性診断の総点検を行い国民への公表を提案していますが、都としても管理する社会資本の緊急総点検を行い、その結果と、維持更新計画、そのために今後どれだけの財政投入が必要かを明らかにすべきです。
B 新潟県や広島県では、県単独事業については維持補修と新規建設を区別して予算額を示していますが、すでに維持補修が新規建設を大幅に上回っています。ところがこれまでの都の投資的経費は、幹線道路の建設など新規事業重視で、耐震強化、維持更新はきわめて不十分でした。都の来年度予算では、どうなっていますか。道路、橋梁事業について、維持補修事業費と新規整備事業費別に国庫補助事業と単独事業費を明らかにして下さい。
C 知事、いまこそ道路・橋梁などの都市基盤整備について、新規とりわけ大規模事業は最大限抑制し、耐震強化、維持更新重視に転換することが求められていると考えますが、いかがですか。
D とりわけ重大なことは、猪瀬知事が、外環道について、関越・東名高速間については2020年早期に完成させること、東名以南についても具体的な検討をすすめると述べたことです。これをすすめるにはそれこそ莫大なお金がかかります。外環本線の総事業費は、関越・東名高速間16キロで1兆2820億円、東名以南は20キロで、あわせれば総事業費は3兆円にもふくれあがると思われます。いま、今後3兆円もかかる事業を進める余裕はないではありませんか。
E 外環道に投入する財源が国や都にあるというのなら、その財源を福祉や防災対策にふりむければ、相当なことができます。例えば、3万人分の認可保育園を整備するのに必要な事業費は780億円で、東名以北の外環道の国と都の負担分の7・5%でできます。特養ホームなら2万人分の整備に必要な事業費は2600億円で、同じく外環負担分の25%で整備できます。維持更新や耐震改修でも、河川や港湾の護岸や水門、下水道施設の耐震、耐水対策の総事業費は3800億円であり、37%で可能です。いかがですか。
しかも都には8700億円をこえる活用可能な基金もあります。基金の適切な活用も図れば、暮らしや福祉、雇用、中小企業対策などの充実は十分可能です。見解を伺います。
@ 最後に、知事の憲法に対する基本姿勢について伺います。石原前知事は「私はあの憲法を認めません」「憲法違反で結構」とまで言って、知事としての憲法尊重擁護義務を否定しました。この石原前知事の立場が、思想・信条の自由などの面で都政に否定的影響を与えたことは否めません。猪瀬知事は、こうした石原前知事の憲法に対する立場を継承した都政を進めるのでしょうか。明確な答弁を求め、再質問を留保し質問を終わります。
〇知事 清水ひで子議員の代表質問にお答えします。
消費税の増税についてでありますが、我が国においては高齢化が急速に進み、今後、医療や介護などの社会保障に要する費用が増大していく中で、持続可能な社会保障制度の構築を図ることが喫緊の課題となって、そういう共通認識はあると思います。
消費税、地方消費税も広く消費に負担を求め、世代間の公平が確保できるとされており、税率の引き上げにより社会保障財源の拡充を図ることは不可避であります。
なお、消費税の引き上げに当たっては、軽減税率の導入が検討されているほか、現在、政府において、デフレ脱却や経済活性化に向けた総合的な施策が講じられているところであり、ご指摘は当たらないというふうに思います。
高齢者施策見直しの都民への影響、都の責務についてということでありますが、今回、福祉と保健の分野が予算で初めて一兆円を超えました。まずはそういう事実を重く受けとめるところから始めていただきたい。
お話にあった、今から十二年前の福祉施策の見直しも、当時の社会経済状況の変化や介護保険導入等の国の施策の充実等を踏まえ、経済給付的事業を見直す一方、在宅サービスを中心に福祉サービスの充実を図るため、都議会においてご議論いただいた上で行ったものであり、都民の理解は十分得られていると認識しています。
また、老人福祉費にかかわる過去の決算額の比較についての話もあったが、この間、介護保険の導入や三位一体改革などにより、比較の問題となる制度が大きく変わっているということです。
こういった点を考慮することなく、みずからの主張に都合のよい数字のみ取り上げて、政策の内容や効果ではなく、単純に高齢者一人当たりの老人福祉費の額について議論を繰り返すのは、余り意味がないというふうに思います。
国民年金の平均受給額の話もありましたが、平成二十四年の高齢社会白書によると、高齢者世帯の一世帯当たり平均所得額は三百七万九千円、世帯主が六十五歳以上の世帯の平均貯蓄額は二千二百五十七万円となっているなど、高齢者の生活実態はさまざまであります。
所得格差の是正や所得保障は、経済政策や社会政策の課題でありまして、社会経済状況が変化する中で持続可能な制度となるよう、負担と給付のバランスを考えながら、基本的に国の責任で対応すべきものであります。
その上で、東京都が果たすべき役割は、この東京の未来を見据えて、自助、共助、公助の取り組みを適切に組み合わせながら、都民ニーズにこたえる福祉サービスの基盤整備に全力を挙げることであります。
こうした考えのもと、平成二十五年度予算においては、高齢者のためのケアつき住まいの整備、認知症の早期発見、診断、治療のための新たなシステムの構築など、費用対効果の高い新しい施策を盛り込みながら、繰り返しますが、過去最高の一兆円を超える財源を福祉と保健の分野に充てることになった点を、よくご理解いただければというふうに思います。
保育サービスの整備についてでありますが、保育の実施主体である区市町村が、地域の実情に応じて認可保育所や認証保育所、保育ママなどの施策を組み合わせながら、保育ニーズにこたえるような保育サービスの整備を積極的に支援してきたということです。
この結果、この二年間で保育サービス利用児童数は約二万人増加し、待機児童数は二年連続で減少しています。
認証保育所の施設基準は認可保育所と同等であり、すべての施設でゼロ歳児保育や十三時間開所を実施するなど、大都市特有の保育ニーズを踏まえたサービスを提供しています。
一方、認可保育所におけるゼロ歳児保育の実施率は八割を下回り、二時間以上の延長保育実施率は二割に満たない。
平成十三年の制度創設以来、認証保育所は、今や六百六十六カ所、定員は二万人を超えるなど、多くの都民の支持を得ています。
先日の記者会見で厚労省を批判したのは、こうした実績を無視して、いまだに認証保育所を保育サービスとして認めない、かたくなな姿勢に対して批判したんです。
今後とも、厚生労働省に認証保育所制度を認めるよう強く求めていきます。
雇用問題についてでありますが、非正規労働者の増加と低賃金の問題は、経済のグローバル化の進展や長引く景気低迷がもたらしたものであります。
東京都は、国に先駆けて、平成二十年度から生活費の支給と職業訓練を組み合わせた事業を東京モデルとして実施し、これが平成二十三年十月に創設された国の求職者支援制度につながったわけです。そういう事実を知っていただければありがたいと思います。
昨年八月以降、改正労働契約法が順次施行され、企業における正規雇用へのルール化が図られるとともに、社内で非正規労働者であることを理由とした不均衡な処遇が禁止されました。非正規労働者の問題については、まずは厚労省がこれらの制度を運用することによって対処すべき問題だというふうに思います。
東京都は、平成十六年度に東京しごとセンターを開設し、一人一人の状況に応じたきめ細かな就職支援を実施するとともに、正規雇用を望みながら、やむなく非正規で雇用された方々に対して、職業訓練の拡充や就職支援の強化など、安定的な雇用に向けた切れ目のない、さまざまな対策を講じてきています。
最低賃金についてでありますが、都内の最低賃金は、毎年、最低賃金法に基づき、公益、労働者、使用者の三者の代表によって構成される東京地方最低賃金審議会での審議を経て──これは厚生労働省の東京労働局で決めるんです。したがって、その中身の決定に当たっては、都内の労働者の生計費や賃金、企業の支払い能力を考慮することとされているんですが、そういう最低賃金の決定に当たっては、東京都が関与できない仕組みとなっていて、ここは地方分権になっていないんです。
したがって、厚労省の東京労働局だけじゃない、全国に労働局というのを持っていて、この出先機関を行政改革の対象として考えるならば、そして、東京都がそういう権限を与えられるならば、あなたと共闘してもいいんです。
以上です。
さて、中小企業の活性化についてでありますが、商工費が、全国は八・九%で東京は五・六%、比べると低いと。これは予算額の歳出総額に占める割合について、消防など大都市事務や都区財政調整制度を有している東京都と、財政構造の異なる他県との単純な比較をもって評価することは適切じゃないんです。
来年度予算においても、中小企業対策について、海外展開の後押しや知的財産の保護、活用など、新規事業を含め必要な支援策を実施することとして、今回予算を組みました。
原発についてでありますが、現在、既に東電管内は脱原発状態になっているんです。今後の原発のあり方については、まず、原子力規制委員会が新たに策定する安全基準に対して、電力会社が安全体制を確立し、その対策を踏まえ国が責任を持って判断する必要があります。
これに加え、原発のごみの最終処分をどうするかという、そういう課題もあります。実際に、北海道の宗谷岬の近くの幌延に行ってきましたけれども、三百五十メートルもある立て坑があって、その一番下までおりてみました。二百万年前の岩盤をそこで使えるかどうか調査しているわけですが、数千年、数万年という長さで放射性廃棄物を安全に保管できるかどうか。それを日本だけじゃなくて各国がみんな研究しています。
また、福島の廃炉プロジェクトを策定する必要があります。原子力技術を残さなければ、廃炉にできないというパラドックスを抱えているのだと。これが大事なところです。世界に約四百五十もの原発があって、いずれも寿命が来ます。日本は、高線量の現場で働くロボット技術の開発を含めて、世界一の廃炉技術をつくって世界に還元していく、やはりそういう姿勢がなければ、福島の廃炉はできません。原発の問題は感情論ではなくて、現場の実態を知り、国家戦略として決めていかなければいけない。
これまで都民生活や都市の活力を維持できるよう、電力安定供給に向けて東電改革や老朽火力発電所のリプレースの推進などに取り組んできました。このような、まずは具体的に独自のリアルな取り組みこそが極めて重要であります。
以上。
震災対策についてでありますが、石原前知事は、過去の大震災で住民相互の助け合いが有効に機能したという教訓を踏まえて、いざというときは、まず、みずからの身を守り、身近な者同士で助け合うことが大切であるということを都民に強く訴えて、そして、防災隣組などの自助、共助の取り組みを後押ししていたわけですが、同時に、三環状道路ネットワークの整備など、公助の取り組みも推進してきており、行政の責任として、防災対策全般の充実強化を図ったものと認識しています。
都民の安全を確保するため、過去の教訓を生かし、自助、共助、公助を束ねて、直面するリスクを軽減する対策を講じることが首都を預かる知事の責務でありまして、石原前知事の取り組みを踏まえて、それを発展させ、深めていくつもりです。
それは例えば、木密地域における不燃化特区を十二地区から五十地区へ、十二から五十へふやして、そして、水門、堤防の耐震、耐水対策などを既に打ち出したが、公助の取り組みを着実に進めていって、さらに帰宅困難者対策、民間にも義務を果たして、そして、民間企業も備蓄をちゃんとやってもらうと。木密地域の住民による初期消火活動の強化など、自助、共助の取り組みも進めて、行政、企業、住民の総力を結集して、東京の防災力を向上させるというのが今回の予算で、きちんと明記したことであります。
次に、外環についてでありますが、ご質問のところで、総事業費が三兆円だというふうないい方がありましたが、お話の総事業費三兆円については、今はっきりしているのは一兆二千八百二十億円のみでありまして、三兆円というのは架空の話ということになります。
外環は、まず、首都直下型地震などにおいては、東西の交通の分断を防いで、救援、復旧活動を支える重要な社会インフラとなることは確実であります。そして、関越道と東名高速間を二〇二〇年に確実に開通させることが、東京オリンピック・パラリンピックにも必要なことであります。
東名高速の出口から練馬の関越の入り口まで、僕は自分で運転して一時間半かかったりしている。物すごい排気ガスが、それだけ環八の間に大変な量で出ているわけです。それを、東名の砧のところから練馬までつなげば十五分。大気汚染の問題を考えただけでも、これは重要なインフラだというふうに考えていただきたい、こういうふうに思います。
最後に、憲法についてでありますが、戦後六十年以上にわたって運用されてきた日本国憲法のもとで、平和で安定した国がつくられてきたことも事実だと思います。
しかし、例えば、憲法九条の問題でいえば、戦争というものを想定外にしてきた。ということは、冷戦後の状況を考えると、これはやはりおかしいのではないかという考え方が出てきて当然であります。
三島由紀夫が死ぬ少し前に、戦後民主主義とそこから生じる偽善、こういういい方をしました。また、旧制中学一年のときに敗戦を迎えた石原前知事は、まさに戦後体制の虚偽と、そういうやっぱり思春期に敏感に感じたことだと思います。日本国憲法に対する石原知事の発言は、石原さんの一流のレトリックだというところがあります。
現実に合わないことに対して、ごく普通の感覚で憲法をとらえ、必要な改正を含めて国民全体で議論して決めていく、みんなで議論して決めていくのは当たり前のことじゃないですか。
最後に申し上げますが、石原前知事が憲法の成立過程について、石原前知事なりのお考えを述べたことは承知しておりますが、しかし、思想、信条の自由という基本的人権を否定した事実は一度もないと、そういうふうに認識しています。
以上です。
〇東京都技監 四点のご質問にお答えいたします。
初めに、道路、橋梁の維持、それから耐震化についての全体の費用は幾らかかるかのお話でございますが、橋梁の耐震化は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえまして、緊急輸送道路などの橋梁四百一橋を対象にして進めております。今年度末までに約八割を、平成二十七年度末までにはすべてを完了させる予定でございます。
耐震の事業費につきましても、毎年度、工事実施前に詳細な設計などを行い、試算しており、来年度予算は約四十億円を計上しております。
それから、道路橋梁費の維持管理のための概算事業費についてでございますが、東京の発展を支えてきた重要な骨格幹線道路も維持管理、毎年のように日常的にやっておりますし、日々これを十全に機能を発揮させるためには、将来に向かって必要な都市基盤を支えていくことが東京の活力、発展を支え、日本を牽引していくことにとって重要だというふうに認識しております。
事業費につきましては、毎年度、工事実施前に詳細な設計などを行い、算出しておりまして、個別の全体事業費というのは設定しておりません。
次に、社会資本の維持更新についてでございますが、骨格幹線道路を初めとする東京のインフラ、これは都市の安全・安心を確保するとともに、都民生活や都市活動を支える重要なストックで、東京の発展を支えるものでございます。
したがいまして、インフラの機能を十全に発揮するためには、日々の維持管理を行いながら、さらに基盤整備を促進していくことが重要だというふうに認識しております。
それから、ちょっと細かいんですが、都の来年度予算における道路橋梁事業費の維持補修費と整備費について、国費と単独費に分けてお答えせよというご質問でございますので、維持補修費は九百二十六億円、整備費は二千四百二十四億円でございます。
このうち、維持補修費では国庫補助事業が百二十五億円、単独事業費が八百一億円、整備費では、国庫補助事業費が千二億円、単独事業費が千四百二十二億円でございます。
都の現在の都市計画道路の整備率だとか平均旅行速度を考えると、これからもなお一層、都市基盤整備を推進することが極めて重要だと考えております。それと並行しつつ、日々の維持管理をやっていくということだと考えております。
最後に、今後の都市基盤整備についてでございますが、幹線道路を初めとするインフラは、都市活動を支え、日本を牽引していくために極めて重要だと認識しております。
今後とも、既存インフラにつきましては、維持管理を行って守っていく、さらに、日本を牽引していくインフラも十全に整備していくことが重要だと認識しております。
〇福祉保健局長 五点の質問にお答えいたします。
まず、国民健康保険制度についてでありますが、国民健康保険制度の保険者は区市町村であり、保険料、保険税の賦課方式や料率は、それぞれの自治体の議会で審議され、決定されるものであります。
現在の国民健康保険制度には、医療費が高く所得の低い高齢者や、失業者などの低所得者の占める割合が高く、保険料の確保が困難であるなど、構造的な問題があることは認識しておりますが、こうした課題には、国民皆保険制度を守るという観点から、制度設計者である国が責任を持って抜本的な解決策を講じることが必要であります。
そのため、都は既に、国に対し、国民健康保険制度の見直しに当たっては、将来にわたり安定的で持続可能な制度になるよう、構造的な課題の解決、必要な財源の確保等について提案要求をしております。
次に、保険料負担軽減のための補助等についてでありますが、都は、国民健康保険制度の健全かつ安定的な運営を図るため、法令等に基づき、各保険者に対する財政支援を既に行っております。
都として、新たな支援を行うことや、国に対して国庫負担ふやすよう求めることは考えておりません。
次に、介護サービス基盤の整備等についてでありますが、高齢者が要介護状態になっても、安心して住みなれた地域で暮らし続けることができる社会を実現するためには、施設サービスだけではなく、日常生活の場で、在宅サービスやケアつき住まいなどのサービス基盤をバランスよく整備することが必要であります。
そのため、都は、介護保険の保険者である区市町村が、地域の介護ニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、高齢者保健福祉計画を定め、計画的に介護サービス基盤の整備を進めるとともに、医療、福祉の連携による在宅療養の推進、認知症対策の推進等、さまざまな取り組みを進めているところでございます。
次に、特別養護老人ホームの整備についてでありますが、都が第五期の高齢者保健福祉計画で定めた特別養護老人ホームの必要入所定員総数は、介護保険の保険者である区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づいたものであります。
都は、高齢者人口に比べて整備状況が十分でない地域における補助額を最高で一・五倍に加算するほか、都有地の減額貸付や定期借地権の一時金に対する補助への加算など、独自の多様な手法を講じ、平成二十六年度末までに四万五千人余のサービス量を確保してまいります。
最後に、保育サービスの充実に向けた取り組みについてでありますが、保育サービスは、保育の実施主体である区市町村が、認可保育所に限らず、認証保育所、認定こども園、家庭的保育など、地域のさまざまな保育資源を活用して整備するものであります。
都は、待機児童の解消に向け、区市町村や事業者の負担を軽減する都独自の支援策や、未利用都有地の保育所用地の貸し付け、定期借地権利用に対する支援などを実施し、平成二十一年度から二十三年度の三カ年で、認可保育所一万七千五百十四人分を含め、保育サービス全体で約二万七千人分を整備いたしました。
また、今年度から、三年間で二万四千人分の保育サービスの確保を目指し、整備を進めてまいります。
〇都市整備局長 三点のご質問にお答えいたします。
まず、ケアつき住まいについてでございますが、都は、中堅所得者層が適切な負担で入居できるケアつき住まいの整備を進めております。高齢者が可能な限り自立して暮らせる住宅への需要が高まっていることを踏まえ、今回、整備目標を一万戸に引き上げ、来年度から補助制度を拡充いたします。
具体的には、国、都及び区市町村の三者の補助事業について、都の補助率をふやすとともに、区市町村の負担がない場合でも、都費を充当して事業を行うことができるよう制度を充実いたします。
また、医療、介護サービスの事業所と連携する場合は、現行の国の直接補助に、区市町村の同意を得た上で、都が国と同額を加算するよう制度の拡充を図るなどして、ケアつき住まいの供給を進めてまいります。
次に、住宅の耐震改修助成についてでございますが、都は、地震発生時の住宅の倒壊による道路閉塞や大規模な市街地火災を防止することを目的に、防災都市づくり推進計画に定める整備地域を対象に、区と連携して助成を行っております。
都としては、木造住宅密集地域整備事業などとあわせて、引き続き整備地域に的を絞り、重点的に木造住宅の耐震改修助成を行ってまいります。
最後に、住宅の不燃化についてでございますが、都はこれまでも、延焼を防止するという公共性の観点から、延焼遮断帯となる道路の沿道建築物の不燃化建てかえや老朽建築物の共同建てかえ等に対し、費用の一部を助成してまいりました。
不燃化特区制度では、住民の建てかえ意欲が高まるような環境づくりや地域整備の仕組みづくりなど二十項目から成る支援策等により、区の不燃領域率を高める取り組みを後押しすることとしております。
今後とも、こうした必要な支援を行ってまいります。
〇産業労働局長 九点のご質問にお答えいたします。
まず、雇用対策についてでございます。
新年度予算案では、雇用創出に関する基金事業における国の交付金の減などがございますが、都といたしましては、現在の雇用情勢に対応する施策を行うため、必要な予算額を計上しております。
若者を対象とする事業につきましては、研修と企業での派遣就労を組み合わせました、これまでの就業支援策を再構築し、規模を拡大するなど、雇用就業対策をさらに充実させております。
次に、職業訓練についてでございます。
都は、厳しい雇用情勢にかんがみ、民間委託も活用しながら、職業訓練の規模を、リーマンショックのあった平成二十年度以降、八千六百人程度拡大し、おおよそ倍増させるとともに、求人開拓や合同面接会など、その機能の充実を図っております。
なお、授業料につきましては、生活困窮者等に配慮した上で、受益者負担の観点から、一年以上の職業訓練について有料化したものでございます。
次に、安倍首相の経済団体への要請についてでございます。
首相が主要経済団体に対し、報酬の引き上げなどを要請されたことは承知しておりますが、これは、国のデフレ脱却に向けた取り組みの一環として行われたものと理解しています。
次に、経済界、大企業に対する賃金引き上げ等の申し入れについてでございます。
賃金の引き上げは、各企業の経営判断に基づき自主的に決定されるべきものであると考えます。
なお、下請取引の適正化については、都はこれまでも、下請法等の講習会や相談員の企業巡回等により対応を行っております。
次に、最低賃金の引き上げのための支援についてでございますが、東京都内の最低賃金は、法に基づく手続により、国において、労働者の生計費や賃金、企業の支払い能力を勘案して決められることとなっております。
都としては、この制度が適正に運用されるべきものと考えております。
次に、金融円滑化法終了に関する国への申し入れ等についてでございます。
国は、三月末の法の終了に向け、経営改善等のための対策を実施するとしています。都といたしましても、必要な支援を行うこととしており、法の再々延長を申し入れる考えはございません。
相談窓口については、既に特別相談窓口を設置して、適切に対応しております。
また、官公需の発注については、従来から、分離分割発注などにより中小企業の受注機会の確保に努めております。
なお、国が創設する予定の地域経済活性化支援機構は、中小企業の再生に軸足を置いた支援を目的としたものでございます。
次に、借り工場の家賃等への直接補助についてでございますが、都は既に、経営困難な中小企業に対して、事業承継・再生支援事業で相談や経営支援を行うとともに、資金面でも制度融資により対応しております。
したがいまして、お話の家賃補助などについて実施する考えはございません。
次に、スーパーコンピューターを活用した中小企業の支援についてでございます。
都は、産学公連携窓口を設け、さまざまな高度先端技術を中小企業が活用できるよう、適切な情報提供を行っております。
最後に、商店街及び買い物弱者についての認識と対応でございます。
商店街は、商業活動の拠点であるとともに、地域コミュニティの担い手となっており、都はこれまで、さまざまな支援を行ってまいりました。
都は、買い物に不便を感じる住民に対応する必要があることから、今年度から買い物弱者支援モデル事業を実施しております。
〇総務局長 三点のご質問にお答えいたします。
まず、職員の採用や増員の実施についてでありますが、都の職員の採用や配置は、事業執行に必要な人員の確保や職員の退職動向などを総合的に勘案して行っており、今後とも、こうした方針に基づき、職員の採用や配置を実施してまいります。
次いで、中林教授の著書での発言についてでありますが、教授は、当該著書の中で、防災まちづくりを動機づける基本は、個々の世帯での防災活動であり、防災家づくりの実践であるとも述べております。
お話の発言は、それぞれの住宅の防災性の向上にとって、現在、自治体が行っている耐震診断、耐震改修などの公的支援が有効に機能していることを評価し、その重要性を指摘したものと理解をしております。
最後に、消防団についてでありますが、昨年十一月に修正いたしました地域防災計画においても、都は、消防団の人材確保や技能向上に向けた支援を強化することとしております。
このため、東京消防庁と連携した人材確保のための広報の実施、団員の技能向上に向けた訓練所の講習内容の充実、さらには、区部に加え、多摩・島しょ地域の消防団の資器材整備など、消防団活動の多面的な支援に取り組んでまいります。
〇財務局長 二点のご質問にお答えいたします。
まず、公契約条例についてでありますが、都はこれまでも、我が国の法制度に基づき、契約に当たり、最低賃金法等の法令遵守を義務づけるなど、労働環境の確保を図ってきております。
お話の、いわゆる公契約条例につきましては、労働法制との整合性や、賃金水準を高くできない中小企業が入札から排除されるおそれなど、労働政策や産業政策の観点から、整理、検討すべき課題が指摘されているところであります。
今後とも、現行法令のもと、入札契約制度の適切な実施に努めてまいります。
次に、財政運営についてでありますが、外環道を初めとする都市インフラの整備は、都民の利便性や国際競争力の向上、東京の活力維持などに不可欠な取り組みであります。
同様に、福祉や医療、防災対策、雇用や中小企業対策など、都民にとって必要な施策には的確に財源を振り向けているところであります。
また、都財政は景気変動の影響を受けやすいことから、基金残高の確保も重要な課題であり、引き続き、財政の健全性に十分留意しながら、都民生活の向上に取り組んでまいります。
〇環境局長 二点のご質問でございます。
まず、再生可能エネルギー普及の目標達成に向けた都の取り組みについてでございますが、七年前に都が策定しました再生可能エネルギー戦略は、二〇二〇年までの高い目標を掲げ、利用拡大に向けた施策の基本的方向を定めた点で、大きな意義を持つものでございます。
その中でも、特に固定価格買い取り制度活用の必要性をいち早く提起し、その後、国に対して、自然エネルギー自動車などとともに導入を強く要求した結果、ようやく昨年七月から制度が開始されまして、再生可能エネルギーの普及が本格化する新たな局面を迎えております。
都はこれまでも、住宅用太陽光発電の導入を十倍以上に加速する大きな成果を上げておりまして、今後とも、屋根貸し事業を初め、再生可能エネルギー拡大を加速する取り組みを展開してまいります。
次に、太陽光発電の初期投資軽減に向けた取り組みについてでございますが、先ほどもご答弁いたしましたが、都は、金融機関に働きかけて、低利のソーラーローンの提供を促し、初期負担なく太陽光発電を設置できる仕組みを構築してまいります。
これを初め、多様な取り組みを展開することで、太陽光発電のさらなる導入を促進してまいります。
猪瀬知事に再質問します。
まず、保育に関する問題です。
知事は、施設基準を持ち出して認証保育所と認可保育園は同等などと答えました。しかし、認可保育園ではすべての職員が保育士でなければならないとなっているのに対し、認証保育所は6割が保育士ならよいとするなど、認証保育所の基準が低いのはまぎれもない事実です。
また、園庭のない認証保育所が多い中でほとんどの認可保育園は園庭を有しているなど、現に認可保育園の方が環境が整っているのです。
わが子によりよい環境で質の良い保育を受け豊かに育ってほしいと願っている保護者たち自身が、認可保育園を増やすことを切実に求めているのです。
私は知事に、こうした訴えに真摯に耳を傾けていただきたいのですが、いかがですか。そして、ぜひ認可保育園増設に力を注いでいただきたいと思いますが、もう一度答弁を求めます。
知事は、都内高齢者の暮らしの困難に関するわが党の質問に対し、高齢者福祉の切り捨てを当然視した上、高齢者の平均所得額と貯蓄額のみをあげ、高齢者は生活に困っていないかのような答弁をしました。
しかし、高齢者の経済状態には格差が大きく、平均で考えることはできないというのは常識です。
OECDの国際比較では、日本の高齢者の貧困率は2割を超え、1人世帯では5割近くなるなど、OECD平均を大きく上回っています。貯蓄のない高齢者が1割を超えていることもわが党は再三指摘してきました。
東京都の「高齢者保健福祉計画」でさえ、高齢者世帯の24%をしめるひとり世帯では年収200万円未満が6割をこえていることを認めているではありませんか。
知事、貧困に苦しむ高齢者が広がっていることを認めるべきですが、どうですか。これまでの福祉切り捨ての都政を反省し、都民の命とくらしを第一に考える都政に転換するべきです。お答えください。
〇福祉保健局長 二点の再質問にお答えをいたします。
認証保育所の施設基準の話でございますけれども、先ほど知事が答弁したのは、施設基準が認可保育所と同等であるということでございます。
また、認証保育所は、すべての施設でゼロ歳児保育や十三時間開所を実施するなど、大都市特有の保育ニーズを踏まえたサービスを提供しており、一方、認可保育所におけるゼロ歳児保育の実施率は八割を下回り、二時間以上の延長保育実施率は二割に満たないというような状況もございます。
次に、高齢者施策の話でございますが、先ほど知事がご答弁申し上げたとおり、都議会でのさまざまなご議論を踏まえ実施した十二年前の福祉施策の見直しも、常に都民の理解は得られていると認識しております。
高齢者の生活実態はさまざまでございます。所得格差の是正や所得保障は、基本的には国の責任で対応すべきものであり、都が果たすべき役割は、自助、共助、公助の取り組みを適切に組み合わせながら、都民ニーズにこたえる福祉サービスの基盤整備に全力を挙げることであると思います。
こうした考え方に立って、来年度予算は、費用対効果の高い、新しい施策を盛り込みながら、過去最高の一兆円を超える財源を福祉の予算に充てたというところでございます。
以上