和泉なおみ(葛飾区選出)
一、放射能から子どもたちの健康を守るとりくみ
二、大気汚染医療費助成制度について
三、社会保険労務士の活用について
【答弁】
知事
教育長
福祉保健局長
環境局長
知事本局長
総務局長
まず始めに放射能から子どもの健康を守る取り組みについて伺います。
福島第一原発の事故から3年が経過しようとしています。事故によって放射能が撒き散らされ、福島県民の中には今なお、生まれ育った町や村に帰れない方が大勢います。福島県を中心に100近い市町村で、除染作業で苦闘を続けています。
私の住む葛飾区は、都内でも比較的高い放射線量が測定されています。一昨年にはわが党の調査により、都も除染をする事態ともなったところです。原発事故後、区内のお母さんたちは「こどもたちの10年後、20年後を守るために、二の足を踏んでいる場合じゃない。」という思いから、署名を集め区に放射能対策を求めました。「こどもがたびたび鼻血を出し、心配で夜も眠れなかった」など不安の声を寄せています。2万円以上かけて尿検査を継続している方もいます。
Q 知事は、かつて、国会で、「福島県民の放射能被害について、直接行って診断して助けてあげないといけない。」と、発言されています。事故が起こった以上、甲状腺がんや、心臓、血液の疾患など、放射能が全身に及ぼす影響から子どもたちを守る上でも、放射線の及ぼす影響について、疫学的健康調査を行うことを強く国に求めるべきだと考えますが、知事の見解を伺います。
福島ではすでに33人の子どもが甲状腺がんを発症しています。通常100万人に1人と言われていますが、1万人に1人という高い発症率です。葛飾区内のお母さんたちも、大変強いショックを受け、「こどもたちの身体の中で、どんなことが起こっているかがわからない」不安にかられているのです。今後、子どもの甲状腺がんがふえる危険性がありますが、この甲状腺がんに詳しい小児科医が不足しています。子どもの甲状腺エコーを撮影できる技師や、読影できる医師を養成し、スキルアップの研修に取り組むことを国に強く求めるとともに、都としても取り組むことを求めておきます。
都は、都立施設についても、2012年7月に水元公園で、除染を行った以外は一切ホットスポット調査も除染も行っていません。そればかりか、中川公園、水元公園、篠崎公園で行ってきた減衰測定を、放射線量が4割程度減衰し、下げ止まっているとして、昨年11月で打ち切ってしまいました。しかし、除染を行っていない以上、放射性物質は雨や風に流されて飛散し、移動します。調査を継続すべきです。
Q 今年2月20日などに、わが党と市民団体が放射線測定した水元公園74箇所のうち、地上1メートルで、毎時0・23マイクロシーベルトを超えているのは、20箇所、地上1センチで毎時1マイクロシーベルトを超えているのは、16箇所でした。これは葛飾区の除染対象となる数値です。
しかし、都立の公園だからと、放置されているのです。昨年6月には、学校の近くの通学路で、地上1センチで毎時6・1マイクロシーベルトという高いところがあり、区が調査し除染しています。都が、少なくとも水元公園、都立学校などの都有施設の放射能調査をして、その対策をとることを子育て中の多くの都民が求めています。この声にどうこたえるのですか。
次に、和解条項に基づく大気汚染医療費助成制度について伺います。
都は、東京大気汚染訴訟の和解条項に基づき、ぜんそく患者の医療費助成制度を創設し、2008年8月から実施しています。和解条項5年目の見直しにあたって、都は暫定措置を設けるものの、患者の新規認定を打ち切り、医療費も患者が2割負担する方向を打ち出しました。
Q 長い間、大気汚染による喘息に苦しんできた患者さんたちは、この制度ができて、やっと新薬が使えるようになり、何十年ぶりかで布団で眠れるようになったと、ほっとした矢先のことです。「制度見直しの時には、公害患者と家族の会のみなさんと相談しながら進める」という約束だったのに、一言の相談がなかったことにも、患者さんたちは、大きな怒りを感じているのです。
患者さんたちは、「命をつなぐ」この制度を、なんとしても今のまま継続してほしいと、冬の寒風の中を連日、都庁前で座り込み行動を行い訴えています。まさに命がけの行動です。患者さんたちが、都知事宛に訴えを書いたはがきは、2500通に及び、今も続々と届き、知事に直接訴えを聞いてほしいと切望しています。
知事は、厚生労働大臣のときに国会で、ご自身がぜんそくであることに触れながら「継続的に医者が管理していないところで、投薬を中断したり、そういうときに(発作が)ばっと起こったときに、(薬を)持っておけばいいですけど、そうじゃないと(呼吸が)とまっちゃう可能性があるんです。」と答弁されています。ご自身の経験からも、ぜんそくの苦しさを良く知っていらっしゃいます。患者さんたちの、この切実な訴えを、知事はどのように受け止めますか。知事の率直な思いを、お答えください。
Q この医療費助成制度の目的は、大気汚染の影響を受けると推定される疾病にかかった都民に対して医療費を助成することによって、患者の治療の機会を確保し、重症化の防止を図ることです。国が消極的な態度であっても、都は患者の苦しみに寄り添い、患者の早期救済を最優先するために、都独自の制度導入に踏み切ったものです。公害患者と家族の会が東京保険医協会と協同で行ったアンケートでも、9割を超える方が、現行制度の継続を求めています。「お金の心配がなく治療に専念できるようになった」、「薬を節約せず規定どおり服用」できるようになった、「仕事を続けられる自信がついた」などの声を寄せています。
この助成制度の目的に照らせば、制度から5年たったからといって、新規認定を打切り、今なおぜんそくに苦しむ患者さんたちに2割の自己負担を強いることは、許されません。都の責任で制度を変えずに継続するべきです。どうですか。
都はぜんそく医療費の負担を患者にしわ寄せしないよう、制度導入時に国や自動車メーカーを動かしたイニシアティブを、再度発揮し、関係者に引き続き出資を粘り強く求めることを強く要求するものです。
次に、社会保険労務士など専門性の高い人たちの教育現場における活用について伺います。
すでに、都立高校で、こうした専門家を活用した、労働法令や年金の講義が行われていますが、ここ数年実施する学校は減少しています。
私自身も社会保険労務士です。労働基準法をはじめ、社会保険などを専門とし、中小・零細企業の相談にのり、労働社会保険の手続きを行ってきました。その中で、労使双方が権利や法律の知識を持つことの必要性を痛感してきました。不当解雇を争う労使紛争の経験の中で、相手の会社にも社会保険労務士が入っていました。しかし、その方が、「法律の規定に従って、不払い残業代も含め、払いなさい」と社長を説得し、和解がスムーズに進んだことがありました。当事者は、「もし社労士さんがいなかったら、紛争が長引いて、裁判になっていたかもしれない」と語っていました。
アルバイトをしている高校生も多くいる中で、ブラックバイトの問題も、顕在化しています。専門家の講義を聞き、労働法はもちろん健康保険や年金、雇用保険などを生きたものとして学び、就労先で、法律にどう守られ、どんなときにどんな社会保障が受けられるかを知ることは、卒業後も、すぐに役立つものです。高校生からは授業をうけて、「最低賃金や労働基準法を始めて知った」という感想が寄せられているということでした。
Q 高校生が、個性を発揮し、主体的にのびのびと、胸を張って働くためにも、法律など必要な知識を習得し、社会に出る準備をする機会として、都立学校で積極的に社会保険労務士など、経験をつみ専門性の高い人たちを授業の講師として活用することは重要だと思いますが、どうですか?
次に都の指定管理者の労働条件審査について伺います。
都は指定管理者について、施設ごとに外部の専門家を入れて管理運営状況について評価しています。しかし、法令が守られているかということについては、事業者からの報告書とヒアリングによるチェックで、その労働条件、雇用形態など評価項目は具体的になっていません。
都内11区で、社会保険労務士による指定管理者の労働環境モニタリングを導入しています。たとえば千代田区では、雇用契約と協定等、労働時間、労働保険・雇用保険、法定帳簿の整備などの項目ごとに、社会保険労務士が現地調査、書類確認、個別面接を行い、結果を事業者に通知し、公表しています。また、別の区では同様の調査によって、落札するために委託費を下げた結果、賃金が最低賃金になる。人件費を上げられないので、有期雇用が多くなるなど、毎回チェックシートに書ききれないほど指摘事項が出るそうです。このように指定管理者への労働条件等の評価項目を入れた調査によって、見えてくる労働環境の実態があります。
低賃金や長時間・過密労働・厳しいノルマ、若い世代を使い捨てにすることで、利潤を増やし、急成長を遂げているブラック企業の問題が、社会的にも大きな問題になっています。一方では、長引く不況の中で、厳しい単価競争・価格競争にさらされている中小企業の実態を、私は見てきました。
Q 都が委託する指定管理者の現場で、働く人たちが犠牲なるということがあってはなりません。
そのためにも都は、指定管理者の業務について包括的なチェックだけでなく、労働条件・雇用形態など、個別の項目による審査・評価に改善すべきと考えますが、どうですか。
さらに指定管理者の管理運営状況を評価する評価委員には、弁護士や公認会計士などに加えて、雇用の現場を熟知している社会保険労務士を導入する必要があると思いますが、あわせて見解を伺います。
板橋区では、再委託業務の妥当性についても評価項目に入れています。指定管理者の多くは、実際の業務を再委託契約しています。都は、指定管理者の業務の質を確保するためにも、再委託先の業者の労働環境についても、審査評価対象にするよう強く求め、質問を終わります。
〇知事 和泉なおみ議員の質問にお答えいたします。
東京大気汚染訴訟の和解に基づく医療費助成制度についてでございますが、この制度は、東京大気汚染訴訟における東京高裁の和解勧告を受け、過去の大気汚染による健康被害者の救済のために創設したものでございます。
今回、制度創設後五年経過時の見直しを行っておりますが、この見直しの実施は、原告であった患者団体側も了解した和解条項に明示されているものであります。
大気環境が改善し、当初の財源を使い切り、自動車メーカー等からのさらなる財源拠出が極めて困難な中で、和解上の都の負担分である三分の一の財源拠出を継続するとしたことは、都としてでき得る限り最大限の対応をしたと考えております。
残余の質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁させます。
〇教育長 都立高校における社会保険労務士の活用についてでありますが、都立高校においては、教科公民で、全ての生徒が、雇用と労働問題、社会保障などについて学習をしております。こうした学習に加え、昨年度、都立高校七校では、学習内容の理解を深めるために、社会保険労務士を講師として講習会を実施をいたしました。
都教育委員会は、今後とも、こうした社会保険労務士など外部人材の活用事例を、校長連絡会や進路指導研修会などで伝えてまいります。
〇福祉保健局長 放射能に係る健康調査についてですが、都は、都内八カ所に設置しているモニタリングポストで二十四時間継続して空間放射線量を測定しており、現在の測定値は、原発事故発生前の範囲内となっております。
また、食品についても、国の仕組みに基づき、生産地において農産物等の放射性物質の検査が行われております。
これに加えて、都独自に、小売店に流通する野菜類や、子供が継続的に摂取する乳製品などを中心にモニタリング検査を実施しており、国内産食品から基準値を超えたものはございません。
こうしたことから、都として、現在、特段の健康調査を実施する必要はないと考えております。
〇環境局長 都有施設での放射線量の調査についてでありますが、国の航空機モニタリング調査や都の百カ所の調査などから、都内の空間線量は関東地方の中でも高い水準にはなく、事故由来放射性物質を除去しなければならない面的な汚染はありませんでした。
また、都内の中では比較的空間線量が高いことが示された区部東部三区の水元公園など都立公園を対象として、放射性物質がたまりやすい地点で、平成二十三年十一月から空間線量を測定しましたが、当初から、文部科学省ガイドラインで除染の目安としている地上高さ一メートルで、周辺より毎時一マイクロシーベルトを上回るという地点はございませんでした。
この調査は、物理学的半減期等による時間的減衰を確認するため継続実施いたしましたが、減衰を確認し、所期の目的を達成したことから、昨年十一月に測定を終了したものであり、これを再開する考えはなく、また、都有施設全般の調査も不要と考えております。
〇知事本局長 東京大気汚染訴訟の和解に基づく医療費助成制度の見直しについてでありますが、この制度は、和解関係者が応分の負担を行い創設したものであり、自動車メーカー等からの追加負担が極めて困難である以上、現行制度のまま継続することはできないと考えております。
都は、認定した患者の方に対し、和解上の負担分である三分の一相当の範囲で助成を継続するほか、最大限の経過措置を設けることとしております。
和解の趣旨を踏まえれば、自動車メーカー等が負担すべき財源について、都がかわって負担することはあり得ないと考えております。
〇総務局長 指定管理者の労働条件審査についてでございますが、都はこれまでも、各都立施設の設置条例等において関係法令の遵守を義務づけるとともに、指定管理者の選定や管理運営状況の評価を通じて、必要な労働環境が確保されるよう取り組んでまいりました。
また、指定管理者の選定や評価を行うに当たっては、外部の専門家を含む委員会を設置し、客観的かつ専門的な観点から、労働環境を含めた事業計画の審査や履行状況の確認も行っております。
引き続き専門家の知見を活用しつつ、指定管理者制度における適正な労働環境の確保に努めてまいります。