二〇一五年 第二回定例会  最終討論(全文) 6月24日

尾崎あや子(北多摩第一選出)

 日本共産党都議団を代表して、第151号議案「土地の信託の変更について」ほか6議案に反対、わが党提出の「歯科衛生士修学資金貸与条例」に賛成の立場から討論します。

 第151号議案は、コスモス青山ビルの土地信託の期間を5年延長する議案です。
 土地信託事業は、貴重な都有地を信託銀行に提供して貸ビル事業による配当を期待したものでした。ところが、20年間で1、450億円の配当を見込んだものの、実際はわずか4億円たらず、最近では年間500万円程度の配当に過ぎません。大失敗だったことは明らかです。
 一方の信託銀行は、信託報酬と貸付利息で合わせて55億円も確保しています。これでは信託銀行のための事業ではありませんか。契約延長でなく、徹底した検証を行い、土地信託をやめるべきです。

 次に、わが党提出の「歯科衛生士修学資金貸与条例」です。
 歯科口腔保健の推進法には、乳幼児期から高齢期まで、生涯にわたる歯科疾患予防の重要性が明記されています。そのために大きな役割を果たすのが歯科衛生士です。介護予防や誤えん性肺炎の予防など、活躍の場はますます広がっています。
 ところが歯科衛生士の不足が深刻で、緊急対策が求められるため、本条例を提案しました。都が実施している看護師養成の修学資金貸与と同様の制度を、歯科衛生士養成のために実施し、都内で5年間働けば返済免除とするものです。関係者・団体から、期待の声が寄せられています。
 ぜひ本条例を成立させていただき、引き続いて、歯科衛生士の待遇改善もふくめた養成・定着・再就業対策、および歯科口腔保健の総合的な拡充を、ご一緒に推進していこうではありませんか。

 国が社会保障改悪を進めるなか、都民の福祉の増進に責任を持つ地方自治体の役割を発揮することが求められます。わが党は、高齢者福祉の拡充についてとりあげ、深刻化する高齢者の貧困対策を強化するよう求めましたが、知事は現状の不十分な施策でよしとする答弁にとどまりました。一方、保育園や特養ホームなど福祉インフラ整備については、都有地の活用を前に進める立場の答弁があったことは重要です。さらなる、福祉の拡充を求めるものです。
 また、学生を違法な雇用で酷使するブラックバイトについて、知事が「法令に反した労働条件での勤務を強いられ、学業に影響をきたすことはゆゆしき問題」との認識を初めて示しました。都としてもブラック企業やブラックバイト根絶をめざし施策を拡充していくことを求めておくものです。

 文科大臣が都に要請した新国立競技場整備費の一部負担への対応が問われました。わが党は、国立である以上国の費用でという、知事の所信表明での発言を評価するとともに、都立競技施設整備費に加えて新国立競技場まで都が負担することに、都民の理解は得られないと主張しました。知事は、都民が納得できる情報を踏まえて検討すると答弁しましたが、国の費用でという原則を貫くことを重ねて求めるものです。
 また、文科省の報告をただ待つだけでなく、巨大構造を見直すよう求めるべきです。

 わが党は、米軍横田基地およびCV22オスプレイ配備の危険性についての認識をただし、オスプレイ配備反対を国と米軍に申し入れるよう求めました。知事は、「国の責任において、安全対策の徹底と環境への配慮を米国に働きかけることをすでに要請している」と答弁しました。しかし、国はハワイでの墜落事故の後、原因解明さえもされていないのに、「オスプレイの安全性を確認している」と強弁しているのです。
 またオスプレイによる訓練について、国から米国は既存の日米合意を遵守する旨を明言していると聞いているとの答弁もありましたが、米軍が、この合意を守っていないのが実態ではありませんか。
 知事は、「都民の生命と安全・安心を守る立場から、国に対して必要なことは申し入れていく」と答弁しました。それなら、国の説明を代弁するような姿勢ではなく、都民の立場に立って、横田基地およびオスプレイ配備の危険性について、日本政府と米軍・米政府に対し、きびしくただすとともに、配備反対の声をあげるべきです。

 わが党は、安倍政権が今国会を延長し成立を強行しようとしている安保法制、すなわち日本を米軍とともに海外で戦争できる国にする戦争法案について、知事の認識をただしました。
 知事は「集団的自衛権の行使についても、憲法に明記するか、解釈で可能にするかは、人それぞれの意見がある」などと答弁しましたが、国家権力をしばる憲法を、政府が自分に都合のいいようにねじ曲げて解釈することは許されません。
 圧倒的多数の憲法学者、そして歴代の内閣法制局長官の多くも「違憲」との立場を表明しています。朝日新聞社の世論調査によると、安全保障関連法案について「賛成」は29%で「反対」は53%です。国会に呼ばれた3人の憲法学者の「憲法に違反している」の主張を支持するが50%、「安倍政権の主張を支持する」が17%となっており、国民世論でも、憲法違反だとの声が広がっているのです。
 知事が、違憲立法を許さない立場から発言し行動するよう求めるとともに、日本共産党は、戦争する国づくりをめざす法案を今国会で廃案にするために全力をつくすことを改めて表明するものです。

 次に、意見書についてです。
 都議会では、意見書の採択は全会一致が原則とされ、常任委員会で意見が一致したものを、本会議に上程することになっています。ところが自民党は、常任委員会で調整がつかなかった2つの意見書を、多数決でごり押ししようとしています。民主的議会運営を踏みにじるやり方は、許されません。
 「国会における憲法論議の推進と広く国民的議論の喚起を求める意見書」は、「我が国をめぐる内外の諸情勢に大きな変化が生じていることにかんがみれば、憲法は、国家の基本法として、我が国の直面する諸課題に的確に対処できることが求められている」としています。安倍首相は国会で、「新しい時代にふさわしい憲法のあり方について国民的な討論を深めていきたい」「国民の間に憲法改正の機運を醸成したい」と発言していますが、この意見書はまさに、安倍首相の発言に呼応するものにほかなりません。憲法違反の戦争法を推進し、さらに明文改憲をねらう安倍首相の暴走政治を後押しする意見書には、きびしく反対するものです。

    「水素社会の実現に関する意見書」についてです。水素エネルギーは、利用段階ではCO2を排出しないなどの特性を持っており、わが党は、その活用を進めることに反対ではありません。しかし、安全性への不安、製造段階ではCO2を出さない技術が未確立であること、原子力を利用した水素製造の動きがあることなど様々な課題があり、水素エネルギーの普及・活用は、慎重に進める必要があります。この立場から、意見書が、オリンピック・パラリンピック大会までの普及を視野に入れた集中的な財政支援や、規制緩和の早期実現を求めることには、賛成できません。

 5会派共同提案の費用弁償を実費支給にする条例について、自民党、公明党などが今回も先送りにしようとしています。あり方検討会の設置が理由になっていますが、わが党は、あり方検討会を直ちに設置し、定数問題や、政務活動費の改善などを検討することは賛成です。しかし、費用弁償問題は10数年来改善が求められており、政令市での廃止も進んでいるものです。継続審査に反対し、採決を行って成立させるようつよく求めて、討論を終わります。