里吉 ゆみ(世田谷区選出)
東京における「地域包括ケアシステム」の推進について
ひきこもりへの支援について
東京都における「地域包括ケアシステム」の推進についてうかがいます。
私はこれまで、区議会議員として、また都議会議員として、高齢になっても誰もが安心して住み続けられる地域をつくりたいとの思いで活動してきました。 私の住む世田谷区は特養待機者が現在約2,300人、老老介護が限界に来て何とか施設に入れたいという方や、ひとり暮らしで介護度3、リウマチがひどくなり緊急通報システムを何度も使って救急車を呼ぶ方などが、申し込んでから何年も入れないという相談を受けてきました。結局最後は、遠くの特養老人ホームに入所する方が多いのですが、家族は遠くまで面会にいくのも一苦労ですし、一人暮らしだった方が遠方にいってしまったら訪ねていく人はほとんどいないのが現実です。
「医療」、「介護」、「介護予防」、「住まい」、「生活支援」の5つのサービスを一体的に提供する、支援が必要な高齢者が住み慣れた地域で生活できるための「地域包括ケアシステム」が求められています。
高齢者がひとり暮らしであっても、認知症の方であっても、また低所得の方であっても、住み慣れた地域で安心して暮らしていける福祉都市東京にするために都としてあらゆる手立てを講じる必要があると考えますが、知事の認識をうかがいます。
地域包括ケアシステムの構築に向けては、まずニーズと資源を把握する地域アセスメントが重要です。地域包括ケアで必要な医療や福祉の資源である病院や診療所、訪問看護や介護施設、ケアマネージャーやヘルパー等の数、利用者数など実態調査を行うことが必要であり、自治体が行う調査を都として支援すべきです。都の見解をうかがいます。
私は地域包括ケアをすすめる上で地域密着型、いわゆる小規模特養老人ホームを位置づけて促進するべきと考えます。
地域密着型特養は、小さな土地で比較的早く整備ができます。そして住み慣れた地域で暮らすことができます。大きな土地の確保が難しい都心部でも、特養整備をすすめることができます。
しかし、実際の整備はなかなか進んでいません。23区内の1か所の定員が29人以下の地域密着型特養は8か所しかありません。そのうち7か所は区有地を使い、うち5か所は施設整備も区が行っていましたから、行政が強力に支援しないと整備が進まないことがうかがえます。
29人以下と小規模のため「スケールメリットが働かず経営が厳しく、広域型施設に比べ整備が進みにくい」と都も認めています。しかし都が特養に対して行っている借地料補助や区市町村有地を活用した場合の補助、経営支援費への補助は地域密着型の施設は対象外となっています。
都は高齢者が住みなれた地域で暮らし続けられるようにするという方針をもっているのですから、地域密着型特養に対しても広域型特養と同様の用地確保に対する補助を行うべきです。また経営支援費についても広域型特養と同様に適用すべきです。見解をうかがいます。
高齢者が地域で暮らし続けられるためには、通い、訪問、泊まりの支援を一体的に提供し、生活の全体を支える小規模多機能施設の整備が重要です。世田谷区や大田区など、空き家を福祉目的で活用する取り組みも始まっています。
土地がなかなかみつからない都心で、小規模多機能型居宅介護事業所などの整備をすすめるためには、既存の住宅や空き家を活用することが有効です。
知事も地域包括ケアシステムのあり方検討会議で、空き家の活用で小規模多機能の施設をつくることについて、「非常にいい。こういうのが都市型だ」と発言されていました。福祉施設に空き家を活用するモデル事業を行うなど都としてとりくむべきです。都の見解をうかがいます。
地域包括ケアの推進のために、区市町村社会福祉協議会に配置されている「地域福祉コーディネーター」が注目されています。高齢者、障害者など複数の分野にまたがり地域包括支援センターだけでは解決できない相談への対応や、地域の様々な職種、ボランティア団体などとも連携しての支援など、実際に大きな成果を上げています。
高齢者だけでなく若年層も含めた地域包括ケアシステムが区市町村において展開できるよう、事業の要となる地域福祉コーディネーターを拡充すべきではありませんか。
次にひきこもりへの支援についてうかがいます。2010年に内閣府の行った推計では、15歳〜39歳のひきこもりの方は全国で70万人としています。
ひきこもりの問題は本人や家族にとって深刻な問題であるだけでなく、社会にとっても大きな問題です。ひきこもりへの支援について都は、長期ビジョンでも「いじめ・ひきこもり等、青少年が抱える問題の解決に向けた良好な環境の実現」との施策を掲げ、今年度策定された「東京都子供・若者計画」にも「ひきこもり対策」が示されたことは重要です。ひきこもりの方への今後の支援について都の認識をうかがいます。
都は2014年6月からひきこもり支援の入り口として極めて重要な、自宅などに直接訪問する活動、いわゆるアウトリーチを始め、その受付窓口を各区市町村に設置しました。都内どこに住んでいても、アウトリーチが無料で受けられることは、ひきこもりへの支援としての大事な一歩であり重要です。しかしその後の支援についてはまだ不十分といわざるを得ません。
アウトリーチ事業について、実績と成果、今後の課題をどう捉えているのか、うかがいます。
私は、都からの委託でアウトリーチを行っているお茶の水女子大の研究室で、責任者の方からお話をうかがいました。アウトリーチは1人に対し約半年間かけて5回訪問し相談に乗るので、その後の後追いの調査も必要だと思う、地域に支援団体が不足しており今後の課題だとおっしゃっていました。
ひきこもりの方が社会につながっていくための次のステップの一つが、都の「若者社会参加応援事業」の登録団体の活動に参加することです。登録団体では、自宅以外の安心できる外出場所「居場所」の提供や、「社会体験活動」などのメニューをそろえて、社会に出て行くための支援を行っています。
「東京都若者社会参加応援事業」の登録団体は東京都全体で現在わずか14団体、地域も大変偏っているのが現状です。多摩地域には、福生市、立川市、三鷹市、調布市の4か所しかありません。また世田谷以外の城南地域、および城東地域にも登録団体はありません。登録団体を早急に増やし、地域偏在を解消すべきです。見解をうかがいます。
登録団体への補助は、はじめの1年のみ200万円が出るだけです。そのため運営費は全て利用者負担になってしまいます。
ひきこもりの支援を受ける利用者負担は、だいたい入会金を1万円、訪問も1回1万円以上、居場所、フリースペースの利用は月8千円〜1万数千円になります。ひきこもりの方が支援を受けるためには大きな財政負担が必要になることについて都の認識をうかがいます。
登録団体の方は、電話や来所で1時間を越える保護者からの相談にも、専門家として対応していますが、入会につながらなければ、料金をもらうわけにもいかず、相談を受ければ受けるほど財政的に厳しくなってしまうとうかがいました。
登録団体に対し相談数に応じて運営補助を行うなど、相談事業を位置づけて支援するべきです。
「東京都若者社会参加応援事業」の登録団体が支援を拡充できるよう、都として団体への財政支援を行うべきと考えますが、見解をうかがいます。
ひきこもりの方を支援するためには身近な区市町村の取組が欠かせません。わが党が2014年はじめに行った調査では、当事者への支援は1割程度の区市町村しか行っていませんでした。都は、区市町村の担当職員を対象とした情報交換会や実務研修を行っていますが、当事者が出かける場所や社会体験できる場所がなければ、社会へつながっていくことは難しいのではないでしょうか。
私の地元世田谷区では、「生きづらさを抱える若者へのサポート」として、世田谷区若者総合支援センターが設置されています。相談、居場所活動を行う「メルクマールせたがや」を、年間4千数百万円で都の登録団体に委託し「せたがや若者サポートステーション」「ヤングワークせたがや」と連携して支援を行っています。
町田市では、保健所が中心となって関係団体とネットワークを結び、独自の支援体制をつくって支援しています。どちらも利用者は無料で利用できます。
区市町村のひきこもり支援をさらに進めるために、都が現在おこなっている単年度の補助の拡充や新たな経常的財政支援も行うべきではないでしょうか、うかがいます。
都は、訪問相談や登録団体のひきこもり支援の対象を概ね34歳までとしていますが、実際には35歳以上でも都の登録団体の居場所支援を利用している方がいます。
厚生労働省が全国に設置を進めている「ひきこもり地域支援センター」では、対象年齢は設定されていません。都の「ひきこもり地域支援センター」として位置づけられている「東京都ひきこもりサポートネット」の訪問活動についても34歳までという年齢制限は見直すべきです。
都は子ども・若者育成支援推進法に基づき、「東京都子供・若者支援協議会」を開催しています。
私は前回の質問で、当事者や親の会の方々などから意見を聞くことを求めました。都は「子供、若者の実情に詳しいさまざまな関係者から幅広く意見を聞いてまいります。」と答弁しましたが、1年半たった現在でもひきこもりの分科会も設置されず、幅広い意見を聞くことも行われていません。改めて分科会の設置等、幅広い意見を聞き今後の支援策に生かすことを要望します。
また協議会の開催は現在まで2回のみ、驚いたことに議事録も公開されていないという状況です。
「東京都子供・若者支援協議会」の会議は原則公開とすべきです。見解をうかがい私の質問を終わります。
〇知事 里吉ゆみ議員の一般質問にお答えいたします。
今後の高齢者施策についてでございますが、地域包括ケアシステムの構築を目指して、本年三月に策定いたしました東京都高齢者保健福祉計画では、介護サービス基盤の整備、在宅療養や認知症対策の推進などを重点分野に、さまざまな施策を盛り込みました。
また、現在、福祉先進都市・東京の実現に向けた地域包括ケアシステムの在り方検討会議では、幅広い視点から議論を行っていただいておりまして、今後、その議論も踏まえながら、大都市にふさわしい高齢者施策を展開してまいります。
そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
〇福祉保健局長 四点のご質問にお答えいたします。
まず、地域包括ケアのための実態調査についてでありますが、地域包括ケアシステムは、区市町村がそれぞれの地域の資源やニーズを踏まえながら、主体的につくり上げていくことが基本でございます。
これまでも区市町村は、介護保険事業計画の策定に当たりまして、被保険者の心身の状況、要介護者のサービスの利用意向、福祉サービスの資源の状況等について、調査等により把握をしております。
また、区市町村は、地域支援事業により、平成三十年四月までに、地域における在宅医療及び介護に関する情報の収集、整理及び活用を行うこととされております。
都は、こうした区市町村の取り組みが円滑に行われるよう、介護保険法に基づき必要な助言を行ってまいります。
次に、地域密着型特別養護老人ホームに対する補助についてでありますが、地域密着型特別養護老人ホームは、区市町村が指定、指導監督の権限を持ち、みずから策定する計画に基づき整備を進めるものであり、入所者は原則として施設が所在する区市町村の住民に限定されております。
都が行っている借地料補助、区市町村所有地を活用した場合の補助、特別養護老人ホームに対する経営支援事業は、入所者の住居地が特定の区市町村に限定されず、誰もが入所できる広域型施設を対象としたものでございます。
次に、小規模多機能型居宅介護事業所などの整備についてでありますが、都は、国制度である地域医療介護総合確保基金による補助に加え、都独自に宿泊定員数に応じた補助を、区市町村を通じて実施しております。
これらの補助制度は、新設だけでなく、空き家活用を含む既存の建物の改修も対象としております。
最後に、地域福祉コーディネーターについてでありますが、国は、地域福祉コーディネーターについて、関係機関やボランティア等と連携して、専門的な対応が必要な問題を抱えた方に対する総合的な支援や、地域におけるネットワーク形成などを行う住民の地域福祉活動を推進するための基盤の一つと位置づけておりまして、今年度から、生活困窮者自立支援法の補助の対象といたしました。
また、都はこれまで、地域の実情に応じて地域福祉コーディネーターを配置する区市町村を包括補助により支援してまいりました。
今後とも、こうした区市町村の取り組みを支援してまいります。
〇青少年・治安対策本部長 八点のご質問にお答えいたします。
まず、ひきこもりの方への支援についてでございますが、ひきこもりの状態が長期化すれば、本人や家族にとって、精神的、経済的負担が生じるだけでなく、将来の労働力の減少や社会的負担の増大につながるおそれがあります。
そのため、都としても、ひきこもりの若者が、自立と社会参加に向けて早期に再出発できるよう支援する必要があると認識しており、今後とも、区市町村や、ひきこもり支援に携わる支援機関と連携して取り組みの充実を図ってまいります。
次に、アウトリーチ事業についてでございますが、都の訪問相談は、ひきこもりの状態にある若者やその家庭の状況や要望を踏まえて必要な支援を見立てるものであり、早期に適切な支援につなぎ、早い段階でひきこもりの状態から脱却させることを目的としております。
昨年六月の事業開始以来、六十九件の申し込みを受けており、若者がひきこもりの状態に陥る課題を分析して実態の把握に努めるとともに、個々の事例に即して、東京都若者社会参加応援事業の参加団体の活動や就労支援機関等を紹介し、必要に応じて同行もしながら、適切なサービスにつなげております。
次に、登録団体の確保と活動地域についてでございますが、NPO法人等の民間団体は、地域の実情に応じて活動拠点を設けておりますが、都民からの利用申し込みは都内全域から受け付け、対応しております。
なお、都としては、引き続き、ひきこもり等の若者の支援について、ノウハウや経験を持つ団体の確保に努めてまいります。
次に、ひきこもりの支援を受ける利用者の負担についてでございますが、都は、区市町村における若者の自立等支援体制整備事業により、ひきこもりに係る相談支援体制の整備に取り組む区市町村への補助を実施しております。
この補助事業を活用する区市町村については、若者社会参加応援事業に参加する協力団体と連携して取り組みを行うことを推奨しており、区市町村の事業化を促進することにより、住民が支援を受ける際の負担の軽減を図っております。
次に、登録団体への財政支援についてでございますが、都は、ひきこもり等の若者支援プログラムに沿った支援を行う団体を登録するとともに、登録制度に参加する団体をサポートする事業を実施しており、支援の実施体制を確立するための経費を助成しているほか、都の登録団体となった後も、技術面、運営面におけるサポートを継続的に提供しております。
次に、区市町村への財政支援についてでございますが、区市町村への補助については、平成二十六年度から、各区市町村がその実情に即して、より活用しやすいものとなるよう、補助の活用に必要な要件を緩和しております。
次に、支援の対象年齢についてでございますが、東京都ひきこもりサポートネットの訪問相談については、ひきこもりの問題を抱える若者を早期に支援につなげ、ひきこもりの状態の長期化を未然に防ぐ趣旨から、対象年齢を義務教育修了後の十五歳からおおむね三十四歳までに設定しております。
対象年齢を超える事例について相談を受けた場合は、個々の年齢層や課題にふさわしい支援を行うため、地域若者サポートステーション等の就労支援機関や、福祉や保健等の関連する専門機関に幅広く紹介しております。
最後に、東京都子供・若者支援協議会の運営についてでございますが、協議会は、個人情報を取り扱うなど、運営に配慮が必要な場合を除き、公開となっております。
以上